銀座の変な物語5
2011/08/19 Fri 10:20
11
「どうして酒屋のお兄ちゃんが私の部屋にいるの?・・・・」
メイサは不思議そうな表情をしながら、ベッドの横に立ちすくんでいる僕を見てそう言った。
メイサのその瞳は、まるで水中を遊泳するクラゲのようにフワフワとしており、いつもの黒豹のような目力はそこにはない。
僕はそんなメイサの目を見つめながら、ベッドの横に静かにしゃがんだ。
そしてベッドで横になるメイサに顔を近づけると、「メイサさんが僕を呼んだんじゃないですか・・・」とデタラメを言ってみた。
するとメイサは「えっ?」と小さく首を傾げ「本当に?」と僕の顔を覗き込んだ。
「はい・・・今夜は淋しいから部屋に来てって・・・メイサさんが僕をここに連れて来たんじゃないですか・・・」
僕はそう嘘を言いながら、枕の上のメイサの黒髪を優しく撫でた。
「あれぇ?・・・私、酔っぱらっちゃったのかなぁ?・・・」
メイサはそう言いながら恥ずかしそうに微笑んだ。
その表情がなんとも可愛くてそしてエロい。
我慢できなくなった僕は、黒髪を撫でていた手をゆっくりとメイサの肩へと下ろし、そしてパジャマの胸元のボタンをひとつひとつ外し始めた。
メイサはそんな僕に抵抗する事なく「由香ちゃんは?」と、いきなり意味不明な名前を僕に聞いて来た。
「由香ちゃんは先に帰りました・・・」
僕はデタラメにそう答えながら、開いたパジャマの胸元にソッと手を滑り込ます。
小さな膨らみを優しく手の平で包み込むと、メイサは僕の顔を見つめながら「えっちぃ・・・」と甘ったるい声で囁いた。
プニュっと優しく揉むと、そのまま親指と人差し指でそのコロコロと突起した乳首を摘んだ。
「やだぁん・・・」
メイサはまるで感じているかのようにピクッと肩を動かしながら甘い声を出す。
僕はそんなメイサを見つめながら、もう片方の手でペニスをシゴいた。
そして、再び姉の言葉を思い出す。
『この薬でラリってる時って凄く敏感なの・・・だからソープで働いてる時はいつもこの薬と酒でラリってたわ・・・マジイキできてお金貰えるんだから、いい商売よね・・・ふふふふふ』
僕はそんなサイコで変態な姉の言葉を思い出しながら、心の中で『マジイキ』という言葉を何度も繰り返した。
メイサも感じている・・・
そう思い込みながら、今、銀座のナンバーワンホステスを感じさせているのだというこの現実に、再び言いようのない優越感に包まれた。
僕はそのままメイサのパジャマの上着のボタンを全て外し、ゆっくりと前を開けさせた。小さな膨らみでありながらも乳首がツンっと上を向いた美しい釣り鐘型のオッパイが、薄暗いベッドに浮かび上がった。
贅肉ひとつない引き締まった見事な身体に、ツンっと尖ったその真っ白なオッパイは、まるでアニメーションのように美しい。
そんな美しさに僕が見とれていると、顔をゆっくりと僕に向けたメイサがジッと僕の目を見つめた。
そして森の妖精が囁きかけるかのような優しい口調で「どうしてこんな事するの?・・・」っと静かに唇を動かした。
「好きだから・・・」
僕は速攻でそう答えた。
メイサは、そんな僕の言葉に一瞬真顔になったが、しかしすぐにその表情はまたフワフワとした表情に戻り、悪戯っぽくクスッと微笑んだ。
その小悪魔的な笑顔に、僕の脳天は蒸気機関車が速度を上げるときのようにフゥゥゥゥ!と熱くなり、おもわずそのツンっと尖った乳首をペロッと舐めてしまった。
「あん・・・・」
メイサはピクンっと身体を跳ねながら目を綴じた。
シュパシュパシュパシュパ・・・・
僕は、ソフトクリームを舐めるシーンを早送りしているかのように高速で舌を動かし、銀座のトップホステスの乳首を舐めまくった。
「んん・・・んん・・・」
メイサは微妙な喘ぎ声を喉で鳴らしながら身を捩らせた。メイサのその姿は、まるで黒猫が甘えるような仕草だった。
僕は右の乳首を口内で転がしながら、左の乳首を転がしていた右手をそのままメイサの下半身へと静かに下ろした。
キュッと引き締まったウェストを滑るように下り、プリンっと張りのある尻肉を優しく撫でる。そのまま掛けてあった布団をゆっくりと剥がすと、黒いパンティーとパジャマのスボンが足首まで下げられた、メイサの下半身が現れた。
「・・・恥ずかしい・・・」
大きな瞳をウルウルさせながらそう呟いたメイサの唇に、僕は迷う事なく唇を押し付けた。
メイサは抵抗する事なく、僕の舌を素直に受け入れた。
生温かいメイサの口内で滅茶苦茶に舌を動かしていると、そんな僕の舌を制圧するかのように今度はメイサの舌が僕の口内に押し入って来た。
長いマツゲを閉じたままのメイサは僕の口内で舌を踊らせた。その舌の動きは、氷の上を華麗に滑って行く浅田真央のフィギアスケートを連想させるような、そんな滑らかな心地良い動きだった。
キスに馴れていない僕は、そんなメイサの芸術的なキスに酔いしれた。
死ぬほど恋い焦がれた女と舌を絡ませ合っているいう感動と、その滑らかな舌の動きが僕の脳味噌をトロトロに溶かして行く。
ぷちょっ・・・という吸盤が剥がれるような小気味良い音を立てて互いの唇が離れると、メイサはその唾液で光った唇からハァっと熱い息を吐いた。
僕はそんなメイサの頬に熱く火照った唇をソッとあてながら、その右手をメイサの股間へと忍ばせる。
ポッコリと膨らんだ恥骨にはフワフワの陰毛が靡いていた。そんな陰毛からジリジリと指を進ませ、閉じている太ももの間に滑り込ませて行った。
「あれぇ?・・・由香は?・・・・」
ラリったメイサが再び突拍子もない事を僕の耳元で囁いた。
「由香は帰ったよ・・・・」
僕は静かにそう答えると、そのままメイサのワレメに指を押し込んだ。
そのワレメは、ついさっき僕が舐めていたワレメとは明らかに違っていた。
ワレメの内部はまるで湯たんぽで温めていたかのようにジンワリと熱く、そして大量のヌルヌル汁が溢れてはそれがネチャネチャと僕の指に絡み付いた。
「凄く濡れてるよ・・・・」
僕は穴の奥深くにまで指を挿入しながらメイサに呟くと、メイサは「はあぁぁぁぁ」と震えた声でそう答えた。
メイサの頬にあてていた唇をそっと放した僕は、そのまま静かにベッドの足下へと移動した。そしてメイサの両足を開かせ、パックリと開いたオマンコを覗き込みながらクタクタと指を動かす。
開いたオマンコは溢れる汁でギトギトに輝き、びちゃ、びちゃ、といやらしい音を奏でていた。
「気持ちいい?」
奥まで入れた指をグニグニと蠢かせながらそう聞くと、メイサは「やだぁ・・・誰ぇ・・・」と、夢の中を彷徨いながら快楽に身を捩らせていた。
僕はメイサのワレメに指を入れたまま、そのコロンっと突起しているクリトリスを舌で転がした。
「いやぁぁぁぁ・・・・あぁぁん!ダメぇん・・・・」
メイサは、いつものあのクールなメイサからは想像もできないような甘い声を発しながら、自ら大きく股を開く。
二本入れていた指をもう一本増やし、三本の指でオマンコをグチャグチャと掻き回しながらクリトリスを舌で転がす。
メイサの細い下半身がヒクヒクと痙攣しながら、その細い脚をバタバタと動かし始めた。
そう暴れるメイサの下半身を押さえ付けるべく、僕はベッドの上に這い上がる。
「ヤだよぅ・・・あぁぁん・・・ヤメて・・・・」
そう喘ぎ続けるメイサの体の上に乗った僕は、逆向きの体勢のまま股間に顔を押し込み、両手でワレメを押し開いてはその中を荒々しく貪り舐めた。
穴の中を指でほじられていたメイサのアソコはほんわかと湯気が立ち、欲情した蒸れた女の匂いがムンムンと溢れている。そんな淫らなメイサの穴に一心不乱に舌を動かしていると、不意に僕のペニスに衝撃が走った。
それはまるでペニスを蒸しタオルで包まれたような心地良い衝撃だった。
ソッと後を振り返りメイサの顔を覗き込むと、メイサは目を閉じたまま僕のペニスを口に含んでいた。
(マジかよ・・・スゲェ・・・・)
僕は感動しながらも、メイサが舐めやすいようにと腰を動かしながらペニスの位置を移動させた。
すると不意に、メイサの口からペニスがヌポッと抜けた。
目の前にブランっとぶら下がったペニスに舌を伸ばしたメイサは、敏感になっている僕の亀頭を舌先でレロレロレロっと転がすと、再びソレをツルンと口内に吸い込んだ。
メイサの口内でプチョプチョプチョと弄ばれる僕のペニス。メイサのその舌ワザは、さきほどの濃厚なディープキスと同様、滑らかな快楽を与えてくれた。
「あぁぁ・・・メイサ・・・」
そんなメイサのフェラシーンを見ながらおもわず僕が唸ってしまうと、メイサは長いマツゲをゆっくりと開き、ぼんやりと僕の目を見つめた。
そして僕の目を見つめたまま、ピンクのマニキュアが光る指を僕の陰毛の中に滑り込ませると、ペニスの根元をキュッと摘んで固定しながら、ゆっくりと顔を上下に動かし始め、ジュポ、ジュポ、ジュポっという卑猥な音を立てたのだった。
12
そんなメイサのフェラチオに我慢できなくなった僕は、慌ててペニスを引き抜いた。
メイサの口内から引き抜かれたペニスは唾液でテラテラと輝き、剥き出しになった赤黒い亀頭がヒクヒクと痙攣している。
あと3擦り、いや2擦りされたら爆発していた所だ。
ハァハァと荒い息を吐きながら、メイサの横に添い寝するかのように寝転んだ僕は、まるでボクサーが試合中に休憩するかのように、急速に体調を整えた。
薄暗い天井を見つめながら、ひたすら下半身の爆発の治まりを待っていると、隣のメイサが「ねぇ・・・」っと僕を呼んだ。
僕がソッと横に振り向くと、僕のすぐ目の前にメイサの小さな顔があった。メイサは大きな目をフワフワとさせながら僕の目をジッと見つめ、そして驚いたように「もしかして酒屋のお兄ちゃん?」と聞いて来た。
そんなメイサに、一瞬は睡眠薬の効果が切れたのかとビビったが、しかしメイサのその瞳は今だフワフワと宙を舞っている感じだ。
まだ、しっかりと姉の媚薬は効いていると思われる。
だから僕は素直に「そうだよ」と答えてやった。
するとメイサは「う~ん・・・」と唇を尖らせ、「どうして私の部屋にいるの?」と不思議そうに聞いて来た。
「・・・だから、さっきも言ったけど・・・キミが今夜は淋しいから一緒にいてって言ったんじゃないか・・・」
僕はそう誤魔化しながらも、これ以上会話を続ける事によりメイサが正常に戻ってしまうのではないかという不安に襲われた。
だから、ペニスは完全に回復していなかったが、そのままメイサの体の上にゆっくりと乗り、無言でメイサの乳首をペロペロと舐め始めた。
「え?・・・どうして・・・」
そんな僕を驚いたように見つめるメイサ。
メイサの体をギュッと抱きしめると、メイサは僕の耳元で「ここ、本当に私の部屋?」と怯えるように聞いた。
(マズいぞ・・・意識が戻り始めているのかも知れない・・・)
メイサの言葉からそう焦り始めた僕は、再びメイサを快楽の中に落とすしかないと考え、まだヒクヒクと敏感なペニスをメイサの局部に押しあてた。
「ねぇ・・・あなた誰なの?・・・」
メイサの体をギュッと抱きしめている僕の耳元にメイサが囁く。
慌ててワレメの中に亀頭をヌルッと挿入させた。
遂に憧れのメイサと合体できたという感動と共に、これ以上動くと危険だ!という危機管理が僕の脳で信号を鳴らす。
亀頭を入れたままの状態でストップしている僕は、ペニスを包み込むその生温かいヌルヌルとした感触に気が狂いそうだった。
そんな一触即発の僕の耳元で、メイサは「ハァハァ」と熱い息を吐きながら、「もっと奥まで入れて・・・」っと甘える声で囁く。
まさに絶体絶命だ。
僕は亀頭だけ入れた状態でムクリと体を起こした。
メイサをソッと見下ろすと、既にメイサの表情は蕩っと溶けては、夢の中へと突入している。
「もっと奥まで入れて欲しい?・・・」
時間稼ぎの為にそう尋ねると、メイサはプックリとした唇をペロッと舐めながら「動かして・・・」っとエッチに囁いた。
僕はメイサの両足を両手に抱えながら股をおもいきり開かせると、先っぽの部分だけをヌチャヌチャとピストンさせた。
「んん・・・もっと奥まで・・・」
メイサが切ない目をして僕を見る。
そんなメイサの瞳に、まるで催眠術をかけられてしまったかのように僕の腰が自然にコキコキと動き始めた。
(ヤバいって・・・出ちゃうって・・・)
そう思いながらも、自然にペニスはメイサの穴の中を出たり入ったりと繰り返す。
メイサのヌルヌルの穴に刺激される亀頭が「もう限界だ!」と悲鳴をあげる。
しかし、僕のそんな腰の動きに身を捩らせるメイサを見ていると、今ここでコレを停止させるのはあまりにも残酷過ぎた。
ぬぽ、ぬぽ、ぬぽ・・・・
ゆっくり浅くピストンを繰り返していると、いきなりメイサがクイッ!と腰を突き出し、一瞬にして僕のペニスは全身を膣穴に飲み込まれた。
なんともいえない温もりと、そしてペニス全体をキュッキュッと締め付ける膣筋が僕の脳の発射ボタンをプチッと押した。
「あっ!」
僕の全身を強烈な快感が電光石火に貫いた。
ペニスから発射された精液は問答無用でメイサの膣内で破裂する。
「うぅぅぅぅ!」
僕は鼻から抜ける唸り声をあげながら、もう滅茶苦茶にペニスをピストンし始めた。
「あああん!もっと!もっと!」
メイサの叫び声と、パンパンパンっと肌がぶつかり合う乾いた音が部屋中に響き渡っていた。
(メイサ好きだ!メイサ!大好きだ!)
快楽の渦の中でそう叫びながら一心不乱に腰を動かしていると、精液を出し尽くしたペニスは、快楽から一転してくすぐったい刺激へと変わって行った。
しかしまだまだメイサは感じまくっている。
朦朧とした意識の中で「将太・・・将太・・・」っと別の男の名前を叫んでいるが、しかしラリっている今のメイサは、きっと想像を絶するような快楽の中にいるはずなのだ。
(ここで終わるわけにはいかないよ・・・・)
僕はくすぐったいのを我慢しながら、そのままピストンを続けた。
ペニスがINされる度に、中出しされた膣内の精液がブチュ!と溢れ出す。
そんな結合部分を覗き込みながら腰を振る僕は、その中出しされた無惨なオマンコと、喘ぎまくるメイサの切ない表情に、瞬く間に復活を遂げた。
見事に復活した僕は天下無敵だった。
不発に怖れる事なくガンガンと腰を突きまくる僕は、カエルのように両足を開きながら悶えるメイサを見下ろし、そして両手で乳首をクリクリと弄った。
そうしながら喘ぎまくるメイサを見つめ、「メイサ・・・・」っと名前を呼んだ。
メイサは枕の上でイヤイヤをするように首を振りながらも、長いマツゲの隙間から僕を見た。
そして、喉をヒクヒクさせながら「なに?・・・・」と僕に微笑む。
「愛してる・・・・」
生まれて初めて口にする言葉だった。
とっても恥ずかしかったが、しかしその言葉を発するだけでなにかとっても幸せになれた。
そんな言葉をもう一度口にすると、メイサは僕の目をジッと見つめながら「私も・・・・」と微笑んでくれた。
このまま死んでもいいと思った。きっとラリっているメイサは僕を誰かと勘違いしてそう言ったのだろうが、しかしそれでも良かった。それでも十分、このまま死んでもいいと思えるくらいに幸せな気分になれた。
そんな幸福感に包まれながら、僕は激しく腰を振り、そして何度も何度もキスをした。
しかし、この幸せは長くは続かない。いや、もうそろそろタイムリミットかも知れない。
僕は薄らと明るくなりかけたカーテンを見つめながら、もう2度とメイサとこんなに愛し合う事はないだろうという現実に引き戻された。
幸福から一転して悲しみに包まれた僕の腕の中で、何も知らないメイサはまだ子犬のような声で泣いていた。
「さよなら・・・・」
僕は腰を振りながら、優しくメイサにそう囁いたのだった。
13
相変わらず銀座の街には人々が溢れかえっていた。
表通りをゆく着飾った人々と、裏通りを走り回るブルーカラーの業者達。
「よいしょっと!」
そう掛け声を掛けながら荷台からビールケースを下ろすと、そのままの勢いでヨタヨタと歩道を走り出す。ケースの中で揺れるビール瓶が、まるで乾杯しているかのようにカチンカチンと音を立て、歩道を歩く着飾った人々が、そんな僕を避けるようにして通り過ぎて行った。
銀座からメイサの姿が消えてから半年が過ぎていた。
その後のメイサの消息は不明だった。
メイサの消息をクラブの店長に尋ねても、マネージャーに尋ねても、皆一様に「さぁ・・・どこ行ったんだろうなぁ」と、古い古い過去の出来事のように首を傾げた。
酒屋という水商売に片足を突っ込んだ業界にいると、どこそこのクラブにいた女の子は六本木で働いているとか、あの店でチーママやってた女は今は代議士の妾だよ、などという色々な情報が入って来るものだ。
数多くの店に出入りしている為、あっちこっちからそんな情報が入って来るのだ。
しかし、メイサの情報は全く掴めなかった。
あれだけ銀座では有名なホステスだったのに、ここまで噂が流れないという事は、もしかしたらメイサは水商売からキッパリと足を洗ったのかも知れない。
ビルの三階にあるキャバクラにビールを運んだ僕は、空のビールケースをカチャカチャと鳴らしながら歩道に出ると、目の前を脚の長いイイ女が甘い香水を撒き散らしながらスッと横切り、危うく追突しそうになった。
女はカツコツと鳴らしていたヒールを一瞬止め、キッと僕を睨む。
きっとどこかのクラブの女だろう、頭の先から爪先まで完全に商売モードだ。
「すみません・・・・」
すかさず僕が謝ると、女はチラッと僕の腰に巻いていた『菊正宗』の埃だらけの前掛けに目をやり、一瞬、汚い物でも見るかのような嫌な目付きをすると、そのままフン!と無言で去って行った。
イイ女だった。まさに銀座の蝶だ。
あんなイイ女、時給800円の僕には高嶺の花だよな・・・・
そう思いながらその女の隙のない後ろ姿を見ていると、その女から発せられるムンムンとした甘い香水の香りが風に乗って漂って来た。
その甘い香りに、ふいにメイサを思い出す。
あれがメイサだったら、「あらっ」といつものように小さな顔を傾げ、こんな薄汚い僕にでも優しく微笑んでくれるはずだ。
メイサは優しい女だったな・・・・
そんな感傷に耽りながら、僕は空のビールケースを軽トラックの荷台にガシャン!と置いた。
そして新しいビールケースを手にしようとしたその時、ふいに僕の背後から「あらっ」という声が聞こえた。
一瞬、メイサの笑顔が僕の脳裏にパッと浮かび上がる。
下唇を噛みしめながらゆっくりと後を振り向くと、そこにはキリリッと帯を締めた着物姿のホステスが、歩道の隅の花屋の店員と話しているのが見えた。
銀座の生温かい風に吹かれながら、苦笑する僕はふいに泣き出しそうになった。
そんな感傷を掻き消すように、再び「よいしょっと!」という掛け声を掛けてビールケースを荷台から下ろした。カチャカチャっとビール瓶の音を立てながら華やかな銀座の歩道を進む。
銀座の女というのは、1度この世界から足を洗うと、もう銀座には帰って来ないと言われている。
それだけプライドが高いという事らしい。
僕はそんなプライドの高い女達に「はい、どいてぇ、危ないよぉ」と声を掛けながら、今日もカチャカチャとビール瓶を鳴らしながら歩道を歩く。
いや、明日も明後日も、ずっとずっと歩き続ける。
そう、いつかきっと「あらっ」とメイサが僕に声を掛けてくれるのを夢見ながら、僕は銀座の歩道をひたすら歩き続ける。
(銀座の変な物語・完)
《←目次へ》
「どうして酒屋のお兄ちゃんが私の部屋にいるの?・・・・」
メイサは不思議そうな表情をしながら、ベッドの横に立ちすくんでいる僕を見てそう言った。
メイサのその瞳は、まるで水中を遊泳するクラゲのようにフワフワとしており、いつもの黒豹のような目力はそこにはない。
僕はそんなメイサの目を見つめながら、ベッドの横に静かにしゃがんだ。
そしてベッドで横になるメイサに顔を近づけると、「メイサさんが僕を呼んだんじゃないですか・・・」とデタラメを言ってみた。
するとメイサは「えっ?」と小さく首を傾げ「本当に?」と僕の顔を覗き込んだ。
「はい・・・今夜は淋しいから部屋に来てって・・・メイサさんが僕をここに連れて来たんじゃないですか・・・」
僕はそう嘘を言いながら、枕の上のメイサの黒髪を優しく撫でた。
「あれぇ?・・・私、酔っぱらっちゃったのかなぁ?・・・」
メイサはそう言いながら恥ずかしそうに微笑んだ。
その表情がなんとも可愛くてそしてエロい。
我慢できなくなった僕は、黒髪を撫でていた手をゆっくりとメイサの肩へと下ろし、そしてパジャマの胸元のボタンをひとつひとつ外し始めた。
メイサはそんな僕に抵抗する事なく「由香ちゃんは?」と、いきなり意味不明な名前を僕に聞いて来た。
「由香ちゃんは先に帰りました・・・」
僕はデタラメにそう答えながら、開いたパジャマの胸元にソッと手を滑り込ます。
小さな膨らみを優しく手の平で包み込むと、メイサは僕の顔を見つめながら「えっちぃ・・・」と甘ったるい声で囁いた。
プニュっと優しく揉むと、そのまま親指と人差し指でそのコロコロと突起した乳首を摘んだ。
「やだぁん・・・」
メイサはまるで感じているかのようにピクッと肩を動かしながら甘い声を出す。
僕はそんなメイサを見つめながら、もう片方の手でペニスをシゴいた。
そして、再び姉の言葉を思い出す。
『この薬でラリってる時って凄く敏感なの・・・だからソープで働いてる時はいつもこの薬と酒でラリってたわ・・・マジイキできてお金貰えるんだから、いい商売よね・・・ふふふふふ』
僕はそんなサイコで変態な姉の言葉を思い出しながら、心の中で『マジイキ』という言葉を何度も繰り返した。
メイサも感じている・・・
そう思い込みながら、今、銀座のナンバーワンホステスを感じさせているのだというこの現実に、再び言いようのない優越感に包まれた。
僕はそのままメイサのパジャマの上着のボタンを全て外し、ゆっくりと前を開けさせた。小さな膨らみでありながらも乳首がツンっと上を向いた美しい釣り鐘型のオッパイが、薄暗いベッドに浮かび上がった。
贅肉ひとつない引き締まった見事な身体に、ツンっと尖ったその真っ白なオッパイは、まるでアニメーションのように美しい。
そんな美しさに僕が見とれていると、顔をゆっくりと僕に向けたメイサがジッと僕の目を見つめた。
そして森の妖精が囁きかけるかのような優しい口調で「どうしてこんな事するの?・・・」っと静かに唇を動かした。
「好きだから・・・」
僕は速攻でそう答えた。
メイサは、そんな僕の言葉に一瞬真顔になったが、しかしすぐにその表情はまたフワフワとした表情に戻り、悪戯っぽくクスッと微笑んだ。
その小悪魔的な笑顔に、僕の脳天は蒸気機関車が速度を上げるときのようにフゥゥゥゥ!と熱くなり、おもわずそのツンっと尖った乳首をペロッと舐めてしまった。
「あん・・・・」
メイサはピクンっと身体を跳ねながら目を綴じた。
シュパシュパシュパシュパ・・・・
僕は、ソフトクリームを舐めるシーンを早送りしているかのように高速で舌を動かし、銀座のトップホステスの乳首を舐めまくった。
「んん・・・んん・・・」
メイサは微妙な喘ぎ声を喉で鳴らしながら身を捩らせた。メイサのその姿は、まるで黒猫が甘えるような仕草だった。
僕は右の乳首を口内で転がしながら、左の乳首を転がしていた右手をそのままメイサの下半身へと静かに下ろした。
キュッと引き締まったウェストを滑るように下り、プリンっと張りのある尻肉を優しく撫でる。そのまま掛けてあった布団をゆっくりと剥がすと、黒いパンティーとパジャマのスボンが足首まで下げられた、メイサの下半身が現れた。
「・・・恥ずかしい・・・」
大きな瞳をウルウルさせながらそう呟いたメイサの唇に、僕は迷う事なく唇を押し付けた。
メイサは抵抗する事なく、僕の舌を素直に受け入れた。
生温かいメイサの口内で滅茶苦茶に舌を動かしていると、そんな僕の舌を制圧するかのように今度はメイサの舌が僕の口内に押し入って来た。
長いマツゲを閉じたままのメイサは僕の口内で舌を踊らせた。その舌の動きは、氷の上を華麗に滑って行く浅田真央のフィギアスケートを連想させるような、そんな滑らかな心地良い動きだった。
キスに馴れていない僕は、そんなメイサの芸術的なキスに酔いしれた。
死ぬほど恋い焦がれた女と舌を絡ませ合っているいう感動と、その滑らかな舌の動きが僕の脳味噌をトロトロに溶かして行く。
ぷちょっ・・・という吸盤が剥がれるような小気味良い音を立てて互いの唇が離れると、メイサはその唾液で光った唇からハァっと熱い息を吐いた。
僕はそんなメイサの頬に熱く火照った唇をソッとあてながら、その右手をメイサの股間へと忍ばせる。
ポッコリと膨らんだ恥骨にはフワフワの陰毛が靡いていた。そんな陰毛からジリジリと指を進ませ、閉じている太ももの間に滑り込ませて行った。
「あれぇ?・・・由香は?・・・・」
ラリったメイサが再び突拍子もない事を僕の耳元で囁いた。
「由香は帰ったよ・・・・」
僕は静かにそう答えると、そのままメイサのワレメに指を押し込んだ。
そのワレメは、ついさっき僕が舐めていたワレメとは明らかに違っていた。
ワレメの内部はまるで湯たんぽで温めていたかのようにジンワリと熱く、そして大量のヌルヌル汁が溢れてはそれがネチャネチャと僕の指に絡み付いた。
「凄く濡れてるよ・・・・」
僕は穴の奥深くにまで指を挿入しながらメイサに呟くと、メイサは「はあぁぁぁぁ」と震えた声でそう答えた。
メイサの頬にあてていた唇をそっと放した僕は、そのまま静かにベッドの足下へと移動した。そしてメイサの両足を開かせ、パックリと開いたオマンコを覗き込みながらクタクタと指を動かす。
開いたオマンコは溢れる汁でギトギトに輝き、びちゃ、びちゃ、といやらしい音を奏でていた。
「気持ちいい?」
奥まで入れた指をグニグニと蠢かせながらそう聞くと、メイサは「やだぁ・・・誰ぇ・・・」と、夢の中を彷徨いながら快楽に身を捩らせていた。
僕はメイサのワレメに指を入れたまま、そのコロンっと突起しているクリトリスを舌で転がした。
「いやぁぁぁぁ・・・・あぁぁん!ダメぇん・・・・」
メイサは、いつものあのクールなメイサからは想像もできないような甘い声を発しながら、自ら大きく股を開く。
二本入れていた指をもう一本増やし、三本の指でオマンコをグチャグチャと掻き回しながらクリトリスを舌で転がす。
メイサの細い下半身がヒクヒクと痙攣しながら、その細い脚をバタバタと動かし始めた。
そう暴れるメイサの下半身を押さえ付けるべく、僕はベッドの上に這い上がる。
「ヤだよぅ・・・あぁぁん・・・ヤメて・・・・」
そう喘ぎ続けるメイサの体の上に乗った僕は、逆向きの体勢のまま股間に顔を押し込み、両手でワレメを押し開いてはその中を荒々しく貪り舐めた。
穴の中を指でほじられていたメイサのアソコはほんわかと湯気が立ち、欲情した蒸れた女の匂いがムンムンと溢れている。そんな淫らなメイサの穴に一心不乱に舌を動かしていると、不意に僕のペニスに衝撃が走った。
それはまるでペニスを蒸しタオルで包まれたような心地良い衝撃だった。
ソッと後を振り返りメイサの顔を覗き込むと、メイサは目を閉じたまま僕のペニスを口に含んでいた。
(マジかよ・・・スゲェ・・・・)
僕は感動しながらも、メイサが舐めやすいようにと腰を動かしながらペニスの位置を移動させた。
すると不意に、メイサの口からペニスがヌポッと抜けた。
目の前にブランっとぶら下がったペニスに舌を伸ばしたメイサは、敏感になっている僕の亀頭を舌先でレロレロレロっと転がすと、再びソレをツルンと口内に吸い込んだ。
メイサの口内でプチョプチョプチョと弄ばれる僕のペニス。メイサのその舌ワザは、さきほどの濃厚なディープキスと同様、滑らかな快楽を与えてくれた。
「あぁぁ・・・メイサ・・・」
そんなメイサのフェラシーンを見ながらおもわず僕が唸ってしまうと、メイサは長いマツゲをゆっくりと開き、ぼんやりと僕の目を見つめた。
そして僕の目を見つめたまま、ピンクのマニキュアが光る指を僕の陰毛の中に滑り込ませると、ペニスの根元をキュッと摘んで固定しながら、ゆっくりと顔を上下に動かし始め、ジュポ、ジュポ、ジュポっという卑猥な音を立てたのだった。
12
そんなメイサのフェラチオに我慢できなくなった僕は、慌ててペニスを引き抜いた。
メイサの口内から引き抜かれたペニスは唾液でテラテラと輝き、剥き出しになった赤黒い亀頭がヒクヒクと痙攣している。
あと3擦り、いや2擦りされたら爆発していた所だ。
ハァハァと荒い息を吐きながら、メイサの横に添い寝するかのように寝転んだ僕は、まるでボクサーが試合中に休憩するかのように、急速に体調を整えた。
薄暗い天井を見つめながら、ひたすら下半身の爆発の治まりを待っていると、隣のメイサが「ねぇ・・・」っと僕を呼んだ。
僕がソッと横に振り向くと、僕のすぐ目の前にメイサの小さな顔があった。メイサは大きな目をフワフワとさせながら僕の目をジッと見つめ、そして驚いたように「もしかして酒屋のお兄ちゃん?」と聞いて来た。
そんなメイサに、一瞬は睡眠薬の効果が切れたのかとビビったが、しかしメイサのその瞳は今だフワフワと宙を舞っている感じだ。
まだ、しっかりと姉の媚薬は効いていると思われる。
だから僕は素直に「そうだよ」と答えてやった。
するとメイサは「う~ん・・・」と唇を尖らせ、「どうして私の部屋にいるの?」と不思議そうに聞いて来た。
「・・・だから、さっきも言ったけど・・・キミが今夜は淋しいから一緒にいてって言ったんじゃないか・・・」
僕はそう誤魔化しながらも、これ以上会話を続ける事によりメイサが正常に戻ってしまうのではないかという不安に襲われた。
だから、ペニスは完全に回復していなかったが、そのままメイサの体の上にゆっくりと乗り、無言でメイサの乳首をペロペロと舐め始めた。
「え?・・・どうして・・・」
そんな僕を驚いたように見つめるメイサ。
メイサの体をギュッと抱きしめると、メイサは僕の耳元で「ここ、本当に私の部屋?」と怯えるように聞いた。
(マズいぞ・・・意識が戻り始めているのかも知れない・・・)
メイサの言葉からそう焦り始めた僕は、再びメイサを快楽の中に落とすしかないと考え、まだヒクヒクと敏感なペニスをメイサの局部に押しあてた。
「ねぇ・・・あなた誰なの?・・・」
メイサの体をギュッと抱きしめている僕の耳元にメイサが囁く。
慌ててワレメの中に亀頭をヌルッと挿入させた。
遂に憧れのメイサと合体できたという感動と共に、これ以上動くと危険だ!という危機管理が僕の脳で信号を鳴らす。
亀頭を入れたままの状態でストップしている僕は、ペニスを包み込むその生温かいヌルヌルとした感触に気が狂いそうだった。
そんな一触即発の僕の耳元で、メイサは「ハァハァ」と熱い息を吐きながら、「もっと奥まで入れて・・・」っと甘える声で囁く。
まさに絶体絶命だ。
僕は亀頭だけ入れた状態でムクリと体を起こした。
メイサをソッと見下ろすと、既にメイサの表情は蕩っと溶けては、夢の中へと突入している。
「もっと奥まで入れて欲しい?・・・」
時間稼ぎの為にそう尋ねると、メイサはプックリとした唇をペロッと舐めながら「動かして・・・」っとエッチに囁いた。
僕はメイサの両足を両手に抱えながら股をおもいきり開かせると、先っぽの部分だけをヌチャヌチャとピストンさせた。
「んん・・・もっと奥まで・・・」
メイサが切ない目をして僕を見る。
そんなメイサの瞳に、まるで催眠術をかけられてしまったかのように僕の腰が自然にコキコキと動き始めた。
(ヤバいって・・・出ちゃうって・・・)
そう思いながらも、自然にペニスはメイサの穴の中を出たり入ったりと繰り返す。
メイサのヌルヌルの穴に刺激される亀頭が「もう限界だ!」と悲鳴をあげる。
しかし、僕のそんな腰の動きに身を捩らせるメイサを見ていると、今ここでコレを停止させるのはあまりにも残酷過ぎた。
ぬぽ、ぬぽ、ぬぽ・・・・
ゆっくり浅くピストンを繰り返していると、いきなりメイサがクイッ!と腰を突き出し、一瞬にして僕のペニスは全身を膣穴に飲み込まれた。
なんともいえない温もりと、そしてペニス全体をキュッキュッと締め付ける膣筋が僕の脳の発射ボタンをプチッと押した。
「あっ!」
僕の全身を強烈な快感が電光石火に貫いた。
ペニスから発射された精液は問答無用でメイサの膣内で破裂する。
「うぅぅぅぅ!」
僕は鼻から抜ける唸り声をあげながら、もう滅茶苦茶にペニスをピストンし始めた。
「あああん!もっと!もっと!」
メイサの叫び声と、パンパンパンっと肌がぶつかり合う乾いた音が部屋中に響き渡っていた。
(メイサ好きだ!メイサ!大好きだ!)
快楽の渦の中でそう叫びながら一心不乱に腰を動かしていると、精液を出し尽くしたペニスは、快楽から一転してくすぐったい刺激へと変わって行った。
しかしまだまだメイサは感じまくっている。
朦朧とした意識の中で「将太・・・将太・・・」っと別の男の名前を叫んでいるが、しかしラリっている今のメイサは、きっと想像を絶するような快楽の中にいるはずなのだ。
(ここで終わるわけにはいかないよ・・・・)
僕はくすぐったいのを我慢しながら、そのままピストンを続けた。
ペニスがINされる度に、中出しされた膣内の精液がブチュ!と溢れ出す。
そんな結合部分を覗き込みながら腰を振る僕は、その中出しされた無惨なオマンコと、喘ぎまくるメイサの切ない表情に、瞬く間に復活を遂げた。
見事に復活した僕は天下無敵だった。
不発に怖れる事なくガンガンと腰を突きまくる僕は、カエルのように両足を開きながら悶えるメイサを見下ろし、そして両手で乳首をクリクリと弄った。
そうしながら喘ぎまくるメイサを見つめ、「メイサ・・・・」っと名前を呼んだ。
メイサは枕の上でイヤイヤをするように首を振りながらも、長いマツゲの隙間から僕を見た。
そして、喉をヒクヒクさせながら「なに?・・・・」と僕に微笑む。
「愛してる・・・・」
生まれて初めて口にする言葉だった。
とっても恥ずかしかったが、しかしその言葉を発するだけでなにかとっても幸せになれた。
そんな言葉をもう一度口にすると、メイサは僕の目をジッと見つめながら「私も・・・・」と微笑んでくれた。
このまま死んでもいいと思った。きっとラリっているメイサは僕を誰かと勘違いしてそう言ったのだろうが、しかしそれでも良かった。それでも十分、このまま死んでもいいと思えるくらいに幸せな気分になれた。
そんな幸福感に包まれながら、僕は激しく腰を振り、そして何度も何度もキスをした。
しかし、この幸せは長くは続かない。いや、もうそろそろタイムリミットかも知れない。
僕は薄らと明るくなりかけたカーテンを見つめながら、もう2度とメイサとこんなに愛し合う事はないだろうという現実に引き戻された。
幸福から一転して悲しみに包まれた僕の腕の中で、何も知らないメイサはまだ子犬のような声で泣いていた。
「さよなら・・・・」
僕は腰を振りながら、優しくメイサにそう囁いたのだった。
13
相変わらず銀座の街には人々が溢れかえっていた。
表通りをゆく着飾った人々と、裏通りを走り回るブルーカラーの業者達。
「よいしょっと!」
そう掛け声を掛けながら荷台からビールケースを下ろすと、そのままの勢いでヨタヨタと歩道を走り出す。ケースの中で揺れるビール瓶が、まるで乾杯しているかのようにカチンカチンと音を立て、歩道を歩く着飾った人々が、そんな僕を避けるようにして通り過ぎて行った。
銀座からメイサの姿が消えてから半年が過ぎていた。
その後のメイサの消息は不明だった。
メイサの消息をクラブの店長に尋ねても、マネージャーに尋ねても、皆一様に「さぁ・・・どこ行ったんだろうなぁ」と、古い古い過去の出来事のように首を傾げた。
酒屋という水商売に片足を突っ込んだ業界にいると、どこそこのクラブにいた女の子は六本木で働いているとか、あの店でチーママやってた女は今は代議士の妾だよ、などという色々な情報が入って来るものだ。
数多くの店に出入りしている為、あっちこっちからそんな情報が入って来るのだ。
しかし、メイサの情報は全く掴めなかった。
あれだけ銀座では有名なホステスだったのに、ここまで噂が流れないという事は、もしかしたらメイサは水商売からキッパリと足を洗ったのかも知れない。
ビルの三階にあるキャバクラにビールを運んだ僕は、空のビールケースをカチャカチャと鳴らしながら歩道に出ると、目の前を脚の長いイイ女が甘い香水を撒き散らしながらスッと横切り、危うく追突しそうになった。
女はカツコツと鳴らしていたヒールを一瞬止め、キッと僕を睨む。
きっとどこかのクラブの女だろう、頭の先から爪先まで完全に商売モードだ。
「すみません・・・・」
すかさず僕が謝ると、女はチラッと僕の腰に巻いていた『菊正宗』の埃だらけの前掛けに目をやり、一瞬、汚い物でも見るかのような嫌な目付きをすると、そのままフン!と無言で去って行った。
イイ女だった。まさに銀座の蝶だ。
あんなイイ女、時給800円の僕には高嶺の花だよな・・・・
そう思いながらその女の隙のない後ろ姿を見ていると、その女から発せられるムンムンとした甘い香水の香りが風に乗って漂って来た。
その甘い香りに、ふいにメイサを思い出す。
あれがメイサだったら、「あらっ」といつものように小さな顔を傾げ、こんな薄汚い僕にでも優しく微笑んでくれるはずだ。
メイサは優しい女だったな・・・・
そんな感傷に耽りながら、僕は空のビールケースを軽トラックの荷台にガシャン!と置いた。
そして新しいビールケースを手にしようとしたその時、ふいに僕の背後から「あらっ」という声が聞こえた。
一瞬、メイサの笑顔が僕の脳裏にパッと浮かび上がる。
下唇を噛みしめながらゆっくりと後を振り向くと、そこにはキリリッと帯を締めた着物姿のホステスが、歩道の隅の花屋の店員と話しているのが見えた。
銀座の生温かい風に吹かれながら、苦笑する僕はふいに泣き出しそうになった。
そんな感傷を掻き消すように、再び「よいしょっと!」という掛け声を掛けてビールケースを荷台から下ろした。カチャカチャっとビール瓶の音を立てながら華やかな銀座の歩道を進む。
銀座の女というのは、1度この世界から足を洗うと、もう銀座には帰って来ないと言われている。
それだけプライドが高いという事らしい。
僕はそんなプライドの高い女達に「はい、どいてぇ、危ないよぉ」と声を掛けながら、今日もカチャカチャとビール瓶を鳴らしながら歩道を歩く。
いや、明日も明後日も、ずっとずっと歩き続ける。
そう、いつかきっと「あらっ」とメイサが僕に声を掛けてくれるのを夢見ながら、僕は銀座の歩道をひたすら歩き続ける。
(銀座の変な物語・完)
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