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工場娘の匂い1

2011/04/01 Fri 10:45

    工場娘の匂い1



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 貪よりとした暗い町だった。昭和時代の古い看板を掲げる商店街は全体的に埃っぽく、半分以上の店はシャッターが下り、そこには『貸店舗』という不動産屋の看板がズラリと並んでいた。
 そんなゴーストタウンのような商店街を抜け、映画のセットのような古い小さな駅の裏手に行くと、そこにはただひたすらに巨大な工場群が威圧的に並んでいる。
 金石はそんな工場群の中にポツンとあるコンビニの、斜め前にある埃だらけのバス停に車を止めた。
 時計を見ると四時四十五分。
 そろそろ獣たちが工場から出て来る頃だった。

 金石真二は都内の広告代理店に勤める四十八才。給料もそこそこ良く、去年は念願の企画部長にまで昇進した。二つ歳下の妻は近所でも評判の器量良しで、三人の子供は元気で素直で金石の事を心から尊敬している。毛並みの良いゴールデンレトリバーが走り回る庭付き一戸建てのマイホームもそろそろローンが終わる頃で、それが終わったら、老後の事を考えて鎌倉に小さな別荘でもひとつ欲しいね、などと妻と話し合う金石は、仕事と家庭においては幸せを絵に書いたような男だった。

 しかし、そんな金石にも問題があった。
 それは金石の異常なる性癖である。
 金石は子供の頃から匂いフェチだった。もちろん、自分が匂いフェチだという事を知ったのは大人になってからだが、しかし、その異常性癖の兆候は彼が子供の頃から既に芽生えていた。
 彼が女の匂いというものに性的な興奮を覚えたのは、まだ金石が中学二年の頃だった。
 ある日、風邪気味だった金石は体育授業のプールを休み、校舎の窓から聞こえて来る生徒達の楽しそうな笑い声を聞きながら、一人教室で黙々と漢字の書き取りをしていた。
 そんな金石は、ふいに、教室の机の上に畳んである女子達の衣類が気になって仕方なくなる。そして遂にこっそり女子の衣類を物色してしまったのだ。
 机の上の制服の中に手を突っ込み、畳んである制服が崩れないよう慎重に弄りながら下着だけを上手に取り出した。ほとんどの女生徒の下着は白だった。それを広げて裏返し、その白い布地に付着している黄色いシミを見ては、金石は自分だけがその女生徒の秘密を知っているんだという優越感に浸っていたのだった。
 それが癖になった金石は、その後のプールは毎回欠席し女生徒の下着を物色した。
 夏休みに入ると益々エスカレートした金石は、学校のプールにやって来た女生徒達が衣類を脱いでいる体育館へと忍び込み、女生徒達のビーチバッグの中を漁った。
 ある時、そんな金石は、三年生のビーチバッグの中から白と青のボーダー柄のパンティーを発見した。
それは、手の平の中にすっぽりと収まるほどの小さなパンティーで、今までに白い大きなパンツしか見た事の無かった金石は強烈な衝撃を受けた。
 金石は迷う事無くそれをポケットの中に押し込んだ。そしてバッグに書いてある三年A組笠井恵子という名前を頭に叩き込んだのだった。
 家に持ち帰り、さっそくパンティーを広げて見た。パンティーの裏側には、まるで筆でシュッと殴り書きされたような一本線のシミが付着し、それは卵焼きのような色をしていた。

 金石はその黄色いシミに恐る恐る鼻を近づけてみる。今までの金石は見る事だけを楽しみとしており、それを嗅いだり舐めたり、ましてそれを見て自慰に耽ることなど一度もなかった。それまでの彼は、ただ女生徒の秘密を知ったと言う優越感だけで満足していたのだ。
 二センチほどの黄色いシミに鼻先をあててはクンクンと嗅いだ金石は、そのあまりの臭さに「うわっ!」と仰け反り、おもわずそのパンティーを壁に投げつけてしまった。

(まるで・・父さんがいつも晩酌で食べているスルメイカのようなニオイだ・・・)

 それで興醒めしてしまうのが正常な男子だが、しかし金石は違った。
 あまりの臭さにびっくりして投げ捨ててしまったものの、しかしその鼻がひん曲がるような強烈な臭いをもう一度嗅ぎたいと思い始めた金石は、本棚の下で丸まっているそのパンティーを再び手にすると、そのなんともいえない不潔なニオイをクンクンと嗅ぎながらオナニーしたのだった。
 それからの金石は、女生徒の下着だけでなく、体操服や上履きやリコーダーといった物にまで見境無く手を出すようになった。
 その癖は高校や大学でも治らず、今の会社に入社してからもまだ続いていた。
 会社の女子トイレに潜入しては汚物入れを漁り、誰の物かもわからないオリモノシートを平気で舐めたりする。
 ある時など、残業でひとり会社に残った金石は、同じ部の事務員をしている中川貴子の机を物色し、その机の引き出しの奥に隠すように保管してあった新品のオリモノシートを見つけ出すと、それをひとつひとつ袋の上からシャープペンの芯をプツっと突き刺した。薄いビニールの袋にほんの少しだけ穴が空き、その中の白いオリモノシートにはシャープペンで微かな印が付いていた。これで、そのオリモノシートが中川貴子の物だとわかると微笑んだ金石は、次の日から、中川貴子がトイレに行く度にソワソワとしながら後を付け、中川貴子がどの個室に入ったかを確認すると、その日の夜にはその個室から汚物入れごと盗み出し、その中でジメッと萎れている印付きのオリモノシートを発見したのだった。
 翌日金石は、手の平の中に隠し持っているオリモノシートのニオイをこっそりと嗅ぎながら中川貴子を見つめた。

(あんなに綺麗な顔をしているのにアソコは腐った魚のようなニオイだ・・・・)

 そんな事を思いながら中川貴子を見つめ、時にはわざとらしく中川貴子に話し掛けたりしながら、金石はその中川貴子の秘密を自分だけが知っているんだと言う優越感に浸ってはムンムンと欲情していたのだった。

 そんな金石の異常な性癖は、当然、結婚してからも治らなかった。いや、逆に結婚して子供が出来てからのほうがその性癖は悪化していた。というのは、今まで独身だった金石には、その行為が見つかったら見つかった時だ、という捨て身の覚悟があったが、しかし妻や子供ができて生活が安定して来ると、もしその行為が見つかったら自分だけでなく家族の人生もおしまいだ、という恐怖に駆られ畏縮してしまったのだ。
 こうなると、今までのように女子トイレに潜入したり、団地の物干し竿から下着を盗むことが怖くて出来なくなった。しかし、たとえ金石の性格が変わったとしても、その異常なる性癖は素直に治まってくれるわけがなく、夜な夜な妻の下着やオリモノシートをこっそり盗み出し、そして、風俗嬢のソレまでも高い金を出して買っていた。
 しかし、いつも同じ匂いを発する妻のブツにはいい加減飽きがきた。又、出会い系や風俗嬢といったいわゆる玄人から仕入れるブツには全くリアリティーがなく、金さえ出せばすぐに手に入るそれらのブツにはなんの感動も感じられなかった。
 そんな金石はストレスの塊だった。家庭も仕事も上手く行っており、まして念願の企画部長の椅子まで手に入れたというのに、金石は満たされていなかった。

 そんなある日、金石はひょんな事から『希望』を手に入れた。
 それは、ある田舎町に出張した時の事だった。駅前のビジネスホテルに泊まった金石は、就寝前にマッサージを頼んだのだが、その時、部屋に来てくれたマッサージの女性が、なんともいえず金石の性癖をくすぐった。
 その女性は三十半ばの所謂おばさんだった。しかしおばさんではあったが、その素朴な口調や控えめな仕草がどこか妙に艶かしく、都会の女しか知らない金石にはそんな田舎のおばさんの雰囲気がとても新鮮に見えた。
 そんな金石は、腰をユサユサとマッサージされながら、こんな田舎のおばさんのアソコの匂いはどんな匂いがするんだろうなどと妄想していると、不覚にも勃起した。
 運悪くも、勃起が最高潮に達している時に「では仰向けになって下さい」と言われた金石は、自分の下半身でゴリゴリしているそれを彼女に見せてみたいと言う衝動に駆られた。
 そう思いながらも、それはちょっとマズいんじゃないか・・・などと自分に言い聞かせるが、しかしおばさんから「どうぞ」と催促されると、覚悟を決めた金石はウルウルと興奮しながらゆっくりと仰向けになったのだった。
 はだけた浴衣の股間には、トランクスの中で歪に折り曲がったペニスがこれ見よがしに膨らんでいた。
 金石は恥ずかしさと罪悪感に包まれながらも、心の中で「自然現象なんだから仕方がないじゃないかキミ!」と何度も叫び、真っ赤な顔をして目を綴じていた。
 当然、その股間の膨らみはマッサージのおばさんにも見えているはずだ。しかし、おばさんは何も言わない。これが東京辺りの風俗なら「あらあら、元気ですねぇ」などと股間を弄って来るものだが、しかしこのおばさんはまったくの無視だ。
 そんな沈黙の中、淡々とマッサージは進められて行き、そして遂におばさんの手が金石の太ももへと伸びて来た。
(マズいぞ・・・・)
 そう思いながら金石は、薄目を開けてソッとおばさんを見た。
 はだけた浴衣から剥き出しになった金石の太ももを揉んでいるおばさんは、真っ赤な顔をしながらも金石のトランクスの股間と目を閉じている金石の顔を交互に見ていた。金石が目を閉じているのを確認しては股間を覗き込み、そしてまた金石の顔を確認してはまた股間を覗き込む。おばさんは顔を真っ赤にさせながらそれを繰り返していたのだ。
 そんなおばさんの生々しいイヤらしさにとたんに興奮した金石は、そのままワザとらしく小さな寝息を立ててみた。嘘の寝息を立てながらソッと薄目を開け、おばさんの様子を伺っていたのだ。
 そんなおばさんは、金石が寝息を立てると同時に急に大胆になったようだった。ソワソワしながらも金石の股間に顔を近づけて凝視しているのだ。
 金石には、そんなソワソワしているおばさんの気持ちが痛い程わかる。だから金石は、そんなおばさんの姿に感情移入し強烈に欲情したのだ。

 おばさんはそんな金石に気付かないまま、股間をチラチラしながら淡々とマッサージを続けた。そして脹ら脛を揉みながらゆっくりと下へ進み、最後の足の裏をグイグイと揉み終えた後、もう一度金石の寝顔を静かに覗き込んだ。そして、金石がまだ寝息を立てているのを確認すると、さりげなく金石の股間をムンズっと握ったのだった。
 おばさんはペニスの固さを確かめるかのようにソレをひと握りすると、すぐにその手をサッと離した。そして何事も無かったかのように、「はい、ありがとうございました・・・」っと寝たふりをしている金石を起こし、そそくさとマッサージ料を受け取ると、さっさと部屋を出て行ったのだった。
 これには今までにない興奮を感じた。
 おばさんが部屋を出て行くなり、ベッドに横になった金石は急いで全裸になった。既にペニスからは大量の我慢汁が溢れ出しており、トランクスにもソレがジンワリと染み込んでいた。金石は自分のシミ付きトランクスを見つめながら、あのおばさんはこのシミを凝視していたんだろうと思い、激しい妄想に駆り立てられながらペニスを激しくシゴいた。
 おばさんのあのソワソワとした仕草と、股間をジロジロと凝視していたいやらしい目。それらを鮮明に思い出しながら、あのおばさんのアソコは確実に濡れていた、と勝手に想像し、同時に、そんなおばさんのその時のクロッチの状態なども悶々と妄想しながら、大量の精液を腹の上に撒き散らしたのだった。

 それが金石の、新たに見出した『希望』である。
 そう、金石はその日以来、『田舎女』という、素朴で純情でそしてむっつりスケベな女に激しい性欲を感じるようになったのだ。
 田舎女とヤリたい。アイラインの引き方も知らないような、ブランドのバッグのひとつも持っていないような、いつも靴下に毛玉を付けているような、そんな垢抜けないスケベ女と獣のようなセックスがして見たい。
 そんな希望を胸に抱いた金石は、さっそく企画会議で「地方戦略」などというデタラメな企画を打ち出した。そして、企画部長自ら地方に乗込む!などとインチキな意気込みを部下達に見せつけては、寂れた田舎町へと繰り出し、片っ端から田舎女達を喰い漁っていたのだった。


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 工場前、四時五十分。
 地味な格好をした労働者達がゾロゾロと工場の裏門から出て来た。
 全体的に、黒、茶、グレーの集団のその表情は、まるで強制労働を終えた囚人のように貪よりと暗い。たまに場違いな金髪少年や茶髪少女も交じっているが、しかしいくら髪を染めようともその薄暗い表情は隠しきれていなかった。

 その町は、わずか人口六万足らずのちっぽけな町だった。
 すぐ隣町は漁業で栄える港町だったが、しかしこの町は海にも面しておらず、産業もなければ観光もないという、まるで陸の孤島のような寂れた町だった。
 そんな、虫の息だった陸の孤島がトドメを刺された。隣町との境に巨大なショッピングモールが出来たからだ。その外資系のショッピングモールの登場により、その町の唯一の商店街がたちまちシャッター通りと化すと、町に灯るネオンはレンタルDVDショップとパチンコ店とラブホテルだけになってしまい、あとは二十四時間フル稼働している工場とコンビニだけが寒々と輝いているだけだった。
 そんな町の人々は、ただただひたすらに生きる為だけを目的としているだけのような質素な生活をしていた。娯楽と言えば、酒かDVDかパチンコか不倫くらいで他には何もすることがない。
 当然の如く、若者達はそんな町から次々に去って行った。マクドナルドが一店もないこの町で、一生を終えて行くというのは、今の若者達にとってはあまりにも残酷過ぎるのだ。
 しかし、そうやって簡単に町を捨てられる若者達ばかりではなかった。この町には、家庭の事情から町を出られない若者も多く、そんな若者達は高校を卒業すると同時に、駅裏に群れをなす巨大な工場へと働きに行くしかなかったのだった。
 そこが金石の狙いだった。
 過疎化した田舎の工場で、何の楽しみもないままただただ毎日ひたすらベルトコンベアーに向かっている地味な若い女たち。そんな女達ならば、多少の金やちっぽけな娯楽で簡単に落ちるだろうと予想した金石は、片っ端から田舎女を誘いまくり、そして予想通りすんなりと目的を告げていた。
 当然、金石はそんな女達にクオリティーは求めていなかった。いや、この場合、逆に綺麗だったり垢抜けていたりされては困るのだ。
 そう、金石がそこに求めているのは垢抜けない田舎女なのだ。化粧気もなく汚れた作業服を身に纏いながらも、しかし、その胸の奥には貪欲を極めた性欲を密かに隠し持っているそんな田舎女を金石は求めているのである。
 そんな田舎女達の心理を巧みに操る金石は、寂れた田舎町の垢抜けない田舎女達を次々と開発していった。

 この町に3日滞在している金石は、既に三人の女と関係していた。
 三人ともいずれも工場で働く女だ。
 ひとりはプラスチック工場で働く23才の小柄な女で、コンビニで声を掛けたらすぐに車に乗って来た。
 もうひとりは製紙工場で働く43才の人妻。夜勤明けの朝方を狙って声を掛け、1万円であっさり股を開いた。そして昨夜の女は、同じ製紙工場で働く30才の独身女で、見た目は普通の大人しそうな女だったが、しかしベッドに入るなりいきなり変身し、1時間もペニスをしゃぶり続けたのにはさすがの金石も驚いた。

そんな、この町の女たちの、貪欲な性欲が解き放たれた時に見せるその獣のようなセックスにどっぷりとハマってしまった金石は、3日の滞在予定をもう1日延ばす事にした。
 そしていつものように工場地帯を徘徊し、巨大な電子部品工場を見つけると、そこの裏門前の埃だらけのバス停に車を止めたのだった。

 金石は、車の中で携帯を弄るフリをしながら、歩道を歩く労働者達を静かに物色していた。
 この工場の労働は簡単な手先仕事なのか、全体的に女性が多く妙に若者が少なかった。仕事が楽な分、給料も安いだろうと睨んだ金石は、この工場の女達なら1万円も出せばかなりの変態セックスが楽しめるだろうと予想したが、しかし、この2日間、年増の女ばかりを喰って来た金石は、さすがにあのおばさんたちのブヨブヨに弛んだ贅肉にうんざりきていた。
 ここはババアばかりだな・・・・
 そう思って別の工場へと移動しようとしたその時、ふいに金石の車の横を若い女が通り過ぎて行った。
 その女、いや、その女の子を見た金石のアンテナが急激に働いた。金石は、歩道に溢れる労働者達の中で、その女の子の後ろ姿をしっかりと目に焼き付けると、ゆっくりと車を発進させたのだった。

 灰色の労働者達とその女の子は、巨大な産業道路の端にある埃だらけの歩道を、ゾロゾロと駅に向かって歩いていた。
 駅に先回りした金石は、鉄道員(ぽっぽや)の映画のセットで使われていたような古びた駅の前に車を止め、素早く車から降りるとわざとらしく市内地図の看板を見つめていた。
 駅の裏手から、茶色い線路を次々に渡ってくる労働者の群れが見えた。その群れ約三十人。彼らのその姿はまるでアウシュビッツを彷彿とさせる。
 それまで集団行動していた労働者の群れは、駅にやって来るなり方々へと散らばった。どうやらこの駅の電車は少ないらしく、彼らは電車が来るまでの間はプライベートな時間を過ごすらしい。
 駅のベンチはおばさん達が占領した。その他の暗い顔をした女達もそれぞれ所定の待合い場所があるらしく、馴れた感じで迷う事なく所々へ腰を下ろすと、バッグから単行本など取り出しては読み始めたりしていた。

 例の女の子は、駅から少し離れた場所にある駐輪場の隅で、ひとりポツンと携帯電話を開いていた。
 チャンスだった。あそこならば、お節介なおばさん労働者達に邪魔される事なく彼女をゆっくり口説ける。そう思った金石は、目立たないようジワリジワリと駐輪場に足を向けたのであった。

「こんにちは」
 金石がそう話し掛けると、女の子は携帯に顔を向けたまま目玉だけをジロッと金石に向けた。
 金石は女の子のその真っ白に輝く目を素直に可愛いと思った。
「この町に出張で来てるんだけど・・・どこか魚料理のおいしいお店、教えてくれないかなぁ・・・」
 金石はそう言いながら、駐輪場のコンクリート床に座っていた女の子の目の前にいきなりスッとしゃがみ込んだ。
 これが都内の若者だったら「っせぇな、あっち行けよ!」と途端に追い払われるところだが、しかし田舎女には内気な性格の者が多いため、彼女達を誘う時には少々強引なくらいのほうがいいという事を、金石は経験上よく知っていた。
 そんな積極的な金石に、女の子は「わかんない・・・」っと呟くと、金石を無視するかのように、視線をソッと携帯に戻した。
 そんな女の子を、金石はソッと見下ろしながら品定めをした。
 手の平にすっぽり入ってしまうようなその小顔はかなりの美形だった。
 ほとんど化粧をしていないと思われるその素顔には、眉毛を細く剃った端に、かろうじて眉墨だけが細く書き足されている程度だ。
 ほんのりと栗毛色に染められた長い髪はポニーテールに縛られ、健康そうな白いうなじが艶っぽく伸びていた。
 そのうなじの下は、残念ながら黒いジャンパーで覆われ、その胸を確認する事はできないが、しかし、ピタピタのジーンズを履いたその足はカモシカのように細く、駐輪場のコンクリート床に体育座りしているその尻は、大きくもなく小さくもなく、ただひたすらに丸みを帯びていた。
 そんな丸い尻を眺めながら、いったいどんなパンティーに包まれているのだろうと金石がゴクリと唾を飲み込むと、ふいにその大きな目がジロッと金石を見つめ、女の子は「なんですか?」と怪訝そうな表情をした。

「ねぇ・・・夕食付き合ってくれないかなぁ・・・キミが食べたいもの、なんでも御馳走するから・・・」

「・・・いいです・・・」

 女の子は冷たくそう答えると、尻の下の砂利をジリジリっと音立てながら立ち上がろうとした。
 金石は素早くポケットの中から1万円を取り出した。

「夕食を付き合ってくれるだけでいいんだよ、ね、ただ黙って僕と一緒に座っててくれるだけでいいからさ・・・」

 そう言いながら金石が女の子の小さな手に1万円札を握らせると、女の子は戸惑った表情で「でも・・・」っと呟きながら駅に振り返った。
 駅の周囲には、まるで満州からの引揚者のような暗い顔した労働者達が貪よりと座っていた。
 女の子はそんな仲間達を困った表情で見つめながらも、しかし、その場から立ち去ろうとはしなかったのだった。


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 駅から少し離れた郵便局の角に車を止めた金石は、かなりの上玉を手に入れた悦びにおもわず何度もいやらしい笑みを浮かべながらも、果たして本当に女の子は来るだろうかとソワソワしながら、バックミラーで後の通りをジッと見つめていた。
 工場帰りの美少女。そう思うだけで、金石の股間にズキズキと心地良い衝撃が走る。バックミラーを見つめる金石は、おもわず勃起してしまった肉棒をズボンの上からグリグリと弄りながら、駐輪場の女の子の言葉をもう一度思い出してみた。

(そこの角を曲がった先に郵便局があるから、そこで待ってて下さい)

 その時の女の子の表情は、こんなシーンを工場の誰かに見られたら困ります、という、かなり緊迫した表情をしていた。そんな女の子の様子を察した金石が、すかさず「じゃあ郵便局で待ってるから」と立ち去ろうとすると、女の子は「あっ」と言いながら、慌てて金石に1万円を押し返して来た。
 いくら金石が「前金だから」と言ってそれを渡そうとしても、女の子は無言で左右に首を振り、今にも泣きそうな表情でまた駅に振り返っていた。
 それ以上無理強いしてはと思った金石が「じゃあ必ず来てよ」と1万円を指で摘むと、女の子は黒く汚れたスニーカーをタッタッと鳴らしながら駅に向かって走って行ったのだった。

 本当に来るかなぁ・・・・
 そう思いながら時計を見る。女の子と別れてからまだ3分しか経っていないのに、金石はもう1時間以上もそこにいるような気がしてならなかった。

 そう焦らされている間、金石は、あの女の子をどうやって楽しもうかと妄想していた。
 まず、風呂に入る前に全身の匂いを嗅ぎまくり、労働で汚れた箇所をチロチロと舐めまくるシーンを思い浮かべた。
 いきなりジーンズを下ろしてそこに顔を埋めるのも悪くない。パンティーの上から湿った肛門に鼻を押しあて、パンティーの隙間から蛇のように舌を押し込んでは酷く汚れた膣を味わうのも堪らないだろう。
 そんな妄想を繰り広げながら熱い溜息をついた瞬間、通りの角からひょいと通りに現れた女の子がバックミラーに映った。

(来た・・・・)

 金石の興奮は更に高まった。キョロキョロと後を振り向きながらこっちに向かってやって来る女の子に、ふいに高校時代に付き合っていた女の子と初デートした時の待ち合わせを思い出し、まるで青春時代に戻ったかのような甘い幸福感が金石を包み込んだ。

 女の子はそのまま車を通り過ぎると、少し離れた場所でソッと足を止め、恐る恐る車の中を覗き込んだ。
 金石はそんな女の子に微笑みかけると、すぐに助手席のドアを開けた。
 女の子はそれでもキョロキョロと辺りを窺いながらゆっくりと車に近付き、そして、半開きになった助手席のドアの隙間から滑り込むようにして車内に入って来たのだった。

 車を発進させると、助手席の女の子は、まるで護送される容疑者のように顔を下に向けた。
「誰かに見られるとマズイの?」
 金石がそう聞くと、女の子は「はい・・・」っと呟いた。
「誰?彼氏?」
 ハンドルを握る金石は、バックミラーを元に戻しながら聞いた。
「違う・・・・ここ、田舎だから・・・」
 女の子はそう呟くと、なぜか唇をプチュっと音立てた。
「じゃあ、この辺の店じゃないほうがいいよね・・・で、なに食べたい?」
 そう言いながら、町とは反対方向の道へハンドルを切ると、それが癖なのか、女の子は再び唇をプチュっと音立てると「なんでもいい・・・」っと少し笑ったのだった。

 その町と隣町を結ぶ国道に出ると、やっと女の子は俯いていた顔を少しだけ上げた。
 ハンドルを握る金石の視野に、そんな女の子の小顔が映り、金石は急にドキドキした。
 薄暗い国道の右側に貪よりとした海が見えて来た。
「海だね」っと金石が言うと、女の子は窓に映る薄暗い海をボンヤリと見つめながら、無言でコクンっと頷いた。
「名前・・・なんて言うの?」
 金石はそう聞きながらCDのスイッチを入れた。
「まなみ・・・・」
 女の子がポツリと呟くと、いきなりスピーカーから「ピポポパパン!ピポポパパン!」と舌っ足らずな幼児が歌う童謡が流れ出し、慌てた金石は、次女がお気に入りのそのCDを素早く切り替えた。
 そんな金石の仕草に、まなみは海を見つめたままクスッと笑ったのだった。

 スピーカーから洋楽R&Bが流れ出すと、金石は横目でこっそりまなみの薄汚れたスニーカーを見つめ、そこからチラッと覗いている白い靴下を鼻に押しあてたい衝動に駆られた。
「まなみちゃんはいくつ?」
 まなみの足下からジワジワと視線をあげながら金石が聞くと、「17です・・・」とまなみは素っ気なく答えた。
「高校は行かなかったんだ・・・」
 金石はそう聞きながら、まなみのジーンズの太ももを恐る恐る見つめる。そんなまなみの太ももは、細いながらもムチムチとし、かなりの弾力性が期待できそうだ。
「行ったけど・・・辞めました・・・」
 金石はそれに対し「ふ~ん・・・」っと返事をしながら、ポケットから1万円札を2枚取り出した。
「はい」とそれをまなみに差し出すと、まなみは2万円を見つめながら「えっ?」と戸惑った。

 金石は、今までの経験上、この少女はすぐに落ちると睨んだ。高校を中退した17才の少女が、そんな薄汚れたスニーカーで我慢できるはずがないのだ。
 そう睨んだ金石は、一刻も早く実行に移すべきだと思った。田舎のレストランでのんびりとメシなど喰っている暇はないのだ。

「で、でも・・・・」
 まなみは金石の指に摘まれた2万円を見つめたまま困ったように下唇を噛んでいた。
「いいよ、遠慮しないで・・・」
 金石はそう言いながらソレをまなみの胸元に押し出す。

(恐らく、まなみが働いているあの電子部品工場の給料は、その単純作業とまなみの年齢から考えて10万円そこそこだろう・・・って事は、2万円といえば、彼女の5日分の手当だ・・・・)
 そう考えれば1万円でも十分だと思った金石だったが、しかし東京で薄汚い性病少女たちと援交する事を考えれば、この、汚れの知らない田舎少女に思う存分変態行為ができるというのは2万円でも安いくらいだと金石は心底そう思っていた。

「・・・本当に・・・いいんですか?・・・」
 まなみは恐る恐るお札を指で摘みながらジッと金石の顔を見た。
 その金を彼女が受け取りさえすれば、こっちのものだ。
 そう思った金石は「いいよ・・・」と言いながら素早く札から指を離した。
 そして「ありがとう・・・」っと戸惑いながら呟くまなみに、金石は静かに告げた。

「そのかわり・・・わかってるよね?・・・・」

 車内に沈黙が流れた。スピーカーから流れる安っぽいR&Bが、車内に漂う下品な雰囲気をいっそう引き立てていた。
 しばらくの沈黙の後、コクン・・・っとまなみが頷いた。
 金石はそんなまなみに黙ったまま、昨夜と同じ「シュークリームのお城」という、バブル親父がヤケクソで付けたような名前のラブホテルへと車を走らせたのだった。

(つづく)

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