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    8キング



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 ベッドの上のあずみちゃんはまるで水中の中をプカプカと浮くクリオネのようだった。
 僕はそんなあずみちゃんを正常位でガッシリと抱きしめながら、あずみちゃんの性器の中にズボズボとペニスを入れていた。

「あぁぁぁん・・・・」

 クスリが効いて力の入らないあずみちゃんの小さな身体は、グッタリとしてまるで人形のようだ。しかし、身体はいう事を聞かなくともあずみちゃんのアソコからは次々と愛液が溢れ出し、あずみちゃんの股間に密着する僕の陰毛をヌチャヌチャに糸引かせていた。

 僕はあずみちゃんの小さな肩を抱き、そのスラリと伸びるウナジに顔を押し込んではあずみちゃんの耳元に何度も何度も囁いた。

「好きだよ・・・あずみちゃん・・・ずっとずっと一緒にいよう・・・僕が一生キミを守ってあげる・・・・」

 僕がそう囁く度に、あずみちゃんは恍惚とした表情で僕を見つめ、「うふふふふ・・・」と微笑んでいた。その笑顔はラリっているから笑っているのか、それとも僕の言葉を聞き取った上での笑顔なのかはわからないが、しかしそれがどちらであろうと僕はそうやってあずみちゃんが微笑んでくれれさえすれば嬉しかった。

 そんなセックスは、最初のうちは切ないアイラブユー的なセックスだったが、しかし、本格的にあずみちゃんの意識が朦朧として来ると、次第にそれは変態的なアイラブユーへと変化して来た。
 完全に落ちてしまったあずみちゃんは、もはや僕の愛の囁きを聞くまでもなくグーグーと鼾をかき始めた。そんなあずみちゃんを見たとたん僕の変態性欲にボッと火が付き、興奮した僕はあずみちゃんの小さな体を後ろに向けたり横に向けたりしてあらゆる体位で犯し始めた。

 そうやってグッタリと犯され続けるあずみちゃんの尻はなんともいえずセクシーだった。元々、尻には然程興味のない僕だったがしかしあずみちゃんのその尻は尻フェチじゃなくともググッときてしまうほどの素晴らしいモノだった。
 まずなんといっても形が綺麗だった。それはまさしくバレーボールのように正しく丸く、両サイドの尻筋がその円形を柔らかく保っていた。そんな真ん丸な尻はとにかく弾力性のある尻で、肌触りはマシュマロのように柔らかく、そしてその奥はゴムまりのような筋肉がプリプリとしていた。
 そんなあずみちゃんの美尻を両手の平でガッシリと支えながら、そのワレメの中心にスゴスゴとペニスを出し入れする。それはやはり尻筋が関係しているのか正常位の時よりも格段とシマリが良かった。

 あと、とてもじゃないが普通時では恥ずかしくて出来ないような行為もした。背後から挿入し身体を横に向かせては彼女の腋の下に潜り込んでは彼女の腋の下をベロベロと舐める。毛穴からはジンワリと滲み出るその汗はサラリと塩っぱく、彼女の体内のモノなら何でも舐めたいと思っている僕はそんな塩っぱい腋の汗を舐め尽くし、挙げ句のあてには腋の下の毛穴までもチューチューと吸ってやった。

 そうなれば当然肛門も見逃さなかった。ベッドの上にグタッとうつ伏せに寝転んだ彼女の腹に2枚重ねた枕を押し込み、その強烈な美尻をツン!と天井に向けて突き上げると、その大きく割れた尻肉の谷間にチョコンっと見えるキュッと窄んだ肛門に鼻を近づけた。
 クンクンクン・・・まるで麻薬犬が怪しげな小包を発見した時のように僕の鼻先がマホガニー色したあずみちゃんの小さな肛門を這い回る。正常位で垂れたマン汁のムンムンとした饐えた香りの中にツーンと香ばしいウンコの香りが微かに漂う。そんな可愛い肛門にはポツンと小さな小さなホクロがひとつあった。
 僕は迷う事なくあずみちゃんの肛門を舐めた。そしてそのキュッと窄んだ巾着口に舌先をグリグリと捻り込む。舌はほんの少ししか入らなかったが、しかしもし本当に僕の舌がズッポリと彼女の肛門に入ったのならば僕は迷う事なく彼女の腸にこびり付く便さえも舐め付くしていたであろう。
 背後から肛門を舐め、そしてオマンコの中に指を押し込んではピストンした。あずみちゃんのオマンコはブチュブチュブチュブチュという下品な音をたてては僕の手首にまで愛汁を垂らすほどに感じていた。

 そろそろ我慢の限界だった。

 やはりフィニッシュは正常位でキメたい。そう思った僕がうつぶせのあずみちゃんをゴロリと仰向けにすると、そこで初めて目を覚ましたのかあずみちゃんが僕の目をジッと見つめながら「えっちぃ」と笑った。
 僕は今までの変態行為が全てバレていたのかと内心焦ったが、しかしあずみちゃんのその表情は明るく微笑んでいたためホッと安心する。
 僕はそんなあずみちゃんの美脚を肩に担ぐと、そのままゆっくりと腰を突き込んだ。
「あぁぁん・・・・」
 アゴを天井に向けながらあずみちゃんが喘いだ。やはり、意識がないのと意識があるのとでは感覚が違った。意識があるというのは素晴らしい事なんだと、今更ながら思い知らされた。

「あずみの事・・・ほんろうに好き?・・・」

 あずみちゃんは僕の首に手を回しながらフワフワと囁いた。
「好きだよ・・・死ぬほど好きだ・・・・」
 僕は腰をコキコキと振りながらあずみちゃんの目を見つめてそう答える。
「あずみも好き・・・ねぇキスしてぇ・・・・」
 そう笑うあずみちゃんの口の中に猛烈に舌を捻り込んだ。あずみちゃんは笑ったままの状態でキスをしている為、僕の唇にあずみちゃんの前歯が当たる。

 そんな僕はもちろん中出しするつもりだった。
 もしそれで子供が出来たら出来たで僕は育てるつもりである。そう、あずみちゃんは既に僕のこの愛を完全に受け入れているのだ。今さっき彼女は僕の事を「あずみも好き」と言ってくれたのだ。例えラリってはいても、僕は彼女のこの感情を嘘とは思えないのだ。

 僕はフィニッシュを決めようと腰の動きを早めた。そして、記念すべきフィニッシュの際にはもう一度あずみちゃんの口から「好き」という言葉を聞きながら果てたい、とそう願う僕は、彼女の口からその言葉をもう一度言わせようと、何度も何度も「あずみちゃん好きだよ」という言葉を囁いた。
 激しい腰の動きに合わせ、僕のハァハァと言う荒い息と彼女のアンアンという喘ぎ声が最高潮に達して来た。
(今だ・・・今、もう一度僕の事を好きだと言ってくれ・・・・)
 そう念力を掛けながらガンガンとラストスパートに入った。あずみちゃんは意識を朦朧とさせながらもクスリによって敏感になっている。そんなあずみちゃんが激しく「あん!あん!」と喘ぎながら、遂にその言葉を発した。
「あずみも好き!凄く好き!」
「あぁぁあずみちゃん僕も愛してるよ!あぁぁぁイクよ!」

「あぁぁん!好き!あずみもタッ君の事が好き!」

「・・・・・・・・・・・」
 はぁ?っと思った瞬間、彼女の穴の中で僕のペニスが爆発した。
 強烈な快感が僕を襲うが、しかし僕の感情は別のところを彷徨っている。そう、それはまるでオナニーの射精寸前におもわずテレビから聞こえてきた「♪ケンちゃん♪お肩がこってるの♪プチプチプチプチプチシルマ~♪」という研ナオコと志村けんのCMを聞いてしまった時のような、そんな空しくも果敢ない世界を彷徨うかのように・・・

(タッ君って・・・元彼?・・・・)

 そう呟く僕は、射精の快楽を味わうどころかまるで金縛りに遭ったかのように愕然としながら、作業的に且つ機械的にシュッシュッと大量の精液を射精した。そんな僕に気付いていないあずみちゃんはボンヤリとしたウルウル表情で僕を見つめながら「タッ君・・・」っとダメ押しで呟いたのだった。


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 ベッドの中からぼんやりと見つめている窓には薄らと朝の青い光が映し出されていた。そんな窓の青い光に照らされながら、僕とあずみちゃんは全裸のままベッドで抱き合っていた。
 さっきまでヴィィィヴィィィと鳴り響いていた携帯のバイブ音も今はすっかり身を潜め、部屋には古い冷蔵庫の音だけが谺していた。
 僕はソッとあずみちゃんの寝顔を覗き込んだ。桜貝のような唇を微かに開きスースーと鼻から息を吐きながら完全に熟睡していた。

 そんなあずみちゃんをもう一度抱きしめる。安物のシャンプーの匂いが僕の鼻をくすぐり同時に赤ちゃんのような温もりがあずみちゃんの身体から伝わって来た。
(たとえ元彼と間違えられたってかまわない・・・僕はやっぱり彼女が好きだ・・・・)
 僕はそう思いながら小さな彼女の身体を優しく包み込み静かに目を綴じたのだった。



 車のクラクションの音が聞こえた。
 一瞬僕は、このアパートの前の通りは狭過ぎて車は通れないはずだが・・・と、アパートの前の狭い路地の風景を思い浮かべていた。そら耳か?と暗闇の中でふと思った矢先、遠くの方から救急車の音が聞こえそしてすぐ近くをブオォォォォォっと通り過ぎて行く営業トラックの音が聞こえた。
「はっ!」と一瞬に目が覚めた。
 真っ白な天井にクリスマスツリーに使うような豆電球がポツポツとしょぼく連なっているのが目に飛び込んできた。

(そうだここは渋谷のラブホテルだった!)

 そう気付くなりパッと隣に振り向いた。あずみちゃんの姿はなくシーツがクシャクシャになっているだけだ。
 すかさずそこに手を当ててみるとその部分はまだほんのりとあずみちゃんの体温が残っていた。
 僕はとりあえず「ほっ」と溜息をつき再びゆっくりと天井を見上げた。そして今日からはどうすればいいんだろうかという思いを巡らし、とたんに不安に押し潰されそうになった。

 そうやって天井を見つめながらしばらく考えていたが、しかしよくよく考えるとこの部屋にあずみちゃんの気配がない。
 今まで寝ていた部分に体温が残っていた事から、トイレか若しくはシャワーでも浴びているのかと安心していたが、しかし部屋はひたすらシーンと静まり返り、部屋の前にある廊下から微かに掃除機の音が聞こえて来るだけだった。
 ガバッ!と僕は起き上がった。

「あずみちゃん!」

 どこということはなくただ漠然と部屋に向かってそう叫んだ。
 しばらく耳を澄ますが、しかしあずみちゃんの「ふぁーい」という返事どころか物音ひとつ聞こえて来ない。
 僕はベッドから飛び起きた。そしてトイレのドアを開きバスルームのドアを開きそしてついでにテレビの下の戸棚も開けて見た。
「いない!」
 慌てた僕は急いで服を着始めた。フラフラになりながら服を着る、そして昨夜そこに脱ぎ捨てられていたあずみちゃんのTシャツやミニスカートがない事にふと気付き、とたんに全身の力が抜けた僕はもう泣き出したい心境だった。

(布団が温かかったという事はまだそれほど遠くには行ってないはずだ!)

 僕はそう諦めず、ワイシャツのボタンを開けたまま携帯をポケットに押し込むと、ズボンのベルトの金具をカチカチと閉めながら廊下に飛び出した。

 廊下に出るといきなりヴィィィィィィィィっという掃除機の音が耳に飛び込んできた。僕はワイシャツのボタンを止めながら廊下の端で業務用の巨大掃除機を操る老婆に「すみませーん!」と声を掛けた。老婆は聞こえないのか僕に背中を向けたまま廊下のカーペットに掃除機を走らせている。僕はそんな老婆の小さな肩をトントンっと叩きながら、もう一度耳元で「すみません!」と叫んだ。
 ヴィィィン・・・・・・・・・・
 掃除機のスイッチは止められ、まるでチェーンソウ使用後のような静けさが廊下を包み込んだ。

「ちょっと前に若い女の子が部屋を出て行きませんでしたか?」

「あぁぁ・・・」と老婆は訝しげに僕を見ながら答え、「もう帰られましたよ・・・・」と僕から目を反らすと再び掃除機を始動させようとした。
「あ、あのぅ、それは何分くらい前でしょうか?」
 僕は必死に老婆の顔を覗き込んだ。
 老婆はそんな僕の顔をジロッと見るとすぐに目を反らしフーッと溜息を付いた。そんな老婆の吐いた息が下水道のような匂いを漂わせていた。

「あんた・・・もうやめんさい・・・」
 いきなり老婆はそう呟くと再び僕の目を睨んだ。

「あの娘さん、まだ高校生じゃろ・・・もうやめんさい・・・」

「いえ、そんなんじゃないんです、あのコは病気なんですよ、で、僕は看護士なんですけど、彼女は自殺する恐れがあるんです!、だから・・・」と僕はそこまで言い掛けて、そんなワケをこの老婆に話してどうなるわけでもないとふと思い、僕はそんな老婆を突き飛ばすかのようにして廊下を走り出した。

(まだそれほど遠くに行ってないはずだ!)
 そんな望みをヒシヒシと胸に抱きながらラブホテルを飛び出したのだった。


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 昼の道玄坂はジメッと湿気が漂い全体的に白い光に包まれていた。
 僕はどこをどう探せばいいのかもわからず、とにかく太陽に吠えろの刑事のように路地という路地を走りまくった。しかしあずみちゃんの姿はどこにも見当たらない。

 小さな坂を下りて行くといかにも格式ありそうな古い喫茶店がポツンとあるのが見えた。その恐ろしく古い看板には、いつの時代に書いたものなのか「歌声喫茶」という擦れた文字まで見える。ここら辺でこの時間に店を開いているのはこの喫茶店しかなく、僕はもしかしたらという思いを込めてその「タイガー」という名のその喫茶店の扉を開いた。
 ドアを開くとカランコロンっという昭和チックな鐘の音色が響いた。強烈なコーヒーの香りと共にカウンターに座っていた常連らしき客たちが一斉に僕に振り向く。
「いらっしゃい・・・」
 ゴワッと髭を蓄えた、いかにも「俺のコーヒーは世界一だぜ」と言いそうなマスターらしき人がカウンターの中からチラッと僕を見た。

「あのぅ・・・実は人を探してるんですが・・・」

 そう言いながら一歩店の中に入ると、僕の背後でドアが再び鐘の音色を響かせながらカチッと閉まった。
「どんな人?・・・・」
 マスターらしき人は白いコーヒーカップを真っ白なタオルでクイクイと拭きながら興味なさそうに呟いた。
「あの、まだ若い女の子なんですけど、あの、ピンク色のTシャツを着て、あの、」と、僕が「あの」を連発しながら説明していると、途中で常連らしき男が口を挟んだ。

「凄んごいミニスカのコか?」

 僕はおもわず大きな声で「そうです!」と、その明治の文豪くずれのような男に指を差した。
「さっき店に来たよ。なんかいきなり電話貸してくれってね・・・なんかちょっと様子が変だったよ・・・」
「いつ!いつ!いつですか!」
「うぅん・・・10分ほど前かなぁ・・・」
「で、で、どこに電話してましたか?!」
「そんな事わかるわけないよ・・・ただ、なんか電話しながらメソメソと泣いてたぜ・・・」
 僕はカウンターに身を乗り出した。そしてマスターの顔とその明治の文豪崩れのような常連を交互に見回すと小声で言った。

「あのコ、自殺する恐れがあるんです!お願いします!どこに電話掛けてたのか教えて下さい!」

 僕が必死にそう言うと、マスターは非常に困った顔をして「そんな事言われてもなぁ・・・どこに電話してたかなんてわかるわけないよ・・・」と呟いたが、しかし、いきなり横からヒョイと顔を出した文豪崩れが「リダイヤル押して見たら?」と呟くと、マスターは「あっ、そっか」と言いながらカウンターの奥にあった受話器の子機を僕に渡してくれた。
 さすが明治の文豪だよキミは!と心で叫びながら、僕はその常連客に何度も頭を下げつつマスターから受話器を受け取った。

 受話器の下の方にある「リダイヤル」と書かれたボタンを押すと、受話器の中からブツブツブツ・・・ブツブツブツ・・・っというアナログな音が聞こえて来た。すかさず「プッ!・・プルルルルル・・・・プルルルルル」という呼び出し音が聞こえ、それはわずか2コールで「もしもしあずみ!」という非常に慌てた声が飛び出して来た。

「あ、もしもし、私くし情愛病院で看護士をしております市原と申しますが・・・」
 僕がそう告げると、受話器の向こうからいきなり叫び声が聞こえて来た。

「娘をどこにやったの!今すぐ娘を返してちょうだい!」

 そう、それはあずみちゃんのお母さんだった。
 あずみちゃんのお母さんは既に僕があずみちゃんを病院から連れ出した事を病院から聞かされ知っているようだった。だから市原という名前に激しく反応し、その叫び声は受話器を洩れてはマスターや明治の文豪たちを驚かせた。
「ちょっと落ち着いて下さいお母さん、実はですね、今僕もあずみちゃんとはぐれてしまいまして、それで今あずみちゃんがお宅へ電話した事を知ったものですからこうやってお電話させてもらったんですけど」
「無責任でしょ!無責任すぎるわ!」
 お母さんは受話器が壊れるのではないかと思うくらいに大声で叫ぶ。しかしそれは当然の事だ。
「はい、ですから僕は今責任を持ってお嬢さんを保護しようと必死で探しているんです、で、お嬢さんは電話で何と言ってたのでしょうか?」
 僕がそう聞いたとたん、一瞬受話器の向こうがシーンと静まり返った。僕が「もしもし?」と聞き直してもまだシーンと静まり返ったままだ。そしてしばらくそんな静けさを保った後、お母さんが恐ろしく低い声でポツリと呟いた。

「あのコ、自殺すると言ってました・・・お母さんバイバイって・・・・」

 お母さんがそう呟いた瞬間、受話器から狂ったようなお母さんの泣き声が響き渡った。焦った僕はそのまま電話を切ると、子機をカウンターの上に素早く置き、そして挨拶もせぬまま喫茶店を飛び出した。

「あずみちゃん!ダメだよ死んじゃ!あずみちゃん!」

 僕は狂ったように叫びながら道玄坂の細い路地をあてもなく走り回った。坂道で躓いて転び、放置自転車に体当たりしそこに並ぶ自転車をドミノのように全部倒しては最後尾で寝ていたホームレスに怒鳴られ、そして蕎麦屋の出前バイクに危うく轢かれそうになりながらも出前のざるそばひっくり返し、ざるそばを頭にかぶった出前持ちから「この野郎!」と怒鳴られて、そうドタバタしながら僕はあてもなく道玄坂の路地を走りまくった。

 そしてふと気がつくといつの間にか僕は再び古臭い喫茶店「タイガー」の前に舞い戻って来ていたのだった。

 僕はゼェゼェと激しく咳き込みながら喫茶店の前でドタッとへたった。
 そしてこの見知らぬ町のどこをどう探せばいいのかわからない僕は、最後の手段だ・・・とばかりに携帯電話を取り出した。そう、こうなったら前園さんに応援を求めるしかないと思ったのである。
 僕は「前園さん」の名前がズラリと並んでいる大量の着信履歴の中からナゼか4番目の「前園さん」を選び出し、迷う事無くボタンを押した。
 今ここで前園さんに助けを求めればどうなるかは火を見るより明らかだ。しかしあずみちゃんが自殺してしまってからでは取り返しがつかないのだ。だから僕は背に腹は変えられないと、せっかく逃げ出したにもかかわらず前園さんに応援を求める事に決めたのだ。

 前園さんは余程僕の電話を待っていたとみえ、ワンコールするまでもなくいきなり「もしもし!今どこにいるんだ!」と慌てて電話口に出た。
「・・・すみません、今、渋谷です」
「渋谷のどこ?!」
「実は・・・」
 僕は前園さんに全ての事情を話した。あずみちゃんが行方不明になった事や、ついさっき母親に自殺予告の電話をしていた事などを前園さんに告げると、前園さんは「マズいぞマズいぞ」を連発しながらも「今すぐみんなでそっちに向かうから!」と、電話を切ろうとした。
 僕は電話を切ろうとする前園さんをすかさず呼び止めた。
「あの!・・・・」
「・・・・なに?」
「・・・僕達が渋谷にいることを中村の組織の者たちには・・・内緒にしてもらえないでしょうか・・・・」
 僕は、前園自身が中村の組織の一員だという事を知りながらも図々しく前園さんにそうお願いした。僕なんてどうなってもかまわないが、しかしなんとしてもあずみちゃんを中村の組織の者たちの手に渡したくはなかったのだ。
 すると前園さんはそんな僕に静かに答えた。

「もう遅いよ・・・渋谷には中村の組織のヤツラがウジャウジャだよ。ヤツラ、キミ達を必死に探してるよ・・・」

 前園さんは残念そうにそう言うと、「とにかくキミはそのタイガーという喫茶店で待ってなさい、絶対にどこにも行くんじゃないぞ」と慌てて言い電話を切ったのだった。

 僕が携帯をパタンと閉じた瞬間、店の前でへたり込んでいる僕の頭上でカランコロンっという鐘の音が鳴った。なにげなく見上げるとそこには明治の文豪が立っていた。

「あのよぅ・・・余計なお世話かも知れネェけどよぅ・・・ここらで自殺するってヤツぁ、大概、ビルの屋上に登るもんだぜ・・・屋上、探してみたか?」

 文豪はそう言いながら道路でへたっている僕の顔を覗き込み、そしてゆっくりと空を見上げた。

「もし俺だったら・・・でっけぇあのビルに行くだろうなぁ・・・・」

 僕はその言葉を聞いて間髪入れずに立ち上がった。

「まぁ、あのビルの屋上にいなかったとしてもよ、あのでっけぇビルだったら渋谷中のビルの屋上が見渡せるってモンよ。だからあのでっけぇビルの屋上から他のビルの屋上を探すってのもひとつの手じゃねぇかなぁ・・・」

 文豪はでっけぇビルを見上げながらそう言った。
 僕は文豪が見上げているそのでっけぇビルに向かって走り出した。そして走りながら振り返る。

「さすがあんたは文豪だ!」

 僕が文豪に向かってそう叫ぶと、文豪はニヤッと笑いながら「俺ぁ床屋だバーロー」と呟いたのだった。


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 ペンシル型のそのビルは大きなショッピングセンターだった。ビルに飛び込むなり僕はまず入口にあった受付へと急いだ。

「すみません、呼出ししてもらえますか!」

 血相抱えたそんな僕に受付のお姉さんは一瞬ギョっ!とした。
「・・・どなたを・・・」
「はい、」と答えた瞬間、僕の記憶の中から一瞬にしてあずみちゃんの名字が消えた。
「あ、あのぅ、あずみって言う女の子なんですが・・・・」
「あずみ様。名字は?」
「・・・いや、あの、ちょっと忘れてしまいまして・・・・」
 受付のお姉さんはとたんに訝しげな顔をした。

「そういったお呼出は受け付けておりませんので・・・」

 受付のお姉さんは僕が悪戯しているのだと思ったのかムスッとした表情でテーブルの上の雑誌をペラペラと捲り始めた。
「いや、違うんです!お願いします!ホント緊急なんです!もしかしたら彼女、このビルで自殺するかも知れないんです!」
 僕が必死にそう頼むと、自殺という言葉が効いたのか受付のお姉さんはフーッと小さな溜息をつくと、もう一度僕に振り向いてくれた。
「あずみ様、ですね・・・ではあなたのお名前は?・・・・」
「いち・・・」と、自分の名前を言おうとして、あずみちゃんが僕の名前を覚えているわけがないとふと思った。聞いたコトのない名前で呼出しされてもあずみちゃんの心は動かないだろう。そこで僕はふと思った。そうだアレだ!と。

「はい、僕の名前はタッ君です!」

 僕がそう答えた瞬間、受付のお姉さんの溜息は明らかに怒りに変わっていた。そして受付のお姉さんはイライラした表情で僕を見つめながら「そういったお呼出は受け付けておりませんので・・・」とまた同じ言葉を繰り返した。

「いや、ちょっと待って下さい、ホントなんです、彼女は自殺するかも知れなくて、それで、とにかくお願いします!そう呼出ししてくれれば彼女の命が助かるんです!」

「ではあなたのお名前をフルネームでおっしゃって下さい」

「いや、だからそのタッ君って・・・」

「タッ君って御自分の名前をクン付けするって変でしょ?」

「それは、その、タッ君っていうのはですね僕じゃないわけでして」

「ではタッ君を呼んできて下さい」

「いや、ですから、そのタッ君というのが、いったいナニモノなのかが僕にもわからないワケでして・・・」

 僕はまるっきりバカだった。
 受付のお姉さんはそんな僕を見つめながらフーっ・・・と再び大きな溜息を付き、「警察を呼びますよ」と静かに僕の目を見た。
 ここでこんなことをしている暇はないと思った僕は、受付のお姉さんに「もう結構です」と告げると、入口の横にあるエレベーターへと慌てて駆け寄り、カチカチカチカチ!と急いで何度もエレベーターのボタンを押した。そして、早くエレベーターよ降りて来い!と祈りながらその場で足踏みしていると、ふと受付のお姉さんとまた目が合った。
 受付のお姉さんはそんな僕をジッと見つめながら、なぜか妙に勝ち誇った表情で唇の端を歪めてはニヤッと微笑んでいた。僕は受付のお姉さんのその勝ち誇った笑顔に一瞬ムカッ!と来た。そしてエレベーターの扉が開くなり、僕は受付のお姉さんに向かって指を差し「あんたの息は変なニオイがする!そのメンマのように臭い溜息を直ちにおヤメなさい!」とロビー中に響き渡るような大声で叫ぶと、そのままエレベーターへと飛び乗ったのだった。

 ビルの最上階へ行くと僕は屋上へと通じる階段を探した。
 あっちこっち走り回りながら探していると、「讃岐うどん」と書かれたうどん屋とファミリーレストラン系の中華料理屋との隙間の細い通路の先に上へ通じる階段があるのを発見した。
 その階段を上ると「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた重圧なドアに突き当たった。そのドアの鍵は開いており、そのドアを開けてみるとそこには渋谷の街が広がっていた。

 僕は屋上に飛び出すと、必死になって「あずみちゃーん!」と叫びまくった。しかしあまりにも風が強過ぎてそんな僕の叫び声も瞬間に消されてしまう。僕は屋上に連なる巨大な給水等やボイラーの隙間を覗きながらそれでも「あずみちゃーん!」と叫びまくった。

 このビルの屋上にはあずみちゃんの姿はなかった。もしかしたら既にあずみちゃんは飛び降りてしまったのかも・・・っと背筋をゾッとさせながら、慌てて屋上の端の高いフェンスに走り寄った。
 僕は迷う事なくそのフェンスをよじ登った。三メートル近くあるそのフェンスに登ると屋上にいる時よりも吹き付ける風の威力は激しく、僕はここで風に吹き飛ばされたらいったいどこの街まで飛んで行くのだろうと考えながら、恐る恐るフェンスの裏側へと到着した。

 フェンスの裏側に降り立ってみて初めて僕はその凄まじさに足が竦んだ。
 ここは16階のビルの屋上。僕がいま立っているフェンスの外側には50センチほどのスペースしかなく、それ以上は奈落の底だ。僕は金網のフェンスに必死にしがみつき、目の前にグワン!と聳え立つ巨大なセルリアンタワーを見つめながらガチガチと震え、そして「マジでコワイ・・・」っと呟いた。

 するといきなり屋上の奥の方でバタン!という音が聞こえた。見ると、警備員らしき男が屋上に出て来てなにやらキョロキョロしている。もしかしたら受け付けのお姉さんが僕の事を通報したのかもしれない。
 警備員は簡単にそこら辺をキョロキョロと見回すと、フェンスの外でガクガクと震えている僕には気付かないまま直ぐにドアの中へと消えて行った。と、その瞬間、警備員が消えて行ったそのドアから不吉な音が僕の耳に飛び込んできた。そうそれは鍵を閉めるカタン!っという音だ。
 しまった!と思った時にはもう遅い。そう、僕は完全にこの猛烈な風が吹き荒む屋上に監禁されてしまったのだった。


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 今にも暴風に吹き飛ばされそうな僕は、金網のフェンスにしがみつきながら、とにかくフェンスの向こう側に行かなければと考えていた。
 しかし、この3メートル近くもある高いフェンスを登る勇気は今の僕にはなかった。そう、内側からフェンスを登る時よりも外側からフェンスを登る時の方が明らかにその怖さは百倍も増すのだ。
 僕は焦りに焦ってもうどうしていいかわからなくなっていた。あずみちゃんの事も心配だがしかしそれよりも今の自分が心配すぎる。
 僕は奥歯をガチガチと音立てながら「落ち着け・・・落ちつけ・・・」と必死で冷静になろうとしていた。

(こんな場合、スティーブ・マックィーンだったらどうする・・・こんな時、ブルース・ウィリスだったらどう切り抜ける・・・・)

 フェンスに捕まりながらそんな事を考えていたら、ふいに「上るのが怖いのなら下りればいいんだよ」と誰かが僕に囁いた。僕はそんな心の声を聞きながら、そう言えば子供の頃、どうして山の遭難事故が起きるのか不思議に思った事をふと思い出した。そう、山で迷子になったならとにかく山を下りればいいのだと子供の頃の僕はそう思っており、山登り達が山で遭難したニュースを見る度にいつも「こいつらバカだなぁ」と思っていたのだ。

「下りる・・・・」

 僕はそう呟きながら、恐る恐る50センチ先の奈落の底を覗き込もうとした。そう、もしかしたらどこかに非常階段的な脱出設備があるかもしれないという願いを込めて・・・。

 右手で金網をしっかりと握りしめながらジワリジワリと身体をビルの先端へと移動させた。左手で最先端にあるコンクリートブロックを掴み、そのままソロリソロリとビルの底を覗き込んだ。
 ビルの下にはまるでグーグルマップの航空写真のような“上から目線”の町並が広がっていた。確かに、文豪が言っていたようにここからなら近隣のビルの屋上が手に取るように見渡す事が出来る。しかし文豪。嗚呼文豪。おまえはいとも簡単な事のようにさらりと言っていたが、しかしここがどれだけおっかない場所なのか知っていたのか文豪よ。

 僕は、こんな所に非常階段などあった所でどうやって下りるんだ馬鹿野郎、と呟くと再び恐る恐る安全地帯の金網へと戻ろうとしたその瞬間、なにやら生々しい叫び声が風に乗って僕の耳に飛び込んできた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」

 その声は紛れもなくあずみちゃんの声だった。しかもその声はやたらと近い。
 僕はもしかしたらこのビルの隣のビルの屋上にあずみちゃんがいるのではないかという予感が胸を過り、僕は意を決して更に深くビルの底を覗いて見る事にした。

「やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」

 最先端のコンクリートブロックを恐る恐る覗き込むと、再びあずみちゃんの叫び声が聞こえて来た。間違いない、あずみちゃんは絶対に隣のビルの屋上にいる。
 今僕が金網にぶら下がっているビルと隣のビルの屋上とは建物4階分ほどの落差があった。だから隣の屋上は隅々まで見渡す事ができるのだが、しかし肝心のあずみちゃんの姿は見当たらない。
 僕はそんな隣のビルの屋上を見渡しながら(空耳か?・・・)と、思った矢先、隣のビルの屋上の隅にある巨大なエアコンの室外機の隙間に、あずみちゃんの物だと思われるピンクのTシャツがヒラヒラと風に靡いているのが見えた。

(やっぱりあずみちゃんだ!)

 焦った僕は、エサをねだるチンパンジーのように金網にガシガシとしがみつきながら、室外機の隙間が見下ろせる場所へと急いで移動した。
 室外機の頭上へ近付くにつれ、状況が読み込めて来た。そう、飛び降り自殺をしようとこの屋上へやって来たあずみちゃんは、そこを何者かに捕まり、そして室外機の隙間に連れ込まれては乱暴されているのだ。
(糞っ!これじゃ万事休すじやないか!)
 僕はやっとあずみちゃんを発見したという悦びと、今まさに自分の目の前であずみちゃんが乱暴されそうになっているという恐怖とが入り乱れ、なんとも複雑な気分になりながら金網をガシガシ言わせては室外機の頭上へと急いだのだった。

 室外機の真上に来ると、その全貌が明らかになった。
 室外機と室外機に挟まれた狭いスペースに押し潰された段ボールが敷き詰められ、その上に全裸にされたあずみちゃんが男達に押さえ込まれていた。既に男の1人はあずみちゃんの股間で腰を激しく振っており、もはや強姦されているのは紛れもない事実だった。

 男達は3人いた。3人とも恐ろしく体格のいいゴツい男達ばかりで、そんな屈強な男達に弄ばれる小さなあずみちゃんは、まるで熊の檻に放たれた子鹿のように無惨な姿を晒していた。

「ヤメろーっ!」

 僕は金網にぶら下がりながら必死で叫んだ。しかし僕のその声は暴風に遮られヤツラの耳には届かない。それでも僕は狂ったように叫びまくり危うく何度もビルから落ちそうにもなったが、しかし、男達は僕の存在に気付く事もなく、あずみちゃんの白い肌を乱暴に弄んでいたのだった。


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 もう僕にはどうする事も出来なかった。例え、この金網フェンスを乗り越え、屋上に出た所でこの屋上のドアの鍵は無情にも閉められてしまっている。だから隣のビルへ救出しに行く事もできないのだ。

「くっそう・・・・・」

 そう思いながら金網を激しく鷲掴みする僕は、しかし、そんなあずみちゃんのレイプシーンをだんだん違う目で見るようになって来ていた。
 そう、僕はこの手も足も出ない地獄の惨状を見せつけられながらも、びっくりするくらいに勃起してしまっていた。いや、確かに悲しい。涙がワンワンと溢れ何度そこから隣のビルの屋上へ飛び込もうと考えたかわからないくらいに悲しかった。しかし、どういうわけか僕の下半身だけは僕の意思に反し抵抗を続けているのである。
「こんな時に何考えてんだよオマエは!」と、勃起する下半身をバシっ!と叩くと、強烈な快感が僕の身体にジーンと走った。

 あずみちゃんは自分の体の3倍はあろうかと思われる大男の下敷きにされながら両足をカエルのように広げられていた。もう1人のデブ男があずみちゃんの唇の中にペニスを押し込み、更にもう1人の男がそれを見ながらセンズリをしていた。
 僕の声は向こう側には届かなかったが、しかし向こう側の声はビルの下から突き上げる風に乗って僕の耳元まで届いて来る。「気持ちいいか?ん?気持ちいいか?」というデブ特有のウスノロな声と、「早く変わってくれよ・・・」っというこれまたデブ特有のレコードを33回転にさせたようなノロマな声が聞こえて来た。
 しかし、そんなデブ声だけならまだ僕も我慢できた。そうレイプする獣たちの声だけならまだ僕も我慢が出来たというものだが、しかしレイプされている側のあずみちゃんの声が聞こえて来るとさすがに僕の我慢も限界に達した。

「あん!あん!あん!あん!あん!あん!あん!あん!あん!あん!」

 あずみちゃんは自分の体の上に乗る巨体が揺れる度にそんな声を張り上げた。その声が感じている声なのかそれとも巨体に圧迫された拍子に自然に出て来た声なのかはわからない。その声がどっちの声なのかを考えると僕の気持ちは複雑に入り乱れた。
 もちろん、あんな豚のようなケダモノ達に犯されて感じているというのは、見ていて非常に辛いものがあるが、しかしこれが、こんな状態でも感じてしまっているというものであるとすれば、それはそれでそんなシチュエーションは変態な僕には堪らないものがあったのだ。

「うひひひひひ、アソコびしょびしょにして感じてるぜこの変態少女」

 下品な豚男の下品な声が渋谷の風に乗って僕の耳を擦り抜けて行く。

(嘘だろ・・・感じてるなんて嘘だろあずみちゃん・・・・)
 そう思いながらも心のどこかでもっと感じろと思う僕。
 そんな複雑な心境の僕の目に、あずみちゃんの股間にヌポヌポとペニスを出し入れしているデブ男が「あぁぁぁ・・・すげぇシマリだぁ・・・・」と目を綴じながら空を見上げたその顔が飛び込んできた。
 僕は一瞬その顔に見覚えがあると身を乗り出した。

(こいつ・・・どっかで見たコトあるぞ・・・・)

 そう思った瞬間、パッ!と僕の脳裏にある光景がフラッシュバックした。
 そう、それは昨夜特Bから脱出する際、中村と一緒に僕達をゲートまで追いかけて来た特Aの看護士。ゲートの鉄格子越しにあずみちゃんの首を絞め、スタンガンをスパークされた中村に脅えながら僕に向かって「知らねぇぞ・・・知らねぇぞ・・・」っと何度も呟いていた・・・そう、あずみちゃんを犯すその男はまさしくあの時の特Aの看護士なのだ。

 それを知った途端に僕の中の性的興奮は怒りの興奮に変わった。あいつらは看護士という仮面をかぶった中村の手下なのだ!ヤツラからあずみちゃんを救い出す為に危険な橋を渡ってまでもここまで逃げ延びて来たというのに、ここでヤツラにあずみちゃんが手篭めにされてしまっては今までの僕の苦労は水の泡なのだ!

「おい、中出ししちゃってもいいよな・・・」

 巨大な腹をタプタプさせながらあずみちゃんの股間に腰をクイクイと振っている特Aの看護士が、あずみちゃんの口の中にペニスを押し込んではグイグイと腰を振っている胸毛だらけのデブに聞いた。

「いいんじゃねぇの、どうせキチガイ女だし・・・」
 
あずみちゃんの頬を鷲掴みにしながらあずみちゃんの口にペニスをピストンする胸毛のデブがそう笑った。

 瞬間、僕はヤツラに何か投げつける物はないかと辺りを見回した。そしてポケットの中も必死で探るとそこで初めてポケットの中に携帯電話という便利な物が入っている事に気付いた。
「・・・そうか・・・」
 僕は慌てて携帯をパカッ!と開いた。もうそろそろ前園さん達は道玄坂の喫茶店に到着する頃だろう。ならば前園さんにこのビルの屋上に来てもらいあずみちゃんを助け出してもらえばいいのだ。

 僕は急いでリダイヤルのボタンをピッ!と押した。プップップップッ・・・・・。荒れ狂う渋谷の暴風の中で携帯の頼もしい音が僕の耳の奥に伝わって来る。今の僕にはもう前園さんしか頼る人はいないのだ・・・・。
 プルルルルルルルルル・・・・っと耳の奥で携帯の呼出し音が鳴り響くと、それと同時にピリリリリリリリリ!っという携帯の着信音が僕の耳の外で聞こえた。
「えっ?」と、僕が思った瞬間、「もしもし」っという、携帯の中からと外からの音声多重な声が聞こえた。
「はっ!」と僕が顔を上げると、看護士達があずみちゃんを強姦している室外機の隣の室外機の隙間に、前園さんが携帯電話を耳に当てて立っているのが見えた。

「あぁ、市原さん、今もうすぐ渋谷に着くから、もうしばらくそこの喫茶店で待ってて下さい・・・」

 前園さんの無情な声が渋谷の風に乗って僕の耳をすり抜けて行った。
 無言のまま電話を切った僕は、目の前に広がる賑やかな渋谷の街をボンヤリと見つめた。いっその事、この高いビルからあの華やかな渋谷の街へと飛んでしまいたいと、その時僕は本気でそう思ったのだった。

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