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    7キング



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 そのホテルは道玄坂の数あるラブホテルの中でも最も古くて下品だった。
 どうしてそのラブホに入ったかと言うと、ホテル街を歩いていたあずみちゃんが何の前触れも無くいきなり「ココ!」とそのラブホテルを指差したからである。
 その理由はわからない。理由を聞いてもきっと理解できないだろう。だってその時のあずみちゃんは完全にソウ状態だったなのだ・・・。

 部屋に入るなり、いきなりあずみちゃんは日清やきそばUFOのカップのような形をした丸いベッドの上に飛び乗った。そして「きゃっ!きゃっ!」と笑いながらトランポリンの如くベッドの上を飛び跳ねた。
 僕はそんなハイテンションなあずみちゃんを見て不安を覚えていた。そう、躁鬱病というのはソウの次にハイが来てハイの次にソウが来る。それはまるで水戸黄門のオープニング曲のようなのである。

 そんなあずみちゃんはひとしきりトランポリンを楽しむと、疲れたのか今度はぐったりとベッドに倒れ込み何故かアンパンマンの歌を口ずさみ始めた。僕はいかにも新宿のフィリピンパブにありそうなチンチラ張りのソファーに腰掛けながらそんなあずみちゃんを見つめてはいつ訪れるかも知れぬウツに脅えていたのだった。

(逃げ出したのはいいが・・・これからどうしよう・・・)

 僕はそんな不安に襲われながらもぼんやりと深夜のお笑い番組を眺めていた。今、病院がどんな状態になっているかも気になる。鏡嶋主任の真っ青になった顔が頭を過り、片目を無くした中村の怒りが手に取るようにわかる。そして七号室に閉じ込められた前園さんは今頃・・・・・

 そう思った時、ふいに僕の携帯のバイブ音が鳴り出した。
 瞬時に前園さんの顔が浮かぶ。そう、僕の携帯番号を知っているのは前園さんだけなのだ。
 僕はそんな携帯をポケットから出す事も無く無視した。今は何も話せる立場ではない。
 するとベッドで寝転がっていたあずみちゃんがムクリと起き出し、丸いベッドからチンチラ張りのソファーへと「えいっ!」とジャンプして来た。

「電話だよ?」

 あずみちゃんは僕の隣にちょこんと着地すると、小動物のように首を傾げながら僕の顔を見た。
「うん・・・いいんだ、出なくても・・・・」
「彼女?・・・・」
 あずみちゃんは大きな目をクリクリとさせながらニヤリと笑う。
「いや・・・彼女いないから・・・」
「名前なんて言うの?」
「・・・だから、彼女はいないって・・・」
「違うよ、あんたの名前」
「あぁ僕?・・・僕は市原・・・」
「市原なんていうの?」
「・・・壱男・・・・」
「イチハライチオ?・・・・」

 あずみちゃんは不思議そうに僕の名前を二回繰り返した。いや、確かに僕の名前は変だがこれでも一応本名だ。僕は小学生の頃までは田辺壱男だったのだが、しかし中学になると母親が市原という人と再婚しこんな名前になってしまった。おかげで高校時代の僕のアダナは「ピンピン」。イチがピンと呼ばれ2つ並んでピンピン・・・。

「じゃあイチイチだね」

 あずみちゃんはそう言いながらふふふっと笑った。そして僕の顔を覗き込みながら「イチイチ・・・」っと囁き、勝手に「きゃはっ!」と笑った。
 まぁ、ピンピンよりはイチイチのほうがマシだが・・・・それよりも、さっきから僕の目の前にはあずみちゃんのパンツがチラ付き僕は目のやり場に困っているのだ。
 この時代遅れなソファーは妙に狭く2人座るにはキュンキュンだ。そんな狭いスペースにあずみちゃんは小さな尻を無理矢理押し込み体育座りをしているのだから僕がちょっと横を振り向けばそこにはあずみちゃんのプックリと膨らんだ股間が見えるのである。

 それに・・・この密着度も堪らなかった。僕の右足の太ももにはあずみちゃんの体育座りする股間が密着している。しかも僕の太ももにあたるあずみちゃんのその部分は妙に熱い。その熱は体育座りするあずみちゃんの太ももの裏の体温なのかそれともプックリと盛上がっている股間の体温なのかそこまではわからないが、しかしとにかく僕の右太ももにあたっているあずみちゃんのその部分は熱かった。
 そんなあずみちゃんの怪しい体温を感じながら不意にムラムラと襲いかかる感情に溜息を漏らしていると、いきなりあずみちゃんが僕に聞いた。

「イチイチはどうして彼女いないの?」

 難しい質問である。「見ればわかるだろ」と正直に言えばそれまでだが、しかしそれではあまりにも自分が可哀想すぎる。かといって「仕事が忙しくて彼女を作る暇がなかったんだ」と言うのも言い訳がましくて自分が情けなくなる。だからこの場合「どうしてかなぁ・・・」っととぼけるしか答えはないのだ。そうやってとぼけておいてから、すかさず「あずみちゃんは彼氏いるの?」と話題を変える。これがモテない男がこの質問に答える時のマニュアルだ。
 するとあずみちゃんは少し表情を曇らせながら「うん・・・この間までいたんだけど・・・もう別れちゃった」と答えた。僕はそんなあずみちゃんの答えを聞きながら、そっかその手があったのか・・・と感心し、今度からそんな質問のときはそう答えようと僕のマニュアルにその言葉を加えたのだった。
 僕はポケットの中で鳴り止まない携帯を手の平で押えながら、そう答えるあずみちゃんに「どうして別れちゃったの?」となにげなく尋ねた。
 そう尋ねてからテーブルの上に置いてあったサービスの「オレンジキャンディー」の袋をピリリと破き、そのゼリーのようにオレンジに輝くアメ玉をあずみちゃんにあげようと隣に振り向いた瞬間、僕は「しまった!」と心の中で叫んだ。

 そう、僕の隣でパンツを丸出しにしながら体育座りしていたあずみちゃんのその表情は完全にウツモードに突入しようとしていたのだ。

 きっとあずみちゃんの度重なる自殺未遂の原因はこの「もう別れちゃった彼氏」が関係しているのであろうと、あずみちゃんのその貪よりと暗い表情を見てすぐにわかった。しかし今さらわかってももう遅い、こう見えても、彼女は精神病院の特別病棟に隔離される危険患者だ。見た目はとっても可愛くてアイドル歌手のようなキュートな女子高生だが、しかし彼女はちょっと感情がズレれば己の肉体を切り刻むほどの陰のパワーを携えている自殺願望者なのだ。そんな患者に対し、絶対のタブーを口にしてしまうなんて・・・・僕は丸っきり看護士失格だ。

 そんな僕は慌てて話題を変えた。

「明日は何が食べたい?何を食べに行く?あっ、そうだディズニーランドに行こうか?うん、それがいい、そうしよう!ホーンテッドマンションおもしろいらしいよ!ね、ね、そうしよう!ディズニーランド行った事ある?」

 僕はバカみたいにはしゃぎながら彼女に聞く。
 すると彼女はゆっくりと視線を下に向けながら「うん・・・タッ君と行った・・・ホーンテッドマンションもタッ君と・・・・」と、決して自殺願望者が入ってはならないという過去の記憶へと入り込んで行く。
 しまった!ディズニーランドは地雷だった!あーどうしよう!このまま彼女がどっぷりとソッチの世界に行ってしまったら僕一人では手に負えなくなるぞ!あーどうしたらいいんだ!・・・・
 と、必死になりながらも「とりあえず、お風呂に入る?」と、パニクった僕はおもいっきり身近なオアシスを指差した。
 すると瞬間にあずみちゃんの表情がパッ!と明るくなった。そして真っ白な前歯を輝かせながら「うん!」と微笑んだ。

 助かった。本当に危ない所だった。一歩間違えば興奮したあずみちゃんはベッドの横にある窓を突き破り6階から渋谷のアスファルトに真っ逆さまになるとこだった。
 ホッと肩を撫で下ろしている僕の前で、御機嫌に鼻歌を歌い始めたあずみちゃんがいきなり服を脱ぎ始めた。
 さっきもスーパーの裏であずみちゃんのヌードを見たが、しかし、こうもハッキリとライトに照らされるあずみちゃんのヌードはスーパーの裏の薄暗くも怪しいヌードとはまた違う健康的なエロスを発散していた。
 パンツ1枚になったあずみちゃんを呆然と見つめていると、あずみちゃんは「えっちぃ!」と叫びながら、まるで小ウサギのようにピョンピョンと飛び跳ねながらバスルームへと消えて行った。そんな僕の股間はカッチリと固くなっていた。そしてその固くなったペニスが今だポケットの中で鳴り止まない携帯のバイブで微妙に刺激され、僕はおもわず「ふふぅ・・・」っと熱く変態な吐息を漏らしてしまったのだった。


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 あずみちゃんが風呂に入っている間、僕はポケットの中からいつも患者に与えている催眠剤を取り出した。
 それはさっき特Bの管理室から盗んできた物だ。
 慌てていた僕は前園さんの目を盗んではとりあえずソレを鷲掴みにしてはポケットに捻り込んでいたため、ソレが何錠あるのかもわからなかった。

 ガラステーブルの上に手の平に握っていたソレをジャラジャラジャラ・・・っと取り出し、ひとつひとつ指でズラしながら錠剤の数を数えた。全部で10錠あった。1日1錠として10日分。この強力睡眠剤は一般の薬局では絶対に手に入らないクスリなだけに計画的に使用しなければならない。だからこの貴重なクスリはあずみちゃんの症状が余程酷い時のみに使用しよう、と、そう決めた時、いきなりそれまで鳴り続けていた携帯のバイブがピタリと止んだ。
 もしかして携帯の充電が切れてしまったのだろうか?と思いながら僕が携帯を取り出す。携帯の充電はまだ大丈夫だった。どうやら前園さんは諦めたらしい。そう思いながら一応着信履歴を見てみると、やっぱり電話は前園さんの携帯からだった。
 前園さんごめんなさい・・・と僕が暗い気持ちで「前園さん携帯」と表示される文字を眺めていると、不意に「ヴィィィィ・・・・」っと携帯が短く震えメールの着信を伝えた。
 僕は無意識のうちにそんなメールを開いた。

《前園です。非常にマズいです。病院は大騒ぎです。しかし院長はマスコミを怖れまだ警察には通報しておりません。院長はキミ達がすぐに戻って来るのであればキミに責任を問わないと言っているのです。ですから戻るなら今しかありません。警察が動けばあなたは逮捕されます。少女誘拐で逮捕されたらあなたの人生は終わりですよ。でも今なら病院内で揉み消す事ができます。今なら助かります。だから早く彼女を連れて戻って来て下さい》

 僕はそんなメールを読みながら前園さんの緊張した表情を思い浮かべていた。前園さんは緊張すると鼻の頭にポツポツと汗を浮かび上がらせやたらと瞬きをする。いつも中村と接している時の前園さんはそんな仕草をしていたのだ。
 しかし・・・戻れと言われても今さら・・・・
 そう落ち込む僕の脳裏に片目の中村の顔がフッと浮かんだ。そして同時に特Aの看護士の「知らねぇぞ、知らねぇぞ」という震える声と、「覚悟してろよ・・・おまえらのその両目、生きたままじっくりとくり抜いてやるからな・・・・」という中村のドスの利いた声がエコー付きで頭の中に甦った。
 とたんに背筋がゾゾっとした。警察に逮捕されるのも嫌だが中村に捕まるのはもっと嫌だ。今ここで病院がこの事件を揉み消してくれて何もなかった事にしてくれたとしても、しかし僕は確実に両目を失う事になるのだ。
 どっちも嫌だよ・・・っとブルブルっと頬を震わすと、再びメールが飛び込んできた。

《市原さん。あなた達は今渋谷にいますよね?タクシーの運転手が中村の手下に情報を漏らしました。市原さん、中村の組織を舐めてはいけません。やつらの情報網はエフビーアイ並です。中村の手下達は今渋谷のラブホテルをシラミ潰しに探そうとしています。もし渋谷のラブホテルにいるのなら今すぐ逃げたほうがいいですよ》

 再び背筋がゾゾゾっとした。そしてあの調子のいいタクシーの運転手にムカッ!としながらも、FBIを「エフビーアイ」とカタカナで打ち込む前園さんに少し笑えた。

 それにしても中村の手下が渋谷のラブホを捜索するというのは本当なのだろうか?・・・もし本当だとしたらこのラブホは非常に危ない。この古臭いラブホのフロントはまるで連れ込み宿の管理人室のように無防備で、八十はゆうに越えているだろうと思われる痴呆気味なお爺ちゃんが手渡しでルームキーを渡してくれるそんなフロントだ。もちろん部屋のドアにはチェーンロックなど付いておらず、管理人室からルームキーを奪えばいとも簡単に押し込まれてしまうのだ。

 ここはマズい!と焦りながらも、しかし、もしこれが前園さんの罠だったらとも考えた。そう、これはこの無数に群がる道玄坂のラブホの中から僕達を外に誘き出す罠かも知れないのだ。これを鵜呑みにして慌ててホテルを飛び出した所を道路で張り込みしている手下達に捕まるという「誘き出し作戦」とも考えられなくはない。
 冷静に考えようとする僕は前園さんの顔をもう一度ゆっくりと思い浮かべてみた。あの人が僕を罠に陥れるような人だろうか・・・・僕の脳裏で鼻の頭に汗粒を無数に浮かべた前園さんが目をパチパチと瞬かせながら「市原さん」とスローモーションで笑った・・・・その瞬間、速攻でこれは罠だと僕は確信したのだった。

 そんな事をしていると、ふいにバスルームの扉が開く音が聞こえて来た。脱衣場からバスタオルで体を拭くバサバサという音が響き、しばらくするとドライヤーの音まで聞こえて来た。
 そんな「風呂上がりの女の仕草音」をふいに聞きつけた僕の頭には、すでに前園さんは消えていた。今の僕の頭の中は、前園さんでもなく中村でもなく警察でもなく、そう、あずみちゃん一色だ。

 僕は今夜こそ本当の意味での童貞喪失が出来る日だと強く思い込んでいた。
 今までの僕の女性経験というのはレイプするかレイプされるかのどちらかであり、しかもレイプする相手というのは全員がクスリで朦朧としている異常者ばかりだ。又、レイプされたというのはお袋ほどに歳の離れた老看護婦に犯されたものであり、そんなレイプされた経験は酒のツマミにもならず尋常とは呼べない。残る女性体験はほとんどが風俗嬢であり、出会い系で知り合った素人もいたにはいたがしかしアレももうほとんど玄人の域に入っている熟練だ。

 そう考えるとあずみちゃんは違う。確かに彼女との出会いは患者と看護士という関係かも知れないがしかし今は違う。そう、僕はさっきのあのマックで2人してマックシェイクを1本のストローで飲んだ時点からあずみちゃんを彼女だと思い込んでいるのだ。

 だから、今夜のあずみちゃんとは事実上僕の童貞喪失と言っても過言ではないだろう。

 そんな思いから、すっかり前園さんの事など忘れてしまった僕は、バスルームの脱衣場の扉がカチャッ・・・と開くなり、まるで2時間行方不明だった迷子の娘に大磯ロングビーチの迷子センターでやっと再会できたようなそんな父親の表情でそこから出て来たあずみちゃんを見た。
 石鹸の匂いがフワッと広がると同時に、半乾きの髪の毛をツヤツヤと輝かせるあずみちゃんがピンクのTシャツに白いパンティーというコケティッシュな姿でビョコンっと現れた。その白いパンティーはさっきここに来る前に僕がコンビニで買ってやった新品のパンティーだ。

 あずみちゃんはクシュクシュと歯磨きをしながら歯ブラシを口に入れたまま僕に「んふっ」と笑いかけ、そして口の中に溢れる真っ白な泡を床にポタッと落とした。そして「あらら」と泡混じりでそう呟きながら床のそれを手でサッと拭い、またしても脱衣場の洗面所に消えて行った。
 そんなあずみちゃんは正真正銘の激カワ女子高生だ。こんな可愛い少女とシラフでデキるのならば僕はもう中村に両目をくり抜かれてもいいとさえ思った。

 あずみちゃんを1人部屋に残し僕も風呂に入る事にした。
 記念すべき童貞喪失である、今夜は特に丹念に包茎の中の白い悪魔たちを抹消しなくてはならないのだ。

 チンチラ張りのソファーに座りながらテーブルの上に置いてあった「大人のおもちゃカタログ」を興味なさそうに見つめていたあずみちゃんは、脱衣場に消えて行く僕に「いってらっしゃーい」と可愛く手を振ってくれた。
 一時は危険だったあずみちゃんの精神状態も大好きな風呂により立ち直った。

 そんな安心気分の僕は、脱衣場で素早く全裸になると洗面所に映る自分の醜い裸体を見つめながら「おまえはトドか!」とツッコミを入れてやる。しかしいつもならそうツッコミを入れた後は自分のその醜くもブヨブヨとした裸体に嫌悪感を感じては激しく落ち込むのだが今日は違った。そう、今夜はいよいよ、いよいよなのだ。
 その悦び溢れる興奮がトドのような僕の体をリズミカルにしてくれる。等身大の鏡の前で胸と腹の脂肪を揺らしながら軽くステップを踏む僕の足下に、ふとなにげなく置いてあった脱衣カゴが目に止まった。そしてその脱衣カゴの中にポイッと自然に放り込まれているハンドタオルの裏に、なんとピンク色した布切れがこっそり隠すように押し込められているのを発見した僕の身体に突然黒人が君臨した。

 それはもの凄いステップだった。今までにこれほどまでにハードなステップを踏んだ事があるだろうかと思うくらいにそのダンスステップはハードでニグロで且つ軽やかだった。もう安室奈美恵もびっくりである。この僕の今のステップをもし黒人ダンサーが見たらば、きっと彼は両手を両サイドにあげては肩を竦めて「スゴイネ、イチハラサン!」とアワビのヒダヒダのような色の悪い唇を震わせながら感動するだろう。

 するととたんに僕の頭の中のステレオがONされた。脳の奥からジワリジワリとフェードインしてくる「ドリフの早口言葉」。激しいパーカッションと暴力的なベース音。ダミゴエで唸る長介のステップはもはや乱れ打ちだ。
 僕はステップに合わせながら膝をグニャリと曲げては「♪生ムギ生ゴメ生タマゴ♪生ムギ生ゴメ生タマゴぉぉ~ぉぉぉぉ~♪」と脳内長介とセッションした。そしてその瞬間、脱衣カゴの中からそのピンクの布切れをサッ!と指で摘んでは抜き取った。

 頭に響くパーカッションをBGMに、僕はそのピンクのパンティーをペロンっと裏返しにした。ピンク色したクロッチには白く乾いたオリモノがまるで幼稚園児の枕のヨダレシミのようにこびり付いていた。
 僕はあの渋谷のマックでパンチラしながらハンバーガーを嬉しそうに頬張っていたあずみちゃんを思い出しながら、あの時あずみちゃんが履いてたパンツ・・・・あの時あずみちゃんが履いてたパンツ・・・・と二回繰り返し、おもむろにそれを鼻に近付け深呼吸した。

「アッホウホウホウホウホウホ!」

 いきなり脳内でアフリカ原住民の「闘志の叫び」を張り上げる長介。
 強烈だった。長介の奇声よりもあずみちゃんのパンツのシミのニオイは強烈だった。そのニオイは、以前あずみちゃんが入浴時にこっそり嗅いだあのパンツのシミのニオイなど比べ物にならない。
 そのニオイは明らかに「よっちゃんイカ」であり「ナトリの珍味」であり、ソレ系の濃度を十倍アップしたほどの強烈さだった。

 そのあまりの臭さにちょっと引いた僕の頭の中から「プツ!」と長介が消えた。そして「ドリフの早口言葉」の代りに「消臭力」のCMソングが流れて来たため、すかさず僕はスーパーの隅でツイストを踊っている主婦に合わせて「♪消臭リョクみんな大好き~♪消臭リョク、ボクも好き~♪」と腰と右足を同時に動かし真顔でツイストを踊ったが、しかし突然変な外人が現れ「♪ちゃんと~覚えて欲しい~♪」と歌い出したら嫌なのでそのダンスを速やかに終了させた。

 僕はそんなイカ臭いあずみちゃんのパンティーを顔中に擦り付けると、小声で「あずみちゃん・・・あずみちゃん・・・」と囁きながらペニスをシゴいた。
 ハッキリ言って僕は無臭のあずみちゃんよりよっちゃんイカなあずみちゃんのほうが好きだ。だってあずみちゃんも人間だもの。

 その白いカピカピのシミを舌の先でチロチロと舐めてみた。酸っぱい。何の成分からそうなるかは不明だがそんな僕の舌先はとたんにピリピリと痺れた。
 僕は今日一日のあずみちゃんを思い出した。スーパーの裏で「見ちゃいや」と恥ずかしがるあずみちゃん。「マックシェイクはなににいたしましょうか?」と聞くマックの店員に「白いヤツ!」と元気に答えたあずみちゃん。プックリと膨らんだ股間にクッキリとワレメの縦線に食い込ませていた体育座りのあずみちゃん。そして・・・そして・・・・特Bのゲートで濃厚なディープキスを交わした時に「むふっ」と熱い吐息を漏らしたあずみちゃん。
 そんなあずみちゃんの様々な表情を思い出しながら、そのあずみちゃんの体内から滲み出た恥ずかしいシミをペロペロと舐めていた僕は、ふいに射精しそうになった。

 まだダメです!

 僕は慌ててペニスを扱くその手を止めた。そしてピクピクと痙攣しながらも暴発寸前なペニスを見つめながら、慌てて「イキそうな時の鎮魂歌」を脳内に響かせた。
「♪忘れてしまいたい事や~♪どーしょーもない悲しさに~♪包まれた時に男は~♪酒を飲むのでしょう~♪・・・・・」
 これを美空ひばり風に歌う。これが僕の「イキそうな時の鎮魂歌」だ。風俗通いの僕は、今までこの「イキそうな時の鎮魂歌」にどれだけ助けられた事だろう。

 なんとか暴発を免れた僕は、あずみちゃんのパンツを元通りにソッと隠すとそのまま風呂場に飛び込んだ。風呂場に入った僕は、とりあえずあずみちゃんが生尻で座ったと思われる椅子の水滴をペロペロと舐め、あずみちゃんが入ったと思われるバスタブの湯に浸かりながら小便をした。
 そして身体中を隅々まで洗った。耳の穴、ヘソ、肛門、鼻の穴と身体中の穴という穴に指を突っ込んでは石鹸で擦った。もちろんペニスは念入りに洗った。今夜コレからあずみちゃんがコレを口に含む予定なのだ、そこは重点的に洗わなくてはならないのだ。

 そうやって身体中に安物のボディーソープをプンプン漂わせながら、あえて黄色いバスタオルを腰に巻いただけの、いわゆるサウナホモ親父スタイルの僕は静かに脱衣場の扉を開けた。
 部屋にはあずみちゃんの気配は消え、付きっぱなしのテレビから若手お笑い芸人の「ほんまっすか!」という声がやたらと響いていた。
 僕はついさっきまでそこのソファーに座っていたあずみちゃんの姿がないことに「ほんまっすか!」と呟きながらオロオロと脱衣場を飛び出した。
 部屋の奥にある丸いベッドに駆け寄った。途中、ダンディーなサウナホモバスタオルは腰からパラリと落ち、僕はフルチンのまま全裸でベッドに駆け寄った。

「スーッ・・・・スーッ・・・・」

 そこには、安物の布団に埋まったあずみちゃんが生後1ヶ月の子猫のような寝息を立てながらスヤスヤと眠っていた。
 付けっぱなしのテレビから若手お笑い芸人に呟く久本の「良かったなぁ~」という声が聞こえた。
 同時に僕も「良かったなぁ~」と呟いたのだった。


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 さっきまでテーブルの上に10錠あった睡眠剤が8錠しかなかった。どうやらあずみちゃんはガラステーブルの上に置いたままの睡眠剤を勝手に飲んでしまったようだった。
 1錠でも十分ぐっすりとイケるソレは2錠飲んだら意識不明となる。3錠飲めば数日意識不明は続き、4錠飲めば永久に意識不明となる。そんな危険なクスリを危険な少女の目の前に放置したままにしておくなんて僕はなんというドジな看護士なんだろう。しかし、これが2錠で本当に良かった。今の彼女なら10錠全部飲む事も十分考えられるのだ。

 僕はそのクスリをズボンのポケットの中にしまうと、一瞬にして額に滲み出て来た嫌な汗を手の甲で拭いながら、深海魚のような顔をしている久本が映るテレビをプチッと消した。
 そのままあずみちゃんが眠るベッドへとスタスタと進む。完全に全裸でポコチンブラブラだったが、しかし今夜はもうコレを隠す必要はない。そう、あれだけ楽しみにしていた「シラフの彼女と童貞喪失」という僕の作戦は脆くも崩れた。睡眠剤を2錠も飲んでしまったあずみちゃんは少なくとも震度6以上の地震がない限り明日の朝までは絶対に目を覚まさないであろう。だから今さらソレを隠す必要はなかったのだ。

 全裸の僕はあずみちゃんが眠るベッドにドサッと倒れた。妙にクッションが利いているこのベッドは寝転んでみるとウォーターベッドである事がすぐにわかった。

「このコ、よくこんなベッドの上をピョンピョンと跳ねてたな・・・・」

 そう思いながらあずみちゃんの天使のような寝顔を見ると、とたんに僕の胸がキュンっと縮んだ。
 そんなあずみちゃんの寝顔にそっと顔を近づけて見る。スーッ・・・スーッ・・・とリズミカルな寝息を立てて熟睡しているあずみちゃん。

 堪らなくなった僕はあずみちゃんの小さな体を抱きしめた。そしてニュージーランドで放牧されている豚のようにあずみちゃんのウナジや頬をブヒブヒと嗅ぎ回る。あずみちゃんの頬はびっくりするくらいに柔らかかった。その真っ白な肌は頬だけでなく首も腕も尻もそしてオッパイもマシュマロのように柔らかかった。
 そんなあずみちゃんの身体中をブヒブヒと嗅ぎ回る。ピンクのTシャツをスルン!と脱がすと、スレンダーで可愛い体がポロンとベッドに溢れた。白いパンティー1枚となったあずみちゃんはまるで静まり返った森の大きな杉の木の上でひっそりと眠るティンカーベルのようだ。

「あずみちゃん・・・好きなんだ・・・・」

 僕は昏睡している相手だからこそ言えるその言葉を呟きながら、その小さくも形の良いオッパイに顔を埋めた。
 あずみちゃんはミルクの香りがする女の子だった。きっと産まれてからまだ17年しか経っていないから乳臭さが消えていないんだろう、というそんな自分の考えに「な、アホな」とツッコミを入れながら、あずみちゃんのこのミルクの香りがする根源はどこなのだろうかと、トリュフを探し求める豚の如くフガフガとあずみちゃんの体を嗅ぎ回った。

 そのミルクの根源は僕のブヒブヒ鼻が下半身へ行く前に素早く発見された。そのミルクの香りが漂う根源はあずみちゃんの口の中であり、なんとあずみちゃんはミルク味のアメを舐めたまま寝てしまったようなのだ。そう言えば、確かにそこのガラステーブルの上に置いてあったカゴの中にサービスのアメ玉が数袋あり、僕もさっきオレンジアメを食べた記憶がある。あずみちゃんはその中の「ミルク味」をきっと食べたのであろう。僕はあずみちゃんの口の中を覗き込みながら、奥歯の横でコロンと転がっているミルクキャンディーを見ておもわず笑ってしまった。

 そんなあずみちゃんのポッカリと開いた口の中からキャンディーを取り出そうとして指を押し込もうとした僕は、瞬時に「いや待てよ・・・」っと思い立ち、そして迷う事なく彼女の口の中に舌を押し込んだ。
 生温かいあずみちゃんの口内に舌を押し込んではムグムグと舌を蠢かせ、口内でコロコロと転がるミルクキャンディーを見事に奪い取った。そんなあずみちゃんの舐めかけのキャンディーを満足げに口の中でカラコロと転がすと、布団に溢れていた自分の我慢汁がふいに手に「ねちゃっ」と触れ、僕は松田優作のように手の平を見つめながら「なんじゃこりゃ!」と叫んだ。

 そんな我慢汁がベットリと付いた手の平でペニスを包み込んだ。我慢汁はローションのようにネチャネチャと絡み付き自家発電のピストンを潤滑に進めてくれた。

「あずみちゃん・・・舐めて・・・僕のここ・・・舐めて・・・・」

 僕は試合後のプロレスラーのようにハァハァと荒い息を吐きながらそう呟くと、スヤスヤと眠るあずみちゃんの唇にペニスの先を押し付けた。あずみちゃんの少しアヒル口な唇がグニュッと歪み僕の亀頭にあずみちゃんの真っ白な前歯が当たった。僕はそんなあずみちゃんの前歯を人差し指で優しくこじ開ける。そんなあずみちゃんの口内は仄かなピンク色をした舌と白い歯がキラキラと光る唾液に輝いていた。

 堪らなくなった僕が腰を優しく突き出すと、途端に僕の亀頭にヌルッとした感触が広がった。クイッ・・・クイッ・・・っと静かに腰を振るとあずみちゃんの可愛い舌が僕の亀頭と絡み合いあずみちゃんの体温と柔らかさがジワっと伝わる。激カワ女子高生のフェラ・・・そう考えただけで恐ろしい感動が僕の脳を襲いおもわず射精しそうになった。
 目眩がするほどに興奮した僕は、ベッドでグッタリと昏睡するあずみちゃんの小さな体にむしゃぶりついた。小さな顔をベロベロと舐め口内は隅々まで舐めた。小さいながらもプリプリしているおっぱいはまるで銀座の老舗洋菓子店で売っている高級プリンのように弾力性があり、その先でツン!と尖る小さな乳首もエンピツの後に付いている消しゴムのようにコリコリして鮮度が良かった。

(アイドルだ!妖精だ!小ウサギだ!天使だ!バンビだ!美少女だ!ネオンテトラだ!戸崎だ!ミルクキャンディーだ!)

 と、なんでもかんでも頭に思い浮かんだ彼女のイメージを心で叫びながらその高級プリンのようなオッパイをプチュプチュと舐めまくった。
 因みに「戸崎」とは、僕が小学生の時同じクラスだった戸崎沙織という女の子の事で、当時彼女の事が好きだった僕は今だにオナニーでの射精時には「戸崎ーっ!」と叫ぶ事があるのだが、実はもう戸崎の顔などとっくに忘れている。まぁ、これは一種の若かりし頃からの性癖とでもいおうか、射精時に「戸崎ーっ!」と叫ぶと射精がより気持ち良くなるらしいぜと言う、僕の中だけの「都市伝説」のようなものであり、そう思い込んでいる僕はかれこれ20年近くは射精時に「戸崎」を叫び続けているのだが、しかしある時、五反田の激安ファッションヘルスに行った時、相手のヘルス嬢の目があまりにも離れており、おまけにデブでババアで臭かったものだから、こんなメタボな平目ババアでイクぐらいならばと、フェラでありながらもついつい射精時に「戸崎ーっ!」と叫んでしまったのだが、その時、その平目ババアから「わだしも尾崎豊のファンなんだ」と目を輝かせながら栃木弁で言われて以来、それからというもの僕の中のこの都市伝説はバッサリと封印した。

 そんな僕はハァハァと興奮しながら、彼女の白魚のようなスレンダーな腰のくびれを舌で滑り降り、素早く白いパンティーを剥ぎ取った。

 妖精のように真っ白に輝く股間に、不釣り合いな陰毛がグロテスクにトグロを巻いていた。足を閉じたままその陰毛に顔を押し付ける。僕の額に彼女の柔らかなお腹の縦ヘソがプニプニと触れ、忌々しい陰毛が僕の鼻の穴を悪戯にくすぐった。そんな彼女の陰毛はホテルの安物ボディーソープの香りがムンムンと溢れていた。

 いよいよですよ・・・っとバカな独り言を言いながらその細い脚首を両手でガッシリと握った。そのままゆっくりと前へ押すと、彼女の膝はリカちゃん人形の脚を曲げるよりも容易く簡単に折れ、なんとも芸術的なM字開脚になってくれた。
 膝が立てられたその脚はまさしくバンビだった。無駄な贅肉もむくみもひとつもなく、切り傷ひとつだって見当たらない。どーしてこんなに綺麗な脚をしているんだ!とおもわず怒鳴ってしまいたくなるほどの綺麗な脚だ。
 しかし、そんな輝くばかりの両足の奥には、妖精のイメージには不釣り合いなグロテスクな沼が貪よりと息を潜めていた。僕はそのギャプにまたしても頭をクラクラさせながら、膝を立てていた両足を観音開きの扉を開けるかのようにゆっくりと左右に開いたのだった。

 その陰毛は、長い入院生活のせいで処理を怠っていたせいか至るところに縦横無尽に生え伸びていた。クッキリと浮かび上がる縦線のワレメの周囲にもその陰毛はチロチロと生え伸び、それはまるで十数年間庭師が手を付けていない廃墟の日本庭園のように荒れ果てていた。
 そんな陰毛の森に囲まれた性器もやはり貪よりと黒ずんでいた。ローストビーフのような小陰唇はだらしなくダラリと垂れ下がり、その奥にある膣穴は腹をかっ捌かれた魚の如く赤く澱んでいる。

・・・おいおい、これだけ妖精のような美少女とか天使だとか言って盛り上げてきたんなら肝心なそこはやっぱり「サーモンピンク色に輝き・・・」とか「桜貝のようにキラキラと・・・」という表現にするべきだろ愚人、と、がっかりする読者の声がヒシヒシと伝わって来ます。いや、「やめんかヘンタイ!」とマウスを机に叩き付けて怒るお父さんの声も聞こえて来ます。しかし例えお叱りを受けようともそうはいきません。作者はこの小説においてリアリティを求めているのであり、そこらのインチキ官能小説のように、「イカ臭いマンコ」の事を「いやらしい牝のニオイ」などとはこっぱずかしくて表現できないのです。所詮、恥垢は恥垢です。研ナオコも「かもめはかもめ」と歌っておりましたが、どう格好つけてみても、結局恥垢は恥垢なのです。どう転んでも恥ずかしい垢なのです。ですからこの少女のアソコも正真正銘のドドメ色なのです。可愛い女子高生のマンコなど100%ドドメ色に決まってます。それを秋葉原の佐竹君にわかってほしいんですよ僕は。現実から目を反らしてはいけませんよ佐竹君!と。キミ達が思い描くアニメチックな女の子もAKBとかなんとかいうおニャン子のパチモノのような娘たちも、みんなみんなアソコは使い古したキャッチャーミットのようにくたびれ、強烈なチンカス臭がムンムンしているのですよ、と。もちろん宮崎駿か描く娘たちもアソコはパルメザンチックな香りに包まれていることでしょう。ですから僕は言うんです、宮崎のアニメを見るときはスルメイカをクンクンと嗅ぎながら見るとよりリアルに楽しめるよってね。ミヤザキハヤオもミヤザキツトムも同じなんだよって。そしたら佐竹君カンカンになって怒りましたよ。もう絶交だ!とか言って佐竹君怒ってましたが、まあ、彼とは最初から友達でもなんでもないんですけどね・・・。確かに宮崎アニメに出てくる少女は可愛いです。しかし長谷川町子が描くワカメちゃんだって忘れないで欲しい。と、僕はただそれを言いたいだけなのです。そう、ストレートなズリネタではなくもっともっと想像力を掻き立てるようなズリネタで青春を謳歌して欲しいと言う事を。(作者感終了)。

 僕はそんな彼女のグニュグニュと蠢くワレメに顔を近づけてみた。
 赤く爛れたワレメの底からツーンとよっちゃんいかのニオイが漂い、周囲に漂う安物のボディーソープの香りと交じっては独特なエロ臭を醸し出していた。

 そんな彼女の股間を覗き込みながら、この性器はかなり使い込んでいる・・・と、僕は確信した。

 こんなにカワイイ少女なのにアソコはとってもスケベな大人なのだ。僕はそのギャプに更に彼女が愛おしくなり、どうしてもそんな彼女を僕一人のものにしたいという感情が沸き上がって来た。

「もう誰にも渡さない・・・この穴は僕だけのマイホールだ。もう誰のチンポもここには入れさせないからな・・・・」

 僕はそう呟きながら彼女のグニュッとするオマンコに舌を捻り込んだ。
 ピリっとくる酸味が僕の舌にまとわりついた。さっき脱衣場で舐めたパンティーのシミと同じ味だ。大きく口を開けながら舌を突き出し、ワレメに沿ってレロレロレロっと舌を激しく動かす。
 そしてこれでもかというくらいに穴の中に舌を押し込み、彼女の体内をグワングワンと舌で掻き回した。
 彼女の陰毛が鼻に擦れてジョリジョリと音を立てる。
 穴から溢れ出した僕のヨダレがダラダラとアゴに垂れ、それは喉仏にまで達していた。
 穴の中に舌をズッポリと押し込む事で、彼女の秘密の部分と一体化になれたという悦びが僕の全身を包み込み、僕はそのままの姿勢でハァハァとペニスをシゴいた。
「あぁぁ・・・あぁぁ!・・・あずみちゃん・・・あずみちゃん!・・・・」
 穴に舌を入れたまま、入れ歯が外れそうな老人のような声でペチャクチャとそう叫んだ。

 と、その時だった。
 なんと、いきなり僕の頭上から彼女の擦れた声が聞こえて来たのだ。

「ねぇ・・・・・」

 僕は彼女のその声に、一瞬、マンコを舐めたままフリーズした。
 渋谷の安ホテルの一室に恐ろしく重たい空気が漂い、僕はそんな重たい空気の中でひたすらフリーズを決め込んだ。

「・・・なにやっれるの?・・・・」

 沈黙の後、再び聞こえて来たあずみちゃんのその声は明らかにロレツが回っていなかった。
 あずみちゃんはあれだけ強烈なクスリを2錠も飲んでいる。そんな状態で目を覚ましたならば恐らくきっとラリっているに違いない。
 そう思った僕は相手がラリパッパならば、と意を決し、「ごめんね・・・」と呟きながら身体をムクリと起こした。

 あずみちゃんは、いきなり股の間からヌッと起き上がった僕をジッと見つめた。
 あずみちゃんのその瞳は、森の中で一心不乱にドングリを齧っていたリスが不意に人間の気配を感じてピタリと止まっているような、そんな瞳だった(どんな瞳だ!)。
「なに・・・やっれらの?・・・」
 あずみちゃんはフワフワと宙に浮いているような口調でそう首を傾げた。
「うん・・・実は・・・・」

 僕は迷った。これが特Bの他の患者ならば「オマエの臭いマンコを舐めていたんだよ」と、キングコブラチックに不敵に笑えるのだが、しかし相手があずみちゃんだと、例えラリっているとはいえそんな言葉は言えない。しかし、ここで彼女にその変態行為を知らすというのもひとつの興奮材料である。
 眠っているうちにアソコをベロベロに舐められていたという事実を知った時の激カワ女子高生のリアクションというものも激しく興味がある。だから僕はどう答えようかと悩んでいたのだ。

 僕がモジモジしていると、あずみちゃんの目玉がゆっくりと自分の下半身へと下りて行った。ラリっている為思うように身体が動かないのか顔はそのままで目玉だけが下りて行く。

「あずみ・・・ろうしてパンツ履いてないの?・・・」

 あずみちゃんはアゴを引いて俯いたまま、大きく股を開いている自分の姿を見て驚いた。
「ごめん!・・・実は僕・・・」
 あずみちゃんの目玉がユラユラと揺れながら移動し僕の目を見た。

「僕・・・あずみちゃんのアソコを見てたんだ・・・・」
 自分でそう答えておきながらも、その言葉に一瞬ムラッ!と興奮に包まれた。

「・・・・・・・・・・・」
「・・・ごめんね・・・・」
「・・・ろうして?・・・ろうして見てたの?・・・」
「それは・・・キミの事が・・・好きだから・・・だから見てた。そして舐めた・・・」

 僕はナゼか唐突に愛の告白をした。
 好きだからアソコを見ました好きだからアソコを舐めました、というこの変態性欲者特有の不条理さは恐らくあずみちゃんにはわかってもらえないだろうが、しかし、これは嘘ではない。これは本心なのだ。嫌いな女のアソコなんて見たくもないし絶対に舐めたくもない。
 そんなデタラメな愛の告白をする僕をあずみちゃんは黙ったままボンヤリと見つめていた。彼女の意識がどこまではっきりしているのかはわからないが、しかし僕のこの不条理な言葉ははっきりと聞き取れたようだ。

「クス・・・・」

 ふいにあずみちゃんが笑った。
 僕は彼女のその笑顔に、安心すると共に更に彼女への気持ちは高まった。おもいきり抱きしめたい、そんな感情が僕の全身に沸き上がる。
 僕はハァハァと熱い息を漏らしながらも、彼女のユラユラと揺れている大きな瞳に「ごめん・・・」と呟く。

 そんな僕を見つめていた彼女の目が、一瞬フッと落ちかけた。

 そして何度も何度もそうやって落ちかけながらも、彼女は必死に僕の目を見つめた。

 そんな彼女に、僕が「もう眠りなさい」と声を掛けようとした瞬間、彼女が小さな声で「早く入れて・・・・」と囁いたのだった。

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