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汁と汗1

2012/12/02 Sun 00:00

汁と汗2




               1


見るからに猪だった。一見、脂肪に包まれたそのブヨブヨの巨体は豚のようにも見えるが、しかしその土色したどす黒い肌と、人の心を抉り取るような鋭い目付き、そして無頼漢的な横柄な態度が、豚というより野生の猪に近かった

権藤万之助、53歳。
幸福ファミリーの教祖。全国に60万人の信者を持つ新興宗教のトップだ。
万之助は巨大新興宗教組織のトップでありながら、裏ではねずみ講に霊感商法、闇金から違法乗っ取りまで、銭が儲かる事ならばあらゆる犯罪にも手を染め途方もない巨額の富を獲ていた。
その金で、権力・暴力・政治力を手に入れた万之助には、この世でもう手に入らぬ物はなかった。

「勝又!」
東京の一等地、巨大な庭園にダミ声が響き渡る。
権藤家のいつもの朝の第一声だ。

すかさず「はっ!」と真っ青な空に勝又の声が響き、庭の渡り廊下を走り抜ける勝又の足音に池のほとりのスズメ達が一斉に逃げ出した。

「おはようございます」
開け放たれた障子の手前で片膝を付いて頭を下げる勝又。まるで時代劇のサムライだ。
「・・・昨日のアレ、なんだありゃ?」
20帖はあろうかと思われる大きな座敷の真ん中で、猪のように獰猛な男が経済新聞を片手に朝からビールを飲んでいた。

「・・・お気に入り召しませんでしたか・・・」
勝又が恐る恐る顔を上げる。
「ありゃあどこの女だ?」
万之助はそう言いながらジョッキに残っていたビールを飲み干した。
「京都の有名老舗料亭で女将をしている女でございまして・・・」
勝又は少し納得いかない表情でそう答えた。昨日、勝又が用意したその女というのは、有名映画スター達が必死で奪い合ったと噂される程の美女で、実際、勝又もその女を目の前にした時はあまりの美しさにおもわず勃起したほどの美女なのだ。

「なにが・・・いけなかったんでしょうか・・・」
納得できない勝又が恐る恐るそう聞く。
万之助は分厚い唇を歪めながら、一言「臭せぇ」と呟き、昨日のそのニオイを思い出したかのように不快な表情をした。

「で、いくらだったんだ・・・」
万之助は読んでもいない経済新聞をペラリと捲った。
「は、はい・・・300万で・・・話しを付けて参りました・・・」
勝又が恐る恐るそう答えた瞬間、底に泡が少しだけ残っている空のジョッキが宙を舞った。
ジョッキは勝又の頬をすれすれで通り過ぎ、びっしりと苔の生えた大きな庭石に激突すると鈍い音を立てて砕けた。因みにその苔の生えた巨大な庭石は現役総理大臣から送られて来た物だ。権藤家の庭には政治家やヤクザや一流企業の社長から送られて来た財宝で溢れている。それもこれも万之助がそれだけ彼らに資金援助をしたという証拠だ。

「300万だと!貴様、信者たちが血の滲むような思いでお布施した大事な金をなんだと思ってるんだ!」
万之助が怒鳴る。
「も、申し訳ございません!」
勝又が床に額を擦り付けて詫びる。
権藤家のいつもの朝の風景だった。



黒光りしたセンチュリーに万之助が乗り込むと、見送りに出て来ていた執事達が一斉にお辞儀をした。
助手席の勝又が、センチュリーの前後にピッタリとくっ付いている2台のセルシオに向かって無線を飛ばす。
「よし、行け」

前方のセルシオがゆっくり動き出すと、巨大な正門の観音扉がギシギシと音を立てて開かれた。
門の前に溢れていた信者達が、正門を潜るセンチュリーに向かって一斉に合掌する。
そんな信者達を、真っ黒なスモークガラス越しに鼻糞をほじりながらぼんやり見ていた万之助が、いきなり「くわっ!」と目を開き、「勝又!」と叫びながらクッションから飛び起きた。
万之助が叫ぶなり、助手席の勝又が「はっ!」と後ろを向いた。
「アレ!アレだアレ!」
万之助が指差す先には、合掌する信者達が蟻のように群れていた。
「アレ!アレ!あの赤いセーターの女!」
「赤い?・・・・セーター?・・・」
走り過ぎて行く後方を必死に見つめながら勝又が赤いセーターを目で探す。
「おいおい!巻き戻ししろ巻き戻し!」
万之助が運転席をガボッ!と蹴った。
慌てた運転手がハザードを付けると、勝又がセンチュリーを挟む2台のセルシオに「バックするぞ」と無線を飛ばした。

正門の前でセンチュリーが止まると、一瞬信者達がざわめき、そして執事たちが慌てて正門から飛び出して来た。
今までに万之助が乗るセンチュリーがバックして来るなど一度もなかったのだ。

助手席から勝又がスッと降り立った。
小走りの勝又が大勢の信者達に向かって行くと、信者達は一斉に勝又に向かって合掌し、なにやら意味不明なお経を唱え始めた。
勝又は皆と同じように合掌する赤いセーターの女の前で立ち止まった。
ユニクロで買ったと思われるセーターの袖は伸びきり、黒く汚れたスニーカーを履いていた。勝又はそんな貧乏臭い女を見つめながら(昨日の女よりもこっちの女の方がどれだけ臭そうか・・・)と思い、再び昨日の女にあげた300万円が惜しくなり、こんなことならあの女に100万だけ渡して200万ピンハネするべきだったと今更ながら激しく悔んだ。

合掌していた女が自分の目の前で勝又が足を止めた事に気付き、急に戸惑いながら周りをキョロキョロし始めた。
「教祖は言いました・・・貴女から特別な光が発していると」
勝又がそう告げると、周りにいた信者達から「おおぉ」っという驚きの声が洩れ、赤いセーターの女は信じられないといった表情で目に涙を浮かべた。
「特別に教祖直々の『お撫でり』を施して頂けるそうだから、さ、車に乗りなさい」
信者達から「わあっ」という声援が上がり、その中を赤いセーターの女は膝をガクガクとさせながらセンチュリーに向かって歩いたのだった。

因みに、この「お撫でり」(おなでり)。
つまり、一般的に言うと「お浄め」というものだ。
万之助を教祖とする「幸福ファミリー」というなんだか保険会社のキャンペーンのような名前のこの教団は「お撫でり」を業としていた。
教団の教義によれば、この世の人間のあらゆる不幸現象のうち、80%が「悪い霊魂によるもの」としており、幸福の業(こうふくのわざ)、つまり「お撫でり」でその霊魂が取り除かれるとしている。
この「お撫でり」とは、その悪霊が取り憑いているとされる場所に手の平をあてながらお経を唱えるというもので、ここの信者達は互いに悪い場所(例えば癌に侵された部分)をナデナデと撫でながら神の力を信じているのだ。又、この教団は、「お撫でり」は人だけでなく、食品や水、動物、機械その他に施しても効果があり、死にかけた動物がよみがえったり、動かなくなった機械や時計が動き出すなどと、実にイカサマ臭い主張を真面目にしているのだった。

センチュリーの後部ドアが開けられると、奥に猪のような万之助がふんぞり返っていた。
「教祖様!」
赤いセーターの女はすかさず万之助に向かって合掌し、変なお経を唱え始めた。
「いいから、さ、乗りなさい・・・」
勝又が女の背中を突く。
女は大粒の涙をユニクロのセーターにボトボトと垂らしながら、感動で崩れ落ちるかのように後部座席に乗り込んだのであった。


               2


「いつものホテルへ行きなさい」
万之助は、みすぼらしい女の姿を舐めるように見回しながら、助手席の勝又に言った。
「・・・しかし・・・30分後に文部大臣との会合が控えておりますが・・・」
勝又が脅えた野良犬のような目をして後部座席を覗き込んだ。
「何を言ってるんだキミは。今、この不幸な娘が幸福になろうとしているのだ。文部大臣など待たせておけばいい。私は幸福ファミリーの教祖として、日本の教育よりも1人の信者を救いたいのだ!」
万之助が大袈裟な声を張り上げそう言うと、隣の娘がわっと泣き出し、助手席の勝又がアホらしっと前を向いた。

この時間のいつものホテルは、チェックアウト後の静けさが厳粛な雰囲気を醸し出していた。
大理石の床を踏みしめながらエレベーターへと向かう。
赤いセーターを着た娘は、この豪華なホテルに明らかに場違いだった。

エレベーターを待つ間、万之助が勝又を呼び寄せた。
「あのキンカン頭の文部大臣にな、権藤が急に熱を出して来れなくなったからと言って、300万ほど小遣いやっとけ」
耳元でそう囁かれた勝又は、また300万かよ・・・とうんざりしながらも、「はっ」とサムライのように返事をした。

万之助とみすぼらしい娘がエレベーターに乗り込むと、それを1階ロビーで見送った勝又は、上がって行くエレベーターの表示板を見上げながら、教祖の女の趣味がまたしてもわからなくなってきた・・・と呟いた。

勝又はエレベーター前に置いてある椅子にさりげなく腰掛けると、昨日の女はハリウッド女優並の美しさだったと、昨日の女を思い出してはつくづくそう思った。
それは昨日の女だけではなかった。半年前に万之助の秘書に就任した勝又は、その半年の間に合計二十人以上の蒼々たる美女達を万之助の前に連れて来たが、しかし、どの美女も万之助には気に入ってもらえず、その度に朝のビールジョッキが総理大臣の庭石に砕けた。
勝又はあらゆるルートと大金を使っては、全国から美女を集めたつもりだった。その中にはミスなんとかと呼ばれる美女からテレビタレント、女優、ファッションモデル、などなど、一般人では到底手が出ない美女も大勢交じっていた程なのだ。
しかし万之助はそんな美女達をことごとく「臭せぇ!」と毛嫌いする。
もしかしたら万之助は派手な女が苦手なのではと思い、わざわざ京都まで出向いては古風な老舗料亭の女将を口説いて来たのだが、しかしそんな日本的美女にも万之助は「臭せぇ!」と一喝した。
それでいて、今日のあの小便臭い赤いセーターの娘だ。
「あのおっさんの趣味はいったいどーなってんだよ・・・」
勝又はエレベーター前の椅子で頭を抱えた。
そしてなにげなくポケットから出した携帯電話をパカッと開き、アドレスを操作した。
『中崎』という名がディスプレイに表示される。勝又の前の秘書だ。
勝又は中崎に電話をして万之助の女の趣味について聞いてみようかと考えた。
中崎は20年間万之助の秘書を務めた男だ、この男ならきっと万之助の女の趣味を知り尽くしているだろうと思ったのだ。
しかし、勝又はゆっくりと携帯電話を閉じた。半年前に秘書を退職した中崎は今は地元の精神病院に入院しているからだ。
勝又は大きな溜息を付きながら椅子を立ち上がった。これから銀行に行って教団の口座から300万円を下ろし、その尊い金を腐った役人にやらなければならないのだ。
重い足取りを引きずりながら車へ向かう勝又。ホテルの前に堂々と駐車されている黒光りセンチュリーを見つめながら、もしかしたら数年後の自分は精神病院のベッドの上にいるかも知れないとふとそう思ったのだった。


               3


2205室のドアを開けると、甘いフルーティーな香りがモワッと2人を包み込んだ。
テーブルの上には、ホテル側が事前に用意しておいた万之助の好物のメロンやマンゴが瑞々しく輝いている。
22階の窓に広がる東京の風景と、この豪華な部屋とその瑞々しい高級果物に、おもわず娘が「うあっ」と驚く。

「好きなだけ喰え・・・」
万之助は娘にそう微笑むと、歩きながら革靴を脱ぎ捨てては窓際のソファーへと進み、そのままドスンと巨体をソファーへ沈ませた。

娘はペパーミントグリーンに輝くメロンをジッと見つめ、まるで漫画のように「ゴクッ」と唾を飲んだ。
その音を聞いた万之助がいきなりガハハハハハ!と大声で笑った。
娘の顔がカッと赤くなる。

「メロン。好きか?」
ソファーにふんぞり返りながら万之助が娘にそう聞いた。
娘はモジモジとしながら、「緑色のメロンは・・・食べた事ないんです」と、恥ずかしそうに照れ笑いした。

どれどれ・・・と万之助がテーブルの上のメロンに手を伸ばす。
ペシャっ・・・・
まるでスイカにしゃぶり付くようにそれを一口で飲み込んだ万之助は、唇に溢れるメロンの汁をスーツの袖で乱暴に拭いながら、娘を見上げて「うめぇぞ。喰え」と金歯を光らせた。

目の色を変えてメロンにむしゃぶりつく娘を眺めながら、万之助はまたガハハハハハっと笑う。
娘は万之助のマネをしているのか、フォークを使わず直接齧り付いていた。

「キミはいくつだ」
目を細めながら娘に聞いた。
「・・・16歳です」
娘は唇の回りをベトベトにさせながら慌ててそう答える。
「16歳か・・・ワシがメロンを初めて喰ったのは30歳の時だった。あれはワシが社会人になって初めて大儲けした時だったな・・・」
娘が再びメロンにしゃぶりつきながら「何をして儲けたんですか?」と興味深く聞いた。
「あぁ、株だよ。株で大儲けしたんだ・・・うん」
本当は保険金詐欺だった。20年前、暴力団と結託して繁華街のビルを放火し、グルになっていたそのビルのオーナーから火災保険の一部を報酬として受け取ったのだ。それが万之助の初めての大儲け。その金を元手に万之助は今の巨額の富を得たのだ。

「ところで、キミはどうして幸福ファミリーに入信したんだね」
万之助は話題を変えた。
「はい。お母さんが、教祖様を信じていればきっと幸せになれると教えてくれたからです」
娘はしゃぶり付いていたメロンをソッとテーブル上に戻し、万之助と同じように赤いセーターの袖で唇を拭うと、目をキラキラと輝かせながらそう答えた。
「お母さんも信者かね?」
「はい。ウチは家族全員が信者です」
万之助は大きく頷きながら「それはよろしい」と布袋様のような顔をして笑った。

「お父さんの仕事は?」
「お父さんはいません。四年前に蒸発しました」
娘は笑顔を浮かべながらハキハキとそう答えた。

万之助はいつも不思議に思う。信者達はどうしてこうも自分の不幸を嬉しそうに語るのかと。
「私は末期ガンです!」と威張る老婆や、「自己破産しました」と笑顔で答える中年親父、「昨日、旦那を交通事故で亡くしまして」と、まるでスーパーの特売に間に合わなかった程度の残念さで答える主婦。そんな信者達を見る度に、万之助は「こいつら、頭がおかしくなったのか?」と思ってしまうのだ。

そこで万之助は丁度いい機会だからと思い、どうしてそんなに暗い話しを明るく話すのかを、この娘に問い質してみた。

「だって、不幸な時こそ幸福に振舞いなさいって・・・」
娘は戸惑いながら答えた。
「誰がそんな事を言ったんだね」
「・・・・教祖様です・・・・」

万之助はおもわず噴き出しそうになった。
そういえば、数年前の大会で大地震の被災者達にそんな事を説いた覚えがあるとふと思い出したのだ。
慌てた万之助は、「その通りです。よく覚えていましたね」と誤魔化し笑いをしながら、「ささ、マンゴはいかが?」などと娘にマンゴを勧めたりしたのだった。


ベッドに寝かされた娘は、特別に教祖様からお撫でりをしてもらえるという事で、胸が爆発しそうなくらい緊張していた。
通常、教祖様からお撫でりを受ける場合、最低でも500万のお布施が必要だといわれており、しかし例え1千万円払っていてもまだお撫でりの順番が回って来ない信者も沢山いた。
そんな中、特別にタダでお撫でりをしてもらえるなんて、この娘にしたらまさしく夢のような話しだった。

「それでは、今からお撫でりを始めるからね・・・目を瞑って肩の力を抜いてリラックスするように・・・」
万之助はベッドに寝転がる娘の横にあぐらをかきながら、ゆっくりと目を閉じる娘の顔を見ていた。
娘が目を綴じた瞬間、万之助の背筋がゾクゾクと震えた。
(可愛い・・・・)
ツルンとゆで卵のような白い肌。大きな目と整った鼻筋。そして何よりもそのプニプニとした唇が堪らなく可愛かった。

万之助はドキドキしながら娘の顔を覗き込んだ。娘の唇に鼻の頭が当たりそうなくらいギリギリまで覗き込む。ふいに娘の唇からメロンの汁の香りが漂い、万之助は可愛さの余りに悶え苦しんだ。
唇から斜め上へと視線を移動させた。ショートカットの毛先がふんわりと首筋に広がっていた。
小さな耳の穴を覗き込む。奥の方に小さな耳糞がぶら下がっているのが見えた。
万之助は深い息を吐きながら、ゆっくりとあぐらの姿勢に戻った。

「キミの体からは恐ろしいパワーの幸福の光が溢れ出ているのだが・・・しかし何かがその光を遮っている・・・」
万之助は独り言のように呟いた。
そして勃起している股間をスリスリと擦りながら、「その遮っているものを取り除けば・・・キミは大生位になれるくらいのパワーを持つのだが・・・」と残念そうに呟く。

娘が目を閉じたまま「ホントですか!」と叫んだ。
信者は目を綴じろと言われれば、例え大地震が来ようとも絶対に目を開けない。お撫でりの最中に目を開けると、体内に宿る幸福のパワーが全て消えてしまうと教えられているからだ。
ま、もちろん、これも万之助が考えだしたデタラメであり、お撫でりの最中に目を綴じさせておけば好き放題悪戯ができるという、実に卑劣な考えから思い付いた「教え」なのであった。

「本当だとも。ざっと見た所、キミの体内には6000ヘルポほどの幸福パワーが宿っているよ」
「えぇ!」
娘はギュッとめを閉じたまま絶叫した。

ヘルポというのは、これまた万之助が勝手に考え出したデタラメな単位だった。
この幸福ファミリーと言うデタラメ教団の信者は、それぞれ自分が持っている幸福パワーの量によって位づけられていた。
その位というのは、下から、

下生位(1000へルポ以上)

中生位(3000へルポ以上)

大生位(6000へルポ以上)

と「生の位」があり、これが一般信者達の位である。
その上になると「天の位」という幹部信者のランクがあり、それは、

下天位(1万へルポ)

中天位(3万へルポ)

大天位(6万へルポ)

と、たちまちヘルポ数が跳ね上がるのだった。
このヘルポ数が高ければ高いほど幸福になれると信者達は信じていた。

因みに、教祖である万之助の位は、天の位の更に上の「神の位」という地位で、万之助はその中でも二番目に位が高い中神位を取得している。中神位は300万へルポ以上のパワーが必要とされ、その上をいく大神位になると、それはもはや「神」となるのだった。

これら信者のヘルポ数を上げるのには、「神」にあと一歩の万之助の承認が必要だった。
万之助がヘルポ数をあげる基準。
もちろん、言うまでもなくお布施の額だった。

1千万のお布施をしてもヘルポはたった1000へルポしか上がらない。
世間一般の幸福を望むならば、最低でも3000へルポは必要だと、教団が発行する「幸福新聞」にも書いてある。
だから信者達は必死になってお布施をするのだが、この不景気ではヘルポ数を上げるという事はなかなか難しい事なのだった。

そんな中、この娘はいきなり教祖様から6000へルポの承認を頂いた。6000へルポといえば幹部一歩手前の大生位であり、一般幸福を遥かに上回った量なのだ。
この娘が絶叫するのも当然なのである。

万之助は、両目をギュッと閉じたままワクワクしている娘の赤いセーターの匂いを嗅いだ。
セーターには家庭のニオイが漂っていた。
そのままクンクンと鼻を鳴らしながら下へ降りて行く。
安っぽいデニムのミニスカートは微かに石油ストーブのニオイが感じられた。
ミニスカートから伸びる生足。その真っ白な肌は万之助にクラクラと目眩を与えた。膝っ小僧が妙に白くカサカサとしていた。そこは無臭だった。
万之助の鼻は更に下へと降りて行った。
脹ら脛を包み込む白いハイソックス。その先端は微かに黒ずみ、足の裏を見るとひどく汚れていたため、もしかしたら学校で上履きを脱いで走り回っていたのか?と思ったりしたが、しかし今日は日曜日だった。
その黒ずんだハイソックスを豚のようにクンクンと鼻を鳴らして嗅いでみた。男のようなツーンと漂う足臭はまったく感じられず、どちらかというと埃っぽい臭さが感じられた。
しかし、爪先は少し違っていた。そのニオイは明らかに「足の裏」のニオイなのだ。
万之助はそのニオイを嗅いぎ、堪え切れず勃起したペニスをズボンの上から握った。
舐めたい!人間のニオイを舐めたい!
そう悶える万之助は、両目をギュッと閉じたまま、まだワクワクしている娘の顔を見た。

「しかし、せっかくのキミのパワーも、何かに遮られているためにそのパワーを充分に発揮する事が出来なくなっているんだな・・・・今のままだと、キミのパワーは500へルポに満たない・・・」

万之助がそう言うと、それまでワクワクしていた娘の表情がいきなり暗くなった。

「・・・その遮っているものって・・・なんですか?・・・」
「いや、それは調べてみないとわからない・・・」
娘は目を閉じたまま淋しそうな表情をした。
「調べてみるか?」
万之助がそう言うと、娘の表情がパッと明るくなり「調べてもらえるんですか?!」と叫んだ。

「いいだろう。キミの持っているパワーは特別に強い。もしかすると1万へルポを越すかもしれん・・・これは教団にとってもヘルポアップに繋がる重要な課題だ。是非とも原因を追及して、キミのパワーを遮っている何かをすぐにでも取り除こうではないか」

「ありがとうございます!」

「よろしい。では、まずは何がキミのパワーを遮っているのかを調べるから、その赤いセーターとスカートを脱ぎなさい・・・」

万之助は猪のような鋭い目で娘を見つめながら、ズボンの中で爆発しそうになっているペニスを激しく摩擦させては、ハァハァと臭い息を吐いたのであった。

(つづく)

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