スリル9・嬢たちの過去
2013/06/13 Thu 00:02
ある日の土曜の深夜、恵美はその男から「全身を隅々まで舐めて下さい」と言われた。
足の指から耳の穴まで、二時間かけて丁寧に舐めさせられた。
男はサラマンドラの常連で、三十八歳の中学校教員だった。
カバのような顔をした彼は、性格もカバのように穏和だった。サラマンドラの常連にしては比較的に扱いやすい客だったが、しかしそのブヨブヨに太った体からは常にドリアンのようなデブ臭が漂い、その体を二時間舐めさせ続けられるのは、かなりの苦痛を伴った。
特に足の裏は最悪だった。強烈な匂いを放っている足の裏は、目を背けたくなるほどに酷い水虫で、そこに舌を這わす度にカサカサと皮が剥がれては、中から黄色い汁が滲み出て来た。
そんな彼は、いつもこうして体中を舐めさせるだけで性交は一切しなかった。全身を舐め回され、「あぁぁ、うぅぅ」と気色の悪い声で呻く彼は、そのカバの尻尾のような小さなペニスを自分で手淫しながら、いつも勝手に果ててしまうのであった。
変態専用デリヘル・サラマンドラ。
ここには、そんな『おかしな客』ばかりが集まって来た。
この中学教師のような草食系変態もいれば、女の顔がパンパンに腫れ上がるまで叩きながら性交する、そんな凶暴な肉食系変態も大勢いた。
そんな客達を、一日に二、三人相手にしていた恵美は、たったの一週間で五十万も稼いでいた。この調子で行けば、ひと月に二百万近くの稼ぎとなった。OL時代、手取り十四万の給料で細々と暮らしていた恵美には信じられない金額だった。
しかし恵美は、お金には執着していなかった。お金などどうでもよく、ただただスリルだけが欲しいだけだった。
だから恵美は、より危険な客を求めていたのだが、しかし店長の原山は、そんな恵美の欲望とは裏腹に、危険な客は恵美には回さないようにしていた。
それは、恵美が稀に見る上玉だからであった。
恵美ほどの女なら高級店でも十分にやっていけた。それが、サラマンドラのような劣悪変態店に回って来たのは奇跡であり、原山に取って恵美は大儲けのチャンスなのであった。
だから原山は、恵美の客を厳選した。危険な肉食系は他の女達に回し、恵美にはリスクの少ない草食系ばかりを回した。
原山にしてみたら、他の女達など殺されようが壊されようが一向にかまわなかった。寧ろ、この狂った女達など、とっとと殺してしまって欲しいとさえ思っていた。そう、あの廃人少女、沙織以外は……。
現在サラマンドラには、待機所に住み着いている静香と沙織以外に七人の女が在籍していた。
ほとんどの女は外待機だったため恵美とは面識が無かった。トモ子と愛美だけはいつも待機所を利用していたため、かろうじて面識はあったが、しかし、二人ともお喋りし合うほどの仲ではなかった。
愛美という中年女は、サラマンドラで働き始めてまだ一年目だった。三人の子供と旦那を持つ現役の主婦であり、見た目は三十代だったが、しかし、実年齢はとうに四十を過ぎていた。
愛美は、他の女達と違って唯一まともな人間だった。挨拶もできるし、普通に会話もできるし、それに、肉体的にも精神的にも汚れてないように見えた。
最初はそう思っていた恵美だったが、しかしサラマンドラで働く女は、そんなに甘くはなかった。
愛美がサラマンドラで働くようになったのは旦那が原因だった。旦那が愛美をサラマンドラという奈落の底に突き落としたのだ。
但しそれは、ギャンブル狂の旦那が作った借金を返済する為だとか、旦那が怠け者のヒモ男だからといったありきたりな事情からではなかった。それどころか旦那は、一部上場企業に勤めるエンジニアで、年収は八百万近くもあった。借金と言えば、四年前に建てた豪邸の住宅ローンくらいで、酒もギャンブルも浮気も一切しないという理想の旦那様だった。
そんな旦那が、何故に愛する妻を奈落の底に突き落としたのか。
それは、旦那が『寝取られマニア』という変態だからだった。
旦那は、愛する妻が他人に陵辱される事に喜びを感じるという特殊な性癖を持っていた。
最初のうちは、ハプニングバーで知り合った夫婦とスワッピングする程度だったのが、次第にそれでは物足りなくなり、遂にはネットで募集した『顔も見えない男』に妻を提供するようになっていた。
しかし、それでも旦那はまだ物足りなかった。そう、この男もまた、恵美と同じようにスリルという魔物に取り憑かれた男であり、安全圏での寝取られでは満足できなかったのだ。
そんな時、旦那はふとした事からサラマンドラの存在を知った。
『殺す以外なら何をしてもかまいません』
そんなキャッチフレーズを目にした旦那は身震いした。こんな危険な客達の中に、全裸の妻を野放しにしてみたいと思うと震えが止まらなくなったのだった。
旦那はさっそくサラマンドラに電話をかけ、愛美に何の相談をする事も無く勝手にバイトを決めてしまった。そしてその時、電話対応した原山に事情を説明し、できるだけ危ない客を回してくれるよう頼んでおいた。
いきなりサラマンドラで働かされるようになった愛美だったが、しかし元々マゾの愛美は文句一つ言わず、旦那の期待に応えようと頑張った。
毎晩、バイトから帰って来るなり、その日の客のペニスのサイズ、色、形、匂いなど報告させられた。そして、その客からどんな風に陵辱されたのかを、痣や傷跡を見せながら事細かく説明させられた。
それを聞きながら旦那は激しい嫉妬の念に駆られ、まるで日本脳炎に侵されたように震えた。
そんな旦那が最も嫉妬に狂う瞬間が、愛美の膣に溜まった客の精液を目にする瞬間だった。
それは旦那の要望だった。プレイ後にはシャワーを浴びず、中出しされた精液を一滴残らず持ち帰って来いというのが、旦那の一番の目論みなのであった。
汚れたパンティーを脱がせた旦那は、迷う事無く愛美の膣に舌を這わせ、そこから溢れる他人の精液を舐めた。そして、愛する妻が見ず知らずの変態男に滅茶苦茶に犯されているシーンを想像しながら狂ったように興奮した。
遂には、他人の精液が溜まったヌルヌルの穴の中に、自身の肉塊を滑り込ませ、「こうやってヤられたのか! こうヤられて感じていたんだろ!」と、激しい絶望に駆られながら、自身の精液そこにを継ぎ足すのであった。
そんな愛美と旦那の異常性を恵美に教えてくれたのは、ドライバーの矢部だった。矢部は、病的な程のお喋りで、送迎中は、嬢の事情や、客の悪口、会社の不満などを、勝手に一人でべらべらと喋りまくっていた。
それを毎日聞かされていた恵美は、この店に来てまだ一週間足らずだというのに、サラマンドラで働く女達の事情をほとんど知っていた。
ドライバー達から『家畜』と呼ばれている現役女子大生のトモ子は、食費の為に働いていた。給料のほとんどをコンビニ弁当に使ってしまう程の過食症らしく、食欲と性欲のコントロールができない彼女は、スカトロプレイ時に客の糞を食べる癖があった。
小指が欠損した静香には殺人の前科があった。
盲目のマリアはアル中の父親に身売りされた女だった。
そして、車椅子の華子はオリンピックにまで出場した元水泳選手のアスリートだった。
そんな嬢たちの過去を聞かされて衝撃を受けていた恵美だったが、しかし、その中でも一番衝撃的だったのが沙織だった。
原山にいつも待機所で犯されているあの廃人のような少女は、なんと原山の実の娘なのであった。
(つづく)
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足の指から耳の穴まで、二時間かけて丁寧に舐めさせられた。
男はサラマンドラの常連で、三十八歳の中学校教員だった。
カバのような顔をした彼は、性格もカバのように穏和だった。サラマンドラの常連にしては比較的に扱いやすい客だったが、しかしそのブヨブヨに太った体からは常にドリアンのようなデブ臭が漂い、その体を二時間舐めさせ続けられるのは、かなりの苦痛を伴った。
特に足の裏は最悪だった。強烈な匂いを放っている足の裏は、目を背けたくなるほどに酷い水虫で、そこに舌を這わす度にカサカサと皮が剥がれては、中から黄色い汁が滲み出て来た。
そんな彼は、いつもこうして体中を舐めさせるだけで性交は一切しなかった。全身を舐め回され、「あぁぁ、うぅぅ」と気色の悪い声で呻く彼は、そのカバの尻尾のような小さなペニスを自分で手淫しながら、いつも勝手に果ててしまうのであった。
変態専用デリヘル・サラマンドラ。
ここには、そんな『おかしな客』ばかりが集まって来た。
この中学教師のような草食系変態もいれば、女の顔がパンパンに腫れ上がるまで叩きながら性交する、そんな凶暴な肉食系変態も大勢いた。
そんな客達を、一日に二、三人相手にしていた恵美は、たったの一週間で五十万も稼いでいた。この調子で行けば、ひと月に二百万近くの稼ぎとなった。OL時代、手取り十四万の給料で細々と暮らしていた恵美には信じられない金額だった。
しかし恵美は、お金には執着していなかった。お金などどうでもよく、ただただスリルだけが欲しいだけだった。
だから恵美は、より危険な客を求めていたのだが、しかし店長の原山は、そんな恵美の欲望とは裏腹に、危険な客は恵美には回さないようにしていた。
それは、恵美が稀に見る上玉だからであった。
恵美ほどの女なら高級店でも十分にやっていけた。それが、サラマンドラのような劣悪変態店に回って来たのは奇跡であり、原山に取って恵美は大儲けのチャンスなのであった。
だから原山は、恵美の客を厳選した。危険な肉食系は他の女達に回し、恵美にはリスクの少ない草食系ばかりを回した。
原山にしてみたら、他の女達など殺されようが壊されようが一向にかまわなかった。寧ろ、この狂った女達など、とっとと殺してしまって欲しいとさえ思っていた。そう、あの廃人少女、沙織以外は……。
現在サラマンドラには、待機所に住み着いている静香と沙織以外に七人の女が在籍していた。
ほとんどの女は外待機だったため恵美とは面識が無かった。トモ子と愛美だけはいつも待機所を利用していたため、かろうじて面識はあったが、しかし、二人ともお喋りし合うほどの仲ではなかった。
愛美という中年女は、サラマンドラで働き始めてまだ一年目だった。三人の子供と旦那を持つ現役の主婦であり、見た目は三十代だったが、しかし、実年齢はとうに四十を過ぎていた。
愛美は、他の女達と違って唯一まともな人間だった。挨拶もできるし、普通に会話もできるし、それに、肉体的にも精神的にも汚れてないように見えた。
最初はそう思っていた恵美だったが、しかしサラマンドラで働く女は、そんなに甘くはなかった。
愛美がサラマンドラで働くようになったのは旦那が原因だった。旦那が愛美をサラマンドラという奈落の底に突き落としたのだ。
但しそれは、ギャンブル狂の旦那が作った借金を返済する為だとか、旦那が怠け者のヒモ男だからといったありきたりな事情からではなかった。それどころか旦那は、一部上場企業に勤めるエンジニアで、年収は八百万近くもあった。借金と言えば、四年前に建てた豪邸の住宅ローンくらいで、酒もギャンブルも浮気も一切しないという理想の旦那様だった。
そんな旦那が、何故に愛する妻を奈落の底に突き落としたのか。
それは、旦那が『寝取られマニア』という変態だからだった。
旦那は、愛する妻が他人に陵辱される事に喜びを感じるという特殊な性癖を持っていた。
最初のうちは、ハプニングバーで知り合った夫婦とスワッピングする程度だったのが、次第にそれでは物足りなくなり、遂にはネットで募集した『顔も見えない男』に妻を提供するようになっていた。
しかし、それでも旦那はまだ物足りなかった。そう、この男もまた、恵美と同じようにスリルという魔物に取り憑かれた男であり、安全圏での寝取られでは満足できなかったのだ。
そんな時、旦那はふとした事からサラマンドラの存在を知った。
『殺す以外なら何をしてもかまいません』
そんなキャッチフレーズを目にした旦那は身震いした。こんな危険な客達の中に、全裸の妻を野放しにしてみたいと思うと震えが止まらなくなったのだった。
旦那はさっそくサラマンドラに電話をかけ、愛美に何の相談をする事も無く勝手にバイトを決めてしまった。そしてその時、電話対応した原山に事情を説明し、できるだけ危ない客を回してくれるよう頼んでおいた。
いきなりサラマンドラで働かされるようになった愛美だったが、しかし元々マゾの愛美は文句一つ言わず、旦那の期待に応えようと頑張った。
毎晩、バイトから帰って来るなり、その日の客のペニスのサイズ、色、形、匂いなど報告させられた。そして、その客からどんな風に陵辱されたのかを、痣や傷跡を見せながら事細かく説明させられた。
それを聞きながら旦那は激しい嫉妬の念に駆られ、まるで日本脳炎に侵されたように震えた。
そんな旦那が最も嫉妬に狂う瞬間が、愛美の膣に溜まった客の精液を目にする瞬間だった。
それは旦那の要望だった。プレイ後にはシャワーを浴びず、中出しされた精液を一滴残らず持ち帰って来いというのが、旦那の一番の目論みなのであった。
汚れたパンティーを脱がせた旦那は、迷う事無く愛美の膣に舌を這わせ、そこから溢れる他人の精液を舐めた。そして、愛する妻が見ず知らずの変態男に滅茶苦茶に犯されているシーンを想像しながら狂ったように興奮した。
遂には、他人の精液が溜まったヌルヌルの穴の中に、自身の肉塊を滑り込ませ、「こうやってヤられたのか! こうヤられて感じていたんだろ!」と、激しい絶望に駆られながら、自身の精液そこにを継ぎ足すのであった。
そんな愛美と旦那の異常性を恵美に教えてくれたのは、ドライバーの矢部だった。矢部は、病的な程のお喋りで、送迎中は、嬢の事情や、客の悪口、会社の不満などを、勝手に一人でべらべらと喋りまくっていた。
それを毎日聞かされていた恵美は、この店に来てまだ一週間足らずだというのに、サラマンドラで働く女達の事情をほとんど知っていた。
ドライバー達から『家畜』と呼ばれている現役女子大生のトモ子は、食費の為に働いていた。給料のほとんどをコンビニ弁当に使ってしまう程の過食症らしく、食欲と性欲のコントロールができない彼女は、スカトロプレイ時に客の糞を食べる癖があった。
小指が欠損した静香には殺人の前科があった。
盲目のマリアはアル中の父親に身売りされた女だった。
そして、車椅子の華子はオリンピックにまで出場した元水泳選手のアスリートだった。
そんな嬢たちの過去を聞かされて衝撃を受けていた恵美だったが、しかし、その中でも一番衝撃的だったのが沙織だった。
原山にいつも待機所で犯されているあの廃人のような少女は、なんと原山の実の娘なのであった。
(つづく)
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