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ストレス1

2013/05/30 Thu 18:10

ストレス1




 広美は人妻だった。今年で三十を迎えようとしていた。
 この女は、脳が蕩けるほどに卑猥で、全身が痺れるほどに残酷なセックスが好きだった。要するに『被虐的なセックス』にしか感じない女だった。
 旦那は普通のサラリーマンだった。名古屋市でアイスクリームを製造する会社で営業の仕事をしていた。広美が二十五才の時、市役所に勤める父の上司の勧めで満男とお見合いをさせられた。そのとき満男は三十才を越え、既に豚化しつつあった。
 その半年後、父とその上司から強行に説得され、強引に満男と結婚させられた。いきなり郊外の小さな家を三十年ローンで買わされ、そこで好きでもない男と生活させられた。その二年後、市役所を定年退職した父の上司はアイスクリーム工場の専務となり、同じく去年定年退職した父も、今ではそのアイスクリーム工場で清掃管理部長として働いていた。つまり、父の上司と父は、天下り先を確保する為に広美を売ったのだった。
 十才も年の離れた満男との暮らしは最悪だった。日に日にブクブクと太ってばかり行く満男は本格的に豚と化し、決まって毎朝聞かされる凄まじい放屁は聞くに耐えられなかった。
 しかし、そんな満男は広美を異常なほどに愛していた。会社や近所でも愛妻家としてもてはやされる満男は益々有頂天となり、異常なほどに広美を愛し、そして氷のグラスを扱うように大切にした。しかし、それは端から見れば『愛』かも知れないが、広美からすればそれはただの束縛にしか過ぎなかった。満男は愛しているという大義名分で広美の自由を束縛しているだけであり、ただ単に独占欲が強いだけなのだ。
 満男は病的なほどに嫉妬深く、そして異常なほどの強迫観念を持つ男だった。だから広美がスーパーに買い物に行くだけでも、浮気をされるのではないかと勘ぐり、そしてスーパーへ向かう道路でトラックに轢き殺されるのではないかと、常に不安と恐怖に襲われていた。
 あるとき、広美は満男のパソコンデスクの引き出しに隠されている薬の袋を発見した。その袋には精神科の病院名が記されていた。
 当時、広美もその精神科に通っていた。極度なストレスによるウツ病と診断されたため、定期的にカウンセリングを受けていた。だからその薬の袋に書いてある病院名を見てすぐにそこが精神科だとわかったのだった。
 袋の中には青い錠剤が入っていた。さっそく裏の銀紙に記された薬の名前をネットで調べると、それは『強迫性障害』に効く抗うつ剤だった。奇しくも満男と広美は、互いに内緒で同じ精神科に通い、そして同じ成分の薬を処方されていたのであった。
 そんな強迫性障害に精神を冒されていた満男は、必要以上に広美の自由を束縛した。どこに行くにも満男に申告しなければならず、そして出掛ける前と帰宅後には必ず満男に連絡を入れなければならなかった。
 夜の外出は例え実家に帰ると言っても許されなかった。隣りの駐車場に置いてある自販機にジュースを買いに行く事すら禁止されていた。
 携帯にはGPS機能が勝手に付けられ、そして自宅のキッチンとリビングには監視カメラが設置されていた。常に満男はアイフォンで広美の所在を確認していたのだった。
 そんな生活に広美は気が狂いそうだった。しかしいくらそれを訴えても満男は聞き入れてくれなかった。愛と束縛をはき違えた異常者は、おまえを愛してるんだ、おまえが心配なんだ、というだけで、一向にそれをやめようとはしなかった。
 しかしそんなある日の夕方、大型スーパーに買い物に行った帰り道、広美はついに切れた。あの監視された生活にはもう我慢できないと思った瞬間、「もういや!」と金切り声で叫んでおり、気が付くと駅前のゴミ箱の中にスーパーの買い物袋を投げ捨てていたのだった。
 そのまま意味もなく地下鉄に飛び乗った。地下鉄は相変わらず混んでいた。なんとか吊り革に掴まる事ができたものの、しかし、新栄町の駅に着くと更に乗客は増え、とたんに広美は、息もできないくらいの人の群れの中に押し込まれてしまった。
 その男の荒い息づかいに気付いたのは覚王山駅を過ぎた頃だった。
 背後にピタリと張り付いた男は、グレーのスーツを着た五十才くらいのサラリーマンで、湿った犬のような据えた臭いを発していた。男は広美の右肩に顔を乗せ、広美の耳元にハァハァと気色の悪い呼吸を吐きかけていた。痴漢だと思った広美が右肩をずらしながら男の顔から逃れようとすると、不意に男が広美の耳元に囁いた。

「知っとるぞ……」

 広美の肩がピタリと止まった。

「知っとるぞ……」

 男は広美の耳元に、何度も同じ事を何度も繰り返していた。どうやらこの男は頭がおかしいらしい。
 広美は目玉をゆっくりと移動させ、そんな男の顔を見た。ブヨブヨに浮腫んだ顔には赤い吹き出物が無数に広がっていた。脳天の皮をベロリと捲られたような剥げ頭だった。
 男は広美と目が合うなり不敵に微笑んだ。その顔に全く見覚えはなかった。
 すると突然男の手の平が、広美のタイトスカートの尻に張り付いてきた。太い指で尻の谷間をスーッと撫で、問答無用で肛門辺りをグリグリと押し、「いいケツしてるな」と囁きながら、男がその手を前に滑らせてきた。
 そんな大胆且つ強引な痴漢行為に、元々被虐願望を持っていた広美は胸底から涌き上がるエロスを感じた。大勢の人の前で、見ず知らずの男に下半身を触られるなど、マゾヒストの広美にとってはエロス以外の何者でもないのだ。
 広美の太ももの上で男の指が蠢いていた。タイトスカートの裾がスルスルとたくし上げられ、スカートが骨盤まで捲れ上がると、男の指は広美の閉じた股間の隙間に滑り込んで来た。
 男はパンティーの上からクロッチをグイグイと押し、「変態」と小さく呟いた。そして、獣のような口臭で「知っとるぞ……」とまた呟いたのだった。

 いったいこの男は私の何を知っているんだろう。そう思いながら広美は下唇をギュッと噛みしめていると、不意に斜め前に立っていた学生服の少年と目が合った。
 少年は広美の目と、痴漢される広美の下半身を交互に見ていた。中学生と思われる少年は背が低いため、人と人との隙間から広美が痴漢されるシーンを見る事ができたのだ。
 本来ならば、そこでその少年に助けを求めるものだが、しかし広美は違った。自分のこの卑猥な姿を、少年のその透き通った目で見られる事により、マゾヒズムな欲情をムラムラと涌き上がらせてしてしまっていたのだ。
 パンティーの上からクリトリスを転がされる広美は、蕩けた視線を少年に向けると、今夜この少年はこのシーンを思い出しながら必ずオナニーするだろうと思った。暗い自室の布団の中でシコシコと蠢き、まだ皮も剥けきれていないペニスから青臭い精液をピュッピュッと飛ばしている、そんな少年の姿をムラムラと妄想しながら敏感なクリトリスを攻められていた広美は、そのまま見ず知らずのサラリーマンの指で果ててしまったのだった。
 男はそんな広美の様子に気付いたのか、嘘だろ、とせせら笑いながらパンティーの中に指を入れてきた。ヘソから忍び込んで来た男の指は、陰毛をジリジリと掻き分けながら肉のクレバスに潜り込んで来た。広美が閉じていた太ももを緩めると、男の太い指はそのままヌルヌルのワレメの隙間にツルンっと滑り込み、濡れた陰唇をいやらしく確認した。

「もうドロドロに濡れとるやねぇか」

 男は広美の耳元にそう囁くと、ケケケと笑いながら不潔な指を穴の中に滑り込ませて来た。グジュグジュグジュっといやらしい音を立てながら膣を掻き回した。
 大勢の人がいる電車の中で、見知らぬ男にいきなり尻を触られ、指で膣を掻き回され、耳元にいやらしい言葉を囁かれるという、そんなエロスに一人悶々と身悶えていると、いつしか電車は藤が丘駅に到着しようとしていた。

「ここで下りるんやろ。俺はおまえの事はなんでも知っとるぞ」

 男は広美を誰かと間違えているのか、自信満々でそう囁くと、慌ててパンティーの中から手を抜いた。そしてそのドロドロに濡れた指をクンクンと嗅ぎながら、もう片方の手で広美の手首をギュッと握った。

「俺に付いて来い。絶対に逃げたらあかんぞ。もし逃げたら、おまえのやっとる事を全部会社にバラしたる。そうなったら全てパァや。あれがバレたらおまえも保育園も全部おしまいや。わかっとるやろ、そうなったら損するのはおまえと井出山さんだけや。オデシスも納屋橋の税理士も知らん顔するに決まっとるわ」

 そう男が意味不明な事をブツブツと呟いていると、電車はギギギッとブレーキの音を軋ませながら藤が丘の駅に到着した。
 男と並んで電車を降りた。出口に向かってゾロゾロと歩き出す人の波に紛れた。男は歩きながら自分の靴の爪先を見つめ、「麻原のバカが」と苦笑いしていた。逃げようと思えば簡単に逃げれた。が、しかし、股間を疼かせる広美はそれをしようとはしなかった。
 駅を出ると、すぐ目の前にマツザカヤストアの看板が赤く輝いていた。
 男の後に付いて横断歩道を渡った。男は時折後を振り向き、広美が付いて来ているかを確認すると、妖怪のような顔を浮かべてニヤリと笑った。
 賑やかな大通りを渡ると、突然巨大な工場が現れた。そこを囲うフェンスに沿って巨大な駐輪場が伸びており、遥か彼方まで自転車が並んでいた。
 男は薄暗い駐輪場の奥へと潜り込んだ。錆びた放置自転車が山積みにされている一角で足を止めると、通りから死角になった暗い場所に広美を立たせ、「マンコ見せろ」と眉間に皺を寄せた。街灯にぼんやりと照らされた男の顔は、鬼のような形相をしていた。
 広美は抵抗しなかった。素直に指でスカートをたくし上げ、パンティーを闇に浮かび上がらせると、立ったままクロッチをズラして黒々とした陰毛を曝け出した。そんな陰毛の奥は既にドロドロに濡れている。

「アホか。パンツも脱ぐんだて。脱いでそこにしゃがんで股開きゃあ」

 男はそうニヤニヤと笑いながら指をポキポキと鳴らした。「ベロベロのマンコ見せてみゃあ」と嬉しそうに笑いながら、いきなり広美の胸を鷲掴みにした。
 不意に広美は泣き出した。別に何も怖くなく、何も悲しくはなかったが、何故か涙がポロポロポロポロと頬を流れた。

「泣いてもあかんて。あんた、自分が直樹君にやった事をよーく考えてみゃあ、泣きたいのは直樹君の母親のほうやて」

 広美は直樹君が誰なのか知らないが、とにかく泣きながらウンウンと頷いた。その直樹君が誰に何をされたのかは全く知らないが、広美はポロポロと涙を流しながら、「すみませんでした……」と呟き、パンティーのゴムに指を引っかけた。 
 広美の真っ白な太ももを、薄ピンクのパンティーがスルスルと滑り降りた。それは随分と履き古した木綿のパンティーだった。ゴムは捩れ、縫い目からは糸が飛び出し、クロッチは毛玉だらけだった。
 足首からそれをソッと抜き取ると、男はいきなりそのパンティーを奪い取り、街灯の明かりに開いたクロッチを照らした。

「やっぱりやないか! 佐藤の親父が言ってた通りやないか!」

 男はそう怒鳴りながら、そのテラテラと輝くクロッチをクンクンと嗅ぐと、更に声のトーンを高くして「醤油みたいな匂いやないか!」と、また怒鳴った。男は、いきなりパンティーを拳の中に握りしめると、それを力任せにコンクリートの床に叩き付けた。そして夜空を指差しながら、「イチ、キュウ、ロク、ロク、ピー!」とロボットのような奇声を上げると、床のパンティーを靴の踵でガシガシと踏み躙り、「高橋部長が泣いとるわ!」とそれに唾を吐いたのだった。
 そのまま男は広美の足下にしゃがみ込んだ。広美の太ももを両手で押し開き、肩幅ほどに股を開かせると、また指をポキポキと鳴らした。
 濡れた股間を夜風が通り抜けていった。生温い風はネトネトの陰毛と湿った肛門を優しくくすぐった。
 男はそんな股を下から覗き込みながら、「人殺しのマンコは薄汚いでいかんわ」と呟き、陰毛の先にぶら下がっていた雫を指先でプツンっと潰した。
 男はそこを覗きながらズボンを膝まで降ろし始めた。そして勃起したペニスをそこに突き出すと、自らそれをシコシコとシゴき始めた。
 それは、百円ライターほどの小さなペニスだった。飛び出した亀頭は妙に赤く、カリ首の裏には白くてネチャネチャした恥垢がびっしりと詰まっていた。
 男は広美の股間を覗きながら意味不明な言葉を繰り返していた。「おまえが直樹君にした仕打ちをよーく考えてみろ」と言いながらそこに指を伸ばし、ドロドロに濡れた陰唇を指で広げては、また、「イチ、キュウ、ロク、ロク、ピー」とロボットのような奇声を上げた。
 そんな狂った男を見下ろしながら、広美は今までにない興奮を感じていた。こんな場所でこんな男に猥褻行為をされている自分を客観的に見つめ、異様な興奮で背筋をゾクゾクさせていた。
 そのまま広美は全裸にされた。全裸でコンクリートの上に四つん這いにされながら何度も何度も背中に唾を吐かれ、この屈辱感に性的欲望をムラムラさせていた。
 尻を平手で叩かれた。ピシン、ピシン、と乾いた音が静まり返った駐輪場に響いた。

「でっかい尻だ。この尻で直樹君を殺したのか」

 そういいながら男は、四つん這いになった広美の尻に頬擦りし、そして左の尻肉に噛み付いた。尻、腰、横腹と順番に甘噛みしながら、タプタプと垂れ下がっている乳に手を伸ばした。「牛だ牛だ」と下品に笑いながらそれを手の平でスリスリと摩り、乳首をゴムのように引っ張ったのだった。

(つづく)

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