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路地裏の妻6

2013/05/30 Thu 18:08

路地裏の妻6



 ストッキングで両手を縛られたまま卓袱台の上に顔を押し付けられていた私は、不安定な状態で四つん這いにされていました。
 誰にヤらせたんだという夫の言葉が、脳で轟く黒い渦に巻かれ、まるで家庭用の流し素麺の機械のように頭の中をぐるぐると回っていました。

「ここを、こうやって舐められたのか……」

 夫の舌が、私の汚れた性器をベロリと滑りました。
「やめて!」と私は慌てて叫びました。そこには、あの男の精液が飛び散っているのです。性器にも陰毛にも肛門にも、見ず知らずの男の乾いた精液が付着しているのです。それを夫は舐めているのです。

 私は抵抗しました。両手を縛られ身動きできない私は、「やめて、お願い、いや」と必死にお尻を振りながらその舌から逃れようとしました。すると、不安定な卓袱台がグラグラと揺れ、お茶が半分入っていた湯飲みが畳に転がりました。

「暴れるな。卓袱台がひっくり返って子供が目を覚ますぞ」

 その冷たい口調は、まるで脅迫しているようでした。
 夫はもはや全くの別人でした。ぴちゃ、ぴちゃ、と下品な音を立てて陰部を舐めているこの人は、いつものあの優しい夫ではなくなっていました。
 私は卓袱台に頬を押し当てながらジッと目を閉じていました。
 悪いのは私なのです。私が夫を裏切ったのです。子供に新しいリュックサックを買ってやりたいというだけで不貞を働き、夫を狂わせてしまったのです。だからこれは罰なのです。たかが四万円で夫を裏切ってしまった報いなのです。
 そう自分に言い聞かせながら、黙ってジッと目を閉じていた私は、闇で渦巻く黒い渦を目で追っていました。
 頭痛、胃痛、吐き気、悪寒、尿意。それらが夫の舌の感触と共に一気に体中を駆け巡りました。私は「ぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ」と叫びたい感情を必死に堪えながら、卓袱台の上に、涎の丸い水溜りを作っていました。

 夫の舌先はヌルリヌルリと割れ目を通過すると、肛門をチロチロとくすぐりました。そしてそのまま尻の谷間をすり抜けると、ゆっくりと体を起こしました。

「どこでヤったんだ……」

 夫はそう言いながら私のお尻を両手で固定しました。
 私が黙っていると、「ラブホテルか……車の中か……それともどこかの公衆便所ででもヤッたのか……」と呟きながら、そのコリコリとした肉の塊で、ドロドロに濡れた襞を掻き分けてきました。
 まさかパチンコ店の駐車場ですとは言えませんでした。いえ、それどころか、そんな行為があった事は口が裂けても言えません。
 だから私は「違います……そんな事してません……」と呟きました。
 すると夫は、急に太い声で「嘘をつくな」と唸ったのでした。

「このパンツを見てみろ……変な汁がべっとりと付いてカピカピになってるじゃないか……これはどう見ても精液じゃないか……」

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 四つん這いで沿っている背筋がゾッとしました。
 確かに私は、あの時それを拭き取らないまま慌てて下着を履きました。そしてすぐにSEIYUのトイレに駆け込み、洗浄便座のビデで陰部は洗ったのですが、下着までは洗っていなかったのです。
 だけど正直に言うわけにはいきません。正直に話せば、余計を夫を苦しめるだけなのです。
 だから私は、「違います、今日は厨房が異様に暑かったんです。だから、それはきっと汗です」と、嘘をつきました。
 すると夫は「ふん」と鼻で笑いました。そして皮肉混じりの口調で、「男なら見ればわかるんだよ」と私の背中に吐き捨てると、そのままペニスを根元までヌルヌルと滑り込ませ、「あああ……」と深い息を吐いたのでした。

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 それが挿入された瞬間、頭の中で渦巻いていた黒い渦が一瞬止まりました。
 こんな状態でのセックスは生まれて初めてでした。性嫌悪障害だった私は、暗闇の寝室でしか夫を迎え入れた事がなかったのです。
 夫の腰が動き始めると、それに合わせて黒い渦もゆっくりと動き始めました。
 カサッ、カサッ、カサッ、と、夫の膝と畳が擦れ合う音がリズミカルに響いていました。その音をジッと目を閉じたまま聞いていると、肌と肌とがぶつかり合う、ポタン、ポタン、という音や、粘膜が擦れ合う、くちゃ、くちゃ、という湿った音も微かに聞こえてきました。

「どうしてこんなに濡れてるんだ……」

 夫はそう言いながら私の脇の下に手を入れてきました。そしてそこから乳房を揉みしだきながら、「その男とのセックスを思い出して感じているのか?」と聞いてきました。
 私は、体をユッサユッサと揺らされながら「そんな人いません」と答えました。
 すると、いきなり夫の腰が早くなりました。今まで、パン、パン、と鳴っていたリズムが、パンパンパンと激しくなり、顔を押し付けていた卓袱台が、四年前の三月十一日のようにギシギシと揺れ出しました。

「正直に言えよ……ハァハァハァハァ……売春したんだろ……金で男に抱かれたんだろ……」

「違います……そんな事してません……」

「じゃあ、あの精液は何だよ……ボーナスの御礼に弁当屋の親父にヤらせてやったのか……」

「違います」

「違いますって、あれは明らかに精液じゃないか……中出しさせたんだろ? それがパンツに滲み出てカピカピになってたんだろ」

「セックスはさせてません!」

 そう答えてしまった私は、慌てて下唇を噛みました。
 しかし、もう後の祭りでした……。

 夫は「やっぱりな……」と呟きました。私のお尻をおもいきり叩きながら「じゃあ何をさせたんだ!」と怒鳴りました。
 ピシャン! っと乾いた音と共に、私の上半身が卓袱台の上から滑り落ち、私は後手に縛られたまま畳の上に転がりました。
 そこで初めて豹変した夫の顔を見ました。
 やはりその人は全くの別人でした。大人しい人ほど怒ると怖いとよく言いますが、まさに今の夫のその表情は鬼のような凄まじい形相をしており、あの気弱で穏やかな表情は消え失せているのです。
 ギロリと剥き出したその目は、まるで、今から人を殺そうとしているような、そんな病的な輝きが宿っていました。
 その、今までに見た事のない恐ろしい目に怯んでいると、いきなり夫は、そのまま畳の上にゴロリと寝転がりました。
 ドロドロに汚れたペニスが、蛍光灯の光でギラギラと輝いていました。ピーンッと突き出たそのサイズは、然程大きなモノではありませんでしたが、しかし性嫌悪障害で男根恐怖症の私の目には、それは鋭利な刃物くらい危険な凶器に映っていました。

「上に乗りなさい」

 夫は天井をジッと見つめたままポツリと呟きました。
 私は正常位以外の体位を知りません。今までに正常位でしか入れられた事はありません。
 それは、夫が一番良く知っている事でした。
 結婚当初、一度だけ夫は、私を背後から愛そうとした事がありました。しかし、お尻の谷間に亀頭を感じた瞬間、私は途端に発作を起こしてしまい、まるで子供のように泣き出してしまったのです。
 それ以来、夫は正常位しか求めて来なくなりました。それが私たち夫婦の、夜の生活における暗黙のルールだったのです。

 私は、後手に縛られたままモゾモゾと起き上がりました。そして天井を見つめている夫の顔をソッと覗きながら「できないよ……わかってるでしょ……」と囁きました。

「そいつとは、どんな体位でヤッたんだ……」

「本当にそんな事してないって」

「じゃあ何をしたんだ」

「………………」

 思わず私が口ごもると、その瞬間、天井を見つめていた夫の目が再びギラリと輝きました。そしてその病的な目でギロッと私を睨みながら、「黙って上に乗りなさい……逆らうと、殺すよ……」と呟くと、まるで喧嘩相手の胸ぐらを掴むように私の上着の胸元を乱暴に掴んだのでした。

 ここで逆らっては本当に危険だと思った私は、ポロポロと涙を流しながら夫の腹の上に跨がりました。
 その瞬間、夫は凄い勢いで私の体を引き寄せました。寝転がったまま抱きしめ、そのまま私の上半身を身動きできないように固定してしまいました。
 夫の左手が私の後頭部を押さえ付けてきました。顔が接近し、互いの唇が触れるなり、今までにない乱暴なキスをされました。
 そして右手は自分のペニスを掴んでいました。その先を、跨いだ私の陰部にグニョグニョと擦り付け、私の口内で「んぐ、んぐ」と呻いていました。

 私は、強烈な嫌悪感と恐怖に包まれていました。硬い肉棒が割れ目でぐにょぐにょと蠢いているその感触は、まさに「今から殺しますよ」とナイフを突き付けられているような恐怖であり、脳の中が滅茶苦茶になっていました。
 ベプっと舌が抜かれると同時に、亀頭がヌルっと侵入してきました。
 あまりの恐怖から、おもわず「あああっ!」と叫んでしまうと、夫は私の耳元に「気持ちいいだろ」と、いやらしく囁きました。
 夫の腰が動き出しました。夫のお尻が畳に擦れ、カサカサという音を奏でると、それに合わせて結合部分が、くちゃっ、くちゃっ、と音を立てていました。
 そんな卑猥音と膣の異物感により、私の意識は朦朧として来ました。
 私の耳元で夫が何か必死に囁いていましたが、しかし、もはや私の頭脳では何を喋っているのか全く理解できなくなっており、その囁きはまるで小川のせせらぎのように聞こえていたのでした。
 夫は、必死に何かを囁きながらも、腰の動きを激しくしてきました。
 ガンっと突き付けられる度に、無意識に私の口から「あん」という汚らわしい声が漏れていました。
 ガン、あん、ガン、あん、ガン、あん。
 それを繰り返していると、ふと、夫のうなじにバスクリンの香りを感じました。
 その途端、(こんなはずじゃなかったのに)という言葉が頭に浮かび、私の感情が一気に高ぶりました。

(私は夫や子供に喜んで貰いたかっただけなの! バスクリンの香りに包まれて、ひとときの安らぎを感じたかっただけなの! それなのに、どうしてこうなってしまったの!)

 そう心の中で叫ぶと、ペニスがズボズボとピストンしている穴に、何ともいえない快感がジワジワと涌き上がってきました。

(えっ?……えっ?……何コレ?……)

 戸惑う私に、夫が囁きかけました。

「好きなんだろ……本当はこんなセックスが好きだったんだろ……」

 その囁きは、はっきりと聞き取れました。

「僕以外の男と、いつもこんな事してるのか……こんな風にズボズボとされているのか……ほら、ヨガれよ……いつも男達とヤッてる時みたいにヨガってみろよ……」
 それはまるで暗示をかけられているようでした。
 そう囁く言葉を、朦朧とする意識の中で解読していると、その囁きがまるで本当の事のように思えて来たのでした。

「中出しされたんだろ……ここに、いっぱい出されたんだろ……ほら、正直に言えよ……」

 私はクラクラと目眩を感じながらも、夫の耳元に「はい……いっぱいかけられました……」と呟きました。
 一瞬、夫の腰が止まりました。
 夫は、まさか私の口からそんな言葉が出て来るなどと夢にも思っていなかったのでしょう、今度は夫が愕然としながら身を潜めていました。
 そんな夫の細い肩に抱きつきながら、私は自ら腰を動かし始めました。
 腰を振る度に、にゅる、にゅる、という感触が穴の中に走りました。その感触が脳に伝わり、それが私の口から「あん」という言葉となって吐き出されました。
 激しく腰を振ると、私の股と夫の太ももとが衝突し、パコン! パコン! という下品な音を立てました。その音が激しくなると共にその快感も比例し、私は狂ったように腰を振りながらその音を奏でました。

 夫は未だ愕然としていました。乱れた妻の姿を初めて目の当たりにした夫は、まるで金縛りに遭ったかのように固まってしまっていました。
 私はそんな夫のうなじに顔を埋め、バスクリンの香りを胸一杯に吸い込みました。そして狂ったようにまた腰を振り、夫の耳元で卑猥な喘ぎ声をあげていました。
 暫くそれを続けていると、ジワジワと涌き上がっていた快感が、私の頭の中で突然一つの塊になりました。その塊は、腰を振る度に大きくなっていき、まるで風船に空気を入れているようでした。
 その風船が、頭の中一杯に膨らみました。
 割れる、割れる、と脅えながらも、それでも私は空気入れのポンプのように腰を振り、パコン! パコン! という音を響かせました。

 その風船が遂に破れました。
 それは、「うっ!」と夫が唸ると同時に弾けました。
 夫の精液が次々に私の穴の中に注ぎ込まれていきます。夫は「うっ! うっ! うっ!」と断続的に唸りながら、腰をビクン、ビクン、と跳ね上げていました。
 すると、夫のその勢いを弾き返すかのように、私の尿道から生温かい尿が溢れ出しました。
 その放尿感とピストンされる快感が一つになり、私は今までにない快感の渦に巻かれました。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 まるで遊園地のコーヒーカップに乗っているような感じでした。
 グルグルに乱れながら夫にしがみつくと、既に腰の動きを止めていた夫が、私の耳元にソッと囁きました。

「殺してやる……」
 
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(つづく)

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