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仕事もなく毎日毎日部屋でゴロゴロしていた時期がある。
その頃、私は東中野にある3階建ての小さなマンションに住んでいた。2DK家賃5万の築18年。エレベーターもなく階段の電気はいつもパカパカと切れそうだ。非常階段には一匹の野良猫と一匹のホームレスが住み着いており、いつもエロ本とコンビニの弁当が散乱していた。そんなオンボロで汚いマンションだった。

仕事もなく金もなく女もなくやることもない。まだそんなにネットが出回ってない時代だったから、オナニーのネタはもっぱらアダルトビデオ。その頃の私なら就職時の履歴書の趣味の欄に迷う事なく「自慰」と書いただろう。そんな私は、朝から晩までヘッドホンを耳に当ててはペニスをシコシコさせ、人生の唯一の楽しみであるオナニーに耽っていたのであった。

そんなある日、一日中マンションに閉じ篭りグァム島に隠れる元日本兵の横井庄一みたいな暮らしをしていた私の耳に、ガタン!ドタン!という音が、外の階段から聞こえて来た。
「お?新入りか?」と、まるで刑務所の雑居房の主のように窓から顔を出す私。暇で単調な毎日を送る私には、新しい入居者が入っただけでも暇つぶしになる。

マンションの駐車場には引っ越しセンターのトラック。その荷台から冷蔵庫や洗濯機を運び出すアリのような男達。奴らの運び出す荷物はどれもパステルカラー系のポップなデザインだ、私は、どうか若くて独身で綺麗なお姉ちゃんでありますようにとアリさん達に念力をかける。

「あ、それも一緒に運んで下さい」
マンションの玄関に見え隠れする女性の影。私の部屋の窓からは顔は見えないが、髪の色やファッション、その声からして20代の若いお姉ちゃんだ。
よしよしアリさんよくやった、あとは独身って事だけよろしく頼むぜ。と引っ越しセンターのお兄さん達を眺めながら心で呟いた。

ドタガタと3階のフロアが騒がしくなってきた。「そこ、もう少し傾けて、よし、行くぞ、せぇの!」などとアリさん達の声が響いている。そう言えば私の部屋の隣りは空室だ。もしかしたら・・・いや、間違いないだろう、この階には私が潜む301号室とその隣りの空室302号室、そして小汚ねぇスピッツを3匹も飼ってる老夫婦が暮らす303号室の3部屋しかないのだ。
私はどんなヤツが隣りに越して来たのかワクワクドキドキだった。日頃は暇で暇で死にそうな私には、これはとんでもない大イベントなのである。
以前、隣りの302号室に住んでたヤツは最悪だった。電気工事の出張で新潟から来ていた吉田戦車に出てくるカブトムシのような親父だったが、こいつはとにかく生活音がうるさいったらありゃしない。テレビの音や洗濯機の音ならまだ辛抱できるが、朝方に鳴り響くドボドボドボという小便の音(必ず毎朝4:30。歳なのでいつも決まった時間)と、三十分に一回の割合で吐き出される「カーッ!」と痰を切る声、そしてゲリラで発せられる物凄い大音量の屁。ベランダの窓を開けていると突然「パオーン!」と聞こえて来るその屁の音に私は脅えながら、実は隣りの親父は密かにアフリカ象を飼っているのではないかと心配になったくらいだ。

それほどこのマンションの壁は薄い。ま、建てられたのが18年前だし、姉歯が云々と騒がれるずっと以前の事だし仕方がないといえばそれまでなのだが、しかし、それにしてもこのマンションの生活音は全て筒抜けであり、だから私はオナニー時のヘッドホンはかかせないのであった。

そんなプライバシーのかけらもないマンションだから、隣りに越して来るヤツがどんなヤツかで私の今後の生活ライフは大きく変わるのであった。

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足を忍ばせ玄関に行くと、息を殺してドアスコープからフロアを覗き込む。アリさん達がタンスを包んでいた毛布をエッサホッサと剥がしていた。
正面の303号室の扉が開き、何事かと老婆がフロアを覗き込んだ。
と、その時、いきなり扉の隙間から「キャンキャンキャンキャン」と薄汚いスピッツが3匹、猛烈な勢いで飛び出してきてアリさん達が手にする毛布に襲いかかる。私もあの獰猛なスピッツには何度スニーカーを盗まれた事だろう、玄関を開けっ放しにしていると必ずといっていいほど奴らは私のスニーカーを喰わえ自宅に持ち帰った。あの老婆はスピッツを使い強奪をさせているのではないかと疑ったくらいだ。

「こら!ユキヤちゃん!噛んじゃダメでしょ!」
老婆は太ったネズミのようなスピッツに向かって怒鳴る。ここのスピッツは、ユキヤ、トモヤ、カズマと、なぜか落ち目のホストのような名前を付けられていた。
「うわーっ!かわいいー!」
突然響く黄色い声。私は「隣人だ!」と目が潰れんばかりにスコープに右目を押し付ける。
「私、スピッツとっても好きなんですぅ・・・」
そう言いながら床にしゃがみ込む若い隣人は、薄汚い3匹のスピッツの新たなる標的にされ、スピッツはいったい何がしたいのか隣人に体当たりを繰り返していた。
「今日、引っ越してきたの?」
目を細めながらスピッツを見つめる老婆が話しかけた。見ればわかるだろ。

「はい。私、大野と申します。よろしく御願いします」
隣人は立ち上がりそう挨拶すると、どこに持っていたのかタオルを3枚老婆に渡した。
そのタオルを目掛けてスピッツ達の壮絶なバトルが開始された。

「これはこれは、どうも御丁寧に・・・」と老婆はタオルを受けとりながら、老婆のサンダルに噛み付くカズマを蹴飛ばした。
「アナタ、いくつ?」
老婆は電池の切れかかったリカちゃん人形のような声で隣人に聞いた。
「23歳です」
「あらあら若いのねぇ・・・旦那さんと御一緒かしら?」
そうだババァ!もっと個人情報を聞き出すんだ!
「いえ、独身です」
私は無言でガッツポーズを取った。そして、もし今度引っ越しすることがあったら、アリよ、必ずおまえに頼むからな、と静かに礼を言った。
「学生さん?」
「いえ、すぐそこのデパートで働いてます」
デパートか・・・あの雰囲気なら1階のギャル系店の店員だな。
「それじゃ・・・」と老婆にペコリと頭を下げた隣人は、いきなり私の覗くスコープにクルリと振り返った。
(うわぁ・・・メチャクチャかわいい・・・・)
私は彼女のその少しケバいメイクに、とたんにキャバ嬢を連想してしまい思わずニヤけてしまった。

「・・・その部屋にも挨拶行くの?」
私の部屋のチャイムを慣らそうとした彼女に老婆が話しかけた。
「えぇ・・・」
「・・・やめといたほうがいいよ・・・そこの男、なんか気持ち悪いんだから・・・」
こらぁ!おまえのその蝋人形のような顔の方がよっぽど気持ち悪いわ!
「何をしてるのやら、仕事もせずに毎日部屋の中でゴソゴソしててね・・・なんか気味が悪い人だよ・・・」
ドアホ!ゴソゴソって、生きてるだけじゃボケ!
「そう・・・なんですか・・・」
彼女はチャイムを押す指を躊躇い始めた。
「ウチのおじいちゃんと言ってたんだけどね、ここの男、もしかしたら過激派じゃないのかって・・・爆弾作ってるかも知れないから気をつけたほうがいいわよ」
このバカちんが!どけんしてそげんこつ言うね!隣りのお姉ちゃんが怖がってしまうやろうも!

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「あ、でも、一応・・・」
そう笑いながら彼女は私の部屋のチャイムを鳴らした。
ピンポーンのポーンが鳴り止まないうちに「はーい!」と明るくドアを開ける私。
「あっ!ヤダねこの人、ドアで聞き耳立ててたよ」と老婆が入れ歯をカポカポさせた。

「あのぅ、私、隣りに引っ越して来た大野と申します。よろしく御願いします・・・」
彼女は幾分か引き攣った笑顔で私に笑いかけ、手にしていたタオルを差し出した。
「あ、そうですかそうですか、これはこれは御丁寧にどうも」
タオルを受けとると、それを目掛けてスピッツ達が突進してくる。私は馬鹿犬にタオルを奪われまいとタオルを頭上に上げた。とたんにランニングシャツの私の脇からモァ~っと今日一日貯蓄された汗の香りがフロアに漂った。
「うっ!」と、これみよがしに貰ったばかりのタオルを鼻に押し当てる老婆。「ユキヤちゃん!トモヤちゃん!カズマちゃん!こっちいらっしゃい!そっち行ったらダメよ!」と電池の切れかかった声を張り上げる。

「ま、越して来たばかりでわからない事もあると思いますが、遠慮せずに何でも聞いて下さい」
私がそう笑いかけると、彼女は少し安心したような表情に戻り「ありがとうございます」と頭を下げた。
「あ、それと、そこの非常階段は使わない方がいいですよ。階段の下にホームレスが住んでましてね、ウンコとかしてますから」
私は、私なんかよりももっと気味の悪いヤツがこのマンションにいるんだぞ、と言わんばかりに、彼女の不安材料をホームレスのおっさんになすり付けてやった。
「八代さんは階段なんかでウンコなんかしないよ・・・」
しかし老婆がホームレスを庇ったことにより、私の目論みはいとも簡単に崩れた。

「あっ!」
ドアの隙間から潜り込んだスピッツが、またしても私のスニーカーを喰わえたまま老婆の部屋へと逃げて行く。
「こら!返せこのヤロウ!」
私は裸足のまま猛スピードで逃げるスピッツを追う。
老婆が「やめなさいカズマちゃん!そんな汚いもの噛まないで!」と叫びながら部屋の中へと消えて行く。
それを見ていた彼女は、明るい笑顔でケラケラと笑いこけるのであった。



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夢も希望もなかった私に、ふいに訪れた人生の楽しみ。そう、隣人観察である。
あんな可愛いお姉ちゃんとひとつ屋根の下で暮らせるというこの悦び。AVビデオなど比べ物にならない快感であった。

まず、何よりも嬉しいのがトイレである。301号室と302号室のトイレは隣同士に並んでおり、その中で繰り広げられる凄惨な音は全て聞き取れるようになっていた。以前はこれが苦痛で苦痛で堪らなかった。カブトムシ親父の小便の音と痰を切る声と、つい「わぁ!」と声を出して驚いてしまうほどの大きな屁。これが毎回聞こえて来てはノイローゼになる寸前だったのだ。

しかし今は違う。彼女がトイレに入った音を確認すると、グラス片手に急いでトイレに向かい、トイレの壁にグラスを押し当てては耳を傾けた。
「チョロチョロチョロ・・・」というソーメンのように細い音。カブトムシ親父のドボドボドボという野太いとはまったく違った。

小便が終わると、カラカラカラ・・・というトイレットペーパーを回す軽やかなリズム。糞親父の時はガタガタガタという不快なリズムだったのに、使う人間が変わるだけでこれほどまでに変わるものまのだろうか。
そしてその後に聞こえる音がなんともイイ。カサカサカサ・・・というオマンコの小便を拭き取る音。私の想像力がガッバガバに湧いて来る。
薄い壁1枚挟んだだけのその狭い空間で、私は彼女のそのカサカサという音を聞きながらフィニッシュするのが日課となっていたのであった。

そんなある日、彼女が仕事に出掛けて行くのを見計らい、私は彼女の部屋のベランダへと侵入する事にした。
ベランダ侵入はいとも簡単である。私は事前に、ベランダを遮っている『非常の際にはここを破って隣戸へ避難できます』という扉壁をドラバーで取り外していたからだ。
私は外から見られぬよう腰を屈めながら、その扉壁を少しズラした。
引っ越して来たばかりで、ベランダに何も荷物が置かれていない為にそんな狭い隙間でもすんなりと通り抜ける事ができた。
当然、窓の鍵は掛かっていた。わかっていながらも、少しだけ希望を持っていた私は少しだけがっかりした。
カーテンの隙間から部屋の中を覗く。電気が消された薄暗い部屋ではあったが、若い女のひとり暮らしらしく綺麗に整理整頓され、とても明るく思えた。

すぐ目の前にあるベッドが乱れている。昨夜の彼女の寝相がそのまま残っているようだった。
私はそのベッドを眺めながらペニスをシコシコとシコり始める。
夏の直射日光に照らされながらの野外オナニーはまた違う興奮を呼び起こしてくれるのだ。
私はコンクリート床に寝転がりながら、彼女の部屋の窓をペロペロと舐める。
(このベッドで彼女は・・・ハァハァ・・・このベッドで彼女を・・・・ハァハァ・・・)

「うっ!」と窓ガラスに精液をぶっかける私。
言うまでもなく、その後の掃除が大変だった・・・。


シャワーで汗と精液を流し終えた私は、アスファルトからドーンと蒸し上がる熱気に顔を背けながらも彼女が働くデパートへと足を向けていた。
そのデパートはマンションから歩いて15分くらいの場所にあった。
現在のホテルオーナーに拾って頂く前の私は、ツイてる時は数千万円を動かし億という金まで掴んだ事もあったが、しかし、ツイていない時はとことん金がなくコンビニのパンすら買えなかった極貧生活を送った事もある。
この頃の私はというと、歌舞伎町周辺のヘルス店から「ピンクちらし」の作成を請け負い細々と暮らしていたが、しかし、そんな不安定な収入では生活するのがやっとでメシを喰うのもひと苦労だった。
そんな私の食料調達は、いつもデパ地下にある食料品売場の試食品だ。
その日も丁度、主食としているカップラーメンが底を付いた所で、私は昼飯を兼ねて彼女の職場を覗いてみようとデパートへと向かったのであった。

デパ地下で惣菜屋のおはさんに煙たがられながらも腹を満たした私は、彼女が働く1階の婦人服売場へとエスカレーターに乗った。
大勢のアパレル娘たちの中で彼女はすぐに発見できた。私の睨んだ通り彼女はギャル系ファッションの店で働いていたのだ。

私は少し離れた隣りの店から、壁に吊るされたヒョウ柄ワンピース越しに彼女を観察した。
カワイイ。素直にカワイイ。その澄み切ったクリクリ目玉は、そこに働く誰よりも一番可愛く見えた。

「いらっしゃいませ・・・」
突然、寝起きのおっさんのような声が後ろで聞こえ、振り向くとやっぱり寝起きのおっさんのような顔をしたギャルが私を見つめていた。強烈に不細工だ。
「あ、いや・・・」
私は不細工ビームを受けながらその店を退散する。通路に飛び出すと、ふいに彼女と目が合った。
「あっ!」
私を見つけパッと顔を明るくさせた彼女。
「あれ?」と、わざとらしく驚く私。

「どうしたんですか?何かお買い物ですか?」
80年代の松田聖子が『天国のキッス』を歌う時のように、左右交互に肩を動かしながら近付いて来る彼女。
「ええ。まぁ・・・はははは」
緑の高原の赤い電話ボックスの前で照れくさそうにハニかむ田原俊彦のようにポリポリと頭を掻く私。
「彼女のプレゼントですか?」
目の前に立ち止まった彼女から、爽やかな柑橘系の香りが漂って来た。
「ええ。そうなんですけど・・・何を買ったらいいのか・・ははははは」
女はいない。少し前にトルコ風呂で知り合った東北のおばさんと同棲していたがそいつは先月「許せよ」と一言書かれた置き手紙を残したままどこかへ逃げていった。

「ここにはよく来るんですか?」
よく来るというか、ついさっき地下の食品売場に立ち寄って試食品ののり巻きを全部平らげては売場のおばさんに「二度と来るな!」と怒鳴られて来たところですわ。
「いや・・・はははは」
私は曖昧な返事をしながら陳列してあるTシャツを広げて見たりした。

「彼女のお年はいくつくらいですか?」
逃げたトルコ嬢は37だったさ。東北生まれの東北育ち。何を血迷ったのか30過ぎて東京さ出て来たことで人生が狂っちまったんだべさ。

「20・・・くらいかな・・・」
「ハタチか・・・どんな物を御探しですか?」
「いや・・・何を買ってやったらいいのかわからなくて・・・はははは」
「う~ん・・・御予算は?」
金なんてねぇ!三ヶ月溜まってる家賃と借りたままのAVの延滞料をどーやって払おうかと今からデパートの屋上に行って考えようとしていたとこだよ。

「・・・1万円以内で・・」
「じゃあこれなんてどうですか?若いコには今とっても人気のブランドなんですよ」
彼女は何の変哲もない白いTシャツを広げた。ふと値札を見ると9800円とある。今、9800円あったらとりあえず吉牛に行くよ。

「う~ん・・・もうちょっと派手なのがいいかな・・・」
私はあたかも本当に買おうとしている人のように悩んだりする。こんなのは得意だ。
「じゃあ、こっちのTシャツはどうかなぁ・・・」と、言いながら、陳列ケースの下のほうのTシャツに手をやる彼女。前屈みになった彼女の襟首をそっと覗き込む私。

思った以上にデカイ胸だ。私は彼女の胸の谷間を眺めながら心臓をバクバク言わせ絶望的に欲情した。

「あ、そっちの、一番下にあるソレは?」
更に下の商品を指差すと、彼女は「あ、コレですかぁ」と言いながら更に前屈みになり襟首からお乳をプルプルと覗かせた。

「でもなぁ・・・やっぱりわかんないから、一度彼女を連れて来ます」
私は早々とそう切り上げた。もう我慢できないのである。
「そうですね。じゃあ御待ちしてます」
彼女の笑顔をしっかりと目に焼き付けた私は、二階にある男性トイレへと駆け込んだ。個室に飛び込みペニスを引きずり出すと、びっくりするくらいチンポの先が濡れていた。
全裸になり靴を脱ぎ便座に座り足をピーンと伸ばす。私のいつものオナニースタイルだ。ペニスをシゴきながら彼女の胸の谷間を思い出し、ついでにあの胸の谷間にペニスを挿入するシーンを妄想する。
彼女が髪を乱しながら私の股間に顔を埋める。破裂しそうなくらいの私のペニスを彼女は握りしめ、それをゆっくり口の前に持って行くと、大きく舌を出してペニスをカポッと口に含んだ。リズミカルに上下する彼女の頭。私は彼女の舌と唇とに刺激を与えられながら、大きく股を開き悶える。

すぐに絶頂が訪れる。彼女がネタだとやけに早いのは気のせいか。
フィニッュで「うっ!」と力むとピュッ!と精液が個室の天井に向かって飛び出した。
(おお!凄く飛んだぜ!)と、悦びも束の間、戻って来た精液が床に脱ぎ捨ててあったスニーカーの中にポタポタっ!と降り注いだ。
言うまでもなく、拭き取るのは大変だった・・・。



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そんな事が続いたある日。
彼女に彼氏がいるのが発覚した。発覚と言っても別に彼女は隠していたわけではないのだが、しかし、それは私にとってあまりにも衝撃な事実であった。

そう、彼氏がいると言う事は、セックスの声が聞ける可能性があるからである。
これは、毎日彼女を観察している私にとっては、北朝鮮のミサイル基地を衛星から毎日監視していたアメリカ兵が、何の前触れもなく突然発射されたテポドンを目の当たりにした時のような、そんな心境であろう。

彼氏は、彼女と同年代くらいであろうか声がとても若かった。彼氏が部屋にやってくると一晩中壁にグラスを押し付けてそこに耳を当てている私。
時折聞こえて来る「姫」や「亀」や「ルイージー」という単語で、彼らがマリオカートに熱中しているのが伺えた。

ある晩。いつもなら10時頃にはマンションを出て行く彼氏が、その晩は深夜になっても帰らなかった。これは怪しいぞ、と思いながら私はひたすら息を潜めて全神経を鼓膜に集中させていた。

「ぁん・・・」
聞こえた。確かに今、彼女のいやらしい声が聞こえた。
私は慌ててトランクスを脱ぎ捨てティッシュの箱を抱えると、勃起したペニスをシコシコさせながらもう一度息を殺した。
「ギシギシギシ・・・」という軋むベッドの音。尾崎豊の世界だ、間違いなくヤっている。
「あぁん・・・あぁあん・・・」
という彼女の淫らな声に続いて、彼氏の「声がデケぇよ、隣りに聞こえちまうだろ・・」という焦りの声。
聞かれてまずいなら腰を振らなきゃいいのに・・・と思いながらも、それでは私のオナニーが成り立たないと、彼氏の腰にエールを送る私だった。

翌朝、私は、昨夜あれほどまでに激しいセックスをしていた彼女の顔が見たい一心で、出勤する彼女を狙っては生ゴミを抱えたまま玄関で息を殺していた。
ガチャ・・・と隣りのドアが開いたのを確認すると、私も一緒にドアを開けた。
「あ、おはようございます」
私に気付いた彼女は爽やかな表情で笑いかけた。
「おはようございます。これから出勤ですか?」
私は生ゴミをぶら下げながら彼女に近付いた。フロアの私の声に反応したのか、向かいのスピッツが慌ただしく吠えだした。
二人は並んだ状態で階段を下りた。

「毎日、熱いですね・・・」
私は瞬間に吹き出した額の汗を手の甲で拭き取りながら彼女に話しかけた。
「そうなんですよ・・・こんなに熱いのに部屋のクーラーの効きが悪くって困ってるんですよね・・・」
彼女は階段に落ちていたダシ巻き卵をヒョイと避けながらそう言った。こんな所にダシ巻き卵を仕掛けるのは恐らく非常階段の野良猫かホームレス八代の仕業だろう。

「あ、それって左のレバーんとこ叩けばいいんですよ。ここのマンションのクーラーは古いっすからね、あの部分を上手に叩けばびっくりするくらいの冷風が飛び出して来ますよ」
「え、そうなんですかぁ?」
汚れのない大きな瞳を私に向ける。昨夜、男のペニスを喰わえ込んでいた癖に・・・。
「そうなんですよ。あれにはコツがあるんっすよ。前にあの部屋に住んでたおっさんの時も僕が直してやったんっすけどね、また壊れたんだな・・・」
嘘です。まったくのデタラメです。私は隣りの親父を睨む事はあっても言葉を交わした事はありません。

「え・・・じゃあ・・・」
「いいっすよ。僕、直してあげますよ」
「ホント!嬉しい~昨夜は熱くて我慢できなかったんですよね~」
アソコもな。

彼女の部屋のクーラー修理は、今夜、彼女が帰宅してからという事に決まった。
私は彼女が帰って来るまでの間、彼女をレイプする妄想ネタで2回もオナニーをしてしまったのだった。

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