中卒少女(前編)
2012/11/17 Sat 04:25
その後ろ姿を見た瞬間、僕は、交通量の激しい大通りにも関わらず急ブレーキをかけていた。
道路の真ん中でいきなり止まった僕のすぐ横を、凄まじいクラクションを鳴らしながら大型トラックが追い抜いていった。その後から猛スピードで走って来た個人タクシーは、僕が跨がる原付バイクに追突しそうになり、慌ててハンドルを切りながらも何やら必死に怒鳴っていた。
原付バイクの荷台に積んだ出前桶の中では、ラーメンの丼がぶつかり合う嫌な音が響いていた。丼にはラップが張ってある為、スープは溢れていないだろうが、しかし、きっと今頃、ラップはスープでビタビタになっているはずだった。
つい先日も、出前の途中で急にウンコがしたくなり、公園のトイレでのんびりウンコをしてから出前を届けたら、その客からラーメンが伸びていると凄まじいクレームの電話が掛かって来た。
店の親父から「ゆとり教育というのは出前もできないのか?」と、嫌味を言われた。
しかし、そんな嫌味など別になんとも思わないのが僕達、ゆとり人間だった。だから、店の親父にあーだこーだ言われるのは、別にどうってことはないが、しかし、クビにされたら携帯の料金が支払えなくなるため、だから僕は慌てて出前桶の中を確認したのだった。
幸いラーメンは無事だった。薄っぺらなチャーシューがラップにペタリとくっ付いていたが、まぁ、そのくらい、いいだろう。
出前桶の蓋をガサガサと下ろした僕は、原付バイクを路肩まで移動させると、原付を跨いだまま路地までバックした。
大通りから一本外れた狭い路地を覗くと、デニムの小さなショートパンツから半ケツを曝け出して歩く若い女の背中が見えた。
その気怠そうにトロトロと歩く後ろ姿は、紛れもなくヤリマン真奈美の後ろ姿だった。
真奈美は僕の家の近所に住んでいた。スナックで働いているお母さんと二人で、川沿いの小さなアパートで暮らしていた。
真奈美とは小中高と同じだった。小学生の時、何度か同じクラスになった事はあるが、あの頃、真奈美とはまともに話した事はなかった。
高校になってから再び真奈美と同じクラスになった。しかし真奈美は一年生の二学期が始まるとすぐに学校を辞めてしまった。
これは後から聞いた話しだが、真奈美が学校を辞めた理由は、「朝起きるのが辛いから」だった。
高校中退後、真奈美は近所のコンビニや吉牛などで夜のバイトをしていたが、しかし、どれも三日と続かず、結局いつも夜の繁華街をブラブラしていた。
しばらくすると、真奈美は母親からアパートを追い出されてしまった。それは、母親が働くスナックでバイトしていた時、レジから金を盗んだのをその店のママさんに見つかってしまい、それが原因で母親から勘当されてしまったからだった。
アパートを追い出された真奈美は、裕介のマンションで暮らすようになった。
裕介というのは、無免で原付を乗り回していた事が学校にバレて退学になったという馬鹿で、退学後、塗装屋で働きながら自力で曙町のワンルームマンションを借りていた。
裕介と僕は中学時代からの友達だった。だから僕は、いつも学校帰りには裕介のマンションに立ち寄り、裕介達とくだらない話しをしながら煙草なんか吹かしていた。
僕だけじゃなく、そこには色んな学校の生徒が遊びに来ていた。暴走族の昭夫や、鳶のバイトをしている健次達なんかも、あの頃はいつもそこを溜まり場にしていた。
そんな裕介のマンションに真奈美が住み着くようになったのは、真奈美が高校を辞めてすぐの頃だった。
誰が最初に真奈美を連れて来たのかわからないが、気が付くと真奈美はここに住み着いていた。
それは、裕介と真奈美が同棲していたという意味ではなかった。真奈美が勝手にやって来て、勝手に住み着いたという感じだった。
裕介には中学生の時から付き合っている彼女がいた。その彼女も時々裕介のマンションに遊びに来ていたから、裕介にとって真奈美の存在というのは非常に気まずかった。
しかし、だからといって、行く宛も無い一文無しの真奈美を無下に追い出すわけにも行かず、そこで裕介は、真奈美は暴走族の昭夫の女だというストーリーをデッチあげたのだった。
このように、一文無しでありながらもまんまと無償でマンションに住み着く事ができた真奈美だったが、しかし、それにはそれなりの代償が待ち受けていた。
その代償はタダマンであり、それは人数に限定無く毎晩のように行なわれていた。
偽彼氏の昭夫はもちろんの事、鳶の健次も、他校の生徒も、そして裕介さえも彼女にバレないようにこっそり真奈美とヤリまくっていたのだった。
そんな真奈美は結構可愛かった。
びっくりするほどの美人ではないが、深夜のコンビニなんかにポツンといれば、大概の男を「おっ!」と、血湧き肉躍らせるくらいの可愛さは持っていた。
だから真奈美は、みんなの『共有物』として扱われた。まるで公衆便所の便器のように、毎晩大勢の少年達に、順番に使用されていた。
公衆便女として無惨にヤリまくられていた真奈美だったが、しかし当の本人は全く抵抗を感じていないようだった。
っというか、色んな男に次々にヤられまくる事など、別にどーでもいい事のように思っているようで、真奈美は嫌な顔ひとつする事無く、いつでもどこでも誰にでも好き放題にヤらせていた。
しかし、かといってヤられる事に喜びを感じているふうでもなかった。AVのように「あぁん、あぁ〜ん」などと派手な声を出したり、自ら男を喜ばせようと媚を売ったりする事も無かった。
真奈美はセックスに対して常にクールだった。まるで感情の無い性人形のように無表情だった。
大きく股を開きながら、ただただ男が射精するのを、溜息をつきながらジッと待っているといった、そんな感じだった。
どれだけ激しく腰を動かしても、どんな高度な玩具を使っても、真奈美は表情ひとつ変える事はなかった。
無表情で天井を見つめては溜息をつき、男が必死に腰を振っているというのに平然と携帯を弄り、挙げ句の果てには、これみよがしに大きなアクビをやらかした。
だからみんな、すぐに真奈美とのセックスに飽きてしまった。
それまでは毎晩のように真奈美とヤリまくっていた昭夫達も途中からはフェラだけで終わらせるようになり、裕介などは、家賃の代わりにオナニーのお手伝いをさせるんだと、手コキだけで済ませていたのだった。
みんなが真奈美の体に飽きてしまった頃、まだ真奈美とヤっていなかったのは僕とタケシだけだった。
その理由は、タケシにはゾッコンな彼女がいたからであり、そして僕は、極度な恥ずかしがり屋だったからである。
恥ずかしがり屋の僕は、みんながいる前でペニスを出すなど考えられない事だった。まして、みんなに見られながら射精するなど絶対に有り得なかった。
しかし、僕とて真奈美とはヤリたかった。例え真奈美がマグロ女であっても、一度くらいは真奈美の性器にペニスを入れてみたいと思っていた。
だから僕は虎視眈々とチャンスを伺っていた。真奈美が一人になる時をジッと待ちながらヤリたい気持ちを必死に抑えていた。
が、しかしそんなチャンスはなかなか巡っては来なかったのだった。
そうしているうちに、昭夫が暴走族の先輩達を連れてやって来た。
昭夫は、居並ぶ先輩達に、「どうぞ、使って下さい」などと、まるで真奈美をモノのように勧めた。
昭夫が先輩達を連れて来てからというもの、再び裕介の部屋には精液の匂いが充満するようになった。常に部屋の隅で誰かが真奈美をヤっているという、いつもの光景に戻ったのだった。
夜な夜な暴走族の先輩達に、とっかえひっかえヤられまくる真奈美だったが、しかし、相変わらずクールな真奈美は、声ひとつ上げる事無く無表情のままだった。
そのうち、暴走族の先輩達も、そんな真奈美のセックスに飽きて来た。
先輩達は、死体とヤってるみてぇだ、と口々に悪態をつき始め、いつしか、常に部屋の隅でモゾモゾと蠢いていたあの光景は消え去り、再び平穏な日々が訪れようとしていた。
みんなに飽きられた真奈美は、いつも部屋の隅でカチカチと携帯を弄ってばかりいた。それはまるで、薮の中でクローバーをカリカリと齧る野うさぎのようだった。
時折、誰かが思い出したかのように真奈美をヤっていたが、それはまさに小便器に小便を垂れ流すような行為であり、単に溜っているモノを吐き出すといった作業に過ぎなかった。
しばらくすると、先輩達がマンションに遊びに来る回数が減ってきた。最初は毎晩のように来ていたのが一日置きになり、それが週二回となって、最近では土曜の夜の暴走の後にちょっと顔を出す程度になっていた。
先輩達から解放された真奈美はまた元の生活に戻った。
昭夫のペニスを舐めさせられ、裕介のオナニーを手伝わされ、そして、時々健次が連れてやって来る鳶の後輩や商業高校の一年生などにアソコを貸していた。
それはまるで業務のようだった。無料でマンションに住ませてもらう為の業務のように、真奈美は彼らの命令に黙々と従っていたのだった。
そんなある時、真奈美と二人っきりになるチャンスが突然舞い込んで来た。
その日も、僕と裕介と昭夫は、いつものようにダラダラとくだらないテレビを見ていた。テレビを見ながら、裕介はせっせと鼻毛を抜き、僕はポテトチップスをバリバリと齧り、昭夫は五分に一回の割合で放屁していた。
ダウンタウンの松っちゃんのギャグに、三人が一斉にわっと笑った瞬間、裕介の携帯が鳴った。
電話は彼女からだった。電話を切った裕介はそそくさと服を着替え始め、今夜は彼女の家に泊まって来るからと言い残してマンションを出て行った。
マンションには僕と昭夫と真奈美の三人だけが残った。時刻は九時を過ぎていた。明日学校がある僕はそろそろ帰らなくてはならなず、袋の中に残っていたポテトチップスのカスを大口の中にガサガサと流し込んでいると、「う〜ん……」と大きく背伸びをする昭夫が、突然チンポを出した。
「オレも帰っからよ、ペロペロっと抜いちゃってくれ……」
昭夫はダラリと項垂れたペニスを自分でゴニョゴニョと動かしながら真奈美にペニスを向けた。
部屋の隅で携帯を弄っていた真奈美が、小さな溜め息をつきながら携帯をテーブルの上に置いた。そして、ゴソゴソと気怠そうにやって来た真奈美は、無言で昭夫のペニスを摘み、そのフニャフニャのペニスをシコシコとシゴき始めた。
昭夫はぼんやりとテレビを見ながら、「服、全部脱げ」と真奈美に言った。
すぐさまモゾモゾと服を脱ぎ始めた真奈美の横で昭夫は黙って鼻糞をほじっていた。真奈美が足首からパンティーを脱ぎ取ると、汁混じりの鼻糞が昭夫の小指にぶら下がっていた。
昭夫は、迷う事無くそれをコタツの台の裏に擦り付けると、その指で真奈美の乳をプニプニと弄りながら、「手早く頼むわ」とペニスを突き出したのだった。
そんな昭夫の性格が素直に羨ましいと思った。僕にもあんな勇気があれば、今頃は真奈美とズボズボの仲なのにと思うと、情けない股間が急速に硬くなってきた。
僕はテレビを見るふりをしながら、ソッと真奈美を観察していた。誰かが真奈美とヤっているというのは、いつもの見慣れた光景だったが、しかし、今までは回りに誰かがいたため、こうして一人でマジマジとそれを観察するなんて一度もなかった。
それを至近距離で観察していた僕は異常に興奮していた。
真奈美は、昭夫の陰毛の中に顔を埋めながら、まるで子猫が皿のミルクを飲んでいるかのように、ちゅぱ、ちゅぱ、と小気味良い音を立てていた。四つん這いになる真奈美の胸は水風船のようにタプタプと揺れ、ツンっと突き出した小さな尻の谷間から数本の陰毛がウヨウヨと顔を出しているのが見えた。
できることなら、このままこっそりとオナニーしたいくらいだった。
真奈美の口内に射精した昭夫は、唾液と精液でヌルヌルになったままのペニスをズボンの中に乱暴に押し込むと、「最近、スッキリしないと眠れないんだよ」と僕に言い残してマンションを出て行った。
マンションの下から昭夫の原付の音がパリパリパリと響いて来た。
静まり返った路地をフェードアウトして行く原付の音を聞きながら、そこで初めて、真奈美と二人っきりになれた状況に気付いた。
やるなら今しかない。そう心に何度も呟きながら、僕は立て続けに煙草を二本吸った。
しばらく全裸のまま布団に包まっていた真奈美がムクッと起き上がり、気怠そうに手グシで髪を梳かしながら、テーブルの上に置いてあった誰かの飲みかけのポカリをクピクピと音を立てて飲んだ。
ペットボトルを銜えていた唇をプチュっと離すと、溜め息と共に喉仏の辺りを指で擦り、僕の顔を見ながら「苦しかったぁ」と目を丸めた。
「なにが?」
僕がそう聞くと、真奈美は「あいつのセーシが喉に引っ掛かってたの」と眉を顰め、一呼吸置いてから「クスッ」と小さく笑った。
「飲んじゃったの? 昭夫のセーシ……」
「うん。ポカリで流し込んでやった……」
真奈美は妙な達成感を顔に浮かべながら、再びポカリをクピクピと飲み始めたのだった。
真奈美とまともに言葉を交わしたのは約一年ぶりだった。
真奈美と最後に言葉を交わしたのは、真奈美が高校を中退した直後、駅裏のコンビニでバイトを始めた頃の事で、その時、偶然にそのコンビニに立ち寄った僕が、レジの真奈美を見つけて「元気?」と声を掛けた。
たったそれだけだった。僕は、この一年間、毎晩のように真奈美の裸体や、陰部や、セックスシーンを見ていたのに、実は真奈美とは、その「元気?」という一言しか会話がなかったのだった。
「……煙草吸う?」
僕は、せっかくのこの会話を途切れさせないようにと、そう言いながら煙草の箱を真奈美に向けた。
すると真奈美は静かに首を左右に振りながら、「煙草はやめたの」 と呟いた。
「どうして?」と聞くと、「お金が無いから」と、細い指で長い髪を掻き分け気怠そうに微笑んだ。
それで会話は止まってしまった。それ以上、言葉が出て来なくなった。
僕は黙ったまま、髪を掻き分ける真奈美の細い指を見ていた。その綺麗な指で何人の男のペニスをシゴいたのだろうと考えていると、まだシゴかれた事のない僕は急に焦りを覚えた。
こんなチャンスは二度とないぞ。と、そう自分に言い聞かせた。
真奈美は全裸でコタツに座っているのだ。このままコタツの中に手を入れれば、真奈美の足がある。そしてその奥にはワレメがある。そこをコタツの中で弄ってやれば、きっと真奈美は何も言わずにヤらせてくれるはずなのだ。
しかし、そう思えば思うほどにみるみると緊張が高まって来た僕は、もはや息をする事でさえやっとだった。脇の下に嫌な汗がジトジトと滲み、蒸れた尻の谷間が異様に痒かった。
全裸の真奈美と一緒にコタツに入れていた両足が、まるで服を着たままサウナに入っているように熱くて堪らなかった。
そんな状態のまま、しばらく沈黙が続いた。
垂れ流しのテレビからは、最近人気のあるグラビアアイドルと若手お笑い芸人が、商品のチョコレートを早食い競争するというCMが流れた。早食い競争に負けた芸人がドロドロのチョコを「うえっ」と吐き出し、よく見るとこれは他社のチョコだったという実にくだらないオチだった。
そんなCMをジッと見ていた真奈美が、突然呟いた。
「汚いと思ってるんでしょ……」
僕は、チョコを吐き出した若手芸人を見ながら、「うん……だけど、こいつが吐くから汚く見えるんだよね。これがあっちの女の子だったら、きっと汚く見えないと思うな」と真面目に答えると、突然真奈美は「違うよ」と首を振った。
真奈美はいきなり真剣な顔をして僕をジッと見つめた。
そんな真奈美の目を見つめながら「えっ?……」と僕が首を傾げると、真奈美は今にも泣き出しそうな声で言った。
「私がみんなのセーシを飲んでる事を汚いと思ってるんでしょ……」
真奈美は拗ねるように目を細めながらソッと俯いた。
そんな真奈美に狼狽えながらも、「そんな事、一度も思った事ないよ……」と呟くと、真奈美は再びサッと顔を上げながら、「じゃあ、どーして松田君だけ私とヤらないのよ」と押し迫るように聞いて来た。
僕は真奈美を見つめたままゴクリと唾を飲んだ。あたふたになりながら座り直すと、不意にコタツの中の真奈美の素足に僕の爪先がツンっと触れた。
僕は真奈美を見つめたまま息を吸った。
そして、ゆっくりと息を吐きながら「ヤってもいいの?」と呟いた。
僕のその言葉に、真奈美の顔が一瞬にしてポッと赤くなった。
真奈美は、下唇をモジモジと噛みながらソッと視線を落とすと、意味もなくポカリのペットボトルの蓋をカリカリと弄り始めた。
「……そーいう意味じゃないんだけど……」
真奈美は、ペットボトルの蓋を指でポーンッと弾きながら恥ずかしそうに呟いた。
いつもクールな真奈美が、柄にも無く照れていた。
僕はココだと思った。ココで一気に押せば、真奈美はヤらせてくれると思った僕は、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、「じゃあ……ヤらせてよ……」と言った。
真奈美は唇を尖らせながらゆっくりと視線を上げ、僕を見つめた。
「そんな事……改まって言わないでよ……」
そう恥ずかしそうにクスッと笑った真奈美は、そのまま黙ってテレビに視線を移した。
テレビでは、勝又が和田アキ子に絡んでいた。「夜中にアッコさんを見た時、本気でゴリラかと思いましたよ」とバカにされた和田アキ子は、「コノヤロー」と勝又に怒りながらも、しかしどこか嬉しそうだった。
そんなくだらないテレビを真奈美は真剣な表情で見つめていた。まるで悲惨なニュースを見るかのように真面目な表情で戯ける和田アキ子を見つめていた。
(もしかして……怒ったのかな……)
そう思った瞬間、コタツに座っていた真奈美がいきなり後に倒れた。無造作に置かれていた羽毛の掛け布団がバサッと音を立て、無数の埃が宙に舞った。
仰向けになりながら布団に埋もれる真奈美は、僕を見てニヤニヤと笑っていた。
「なんか、恥ずかしいね……」
そう呟くと、真奈美は床に脱ぎ捨ててあったスカートとセーターを指でつまんだ。そして、スカートを下半身にパラリと掛け、セータを顔の上に掛けて、顔と陰毛を隠した。
「いいよ……ヤっても……」
顔に掛けたセーターの下で真奈美が呟いた。
あまりの興奮で脳をクラクラさせながら、僕は慌ててズボンのベルトを外した。きっと真奈美は、僕が恥ずかしがり屋だという事を知り、そうやって顔を隠してくれているんだろうと思った。
顔を隠して乳だけを剥き出しにした真奈美の体は異様にエロかった。もしかしたら、これは全裸よりもエロいのではないかと乳だけを露出した真奈美を見下ろしながら、興奮する僕はトランクスとズボンを同時に脱ぎ捨てた。
真奈美の横にソッと腰を下ろすと、いきなり伸びた真奈美の手が僕のペニスを握り締めた。それはまるで蛇がカエルに喰らい付く瞬間のように素早く、何の前触れも無くいきなりペニスを握られた僕は、まさに蛇に睨まれたカエル状態になっていた。
どうする事もできないまま、そのままオロオロになっていると、セーターの隙間からソッと顔を出した真奈美が、「ヤダぁ。緊張しないでよ、私まで恥ずかしくなるじゃない」と笑った。
そんな真奈美の手が上下に動き出した。僕は何ともいえない快感に襲われながら、この後、さっきの昭夫のようにしゃぶってもらえるんだと想像すると、あまりの嬉しさに背筋がゾクゾクと踊った。
そんな僕をセーターの隙間から見ていた真奈美が、妙に優しい声で「触ってもいいよ……」と囁いた。
僕は顔を引き攣らせながらも、そこにピンっと突き出るピンク色の乳首をキュッと摘んだ。
すると真奈美は「んん……」と腰を撓らせながら、「そっちじゃなくて、こっち……」と、股を大きく開いたのだった。
そんな真奈美の性器はテラテラと輝くくらいに濡れていた。それは、昭夫のペニスをしゃぶっていたから濡れたのか、それとも僕とこういう関係になったから濡れたのか、どっちなんだろうとふと思った。
そんな事を気にしながらハァハァと荒い息を吐き、そこに指を移動させると、真奈美の穴はびっくりするくらいに熱くなっていた。
左の指で突起したクリトリスを指で転がし、右手の指を濡れた穴の中に入れた。穴の中を優しく掻き回すと、くちゅ、くちゅ、くちゅ、といういやらしい音が鳴り、その音を奏でる汁が肛門に伝って垂れていった。
真奈美は静かに起き上がると、胡座をかいている僕の太ももに頬をあて、そのままゆっくりと股間に顔を埋めていった。
臑毛だらけの足の隙間から、小刻みに動く真奈美の舌が見えた。
チロチロと震える真っ赤な舌が亀頭の裏を這い回っていた。そして竿を伝わりながら根元まで下りていったと思ったら、またチロチロと上がって来ては、我慢汁が溢れる尿道を刺激した。
真奈美の髪を撫でた。つい三十分ほど前、昭夫のペニスを銜え、そしてそれを飲み込んでいた女だったが、ちっとも不潔に思わなかった。むしろ、髪から漂って来る安物のシャンプーの香りが僕を切なくさせていたほどだった。
根元と尿道を行ったり来たりしていた舌がいきなり亀頭を包み込んだ。そのまま口内へとペロリと呑み込むと、真奈美の生温かい口の中で僕の亀頭は妖艶に動く舌に踊らされた。
おもわずその快感に「あぁ……」と声を震わせながら胡座をかいていた足をピーンッと伸ばすと、真奈美はそれを見計らっていたかのように亀頭を喉の奥まで滑り込ませた。そして、ゆっくりと頭部を上下させながらカポカポと卑猥な音を立て始めたのだった。
と、その時だった。
玄関のドアの向こう側からガツコツという足音が聞こえて来た。廊下を歩くその足音は、明らかに複数の足音であり、それはこの部屋に向かって来ているようだった。
(マジかよ!)
そう心の中で叫んだ瞬間、玄関のドアがガチャッと開き、何やら若い女の笑い声がケラケラと響いた。
僕は慌ててズボンを履いた。トランクスを履く暇はなく、ノーパンのままズボンを履いた。
ズボンのチャックを上げると同時に、コンビニの袋をカサカサと鳴らしながら裕介達が入って来た。
そこには、裕介と、裕介の彼女と、そして見た事のない女の子が二人いた。
四人は僕を見るなり、一瞬ギョっとした。
真奈美は全裸のままゴロリと背を向け、何もなかったかのようにそこに転がっていた携帯を弄り始めた。
四人の男女が、呆然としている僕を見つめながら一斉にニヤリと笑った。
そんな四人の笑顔に戦慄を覚えた僕は、そのまま逃げるようにしてマンションを飛び出したのだった。
今思えば、あのとき、どうして僕は真奈美を外に連れ出さなかったのかと悔む。
あのとき真奈美を連れ去り、そのまま僕だけのものにしてしまえば良かったのだ。
そうすれば、真奈美はあんな目に遭う事はなかったのだ………
それを思うと、僕は今でも激しい後悔に苛まれるのだった。
(つづく)
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