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可愛い不審者

《あらすじ》
中年警察官は、ある時、深夜の公園にポツンと佇む不審な少女を発見した。
ミニスカートにニーソックスを履いたその美少女は、深夜の薄ら淋しい公園にはあまりにも不釣合いだった。
少女を呼び止め職務質問してみると、なんとそのかわいい少女は少年だった……





 深夜二時。定時パトロールで町内を見回っていた私は、静まり返った丸山公園の奥に人影を見た気がした。
 その鬱蒼とした森の中に目を凝らしながら自転車を止めた。キキキっとブレーキの音が響くと同時に、その人影は慌てて私に背を向けた。

 月夜に照らされるその影は若い女だった。

「キミ」

 私は自転車に跨がったまま声を掛けた。
 女は一瞬振り向いたが、しかしすぐに顔を伏せると、身動きせぬまま滑り台の脇でジッと立ちすくんでいる。

 明らかに不審者だ。

 道路の脇へと自転車を移動させ、公園のフェンスに立て掛けた。
 フェンスの隙間をすり抜け、砂場を進みながら警棒付き懐中電灯をベルトから引き抜き抜く。
 懐中電灯のスイッチを入れながら、もう一度女の背中に「キミ」と声を掛けると、女は私から顔を背けるようにしていきなり歩き出し、鬱蒼とした森の中へと進んで行ったのだった。

 他にも不審者が潜んでいないかと、辺りを注意しながら女の後を追った。
 夜露に濡れた芝生を踏みしめながら進んで行くと、大きな噴水がある広場に出た。
 噴水の前にある公衆便所の裏に女が身を隠したのを確認した私は、懐中電灯のビーム光線で暗闇を照らしながら進んだ。
 公衆便所の裏へ回ると、項垂れた女が観念したかのようにジッと立ちすくんでいるのが見えた。

「警察ですが、ちょっといいですか……」

 ソッと懐中電灯の光りを女の背中に向けた。
 真っ赤なTシャツが漆黒の闇にパッと浮かんだ。水玉模様のリュックを背負い、茶髪の髪を二つに縛り、派手なミニスカートからは黒いニーソックスを履いた細い脚がスラリと伸びていた。

 明らかに未成年者だった。

 原宿辺りで遊んでいそうな今どきの少女といった感じで、一見した所、犯罪の臭いはどこにもなかった。

「こんな時間にこんな所で何をしてるのかな?……」

 興奮しないよう、あえてフレンドリーな口調でそう声を掛けた。
 少女は黙ったまま背中を向けていた。水玉模様のリュックには、今年中学になる次女が好きなキティーちゃんの小さなぬいぐるみがぶら下がっていた。
 少女の足下を懐中電灯で照らした。反射する懐中電灯の灯りで女の顔を覗き込んだ。
 妙に目の大きな女の子だった。目鼻立ちがはっきりとし、稀に見る美少女だ。
 が、しかし、すぐさま私は、そんな彼女の顔に違和感を覚えた。
まず、顔全体が白すぎる。そしてその大きな目もあまりにもデカすぎて、これではまるでアニメに出てくる主人公だ。

 少女はわたしの質問には答えず、黙ったまま足下をジッと見つめていた。
「何か落とし物でもしたのかな?」
 薬物使用の恐れがあると睨んだ私は、相手を興奮させぬよう落ち着いた口調でゆっくりと尋問した。
 年齢や名前を色々と尋問するが、しかし、少女は黙ったまま口を開こうとしない。それどころか、私を見ようともせず項垂れたままだ。
 私は交番まで来るよう告げた。そしてパトカーの要請をしようと無線を手にしたその時、いきなり少女が小さな声で「ごめんなさい」と呟いた。
 しかし少女のその声は、明らかに男だった。

 その少女、いや、その少年は武田優と名乗った。年齢は十九才、この深夜の公園で友達を待っているのだという。
 その名前は恐らく偽名であろう。もちろん年齢も嘘で、友達と待ち合わせをしているというのも出鱈目だろう。

 少年は今にも泣き出しそうな表情で小さな体を震わせていた。
 しかし油断は禁物だった。先月も駅前交番の巡査部長が少年に職質をかけた際、いきなりナイフで胸を刺され死亡したばかりなのだ。

「キミは本当に男なんだね?」

 私は、いつでも防御できるように警棒を腰の真横にソッとずらしながら聞いた。

「……はい……」

「では、今から身体検査をさせて貰うが、婦人警官を呼ばなくてもいいね?」

 少年は、そんな私の質問にコクンっと小さく頷いた。
 婦女子に対する取調べ及び身体検査は、女性警察官が行なうか、若しくはその場に立ち会わさなければならなかった。但し、被疑者がオカマの場合は、被疑者本人の了解があれば男性警察官でも身体検査をする事できた。

 少年を噴水まで連行した。噴水の縁のベンチに座らせ、そこに水玉模様のリュックを置かせた。
「ポケットの中の物も全部出してくれ」
 私は少年を見下ろしたまま、そこに懐中電灯の明かりを灯していた。
 少年はミニスカートのポケットの中を弄ると、派手にデコレーションされた携帯電話と、『ぷっちょ』と書かれたキャンディーをベンチの上に静かに置いた。
「それで全部かね?」
 そう聞きながら、少年の前にゆっくりと腰を下ろすと、少年はミニスカートから伸びる細い脚を必死に隠しながら、小さくコクンと頷いたのだった。

 本人にリュックの中の物をひとつひとつ取り出すよう指示した。
 いくら不審者といえど、緊急でない限り被疑者の所持品に触れる事は禁じられていた。
 強制的に調べるには裁判所の令状が必要となるため、職質の場合は、あくまでも任意として進めなければならず、所持品を検査する時は、被疑者自らの手で提出させるのが原則となっていた。

 少年は飲みかけのエビアンをベンチの上に置いた。化粧品の入った白いポシェット、新品のニーソックス、食べかけのメロンパンに、キティーちゃんのハンカチが二枚と、次々にベンチの上に並べられた。
 少年は「これで最後です」と言いながら、携帯の充電器を出した。
 リュックの中を懐中電灯で照らすと、しわくちゃになったガムの銀紙とローソンのレシートが入っているだけだった。
 続いて私は、化粧品の入った白いポシェットを開けるように命じた。
 一瞬、少年の表情が強張るのを私は見逃さなかった。恐らく、この白いポシェットの中には薬物が隠されているはずだと、私は少年の表情を見てそう直感した。

「嫌です……」

 少年は白いポシェットを両手で握り締めながら呟いた。

「どうして嫌なんだ」

 私は、項垂れる少年の顔をソッと覗き込んだ。そのとき、ミニスカートの奥に白い下着を見てしまい、一瞬ドキッとした。
 こいつは男なんだぞと、慌てて自分に言い聞かせながら、項垂れる少年の頭上に向かって「どうして見せれないんだ」と強い口調で聞いた。
 それでも少年は黙ったままだった。黙ったまま白いポシェットをジッと見つめ、人形のように動かなくなっていた。

「……わかった。どうしても見せられないというのなら、交番まで来てもらうよ」

 私は、さぁ行こう、と言いながら少年の腕を掴んだ。その腕はまるで本物の女のように細く、異様に柔らかい。
 少年は「嫌です」と言いながら、貝のように体を閉じてしまった。
 こうなってしまっては仕方ないと、肩にぶら下げていた無線器で応援を呼ぼうとした時、ふと、森の中から鋭い視線を感じた。

 ハッと顔を上げた。目玉だけをギロギロと動かしながら闇の中に目を凝らし、腰にぶら下がる警棒にソッと指を掛けた。
 森の中は、まるで井戸の中のようにシーンっと静まり返り、暗闇のずっと奥に、向こう側にあるコンビニの灯りが微かに見えるだけだった。

 人影は見えなかったが、確かに人の気配を感じていた。
 私は静かに息を吐きながら、暗闇の中に感じる気配に呼吸を合わせた。暗闇の中で見えない敵と戦う場合、相手の呼吸に合わせればどれだけ暗くとも相手が見えて来るものだと、警察学校の護身術で習った事がある。それはあくまでも冷静さを保つためのひとつの方法であり、本当に暗闇が見えて来るわけがなかったが、しかし、闇を見つめながらフー……ハー……と静かに呼吸をしていると、不思議と暗闇が見えてきたような気がした。

 大きな杉の木の裏で、一瞬空気の流れが変わった気配を感じた。ここだ、と確信しながら、慌てて懐中電灯の光を杉の木にあてると、いきなり杉の木の裏から男が飛び出し、足音を激しく鳴らしながら公園の出口に向かって走り出した。
「待ちなさい!」と、追い掛けようとした瞬間、そこに踞っていた少年が私の手を振り解き、今度は少年が逃げ出そうとした。
「動くな!」
 私はそう怒鳴りながら、掴んでいた少年の腕を捩じ伏せ、芝生の上に体を押し付けた。
「痛い! やめて!」
 少年は本物の女のように叫びながら観念した。その間にも、闇を駆け抜けていく男の足音は消え去り、鬱蒼とした森は再び深い静けさに包まれていたのだった。

 少年に問い質してみると、逃げ去った男は、恐らく自分が待ち合わせしていた男だと思うと自供した。
 しかし、男の名前は知らないと言う。どれだけ尋問しても、名前も住所も年齢も、何も知らないと言い、その男とは出会い系サイトで知り合っただけで、まだ一度も会った事がないと言い切った。

「こんな夜中に、見知らぬ男と会ってどうするつもりだったんだ」

 私は少年の顔にライトをあてながら聞いた。
 少年は眩しそうに顔を顰めると、そのまま黙って項垂れた。

「正直に言いなさい。ドラッグだね……キミはあの男にドラッグを売ろうとしてたんだね……」

 少年は黙ったまま静かに首を振った。

「じゃあこのポシェットの中身は何なんだ。この中にはドラッグが入ってるんだろ」

 少年は「違います……」と蚊の鳴くような声で答えると、観念したかのようにその白いポシェットを開けた。
 開いたポシェットに懐中電灯の明かりを向けた私は絶句した。
 なんとその中には、大量のコンドームがぎっしりと詰まっていたのだった。

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「男が男に体を売る場合は、売春法は適用されないと聞きました」

 少年は、細く剃った眉を八の字に下げながら、今にも泣き出しそうな目で私を見た。

「まぁ、確かに同性間でのそれは罪にはならないが、しかし法律は別として人道的におかしいだろそれは……」

 私はそう言いながら少年の顔を見た。
 まるで子供のような小さな顔をしていた。顔が小さいくせにやたらと目ばかりが大きく、まるで小動物のような愛らしい顔をしていた。
 こんな可愛い顔をした少年が、いったいどんな風に男とあれをするのだろうかと、つい想像してしまった。

 聞く所によると、少年はいつもこの公園で男と待ち合わせをしているという事だった。
 客は全て出会い系で知り合った男ばかりらしく、そのほとんどが中年男性だという。中には老人が来る事もあると聞き、私は開いた口が塞がらなかった。
 あれをするのは、主に公衆便所の個室を使用しているという事だった。その料金は、ソフトコースで一万円、ハードコースで二万円。
 私は少年の愛らしい唇を見つめながら、ソフトとハードの違いを聞いて見た。
 少年は私を上目遣いでジッと見つめながら、「逮捕しませんか?」と小さく首を傾げた。
 その可愛い仕草に、いきなり私の下半身がジワっと反応した。
 男など全く興味のない私だったが、しかし、この可愛過ぎる顔には思わずよからぬ想像を抱いてしまった。
 この女装少年は、そこらの女など比べ物にならないくらい可愛いのだ。

 正直に話せば逮捕しないよ、と呟いた私に、少年はソフトとハードの違いをポツリポツリと説明し始めた。
 少年のいうソフトとは、『本番ナシ』という意味だった。
 客に陰部を見せ、興奮してきた客の陰部を手で愛撫し、最後は口で射精させるらしい。
 ハードというのは、それらのソフトプレイを含んだ上に、更にロープで体を縛らせたり、蝋燭を垂らさせたりといったSMプレイが追加され、最後は肛門で『本番』をさせるという事だった。

 何ともいえない異様な感情がムラムラと沸き上がって来た。黙って聞いていた私は、素直にこの女装少年とハードプレイをしてみたいと思った。
 しかし、痩せても枯れても私は警察官だ。例え、同性同士の性的行為が罪に問われないとしても、相手はまだ未成年者である。
 私は大きく頭を振りながら、脳裏に浮かぶいかがわしい妄想を振り払った。

「事情はわかったが、取りあえず、キミはまだ未成年だから交番に来てもらうよ」

 そう状況を切り替えながら、自分の感情も強引に切り替えた。

「えっ、逮捕しないって言ったじゃないですか」

 少年は私の手をギュッと握った。その指の感触を手に感じた瞬間、この細い指が、欲望に漲った中年男達の肉棒を、上下にしこしことしごいていたのかと思い、再びドス黒い渦が甦った。

「逮捕ではない。保護だ。だから心配しなくてもいいから、とにかく交番に行こう」

 そう言いながら少年の手を握り返し、ベンチに座っていた少年の腕を強引に引っ張ると、少年の体はいとも簡単にベンチから滑り落ちた。
 地面にべしゃりと尻をついた少年のミニスカートが捲れ、白いパンティーが、噴水を照らすライトにぼんやりと映し出された。
 私の心臓はドクドクと激しく脈を打った。胸の奥から熱い息の塊が次々に沸き上がり、自然に唇からハァハァと熱い息が洩れた。

「交番に行きたくないのなら、あそこで身体検査をしてもいいが……」

 私は声を震わせながらそこを指差した。
 鬱蒼とした森に囲まれた公衆便所の灯りが淫媚に輝いていた。

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 公衆便所に少年を連行した。
 少年はこれから始まろうとしている事がわかっているのか、全く抵抗する素振りはない。
 個室に入るなり、背負っていたリュックを扉のフックに引っ掻けさせた。
 ナイフ等の危険物を持っていたら先に出してくれよ、と告げながら少年の腰に手を回すと、キュッとくびれた腰を両手で支え、ゆっくりと脇の下へと上らせた。
 柔らかいTシャツの生地はすべすべしていた。脇の下はほんのりと湿りブラジャーの紐がゴリゴリした。
 そのまま少年の胸に手を回した。膨らんだ胸は明らかに何かを詰め込んでいた。そんな不自然な胸を弄っていると、不意にブラジャーの下部に針金のような物を見つけた。
「これはなんだね」
 針金を摘みながら聞いた。
「ワイヤーブラです」
「ワイヤーブラ?」
「パッドを重ねてるから、落ちないようにしてるんです……」
 意味がわからなかった。
 取りあえずそれを不審物とみなし、そのワイヤーを見せなさいと言った。
 すると少年は恥ずかしそうにTシャツを捲り上げ、糞尿漂う個室にココナッツミルクの香りを溢れさせたのだった。

 少年の体はまるでイルカのように美しかった。ウェストは健康的に引き締まり、縦型のヘソが妙に可愛らしかった。
 白いブラジャーの中には肌色のクッションのような物が押し込まれていた。いわゆる上げ底だ。
 私は「キミも色々と大変なんだなぁ」と呟きながら、不自然にカポッと膨らんだブラジャーの隙間を覗いた。
 薄い胸板に淡いピンクの乳首がポツンっとあるのが見えた。不意にその乳首に舌を転がす中年男の姿が目に浮かんだ。

 少年の足下にしゃがむと、黒いニーソックスに包まれた脚を舐めるように見上げた。男とは思えぬ美脚だった。
 膝を包み込んだ黒いニーソックスに手を添え、その中に何か隠していないかと探った。
 おもいきり捻ればおれてしまいそうなくらい細い足首だった。足首から脹ら脛へと上がると、妊婦の乳房のように柔らかい肉が手の中で踊った。
 膝の裏を過ぎると、そこからは生肌だった。ミニスカートとニーソックスの間には真っ白な肌がぷるぷると震えていた。

 太ももに手を這わすと、少年の細い腰がピクッと跳ねた。
 両手で少年の柔らかい肌を包み込みながら「念の為、スカートの中も調べさせて貰うからね……」と、そこに両手を滑り込ませようとすると、ふと私をジッと見下ろしていた少年と目が合った。
 おもわず私の手が止まった。少年の太ももの付け根で止まったままの私の手が一気に汗ばんだ。

「わかっていると思うが、これも職務だからね……」

 私は少年の目を見つめながら声を震わせた。
 少年は冷たい目で私をジッと見下ろしたまま黙っていた。

「キミは、同性間ならば売春法に引っ掛からないと言ったが、しかしキミはまだ未成年者だ。未成年者のそのような行為は、場合によっては少年院に送致される事も有り得るわけで……」

 体裁の悪さから必死に説明をし始めると、少年を見上げていた私の目に、ふと異様な光景が映った。
 私の目の前に突き出しているそれは、ミニスカートの裾を持ち上げるほどに勃起した少年のペニスだった。

 少年は無表情のままジッと私を見下ろしていた。
 盛上がったミニスカートの裾の隙間から肉の塊が見え、真っ白なパンティーには赤黒い亀頭が卑猥に透けて見えた。

 少年が欲情しているのを確認した私は、細い太ももを優しく擦りながら、「参考のために聞くが、ソフトコースでは、どうやって客にいやらしい体を見せてるんだ?」と聞いて見た。
 すると少年はスカートを静かに捲り上げると、パンティーの上から勃起したペニスをいやらしく擦り始め、私の目をジッと見つめたまま「こんなふうに見せてます……」と、ハァハァと息を荒げた。

 少年のペニスはわずか十センチにも満たない短小だったが、しかし、さすが若いだけありその勢いは勇ましかった。
 少年はソレを上下にしごきながら私を見下ろし、プヨプヨの唇を官能的にペロリと舐めた。
 興奮を隠しきれない私は、あらかさまにハァハァと熱い息を吐きながら便座の上に腰を下ろした。

「地域を守る警察官として、こんな破廉恥行為が公衆の場で行なわれているのを見逃すわけにはいかないな……」

 少年は、そう呟く私をジッと見つめながら上下に動かす手を速めた。ペニスの先からは我慢汁が溢れ出し、上下に動く度にぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てた。

「しかし、公衆の場といえど、ここは個室であり不特定多数の人の目に触れる事はないわけで……もう少し調査する必要があろう。それによってキミを補導するかどうか決めるから、取りあえず、キミがいつもやっているそのプレイとやらを……」

 と、私がそう言い終わらないうちに、少年は私の足下にスッとしゃがみ込み、私の制服のズボンのボタンを手慣れた指使いで外すと、威きり立った肉棒を蛍光灯の下に晒したのだった。


              

 ぷちゃ、ぷちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ、と、まるで子猫が皿のミルクを舐めるような音が個室に響いた。
 少年は、その細い指で私の肉棒を上下させながら、肉棒の付け根や睾丸といったマニアックな部分をチロチロと舐めていた。

「キミはいつもこんな事をしてるのか……見知らぬ中年男のそんな部分を舐めたりして気持ち悪くないのかね……」

 そう囁きながら少年の髪を撫でた。カツラかと思っていたその髪は地毛で、肩まで伸ばしたおかっぱ髪は、妻の髪よりもサラサラして美しかった。
 少年は小さな口からハァハァと熱い息を吐きながら、舌を亀頭へと上らせて来た。

「おじさん達のおチンチンは臭いけど、でもみんな優しいから……」

 少年は私を見上げてニコリと微笑むと、尿道から垂れそうになっていた我慢汁をペロリと舐め、そのまま静かに目を閉じながら肉棒を喉の奥まで飲み込んだのだった。

 少年は、男の感じる部分を全て知り尽くしているようだった。フェラチオは女にされるよりも男にされた方が気持ち良いと聞いた事があるが、しかし、ここまで気持ち良いとは思わなかった。

 ハァハァと悶えながら少年の髪を撫でていると、ふと、便器の前にしゃがんだ少年が、自分で自分の性器をシゴいているのが見えた。それを見た瞬間、この少年は金を稼ぐ為だけにこれをしているのではないと思った。きっとこの少年はソレ系の異常者であり、いわゆる変態なんだと私は確信した。

 私は、ドアのフックに掛けられていたリュックの中から白いポーチを取り出した。
 未来ある若年者だというのに、既にこのような変態性欲に侵されてしまった少年を哀れみながら白いポーチを開けた。
 大量のコンドームの中から無造作に一枚取り出した。その時、ふと、大量のコンドームに埋もれた定期券を見つけ、少年に見つからぬようそれをソッと取り出した。
 定期券の裏には学生証が入っていた。その学生証は今年発行されたばかりのもので、私はそこに書かれている学校名と少年の証明写真を見て絶句した。

 少年は、定期券の裏を見つめたまま愕然としている私にニヤッと微笑むと、私の指からコンドームをソッと奪い取った。
 ギザギザの袋口をペリッと破り、中から卑猥にテラテラと輝くコンドームを摘み出すと、それを私の肉棒にスルスルと被せ始めた。

「キ、キミは……中学生だったのか……」

 少年はそれには答えず、妖精のように柔らかく微笑みながらゆっくりと立ち上がった。
 そして、私に背を向けながら卑猥な落書きが書き巡らされた壁に左手を付くと、右手をミニスカートの中に潜らせ、ニーソックスに包まれた細く長い足に白いパンティーをスルスルと滑らせた。

 ピンクのミニスカートの中から、ぽってりとした尻がポコンっと突き出た。
 白くて丸いそれは、まるでバレーボールのように小さかった。

「ワセリンも塗ってあるし、いちぢくもしてるから大丈夫……」

 少年は恥ずかしそうに呟きながら、右の尻肉をキュッと広げた。
 隠れていた陰部が蛍光灯の灯りに照らされた。真っ白な肌の中で、そこだけがチョコレート色にくすんでいた。

 男の陰部をこれほどまじまじと見るのは生まれて初めてだった。
 ひと昔前までは、逮捕した被疑者を留置所に勾留する際には、危険物や煙草などを隠し持っていないか肛門まで調べていたらしい。
 それはまだ留置所が刑事課に管理されていた頃の時代であり、警務課が留置所管理となった現在ではそのような非人道的な検身はなくなった。
 が、しかし、当時の看守達は今でも男の肛門が無性に見たくて堪らなくなることがあるらしく、私の先輩にも、男の肛門が忘れられずにソッチの世界に行ってしまった者が何人かいた。
 そんな肛門の魔力に取り憑かれてしまった先輩達を思い出しながら、私は少年の陰部を恐る恐る覗いた。

 そこは無駄毛が綺麗に処理されていた。
 小さな肛門はまるでアポロチョコレートのようであり、不潔な感じは全くしなかった。
 こんな小さな穴に中年男達の獰猛な肉棒を何本も入れられて来たのかと思うと、この小さな中学生が無性に恐ろしく感じた。

 少年は挑発的に腰をくねらせた。
 少年のペニスは張り子の虎の首のようにピコピコと動いていた。

 いつしか私は少年の肛門を覗き込みながらペニスをシゴいていた。少年が付けてくれたコンドームが、しわくちゃになりながらペチペチと音を鳴らしていた。
 そんな私の自慰行為に気付いた少年は、わざと肛門をヒクヒクさせたりした。開いたり閉じたりしている肛門の内部は更にドス黒く、油のようなものがテラテラと輝いていた。

「入れて下さい……」

 少年は、指で肛門を開きながら囁いた。

「金は払わんぞ……」

 そう聞くと、少年は、「お金はいいですから早く入れて下さい」と、咽び泣くように言いながら、自分の人差し指を肛門の中に出し入れしていた。

 小さな尻を両手でがっしりと掴んだ。親指で尻肉を広げながら、コンドームがしわくちゃになったペニスを肛門に擦り付けた。
 少年は「あんっ」と女のように腰を撓らせながら私のペニスを捕まえ、尻をおもいきり突き出しながらそれを自分の肛門へと導いた。

(これは凄いぞ……)と、思いながら少年の尻を覗き込んでいると、亀頭の先が肛門に突き刺さり、ペニス全体がいとも簡単にヌルリと滑り込んでいく瞬間を目撃した。

 項垂れていた少年が、「あぁぁぁぁぁぁ〜」と呻きながら天井を見上げた。
 少年が呻くと同時に肛門はギュギュギュと締め付けられ、おもわず私も少年の細い背中にしがみつきながら「おぉぉぉぉぉぉ」と唸った。

「激しく掘って下さい、めちゃくちゃにして下さい」

 少年の声に合わせ、私は腰を動かし始めた。ピストンする度にコンドームがベリベリと音を立て、コリコリとした感触が下半身に広がった。ヌルヌルした女のオマンコもいいが、コリコリしたこの感触も凄まじく良かった。

 少年を背後から荒々しく抱きしめながら、犬のように腰を振りまくった。
 少年のうなじは女のように細く、唇を押しあてると生クリームのように柔らかかった。
 ふと見ると、少年は私に肛門を犯されながら自分のペニスをシコシコとシゴいていた。

「こうして欲しいのか?」

 そう言いながら少年のペニスに手を伸ばすと、少年はイキそうな女のような妖艶な目で私を見つめながら、私の唇に舌を伸ばして来た。
 男とヤルのも初めてだが、男とキスをするのも初めてだった。
 少年の口内にはキャンディーの甘さが残っていた。そんな口内を隅々まで舐め尽くしながら腰を振り、そして少年のペニスをシゴいていると、突然少年が私の口の中に「う〜う〜」と唸り始めた。
 私の手に生温かい感触が広がった。シコシコとシゴいていた手が急にヌルヌルと滑り、ぐちゃぐちゃと卑猥な音が響いた。
 見ると、少年が射精していた。落書きだらけの壁に少年の白い精液が飛び散っていた。
 それを目にした瞬間、私の脳がぐらぐらと揺らぎ、尿道がドクドクと脈を打った。
 慌てて少年の口から舌を抜き取ると、私は今までにない快楽に包まれながら少年の耳に囁いた。

「キミを逮捕する……」

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 それは、雨上がりの昼下がりだった。
 派出所の奥の座敷で下島巡査と将棋を指していると、中尾橋の下で異臭がするという通報を受けた。
 大手飛車で追い詰められていた下島巡査は素早く将棋盤を片付けようとしたが、五百円を賭けていた私は、まるで風俗店にガサ入れした時のように「動かすな!」と下島巡査に怒鳴り、将棋盤をそのままにさせたのだった。

 自転車で現場に急行すると、雨上がりの隅田川には濃厚な湿気が澱んでいた。

「こんな事だろうと思いましたよ……」

 下島巡査は、橋の下で寝転がっている三人のホームレスを見ながら、呆れたように呟いた。
 この辺りは雨が降ると川の水が増水する事から、川辺に青テントを張っているホームレス達は、雨が降ると橋の下に避難していた。
 異臭騒ぎは、きっと、このホームレス達を毛嫌いしている地元住民の嫌がらせだろう。

「将棋盤。片付けなくて良かったっすね」

 下島巡査が嫌味っぽく笑った。
 私は「五百円くれ」と手を出した。
「まだ勝負はついてないじゃないですか」とムキになる下島巡査から五百円を踏んだくった私は、「キミは先に帰ってろ」と言い残し、一人で橋の下へと向かった。

 橋の下に入ると、確かに凄まじい異臭が湿気に混じってムンムンしていた。まるで、湿った犬小屋のような臭いだ。
 そんな臭いに咽せながら、顔見知りの番爺さんに「よっ」と笑った。
 ここらを仕切っている番爺さんは元テキヤの親分だった。私に振り向くなり、番爺さんは野良犬が餌を欲しがるような人懐っこい笑顔で微笑んだ。

「近所のババア共がうるさいんだ。悪いけど、そこらをひと回りして来てくれや」

 私はそう言いながら、下島巡査から踏んだくった五百円を番爺さんに渡した。
 番爺さんは欠けた前歯をニヤリと見せながら、「いつもすみませんね」と呟き、そこに寝転がっているボロ雑巾のようなホームレス達を叩き起こした。

 ホームレス達がゾロゾロと歩き始めると、私は番爺さんをソッと呼び止めた。

「最近、あいつはどうしてる」

 番爺さんは、ボロボロの軍手から伸びる糸をブチブチと引き千切りながら、「昨夜も来てましたよ」と意味ありげに笑った。

「相手は誰だ」

「そうですね……恐らく四十代後半といった所でしょうか、そこらにいる普通のサラリーマンって感じの男でしたね」

「縛られたり殴られたり、乱暴な事はされてなかったか?」

「いえ、それは大丈夫でした。けど、ただ……」

 番爺さんがそう表情を曇らせると同時に、私の胸にも不安が広がった。

「ただ、なんだ」

「……いえね、あの子、そのサラリーマンにおしっこさせられてたんですよ。ベンチの上にしゃがまされてね、大股開きながらシャーシャーやらされてましたよ。そのサラリーマンが、とんでもねぇ変態でしてね、そのおしっこを手で掬って、美味そうに飲んでるんですよ……気色の悪い奴ですよ、まったく」

 番爺は、欠けた前歯を曝け出しながら、そうケタケタと笑い出した。

「そっか……まぁ、小便くらいなら大丈夫だろう。とにかく、あいつはまだ中学生だからさ、これからも番爺さんのほうでしっかりと見守っててやってくれよな」

 私がそう笑うと、番爺さんは「そりゃもう、あたしでできる事なら」と言いながら何度も頭を下げた。

 番爺さんが橋の下からとぼとぼと出て行くと、橋の上から見ていた数人の住人達の中から「臭くて堪んねぇよ」という声が聞こえた。
 そして、その中の一人が私に向かって「あんたら警察は何やってんだ」と怒鳴り、慌てて顔を隠した。
 そう怒鳴った男は、以前、図書館のトイレからトイレットペーパーを持ち去ろうとした所を職員に呼び止められ、交番に連れて来られていた奴だった。

 私はそんな住人達の背後に広がる雨上がりの東京の空を見上げた。
 生温かい風が吹き荒み、貪よりとした雨雲がゆっくりと移動していた。
 橋の鉄柵にずらりと並ぶ住人達の顔は、まるで河原に晒された生首のようだった。
 そんな住人達の、欲望を隠した嘘臭い顔を見ながら、ふと、人間は正直に生きるのが一番幸せなんだろうなと思った私は、雨で濁流する隅田川に濃厚な痰を吐き捨ててやったのだった。

(かわいい不審者・完)



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