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鬼と悪魔と妖怪と2

2012/05/19 Sat 02:10

鬼と悪魔と妖怪と3




ここがラブホテルの一室である事は、このケバケバしい内装を見れば一目瞭然だった。
ゆったりとしたベッドは、優に畳二帖はあろうかと思われる程に巨大で、それは、本来の目的である『眠る』という行為よりも、別の行為をする為だけに作られた感がありありと見て取れた。
そんな淫らなベッドの真ん中に、恐ろしい器具で拘束された女がぐったりと横たわっていた。
そして、その女に陰部を舐めさせている先輩が、荒んだ笑顔を浮かべながらポツンっと両膝を付いていたのだった。

僕は目を疑った。僕が知る近田先輩という人間は、暴れるボケ老人に転倒防止の拘束具は付けても、若い女に淫らな拘束具など絶対に付けるような男ではなかった。しかも先輩は、苦しそうに呻いている拘束された女に、剥き出した陰部を舐めさせているのだ。
これは何かの間違いだ!
そう心の中で叫んだ時、僕の顔を誰かがヌッと覗き込んだ。
瞬間的に危険を察知した僕は、薄目を開けていた瞼を停止させ、そのまま目玉をゆっくりと白眼にさせた。
「起きてる?」
僕の顔を覗き込む男の背後で、別の誰かがそう呟いた。
「いや、まだ寝てるみたいだ……」
僕の顔を覗き込んでいた男は、そう呟きながら屈んでいた身体をスッと元に戻した。
ぼんやりと薄目を開けている僕の目に、男の下半身にウヨウヨと広がる真っ黒な陰毛が映った。
その黒々とした陰毛のジャングルの中に四センチ弱のペニスが項垂れ、男は恐らく包茎なのであろう、ペニスの先は不自然に皮が捲れており、その剥けた皮の中に真っ赤に充血した亀頭が痛々しく輝いていた。

僕が横たわっているソファーのすぐ横の浴室から、モヤモヤとした湯気と共に裸の男達が出たり入ったりと繰り返していた。そんな裸の男達は、先輩を入れて少なくとも五人はいるようだった。
しばらくすると、再びまた別の誰かが僕の顔を覗き込んだ。
「この人誰なの?」
そう呟きながらバスタオルで体をガサゴソと拭く男は、まるで沖縄の漁師のように、真っ黒に日焼けした顔に荒々しい太眉をくっきりと浮かばせていた。
「近田君の同僚らしいよ。失恋してヤケ酒飲んで荒れてたから連れて来たんだってさ」
誰かが男の背後でそう言った。
失恋? ヤケ酒? 荒れてた?
僕はその三つの言葉を頭の中で復唱しながら、居酒屋で立て続けに生ビールを飲み干していた自分を思い出した。
それがヤケ酒だと受け取られるのはまだしも、僕は失恋したなどとは先輩に一言も言っていない。それに、実際、僕は失恋などしていないのだ。
どうして先輩はそんな嘘を付くのか。何の為にそんな嘘を付き、そして何の為に酔った僕をこんな所に連れて来たのか。僕の中で、ベッドで淫らな行為を繰り広げている先輩のその姿とその無意味な嘘が入り乱れ、先輩に対する不信感が一気に高まった。

しかし、それにしても、この先、僕はどうなってしまうのだろう。
この不気味な空気の中、ジッと寝たフリをしたままそんな不安と恐怖に包まれていると、再びベッドの方から先輩の声が聞こえて来た。
「しかし増田さん、こんな変態女をいったいどこで拾って来たんですか?」
ベッドの脇で煙草を吹かしている肥満の男にそう聞きながら、先輩は女の拘束具をカチカチと外し始めた。
そんな先輩に、ニヤニヤと笑みを浮かべる肥満の男は、煙草を灰皿に押し付けると、女の髪を優しく撫でながら静かに答えた。
「実はね、この娘はウチの病院の患者なんですよ」

ウチの病院。
その言葉が僕の脳に突き刺さった。
と言う事は、この醜く太った親父は医者なのだろうか?
「やっぱりそうだったんですか。この女、さっきから増田さんの事を『先生』って呼んでたから、おかしいなぁって思ってたんですよ」
そう、ひひひひひっと狂気的に笑った先輩は、女をベッドの下に立たせると、両手をベッドに付かせたまま尻を突け上げさせ、「で、この女はどんな病気なんですか?」と、その尻肉を指で掻き分けながら聞いた。
「躁鬱病が併発したニンフォマニアですね」
先生と呼ばれる男は、落ち着いた口調で淡々とそう答えた。
「ニンフォマニア? なんですかそれ?」
先輩は女の尻肉の谷間にクチュクチュっと卑猥な音を立てながら聞いた。
「ニンフォマニアってのは色情症の事ですよ。簡単に言えば、彼女は極度な異常性欲により精神が狂ってちゃってるって事です」
先生と呼ばれる男は、ふふふふふっとマニアックに笑いながらゆっくり起き上がると、ベッドで四つん這いになった女の顔に勃起した陰茎を突き付け、「さ、舐めなさい」と優しく頷いたのだった。

女はゆっくりと顔を上げた。女の目は溶けたチーズのようにトロンと澱み、まるで催眠術にでもかかっているように焦点が合っていなかった。
女は真っ赤な舌を伸ばすと、目の前でヒクヒクしている先生の亀頭をペロンっとひと舐めした。そしてその味を確かめるかのように唇を下品にぺちゃぺちゃと鳴らすと、大きな口を開けながら先生をジッと見上げ、そのまま口一杯にペニスを頬張った。
ぷちゅ、くちゅ、ぺちゅ……
まるで子供がアイスキャンディーをしゃぶっているような粘音が微かに響いていた。
その濃厚なフェラに、先生は「ふー……」と深い鼻息を吐きながら、女の尻肉の谷間を覗き込んでいる先輩を見た。
「……しかもね、彼女の場合は、持続性性喚起症候群という重症なんですよ……それはどれだけセックスしてもその性欲が治まらないという貪欲な病気でね……」
女の舌使いに気持ち良さそうに腰をくねらす先生は、プクリと小ぶりな女の乳を右手で優しく擦りながら話しを続けた。
「……だから一週間でもずっとセックスをし続けられるし、何人でもOKなんです……つまり彼女は、俗にいう『肉便器』って類いの変態なんですよ……」
ハァハァと荒い息を洩らし始めた先生は、股間で蠢く女の髪を優しく撫で回しながら途切れ途切れにそう言った。
「肉便器か……そりゃあ凄いですね……」
女の尻から顔を上げた先輩はそう頷くと、女の腰を両手で押さえ付け、尻の谷間に向けて一気に腰をグイッと押し込んだ。
すると、「うぐっ!」と唸った女は、その折れそうな程に細い背中をこれでもかと撓らせた。そして、もっともっとと言わんばかりに先輩に向けて尻を振りまくり、狂気の姿を露にしたのだった。

女は先生のペニスを口に銜えたまま「うーうー」と唸り声を出していた。
先輩の腰が動く度に女の尻肉と先輩の毛深い太ももが衝突してはパンパンと乾いた音を立て、同時に粘りの強い卑猥音がくちゃくちゃと部屋に中に響き渡った。

部屋の隅のソファーで煙草を吹かしていた裸の男達が、「お、始まったぞ」などと口々に呟き始めながら、その爛々と輝かせた異様な目をベッドに向けた。
沖縄漁師のような男が、ダラリと萎びた自分の陰茎をムニムニと揉みながら、隣りの小男に「コンドームはいるのか?」と小声で聞いた。
そんな隣りの小男は、まるで『福助の足袋』のイラストのような三頭身だった。

福助のような男は噛んでいたガムを灰皿の中にプチュっと吐き出すと、「いらないでしょ、近田君も付けてないし」と、腰に巻いていたバスタオルをサラリと下ろした。そこに現れた福助のペニスは、まさに『チビの大マラ』を絵に描いたような巨根であり、その小さな体と大きなペニスのバランスは、どこか妖怪じみていた。

男達が見守る中、先輩と先生はスレンダーな女の体にむしゃぶりついていた。
そんな光景は、先日、スカパーのアニマルプラネットチャンネルで見た『大自然ドキュメント・サバンナのハンターたち』という番組をふと思い出させた。先生と先輩がライオンで、痩せた女はカモシカ。そして、今か今かと出番を待ちわびる裸の男達は薄汚いハイエナそのものだった。

(こいつら、みんな狂っている……)
そう思う僕の背筋に冷たいモノがゾクゾクと走り抜け、一刻も早くこの場が逃げ出したいという焦りが、不意に吐き気を誘発した。
が、しかし、そんな僕の股間は、先輩が性交を始めた頃から何やらジンジンと痺れていた。ズボンの中のペニスはこれでもかというくらいに勃起し、更にパンツの一部分が冷たくなっている事からして、恐らく我慢汁が大量に溢れているのではないかと予想できた。
そんな僕は、この場から逃げ出したいと思う一方で、ベッドの上で繰り広げられる乱交の、その一部始終を見ておきたいという衝動に駆られたのだった。

天井の隅にぶら下げられていたBOSEのスピーカーから、オヨネーズの『麦畑』が流れていた。古い曲だったが、いつも宴会のカラオケで事務局長が唄う曲だった為、なんとなくそのメロディーは覚えていた。
そんな馬鹿げた曲をBGMに、ベッドの上では精神異常の女の体に肥満体の裸族たちが群がっていた。
煙草を吸う者がいなくなった部屋には、煙草の匂いの代わりに、汗っかきなデブが発するミツカン酢のような酸っぱい匂いがムンムンと充満し、何度も咽せ返しそうになった。

奇妙な喘ぎ声を叫びまくる精神異常女は、車座になった裸族の中央で、まるで捕獲されたイタチのように暴れ回っていた。
男達の太い指が女の身体中を這い回り、女の肛門と膣と口には黒々とした卑猥な肉棒がグニグニと蠢いては、更に女に奇怪な声を上げさせていた。
そんな裸族に混じっていた先輩は、女の肛門にペニスをピストンさせながら、「気持ちいいか? 気持ちいいか?」と、しつこいくらいに囁いていた。先輩のその顔は、老人ホームでは一度も見せた事のない異様な表情で、それはまさしくトチ狂っているとしか思えない有り様だった。

僕はそんな先輩を恐る恐る見つめながら、これが先輩の本性なのだろうかと不安を覚えた。ここまで変態性欲を剥き出しにしているのならば、もしかしたら老人ホームでも痴呆症の老人にこれらの虐待をしている可能性も考えられるからだ。
そんな事が発覚すれば、先輩の人生だけでなく老人ホーム自体が終わってしまう。そうなれば僕も失業者だ。
先輩の醜い尻の動きを見つめながら、ハローワークに通う自分を想像していると、ふと来月婚約する恵美の顔が浮かんで来た。
(あの厳格な父親が、失業者との婚約を許すはずがない……)
そう危惧する一方で、早い段階で先輩の素顔がわかって良かったとも思った。
それは、このような危険な男を、何も知らないまま恵美のマンションに泊めていれば、いつか大変な事件が起きていたかも知れないからだ。
そう思ったとたん、股間にピンクローターを当てられながら、車座の中央で魚のように跳ね回っているその女が、一瞬、恵美に見えたのだった。

裸族は、散々女を嬲った後、一人ずつ順番に女を抱いた。
最初は先生で、二番目が先輩だった。
先輩は正常位の体勢になると、先生の精液が溜っているその膣に、何の躊躇いも無くペニスを挿入した。先輩のペニスが上下にピストンされる度に、先生の精液がプクプクと奇妙な音を奏でていた。
そんな先輩は、大きく開いた膣の中にペニスをヌポヌポと出し入れしながらも、時折、膣からヌポッと抜いては、その精液でドロドロに汚れたペニスを肛門に滑り込ませたりしていた。

女は完全に狂っていた。膣から肛門にペニスが入れられる度に、「クロワッサン!」などと意味不明な言葉を叫んでいた女は、ベッドのシーツや枕を手当り次第に掴んでは、もがき苦しんでいた。
そんな女を冷ややかな目で見つめる裸族たちは、「あれは先天性か後天性か」などと難しい話をしながら順番を待っていた。
裸族たちは一斉に煙草を吸い始め、その煙の中で息を潜めていた僕は、固くなった下半身がバレないようにと必死に寝たフリを決め込んでいたのだった。

「キミの頭はイカレてるんだろ? ん? どっちなんだ?」
女の耳元にそう囁きながら腰を動かす先輩を見て、裸族たちが、けけけけけけっと下品に笑い出した。
すると浴室から出て来た先生が、「いやいや近田君、頭がイカレてるんじゃないよ、彼女は精神が壊れてしまってるんだよ」と、脂肪が何重にも重なる肩から湯気をホワホワと立ち上らせながらそう笑った。

先輩は女の細い体をガクガクと乱暴に揺すりまくると、そのまま女の中に射精した。
先輩がベッドから降りると同時に、福助のような小男がニヤニヤと笑いながらベッドに上がった。そんな福助の手には、黒光りするバイブがしっかりと握られていた。

寝たフリを決め込む僕の前のソファーで、いつもは煙草など絶対に吸わない先輩がプカプカと煙草を吸っていた。そんな先輩の横でワイシャツを着込んでいた先生が、不意に僕を見て「この人、どうするの?」と先輩に聞いた。
「ええ……できれば乱交に参加させてあげたかったんですけどね……でも、この調子じゃ無理そうですね……目を覚ましたら連れて帰ります」
そう頷く先輩を、僕はボンヤリと半開きさせた薄目でソッと見た。
まだシャワーを浴びていない先輩の陰毛は、乾いた女の汁がバリバリに固まり、まるでフケのように白い粉を吹いてはソファーの座席にパラパラと散らばっていた。

「ところで先生、あの女、本当に淫乱症って病気なんですか?」
先輩は天井に向かってフーっと煙を吹きながら先生に聞いた。その吸いなれない煙草の吸い方は、まるで新人のホステスのようだ。
そんな先輩を横目で見つめる先生はニヤニヤと笑いながら言った。
「どうして?」
「……どうしてって……あんなに綺麗な女なのに淫乱症ってのも、あまりにも話しが出来過ぎてるなぁって思いましたから……」
すると先生は、金縁眼鏡の奥で細い目をキラリと輝かせながら、意味ありげにふふふふふっと微笑んだ。
「正解です。あれは天然モノではありません。あの肉便器は私が作ったんです。あのタトゥーもあの淫乱性欲も私が作ったものです」
「?……作った?」
「そう。あの患者はね、本当は軽いウツ病なんです。元々は真面目なOLでしてね、付き合ってた彼氏にフラれた事で、ちょっとしたノイローゼになってただけなんですよ……」
先生はそう言いながら地味なネクタイを首に回すと、馴れた手付きでスルスルとネクタイを結びながら、悪意を含んだ目でニヤリと笑った。
「でもね、あまりにもイイ女だったから、そのまま処方箋出して返すってのも勿体ない気がしましてね……それで調教してやったんですよ」
すかさず先輩が「調教?」と身を乗り出すと、先生は自慢げに笑いながら「そう。調教」と頷いた。
「調教なんて、そんなに簡単にできるものなんですか?」
先輩は煙草を灰皿に押し付けながら興味深げに聞いた。
「まぁ、調教と言ってもね、私の場合は『薬』を使うんですけどね」
「薬って……淫乱症にさせるそんな薬があるんですか?」
「いや、そんな薬ありませんよ。ベンゾジアゼピンといった普通の催眠薬ですよ。あれを通常より大目に注射しましてね、リラクゼーション治療だとか言って、個室でアイマスクを付けたまま三十分程寝かせておくんですよ。で、薬が効いて来た頃に、耳元に息を吹き掛けたり、唇を撫でてやったりすればね、まぁ、大概の女ならアソコはヌルヌルになってるはずです。そんな治療を一週間程毎日続けてれば、そのうち患者の方からコレを欲しがってくるってわけですよ……」
先生は、剥き出したままの先輩のペニスを指先でツンツンと突きながら自慢げに笑った。そして、「もし、調教して欲しい女がいましたら、ぜひぜひ我が医院を御利用下さい」などと、ペコリと頭を下げながら戯けて見せたのだった。

そんな二人の話を薄目を開けて聞いていた僕は、これが医療の最前線に立つ医師と介護士の会話なのかと耳を疑った。
言いようのない怒りと恐怖が僕を包み込んだ。あのクスリ漬けにされた女を見て、一瞬でも勃起してしまった事を心から恥じた。
今更、目を覚ます事の出来なくなっていた僕は、ベッドの上で「一人じゃ盛上がらないからみんな来てくれよ」と笑っている福助の声を聞きながら、怒りと恐怖に震えていた。

福助に呼ばれた裸族たちが、ドヤドヤとベッドに向かう気配を感じた。
そんな足音を聞きながら、(こいつらは完全に狂っている……)と、再びそう呟いた瞬間、不意に僕の耳にクスリ漬けにされた女の悲鳴が飛び込んで来た。
「気持ちいいか変態女……」
「ほうらお前の大好きなチンポだ、好きなだけ舐めまくれ……」
「奥までバイブをぶち込んでやるから、もっと股を開いてみろよ変態女……」
そんな裸族たちの卑猥な囁きと共に、激しく唸るバイブの音が部屋に響いていた。
いつしかホテルの窓には、夜明けの気配がうっすらと漂っていた。
女の悲鳴と、バイブの音と、そして有線から垂れ流しされる古ぼけた昭和の歌謡曲。
そんな狂音に包まれながら、一刻も早くここから脱出したいと思う僕の耳に、ペニスを銜えたまま「イクぅ!」っと叫ぶ哀れな女の悲鳴が、不気味に突き刺さったのだった。

(つづく)

《←目次》《3話へ続く→》

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