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愛と青春のポルノ映画館2

2012/04/01 Sun 01:01

   愛と青春の2

《解説》
悪名高きポルノ映画館。
少年時代、同級生の石津君が変なおじさんにチンチンをペロペロされた映画館。
そんなトラウマ映画館に、再び足を踏込む男子高校生・・・



《本編》
 有栄座。
 なぜこの映画館がケンジにとってトラウマなのかと言うと、それは小学四年生の頃に遡る。

 いつもHなポスターが貼られているその映画館はクラスでも話題の的で、この映画館の前を通る生徒達は好奇心を剥き出しにしながらも緊張していた。
 そんなある日、当時いつも一緒に遊んでいた石津という友達と有栄座の前を通りかかった。
 乳房を露にした裸の女のポスターに「レイプ」というカタカナが書いてあり、それを目にしたケンジと石津はどちらともなく映画館の前で足を止めてしまった。

「レイプってなんだ?……」

 ケンジが興味津々の目を輝かせながら石津に聞くと、石津もこれまた興味津々な目を輝かせながら「外人の名前か?」と、不思議そうに首を傾げた。
 すると映画館の裏口から、そこで働いていると思われる爺さんがトタンのバケツと雑巾を持ってヨタヨタと出て来た。
 爺さんはケンジ達を見るなり、なにやら卑猥な表情で「ひひひひ」と笑った。
 とたんに怖くなったケンジが「行こうぜ」と小声で石津の手を引っ張るが、しかし石津はいきなりその爺さんに「あのぅ……」と声を掛けたのだ。
 爺さんはバケツを持ったまま「ん?」と石津に向かってアゴを突き出した。
「レイプってなに?」
 石津は半ズボンから伸びる小さな膝っ小僧を微妙に震わせながらそう聞いた。
「うききききききききっ」
 爺さんは外れかけた入歯をカパカパさせながら突然そう笑うと、駐車場の隅にある水道でバケツの中を洗い始めた。

「レイプに興味あんのか?」

 爺さんは死にかけの猿のような顔で石津を見つめると、唇を唾液でネチネチさせながらそう聞いた。
 ケンジは、ふとバケツを洗っている爺さんの指が2本無い事に気付き、とたんに恐ろしくなって逃げ出そうとしたが、しかし石津はいたって冷静にそんな爺さんに向かって「うん」と返事をした。
 爺さんは水道の蛇口を三本の指しかない手で器用に締めると、そのバケツを駐車場の横の側溝にガランと投げ入れ、「おせえてやるから、こっちこい」と石津に微笑み、茶色いゴム草履をペタペタと鳴らしながら駐車場の奥へと歩き出した。

「ヤバいよ石津……」
 ケンジは必死で石津の袖を引っ張った。
 しかし石津は「大丈夫よ。おもしろそうだからちょっと聞いて来るよ」とケンジの手を振り払い、そのまま爺さんの後に付いて駐車場の奥へと消えて行ったのだった。
 それからしばらくして、なかなか帰って来ない石津が急に心配になったケンジは、恐る恐る駐車場の奥へと行ってみた。そこでケンジは、映画館の裏にあるコンクリートの地下階段の下で、半ズボンを下ろされたまま震えている石津を目撃した。
 日光に照らされた埃がキラキラと舞うコンクリート階段の下で、小さな尻を白く光らせながら立ちすくむ石津の足下には爺さんがしゃがんでいた。
 驚いたケンジが慌てて階段のコンクリート塀に身を乗り出すと、爺さんが石津のチンポを食べているのが見えたのだった。

 あれから七年。しかしその記憶は今でもつい昨日の事のように思い出される。
 キラキラと光っていた埃、泣きべそをかいていた石津の顔、爺さんのペチャペチャという唾液の音とそして爺さんが石津のチンコを食べながら自分のチンコをシコシコと上下に擦り、チンコの先から白い汁をピュッと飛び出させたそのシーンまでもが、今でもケンジの頭の中で鮮明に甦るのだ。
 そんな奇怪な出来事を思い出す度にケンジは脱力感を感じた。もう何もかもが面倒臭くなり、ただただ眠くなった。そして頭をボーっとさせながら体をグッタリさせていると、決まってペニスだけが固くなっていたのだった。
 それは高校二年生になった今でも変わらない。
 今でもあの時の出来事を思い出すと脱力感に襲われる事がある。そしてしばらくすると突然自暴自棄な感情が沸き上がり、誰でもいいからナイフでズタズタに切り刻んでやりたくなるのだ。
 そんな時は必ずペニスが勃起していた。そして自暴自棄な気持ちのままオナニーをすると、普通時のオナニーでは得られないほどの凄い快感を得る事をケンジは知っていたのだった。

 そんなケンジは、有栄座の入口にあるピンクのフィルムが貼られた蛍光灯を目にするなり、いきなり恐怖と興奮に包まれた。
 心臓をドクドクと音立てながら、宙に浮いたような足取りで切符売場へと向かう。
 緑色のタイルが張り巡らされた妙に古臭い切符売場の窓口には、『チケットはあちら→』とマジックで殴り書きされた段ボールの切れ端が立てかけてあった。その矢印の向こうには、そんな古臭い切符売場に比べて妙に最新型の券売機がポツンと置いてある。
 ケンジはポケットを弄りながら券売機へと近付いた。静まり返った入口のフロアには劇場の中から洩れてくる映画の音だけがボソボソと響き、妙に静まり返っていた。
 ケンジはポケットから出したしわくちゃの千円札を券売機に入れた。すると突然、「ありがとうございました」という大きな機械声が券売機から響き、驚いたケンジが「ひやっ」と肩を窄めると、ピンク色のちょうちんがブラブラとぶら下がっている売店で新聞を読んでいた中年のおばさんが、ジロッとケンジを睨んだのだった。
 ドキドキしながら急いでチケットを取ったケンジは、そのままフロアの中へ入って行った。
 ケンジがフロアに入るなり、新聞を読んでいた売店のおばさんがゆっくりと顔を上げ、ケンジに向かって「はい、こっち」と気怠そうに手招きした。
 ケンジはそのまま売店まで行くと、売店のショーケースの上にチケットを置いた。そんなショーケースの中には見事に東ハトのキャラメルコーンしか並んでいなかった。

「あんた高校生?」
 売店のおばさんがチケットを半分に千切りながらケンジに言った。
 そのおばさんの目は、笑っているのか呆れているのかわからないような目で、一瞬ケンジはそのおばさんの目が、学校の裏の正徳寺に祀られている観音菩薩の目に良く似ているとふと思った。

「いえ……」

 ケンジはそんなおばさんの目から慌てて目を反らして答えると、おばさんは「こんな映画見てるとバカになっちゃうよ」とポツリと呟き、再び新聞に視線を戻したのだった。
 売店のおばさんから逃げるようにフロアの奥へ進んだケンジは、とりあえず自販機の前にあったソファーに腰を下ろした。
 そんなソファーの前の壁には、まるで世の人々を狂わせようとしているかのような、過激で卑猥なポスターがズラリと貼られていた。
 そんなポスターをぼんやり眺めていると、例の脱力感がジワジワとケンジの中に広がって来た。

(こんなとこで何やってんだろ俺……)

 そう思いながら摘んでいたチケットの欠片を床に捨てる。コンクリートが打ちっぱなしになっている床は真っ黒に汚れ、まるで歩道のようだ。
 そんな薄汚れたコンクリート床に落ちたチケットの欠片をぼんやり見ていると、ケンジの視野にいきなり黒い革靴がジャリッと音を立てて飛び込んで来た。
 その中年親父は見事なほどにハゲていた。そのくせ、口の回りにはチクチクとした青い髭がまるでカビのようにビッシリと広がっている。
 そんな中年親父は無言のままケンジの隣に座ると、「はぁぁぁぁ」と深い溜息を吐いては、すかさず「やんなっちゃうよ……」と気怠く呟くと、いきなりケンジに振り向き「おはよう」と笑った。
 そんな中年親父が剥き出しにする大きな前歯は、明らかに『借り歯』だとわかる粗末な物で、ケンジはそんなビーバーのような男がとたんに気味悪くなり慌ててソファーを立ち上がる。
「ねぇ」という借り歯男の声を無視して急いで劇場のドアを開けた。

『奥さん……こくなに濡れてるじゃないですか……』
 ドアを開けるなり、今までボソボソと籠っていた音声が、鮮明にケンジの耳に飛び込んで来た。
 あまりにも昭和チックなそのセリフに耳の穴が痒くなった。

『いけません鴨下さん!許して!』
 これまた古臭い奥さんらしき人のセリフを聞きながら、ドアの前でぶら下がっている埃っぽい暗幕カーテンを開けた。
 いきなり大きなスクリーンがケンジの目に飛び込んで来た。
 スクリーンでは鴨下と呼ばれる男が奥さんと呼ばれる垂れ乳女の股間に顔を埋めている。
 そんな三流ポルノ映画を横目に、一歩暗闇の中に進もうとした瞬間、いきなり背筋に氷水を垂らされたような衝撃を受けた。
 そう、最前列の「立ち見場」と呼ばれるスペースに屯していた大勢の男達が、一斉にケンジをジッと見ていたのである。
「ギョッ!」としたケンジは、そんな男達の視線から逃れるように、慌ててスクリーンに向かって狭い座席の通路に潜り込むと、とりあえずどこでもいいからと目に付いた座席に腰を下ろしたのだった。

(マジ怖ぇ……)

 ケンジはそう脅えながら、座席の足下に散乱しているキャラメルコーンの袋をスニーカーの先で隣へ追いやると、その袋のあちこちにナメクジのように張り付いているヌラヌラした物がスクリーンの光りにキラキラと反射しているのが見えた。
(なんだこりゃ?)と、顔を近づけてよく見ると、なんとソレは精液の溜った使用済みコンドームだった。

『ほら……どうです奥さん、旦那さんのよりも太いでしょ……』
 スクリーンでは鴨下と呼ばれる男が、ハァハァと荒い息を吐きながらブヨブヨの奥さんの裸体に腰を振っていた。
 そんな鴨下をチラチラと見ながらも、ケンジは薄暗い場内をこっそりと見回した。
 場内の座席にはポツリポツリと人影が見えた。座席に座っている客たちはかなり少なく、ほとんどの客達は一番後にある立ち見場と呼ばれるスペースに固まっているようだ。

(あの人達はいったいあそこで何をしているんだろう……)

 ケンジは恐る恐る後ろを振り返る。
 スクリーンの光りに反射した男達の顔がはっきりと見て取れた。
 サラリーマン風の人、労働者風の人、近所の商店街のおっさんのような人、ホームレスのような人……
 様々な人々が立ったままスクリーンをジッと見つめていた。そんな人々は100%が男だった。
(あのスケベ親父達にミカをヤらせるのか……)
 ケンジはその光景を想像し、おもわずブルっと身震いした。
(あんな変態っぽい親父達にヤられたら、滅茶苦茶にされちゃうだろうなぁ……)
 ケンジはとたんにミカの事が心配になったが、しかしだからといってミカが素直に作戦を中止するとは思えなかった。
(あいつ、結構頑固だからな……)と、そう思いながらケンジがゆっくりと前に向くと、いつの間にかケンジの前の座席に誰かが座っていた。
 これだけ座席が空いている中で、どうしてよりにもよって俺の真ん前に座るんだよ、と、口の中で小さく舌打ちをしたケンジだったが、しかしよく見ると前に座っている二人のうちの一人は、髪を肩まで伸ばした女性である。
 そんな女の髪を真後ろから見つめていたケンジは、とたんにムラムラと欲情してきた。こんなエッチな映画館にカップルで来るなんて、きっとこの女はスゲェ変態なんだとそう思ったのだ。
 そう欲情しているケンジの前で、さっそく二人はなにやらゴソゴソと動き始めた。そんな二人の後頭部を見つめながら、ケンジは(始まったのか……)とワクワクする。
 そんな女は、後ろから見る限りでは変態に似合わない清潔そうな雰囲気のする女だった。どちらかというと普通の主婦っといった感じだ。
 突然、女の頭が隣の男の肩にふわりとしなだれ掛かった。ケンジは股間をギンギンに固くさせながら、座席の奥を覗きたくて仕方がない。
 そのうち女の頭がズルズルッと座席の背もたれから滑り落ちて行く。座席の背もたれには女の頭が少しだけ飛び出している状態となり、ケンジがちょっと背筋を伸ばして前屈みになれば、座席の向こう側が覗けそうだった。
(どうしよう……)
 覗こうかどうしようかソワソワと悩んでいると、いつの間にそこにいたのか、ケンジの真隣りの席に中年男が座っており、そいつがいきなりケンジに向かって「見てもいいんだよ」と小さな声で囁きながら前の座席を指差したのだった。

 とたんにケンジの背筋がゾゾッと寒くなった。
 なんとその中年男は、勃起したペニスを剥き出しにしたままそれをシコシコとシゴいていたからである。
 そんな中年男のセンズリシーンを呆然と見つめているケンジに、中年男は「この人達は見て欲しいんだよ……」と、口内で唾液をくちゃくちゃさせながらそう囁くと、「ほら……」とケンジに言いながら前の座席に身を乗り出した。
 中年男は前の座席をソッと覗き込みながら、座席の上でシコシコとペニスをシゴき、ズボンの太ももをスリスリと擦り合わせていた。
 男のセンズリを見るのは初めてだった。いや、童貞のケンジは女のオナニーだって見た事はない。
 そんな中年男の手の動きは、いつもケンジがやっている動きと同じだった。

(やっぱりみんなやり方は同じなんだ……)

 妙に感心しながらその中年男の上下に動くペニスを見つめていると、「ほら、凄いよ……見てごらん」と中年男がケンジを誘った。
 ケンジはそんな中年男に誘われるまま、恐る恐る前屈みになり、鼻の下を伸ばしながらもソーッと前の座席を覗き込んだのだった。

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