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マニアックに行こう!3

2012/05/19 Sat 00:32

    マニア3




 3階のフロアは電気が消され、緑色の非常階段の看板と赤い非常警報機のランプだけが不気味に灯っているだけだった。
 そんな薄暗い廊下を、静香を抱えた男は無言で進んだ。
 僕はそんな男の後をフラフラと歩きながら、携帯で一一〇番するチャンスを伺っていた。
 もし、一一〇番に電話を掛けている所を男に見つかれば、間違いなく僕は男にぶっ飛ばされるだろう。いや、下手をしたら殺されるかも知れない。だから僕は慎重に電話するチャンスを伺っていたのだった。
 8階のフロアには小さな電気店が数店並んでいた。しかし、それらの店は全て頑丈なシャッターが閉まっていた。
 そんな静まり返った廊下を、ひたすら奥へ奥へと進む男は、りりり~ららぁ~と鼻歌を唄っていた。そんな男の鼻歌が、AKBの『ベビーローテーション』だと気付いた時、男の足がピタリと止まった。
 男が手を伸ばしたのは頑丈な鉄の扉だった。ドアノブをグルッと回しそのまま引っ張ると、「ゴワワワン!」と鈍い音を廊下に響かせながらドアが開いた。
 ドアが開いたと同時に、なにやらワックスのような油臭いニオイが中からモワッと溢れてきた。
 そこはモップや掃除機が並ぶ清掃用具の倉庫だった。

 四畳半ほどの空間には清掃用具が綺麗に整頓されていた。
 薄暗い倉庫の隅に静香を寝かせると、入口で突っ立っていた僕を倉庫に引きずり込んだ。そしてそのままガシャン! とドアを閉めると、慣れた手つきでカタンっと鍵を閉めた。
 瞬間、濃厚な闇に包まれた。しかし、壁に小さな窓があり、そこから外の街灯の灯りがそそぎ込んでは、倉庫の中をボンヤリと照らしていた。
 そんな小窓から灯りが洩れるのを気にしているのか、男は壁にある電気のスイッチを無視した。
 暗いままだと携帯を開いた時の明かりが気付かれてしまう。そう思った僕は、廊下を歩いている時がチャンスだったと後悔しながら、下唇をギュッと噛んだのだった。
「ここまで来たんだからよ……もう諦めろよ……」
 男はそう笑いながら僕に近付くと、両手で僕の肩をガシッと掴んだ。
 僕は絶体絶命だった。もう逃げられない。例えここから強行突破できたとしても、静香を一緒に連れて行く事はできないのだ。
 静香が乱暴されるくらいなら僕が犠牲になるべきだ……
 床にぐったりと横たわる静香のシルエットを見つめながら、僕はそう決心したのだった。

 男は立ったままの僕をギュッと抱きしめると、そのネチャネチャする唇を僕の頬や耳に押し付けて来た。
「可愛いなぁ……やっぱり女子高生はイイ匂いがするなぁ……」
 男は僕の耳元にそう呟きながら、僕のウナジをクンクンと嗅ぎまくった。
 男は僕を女だと思い込んでいる。僕を抱きしめたままワンピースの上から僕の股間をスリスリと擦り、もっこりとするペニスを優しく撫でながら「生理か……」などと呟いている。
 とたんに背筋がゾッとした。
 もし僕が男だとバレたらどうなるだろう、と考えると膝がガクガクと震えて来た。きっと逆上した男は僕をメッタ打ちに殴り、そして静香を犯すに違いない。
 僕はどうなってもいい。だけど静香だけはなんとしても守らなければならない。僕が男だと気付かれる前にここから脱出しなければ。
 そう思っていると、男は僕の頬にナメクジのような舌を這わせ、ヌルヌルと唇に迫った来た。
 僕は、ついさっきヴィジュアル系の少年にキスをされたばかりだ。童貞の僕はそれが初キッスだった。初キッスを男に奪われるとは、まさか夢にも思っていなかった。しかも強引に。
 男の舌が僕の唇をネロネロと舐め始めた。下水道のような口臭がハァハァと僕の鼻に降り掛かる。
 こんな臭親父なら、まだヴィジュアル系の少年のほうがましだった、と思った瞬間、男の分厚い舌が僕の口内にヌルッと侵入して来た。生まれて二度目のキスだった。
 男は、まるで南国の果物の実をむしゃぶり食うかのように僕の口内を貪った。男の前歯と僕の前がガチガチと当たり、混ざり合った二人の唾液が僕の唇の端からダラダラと垂れた。
 男は唾液をネチャっと糸引きながら舌を抜くと、僕の顔を真正面から見つめ、「キス、あんまりした事ねえのか?」と聞いて来た。
 二度目です。と答えようかと思ったが、しかし声を出すと男だとバレる恐れがあるため、無言でコクンと頷いた。
 男は嬉しそうにニヤリと笑った。そして歯槽膿漏のニオイが漂う口臭を吐きながら「処女か?」と僕の顔を覗き込む。
 再びコクンと頷くと、男は僕の両頬を手の平で包み込みながら、「心配すんな。おっちゃんが気持ち良くさせてやるから」と、満面の笑みでそう言うと、またしてもその分厚い舌を僕の唇の中に押し込んできたのだった。
 男は僕の口内で舌を動かしながら、自分でズボンのベルトを外し始めた。
 男は僕の歯茎や歯の裏までも舌先で舐めながら、下半身でゴソゴソと手を動かしている。
 息ができない僕は我慢の限界だった。鼻で息をする事はできたが、しかし鼻で息を吸うと同時に男の悪臭をモロに吸い込む事になる為、僕はずっと息を止めていたのだ。
 苦しさに耐えていると、自然に「うぐ……」と声が洩れた。すると男は何を勘違いしたのか、ヌチャッと唇を離すと、「感じてるのか?」と聞いて来た。僕は唇が離れたその隙に、素早く酸素補給したのだった。
 そのまま男は僕をしゃがませた。僕のすぐ横では、ぐったりとした静香が横たわっている。
 男は僕の目の前に真っ黒なペニスをピコンっと突き出した。
 男は「チンポ。見るの初めてだろ」と、チンポを持っている僕にそう囁きながら、僕の目の前でシコシコとベニスをシゴき出した。
 そんな男のペニスは標準よりもやや小さかった。僕のペニスに比べたら明らかに短小の部類だ。
 しかし男はそんな事を恥じる事無く堂々と僕にそれを見せつけて来た。きっと、僕がペニスを初めて見る処女だと思い込んでいる為、こんな短小でも気が大きくなっているのだろう。
 そんな短小ペニスを右に曲げたり左に傾けたりしながら、男は「ほら、よく見ろ……おっちゃんのチンポ、よく見るんだ……」と唸ってはペニスをシコシコとシゴき、ハァハァと欲情の息を吐き散らした。

 ペニスの皮がシコシコと上下に動かされる度にクチュクチュといやらしい音が響いていた。ペニスの先からは大量の我慢汁が溢れ出ていた。
 僕はそんな一触即発なペニスをジッと見つめながら、ふと思った。このままイカせてしまえばいいんだ、と。
 僕は男だから、ピュッと射精した後の気怠さをよく知っていた。オナニーをした後の、あの何とも言えない敗北感と嫌悪感は、いっその事このまま死んでしまいたいとさえ思わされるほどの気怠さなのだ。
 だから男がこのまま射精してしまえば、気怠さに襲われた男は、きっと僕にも静香にも興味を示さなくなるはずだ。それは、オナニー後のエロ本が無性につまらないモノに見えて来るという気持ちと同じなのだ。
 そんな気持ちは一瞬かも知れない。が、しかし一瞬でも、男は僕達の事をどーでもいいと思うはずだ。
 その、どーでも良くなった一瞬の隙を見計らって逃げ出そう。
 きっと、どーでも良くなっている男は、猛ダッシュで逃げ出す僕達を追う気力も失せているはずだ。
 これだ! と思った僕は、これで静香を救う事ができると思い、上目遣いでソッと男の目を見上げた。
 目が合った男は、僕を見下ろしながら「ほら……凄いだろ、おっちゃんのチンポ……」と、ハァハァと囁く。
 静香を助ける為だ、と自分に言い聞かせた僕は、そんな男のペニスにソッと手を伸ばした。
「えっ?」と、一瞬男は怯んだ。が、しかし、すぐにその顔はニヤニヤと緩み始め、「触ってみたいのか?」などと聞いて来た。
 恐る恐るコクンと頷くと、男は更にハァハァと息を荒くしながら僕の手をギュッと握りしめ、そのまま自分の股間に僕の手を押し付けた。
 僕はいつもヤっているようにペニスを指先で摘んだ。そしてソレをゆっくり上下にシゴきながら、声を女声に変えて「これでいいの?」と首を傾げた。
「おおぉ……気持ちイイよ……もっと早くシコシコしてくれ……」
 男は立ったまま腰をクネクネと動かし、天井を見上げてハァァァと深い息を吐いた。
 そんな僕の指先は、男の我慢汁でヌルヌルに濡れていた。
 僕は(早くイケ……このままピュッとイッちゃえ……)と思いながら、そのヌルヌルをわざと亀頭に擦り付けてはカリ首の裏や尿道までにも指を伸ばしてやった。
 そんな僕のオナテクに、男は「初めてのくせになかなか上手いじゃねぇか……」と呟き、その場にドスンと腰を下ろした。
 股を開きながら座った男は、「そのまま続けろ……」と、しゃがんでいる僕の手を引っ張った。
 僕の体はガクンと前倒しとなり、男の股の中で犬のように四つん這いになった。
 すると男は、僕にペニスをシゴかせながら、すぐ隣りで寝ている静香の胸元を弄り始めた。
「こんなに可愛い女子高生二人と3Pできるなんて夢のようだな」
 男はそう下品に笑いながら、静香のブラウスのボタンをひとつひとつ外していった。
 このままではマズいと思った。このままでは静香が犯されてしまう。
 僕は男の気をこっちに向けようと、更に手コキのスピードを上げた。
 男は「むはっ……」と濃厚な息を吐きながら腰をくねらせ、いきなり静香の唇に吸い付いた。
 焦った僕は、おもわず「ねぇ」と男を呼んだ。
 すると男は「ん?」と言いながら、静香の唇から顔を離し僕を見た。
「なんだ?」
「…………」
 言葉が何も浮かばなかった。
「……いいからおまえはその手を休めるな……」
 男はそう言うと、再び静香に顔を近づける。
「あ、あのぅ」
「だから、なんなんだよ!」
 男はイライラしながらガバッと僕を見た。
「……あのぅ……コレ……舐めてみたいんですけど……」
 僕はペニスを指差しながら、おもわずそう呟いた。静香を救うには、そう言うしかなかったのだ。
「いひひひひひひひひっ」
 突然男が笑い出した。
「おまえ、処女のくせにスケベだな」
 男は嬉しそうにそう言うと、よしよし、と頷きながら体を起こし、僕と向かい合って座った。
 ひとまず、静香から引き離す事ができたのだった。

 僕は四つん這いの姿勢のまま、男の股の中に顔を埋めていた。
 男は僕の頬をガサガサした手で撫でながら、僕がソレを口に含む瞬間を今か今かと待ちわびていた。
 しかし、そこから先へなかなか進めない。
 男のペニスからは強烈な臭気が漂っていた。ペニスだけでなく、そのモサモサとした陰毛やダラリと垂れ下がる金玉からも唯ならぬニオイがムンムンと漂ってきた。
 さすがにコレを口に含むのは度胸がいる。まるで、大嫌いな『イカの塩から』を食べさせられる罰ゲームのようなのだ。
 僕がそう躊躇していると、男は「ほれ、早よしゃぶれや……」と、酒臭い息を僕の顔に吹きかけた。
 このままでは静香が危険なんだ、と心の中で叫んだ僕は、息を止めたまま恐る恐る口を開いた。
 男のペニスが、僕の開いた口内にプスッと刺さった。ブヨブヨとした、まるで巨大なグミキャンディーのような感触が僕の口内に広がる。
 息ができなかった。臭すぎて気持ち悪すぎて絶対に息などできない。
 そのまま息を止めてウグウグと悶え苦しんでいると、中年男は「舌を使えよ……ほらぁ、アイスキャンディーみたいにペロペロとしゃぶるんだよ……」と言いながら、隣りでぐったりと寝ている静香のスカートの中を弄り始めた。
 このままではマズい! 一刻も早くこいつをピュッとイカせてしまわないと! と、そう焦った僕は、スーッと鼻でおもいきり息を吸うと、そのままグッと息を止めては真っ赤な亀頭に舌を這わせたのだった。

 僕は、今日、生まれて初めて他人の勃起したペニスを見た。
 そして、そのペニスを生まれて初めて触り、シコシコとシゴき、そして、遂に口の中に入れた。
 今まで、ペニスを舐めてみたいと思った事は何度もあった。
 夜の台所に足を忍ばせ、冷蔵庫の中からナスやきゅうりを持ち出しては、ソレをペニスに例えてしゃぶった事も何度もある。
 同性愛感情を抱く僕にとってペニスを舐めるというのは、ある意味ひとつの欲望だった。
 その欲望が、今、遂に満たされた。
 しかし、何かが違う。
 僕が求めていたペニスはこんなペニスではない。こんな臭くて汚くて品粗なペニスではないのだ。
 僕はそんなミジメな自分を思い、おもわず泣き出しそうになった。
 しかし今は泣いている時ではない。一刻も早くこの男を射精させなければ、静香が危ないのだ。
 僕は必死に舌を動かした。ぷちゃ、ぴちゃ、という音を立てながら、舌で亀頭をヌルヌルと転がした。
 幸い、僕はペニスのどの部分が感じるかを知っている。ここをこうされると堪らなく気持ちイイという感覚を知っていたため、このまま男をイカす自信はあった。
 男は今にも射精しそうな雰囲気で、ハァハァと激しく喘いでいた。
 男はそう喘ぎながら、チャプチャプと音立てては頭を上下に振っている僕の顔を男はソッと覗き込んだ。
「さすがは女装変態の兄ちゃんだな……なかなか上手いじゃねぇか……」
 男は目を細めながらポツリと呟いた。
 上下に動いていた僕の頭がピタリと止まった。
 バレていた。僕が男だと言う事はバレていたんだ!
 そう思ったとたん、底知れぬ恐怖が僕を襲った。殺される。滅茶苦茶にぶっ殺され、そして静香が犯される。
 そうガクガクと震えていると、男は自ら僕の口の中に腰を振りながら、品粗な肉棒をピストンさせた。
「いくら化粧や服装で誤魔化しても、声だけは変えられねぇもんだな……」
 そう呟きながら、男は僕の頬を優しく撫でた。
「その声さえ変えれたら、おめぇは完璧な美少女なんだけどな……残念だなぁ……」
 男はそう言いながら僕の口からペニスを抜いた。
 僕は唇に溢れる唾液を手で拭いながら、「ごめんなさい」と謝った。
 そして、静香に危害が及ばぬようにと、僕は男に必死に頭を下げながら、「なんでもしますから、その子だけは許してやって下さい」と、何度も何度もお願いした。
 すると男は、すんなり「いいよ」と笑った。
 そして男は僕のワンピースの中にスルスルと手を入れながら、「俺も、一度は男とヤってみたかったんだよ」とヘラヘラと笑い、そのまま僕の下着を乱暴に下げたのだった。

 その場に立たされた僕は、自分でワンピースの裾を持たされていた。
 ずり下げられた下着は足首に絡み付き、剥き出しになったペニスがダランと項垂れていた。
「オカマにゃ勿体無ねぇチンポだなこりゃ……」
 男はそう呟きながら、僕の萎れたペニスをシコシコとシゴき始めた。
 そんな男の指の動きは、まるでレイプするかのようにガサツだった。しかし、そんな乱暴な動きが、思いもよらず僕のペニスに快感を与えた。
 そんなペニスが、僕の意に反して少しずつ固くなって来た。こんな最悪な状態でどうして立つんだと、不思議に思いながら自分のペニスを見つめていると、男は、まるで極太のうどんを啜るかのように、ツルンっと僕のペニスを呑み込んだ。
 もちろん初めてのフェラチオだった。男の舌が乱暴に動き回ると、敏感な亀頭に強烈な快感が走り、ものの数秒で僕のペニスは勃起した。
「すげぇなぁ……チンポをしゃぶるの初めてだよ……」
 男は口をモグモグしながらもそう呟き、おいしそうに僕のペニスをしゃぶりまくった。
 おもわず「あぁぁ……」と声が出た。このまま男の口の中で射精したらどんなに気持ちいいだろう、と、思いながら、再び「あぁぁぁ……」と呟くと、ふと、強烈な視線を感じた。
 嫌な予感を感じ、「はっ!」と横たわる静香を見た。
 暗闇でジッと横たわる静香の目は開いていた。そしてその目は、僕を見つめていたのだった。

 男は口からヌポッとペニスを抜いた。
 ビンビンに勃起した僕のペニスがヌッと現れた。
 唾液でテラテラと輝く僕のペニスを目にした静香は、眉間にキュッと皺を寄せた。
(違うんだ静香!)
 心でそう叫びながら、僕は静香を見つめた。
 すると男はヨダレを袖で拭き取りながらムクッと立ち上がり、「もう我慢できねぇ、ほら、ケツ出せ」と僕を壁に向かって突き飛ばした。
「いえ、それは、ちょっと」
 僕は焦って男に言った。男はそんな僕のペニスを握りながら「今更なに言ってんだよ」と笑い、そのまま僕をクルッと壁に向かせた。
 僕は壁に激しく顔を押し付けられた。そんな僕の真下には静香が寝転がっている。
 男はワンピースの裾を前回にたくし上げると、突き出た僕の尻をペシペシと叩き、「いいケツしてるなぁ」と、そこに唾をベトっと垂らした。
 男の生温かい唾が尻の谷間に滑り込み、ヌルヌルと肛門を通過していった。
 男は破裂せんばかりの亀頭を肛門に押し付け、ペニスをグニョグニョと掻き回しながら唾液を肛門の全体に塗り込んだ。
 僕のペニスは凄まじく勃起し、寝転ぶ静香の足首にポタポタと我慢汁を垂らした。
 静香がゴクッと唾を飲むのが見えた。僕も同時にゴクッと喉を鳴らした。
 男の亀頭がメリメリメリっと肛門をこじ開けた。
 肛門に強烈な痛みが走り、僕は「うっ!」と呻き声をあげながら背筋を伸ばした。
「力を入れるな……力むと入らねぇ……」
 男はそう言いながら、僕の尻の谷間を両手で全開に開いた。
 キリキリキリっと再び肛門に衝撃が走った。まるで火鉢を肛門に突き刺されたような痛みが走り、僕は必死に「うぐぐぐぐ……」と奥歯を噛んだ。
 悶え苦しみながら下を向くと、再び静香と目が合った。静香は切ない目をしてジッと僕を見つめていた。
(違うんだ静香、こうしないとキミが滅茶苦茶に犯されてしまうんだ)
 そう目で訴えた瞬間、ヌルンっとした感触と共にいきなり痛みが消えた。
 男は「おぉぉぉ……」と唸り,そして「すげぇシマリだ……」と呟いた。
 肛門に巨大な座薬がハメられているような感覚だった。痛いと言うより違和感の方が強かった。
 しかし、男が腰を動かし始めると再び痛みは再開した。脳天に襲い掛かるその痛みは、無意識に僕を叫ばせた。
 必死にもがきながら静香を見た。
 男に攻められながら絶叫するそんな僕を、静香は氷のような冷たい目でジッと見つめていたのだった。


             ※


 学校の帰り道。いつものように駅に立ち寄った僕は、ロッカーの中から紙袋を取り出した。
 そのまま駅の身障者用のトイレに入ると、紙袋の中からセーラー服を引きずり出し、素早くソレに着替えた。
 鏡に向かって頬に乳液を塗り込んだ。メイクをする前にはちゃんと下地を作っておかないといけないわよ、という静香の教えを僕はちゃんと守っていた。
 あの日以来、僕は静香とは一度も口を聞いていない。
 どうやら静香は、あの時の僕が楽しんでいたと勘違いしているらしく、静香は完全に僕を避けるようになった。
 最後に一度だけ届いたメールには『変態』という一言だけが淋しく打ち込まれていたのだった。
 しかし、僕はもう一人でメイクができるようになった。ワンピースもセーラー服もカツラもヒールもTバックも、もう全部持っている。
 だから、もう静香は必要ない。
 静香と離れるのは凄く淋しいけど、でも、いくら女装していても、所詮、僕は男で静香は女なのだ。
 男の僕の気持ちなんて、女の静香にはわかってもらえるはずはないのだ。

 駅のホームに立つと、僕の前を女子高生の集団が通り過ぎて行った。その中のひとりが、足下にポツンと置いていた僕の紙袋をパサッと蹴飛ばした。
 携帯を見ながら歩いていたその子は、慌てて僕に振り向き「あっ、ごめん」と謝った。
 僕は黙ったままニコッと微笑み、静かに首を左右に振った。
 そんな女子高生の集団は、僕が女装子だという事に全く気付いていなかった。

 電車が到着すると、いきなり僕の背後にグレーのスーツを着た中年男がソッと寄り添った。
 電車のドアが開くと、数人のサラリーマンが降りただけで、相変わらず車内は込んでいた。
 そんな電車に乗込もうとすると、たまたまそこにいた駅員が「女性専用車両は六号車となっておりますのでぇ」と、僕に向かって業務的に呟いた。
 しかし僕は男だ。Tバックの半尻がチラチラと見えるミニスカートを履いてはいるが、しかし戸籍は歴とした男なのである。
 だから僕はそんな駅員を横目に、サラリーマン達が蠢く電車の中へ入って行った。
 背後では、そんな僕の後部を狙ったサラリーマン達が、暗に闘争を繰り広げていた。結局、僕の後部は、ホームから僕を付け狙っていたグレーのスーツの男が勝ち取った。
 電車は秋葉原に向かって走り出した。僕の背後に張り付く男は、ガタンゴトンの揺れを上手く利用しながら、固くなった股間のモノを僕の尻に押し付けて来た。
 僕はそんな感触を尻肉に感じながら、素知らぬ顔して携帯を開いた。
『今どこ? 私はもうアキバだよ』
 メールを開くと、そんな言葉と共に趣味の悪い絵文字がこれでもかというくらいに並んでいた。
 携帯をパタンっと閉じると、僕のスカートの中を弄っていた男の手が、一瞬ビクッと震えた。
 しかししばらくすると再び男の手は僕の股間に向かってサワサワと向かって来た。
 ガムテープでビタリと貼られたペニスに気付いた時の男の顔を想像すると、僕はおもわずクスッと笑ってしまったのだった。

 駅に着くと、いつもの角の自販機の前に、丸々と太った男がセーラー服をピチピチにさせながらぼんやりと煙草を吹かしていた。
「ごめん、待ったぁ」
 僕が駆け寄ると、巨漢の男は「遅い,遅い」と、肥満特有の野太い声で笑った。
 そう笑う男は池ノ橋君だった。ホモでデブでみんなからトドと呼ばれていた、あのセンズリ動画をネットで晒された池ノ橋君だ。
「電車で痴漢に遭っちゃって……ごめん、ちょっとトイレに行って来てもいい、ガムテープに我慢汁がヌルヌルとくっついて気持ち悪いのよ……」
 そう言いながら、位置の悪いTバックをスカートの上から直していると、池ノ橋君は顔を顰めながら「早く行って来なさいよぉ」と、口からポワァっと煙草の煙を噴き出した。
「ごめんね」と言いながら僕がトイレに向かおうとすると、慌てて煙を全部吐き出した池ノ橋君が「あっ、そー言えばさー」と僕を呼び止めた。
「さっき島田さんからメールが来ててさぁ、また二人増えたんだけどいいかって事なのよね……すぐ返事返さなくっちゃならないんだけど、どうする? OKする?」
 池ノ橋君はそう言いながら不気味に顔をちょこんと斜めに傾けた。
 島田さんというのは、例の僕を処女を奪った中年男だった。
 島田は僕を犯したあのビルのオーナーで、アキバではちょっと知られた電気店の社長だった。
 あれから数日後、僕は自らの意思で再び島田を尋ね、そして抱かれた。初めての男が忘れられないというのは決して女だけではなく、男の僕も同じだった。
 それから島田とはちよくちょく会うようになった。島田に色んな事を教えられた。露出、浣腸、3P、SM。
 いつしか僕は、あのカラオケボックスにいた女装子たちがいう、『モノホン』というヤツになっていた。肛門にペニスを入れられながら射精できるという立派なモノホンになっていたのだ。
 そんな島田が最近ハマっているのが、女装子たちとの乱交プレイだった。島田はその趣味のある男達をどこからか集めて来ては、みんなに僕を抱かせた。
 そのうち、別の女装子もそのプレイに加わるようになり、いつしか集団でプレイする大乱交となっていった。
 そんな中に、偶然にも池ノ橋君がいた。相変わらず池ノ橋君はそんなグループの中でもトドと呼ばれて馬鹿にされていたが、しかし、こうして付き合ってみるとなかなかいいヤツだった。
 僕は股間をモゾモゾとさせながら、池ノ橋君に「オッケー」と告げると、池ノ橋君は「でも二人も増えたら十人だわよ! 十本のチンポ銜えてケツの穴破れちゃっても知らないからね!」と叫んだ。
 そんな池ノ橋君の言葉に、数人の通行人がギョッと振り返っていたが、しかしここは秋葉原、こんな光景は日常茶飯事なのだ。

 トイレに向かって走っていると、改札口を静香が通り過ぎるのが見えた。
 相変わらず静香は綺麗だった。女装では真似の出来ないオーラが、静香の全身にムンムンと溢れていた。
 そんな静香の横には、イルカのようなウォーターボーイズが寄り添っていた。二人はさりげなく小指を繋いでいた。
 僕は自販機の隅にソッと身を隠しながら、駅を出て行く静香の後ろ姿を見つめた。
 あの時、あんな事が起きなければ、今頃僕は静香とああして指を繋いで歩いていたのかも知れない。
 そう思ったら不意に涙が出そうになった。
 こんな所でオカマが泣いてたら笑われてしまうと、僕は慌てて天井を見上げ涙を元に戻した。
「ねぇ……」
 天井を見上げていた僕の背後でそんな声が聞こえた。振り向くとそこにはさっき電車で僕のペニスを弄っていたグレーのスーツを着た男が立っていた。
「なぁに?」
 僕はぶりっこしながら首を傾げた。
 男は辺りをキョロキョロと伺いながら、「一万円で……しゃぶってくれないかなぁ……」と小声で囁いた。
 その男のペニスのサイズと固さを、僕の尻は覚えていた。とたんに僕の背筋にゾクっと冷たいモノが走った。
「いいよ。トイレ行く?」
 僕はその鉄のように固いペニスで肛門をぐちゃぐちゃに掻き回されるのを想像しながらニヤリと笑った。
 僕と男はそのままトイレに向かって歩き出した。

 秋葉原の駅は様々な人々で溢れていた。白人の団体がドラゴンボールの歌を合唱しながら歩いていた。なぜかレースクイーンの格好をしたお姉さんが壁に凭れながら携帯電話を掛け、その前をミンキーモモの衣装を着たおじさんがトボトボと通り過ぎて行った。
 そんな多種多様な人混みの中で、セーラー服を着た僕は男にソッと寄り添った。
 そして、「ねぇ、指つなぎしよっ」と小指を立てた。
 男は、はははははっと照れながらも、僕にソッと小指を突き立てた。
 マニアックなこの街は、やっぱり今日も異常だ。

(マニアックに行こう・完)

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