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八月の懺悔2

2012/03/30 Fri 13:02

   八月2



—4—

「まぁ、オンナの話しはこんな所だな。って事で、じゃあ約束の携帯を……」
 武田はそう微笑みながら奥田にソッと手を差し出して来た。
 奥田は頷きながら取調室の机の引き出しを静かに開けた。そしてその中にポツンと転がっていた携帯電話を取り出し、それを武田の手に握らせた。
「いいか。これは俺の知らない所でおまえが勝手に使ったという事にするんだぞ。俺がトイレに行ってる間におまえが勝手に使ったんだ、いいな」
 奥田がそう念を押すと、武田は「わかってるって。刑事さんから携帯借りたなんて口が裂けても言わねえから心配すんなって」と言いながら、必死になって携帯のプッシュを押し始めた。
 そんな武田を見下ろしながらゆっくりと立ち上がった奥田は、「じゃあ俺はトイレ行って来るから……5分で切るんだぞ」と言い残し、そのまま静かに取調室を出たのだった。

 取調室を出た奥田は、そのまま廊下の奥にある給湯室に入った。
 ヤカンに火を付けコーヒーカップを取り出すと、スーツの内ポケットの中から盗聴受信機をソッと取り出し、そこにぶら下がるイヤホンを耳の穴に押し込んだ。
『もしもし、カズミか、俺だ』
 小さなイヤホンから、蚊のような武田の声が聞こえて来た。
 奥田が武田に渡した携帯電話には盗聴器が仕掛けられていた。そんな盗聴器付き携帯を、わざと被疑者に貸し与えては証拠収集をするこの違法な手口は、今の警察では日常茶飯事に行なわれていた。
 奥田は武田の声を聞きながら、コーヒーカップの中にインスタントコーヒーをザラザラザラっと入れた。

『いいかカズミよく聞けよ。お前の部屋の寝室のクローゼットの天井裏に、俺が今までに撮ったオマンコのビデオテープが段ボールに詰められたまま隠してあんだ。それを今夜、隣りの工場の焼却炉ん中に捨てて来い。いいか、絶対に夜中に捨てに行くんだぞ。今行くと怪しまれっから、夜中にこっそり行って捨てて来るんだ。わかったか』

 奥田はそんな武田の声を素早くメモしながら、コーヒーカップの中に白い自白剤をサラサラサラっと混ぜた。そしてそこに沸騰したヤカンの湯をトボトボトボっと注ぎながら、廊下に向かって「おーい池田クーン」と叫んだ。
 しばらくすると隣りの刑事課から池田刑事が健康サンダルをスタスタ鳴らしながらやって来た。
「どうしました先輩」と給湯室を覗く池田刑事に、奥田はソッとメモ用紙を渡した。
「すぐにNTTに連絡してさ、俺の捜査携帯の発信履歴から相手の携帯調べてよ」
 奥田はそう告げながら湯気の立つコーヒーカップをお盆の上に静かに乗せる。そんな奥田に、後輩の池田刑事は「了解しました」と頷いた。
「で、相手は『アケミ』っていう女だからさ、携帯からそいつの住所がわかったら、すぐに礼状取ってガサかけてくれるかなぁ。そのアケミんちの寝室のクローゼットの屋根裏に例のビデオテープが隠してあるはずだから、ソレ、押収して来て」
 そう言いながらお盆を抱えたまま給湯室を出る奥田に、池田刑事は「了解しました!」と唸り声をあげると、再び健康サンダルを鳴らしながら廊下を駆け抜けて行ったのだった。

 取調室のドアを開けると、奥田を見た武田は「じゃあ頼んだぞ」と慌てて携帯に告げると、そのままピッと携帯を切った。そんな武田は、奥田に見られないように急いで発信履歴を消去しているが、しかし、そんなケチな隠蔽工作も今となっては時既に遅しだった。
「ついでにコーヒー入れて来てやったよ……」
 奥田はそう言いながら武田の前にコーヒーを置いた。何も知らない武田は「へぇ~最近のサツは気が利くじゃねぇか」と頬を緩ませながら、自白剤入りのコーヒーカップに手を伸ばす。
「電話はコレか?」
 奥田はニヤニヤ笑いながら武田に小指を立てた。武田はズルズルズルっとコーヒーを啜りながら「ま、そんなもんだ」と不敵に笑ったのだった。

 武田がコーヒーを飲んでから30分が過ぎようとしていた。武田の様子がみるみると変化して来た。
 奥田と雑談している最中に、一瞬「ぐがぁ!」と鼾をかき、慌ててビクッと飛び起きるといったそんな行動を繰り返し始めたのだ。
(効いて来たな……)
 奥田はニヤリと笑いながら立ち上がると、椅子に座りながらウトウトする武田の背後に回った。そしてゆっくりと武田の髪の毛を鷲掴みしながら武田の顔を天井に向かせ、その耳元で叫んだ。
「正直に話すんだ!」
 武田がビクン!と体を跳ね上げながら目を覚ました。そんな武田の顔を机の上に激しく押し付け、「舐めんじゃねぇぞゴロツキがぁ!」と怒鳴りながら、その顔をガンガンと叩き付けた。
 武田は完全に落ちていた。その虚ろな目とだらしなく垂れた唇は、あの饒舌な武田とは全くの別人だった。
「ちゃんと正直に話すか!」
 奥田がそう怒鳴りながら武田の鼻を摘む。武田は唇からダラダラとヨダレを垂らしながら「は、はい」と返事をし、その虚ろな目をボンヤリと天井に向けた。
 奥田は机の引き出しから録音機を取り出すと、武田の前にそれを置き、録画ボタンのスイッチを入れた。
「キミが池田優子さんをモーテルに連れ込んだのは間違いないな?」
 奥田は声のトーンを和らげながら尋問を始めた。
「……はい……間違いありません……」
「キミは池田さんに借金がある事を知っていたね?」
「……はい」
「だから5万円の援交話しを持ちかけてモーテルに連れ込んだんだね?」
「……そうです……」
「そこでキミは池田さんをロープで縛り、無理矢理に覚醒剤を打ったね。どうしてそんな事をしたんだ?」
「……気持ち良くしてあげようと……思ったからです……」
 武田はまるで催眠術をかけられているかのようにスラスラと自供を始めた。
 そんな武田の自供を一通り録音し終えると、奥田は録音機のスイッチを止めた。
 この自供テープと、被害者を撮影した証拠のカセットテープさえあれば、確実にこの外道を刑務所の中にぶち込んでやる事ができるからだ。
 録音機を机の中に仕舞った奥田は、ゆっくりと煙草を吸いながら、どっぷりと自白剤が効いている武田を見つめた。

(恵子の事を聞くべきか……聞かぬべきか……どうする……)

 奥田は悩んでいた。今の武田なら何でも正直に話すだろう。もちろん情婦だった恵子の事も洗いざらい話すはずだ。

(知りたい。3年前、恵子がこのゴロツキとどんな生活をしていたのか知りたい。が、しかし……それを今更聞いた所でどうなる……)

 奥田はそう葛藤しながらも、やっぱり聞きたくない! と自分の胸に叫んでいたが、しかし、どうも刑事の勘がモヤモヤとそれを聞かせようとしている。
 奥田は刑事としての勘を信じた。その勘を無視し、後でそれが大きな事件に発展してからでは遅いのだ。
 腹を決めた奥田は、フラフラと体を横揺れさせる武田の顔をゆっくりと覗き込んだ。

「恵子という女を知ってるか?……」


—5—

 奥田は下唇を強く噛み締めながら武田の言葉を待っていた。
「……はい……知ってます……」
 武田がボンヤリと頷くと同時に、奥田の後頭部に重たい衝撃が走る。
「お、大野恵子という女だぞ。元保母さんをしていた大野恵子だぞ?間違えてないか?」
 動揺する奥田は、今にも泣き出しそうになりながら妻の旧姓を何度も確認した。
「はい。間違いありません。大野恵子は……俺の女です……」
 強烈な怒りが奥田の胸をムカッ! と襲った。奥田はハァハァと荒い息を吐きながら武田の胸を掴んだ。
「俺の女じゃねぇだろ! 昔の女だろ!」
 そう怒鳴ると、武田はゆっくりと首を横に振った。
「いえ……今でも俺の女です……先週の日曜日も会いました……」

 奥田の目の前は真っ暗になった。嫌な汗が全身の毛穴からジワリジワリと吹き出し、なぜか喉の奥から強烈な吐き気を感じた。
 力が抜けたようにガクリと椅子に腰を下ろした奥田は、ブルブルと震える手で携帯を開いた。そして携帯ディスプレイのカレンダーに恐る恐る目をやると、先週の日曜日の日付欄に『夜勤』と表示されているのが飛び込んで来たのだった。
 そんな携帯を呆然と見つめる奥田は、声を震わせながら尋問を続けた。
「……先週の日曜日……恵子とはどこで会った……」
「池袋の……ラブホテルです……」
 奥田は両手で頭を抱え、「ううぅ!」と唸った。そしてギリギリと歯軋りをしながら武田を睨むと、「恵子とはいつから付き合っていた」と、聞いた。
「5年くらい前からです……」
 奥田は「バーン!」と机を叩いた。そして武田の襟首を乱暴に鷲掴みすると、「嘘をつくな! あいつは3年前に結婚してるはずだ!」と半狂乱になって怒鳴った。
「嘘じゃありません……あいつは結婚してからも何度も俺に『会って欲しい』と電話して来ました……俺が忙しいと断っても、それでもしつこく電話して来ました。だから嘘じゃありません……」
 奥田は武田の襟首を更に強く握り返すと、武田の体を激しく揺らしながら叫んだ。
「どうしてだ! どうして恵子がおまえのようなゴロツキに会って欲しいなどと電話するんだ! あいつには子供もいるんだ! 自分から会って欲しいなんて言うわけがないじゃないか! キサマ、恵子を脅したな! 脅迫してホテルに連れ込んだんだろ!」
 そんな奥田の怒声にはウルウルと涙声が混じっていた。
「違います。脅してなんかいません。あいつはシャブが欲しいから、俺に会ってくれと言うんです……あいつはどうしょうもないシャブ中ですからね……」
 そう呟く武田の目が一瞬ニヤリと笑った。
 その武田の笑みが、奥田のスイッチを入れた。
「っの野郎!」
 奥田の拳が武田の頬に食い込んだ。パイプ椅子に座っていた武田が椅子ごと後にひっくり返った。ドガン! と音を立てて取調室の床に倒れた武田の上に、すかさず奥田が伸しかかる。
「う、嘘じゃねぇ! 恵子は変態だ! シャブで狂って変態親父達と乱交するド変態だよ!」
 そう叫ぶ武田の顔面を、奥田は容赦なく殴り続けた。
「嘘じゃねぇって! 信じてくれよ! 恵子はシャブさえくれれば誰とだってヤる女なんだよ! 見知らぬおっさん達にチンポ入れられて小便ちびりながら喘ぎまくる変態なんだって! 嘘じゃねぇよ!」
 殴る度に武田の顔面から、ブッ! ブッ! と血しぶきが飛んだ。そんな武田の血が奥田の顔に飛び跳ね、奥田の顔にポツポツと赤い斑点を作った。
 武田の鼻は折れ、前歯が3本折れていた。拳を握ったままハァハァと肩で息をする奥田を、ぐったりとする武田は、カマキリのように腫れた目でジッと見つめた。
「……恵子はいつでも中出しさせてくれるんだ……だからみんなから人気者だったんだ……」
 ぐしゃぐしゃになった唇でそう呟いた武田は、その唇をピクピクと痙攣させながらニヤリと歪ませた。そして、愕然とする奥田をジッと見つめたまま、「あいつの子供は……俺の子だ……」と呟き、口の中から折れた前歯をプッ!と吐いた。
 いきなり凄まじい音を立てて取調室のドアが開いた。
 取調室から聞こえる激しい音を聞きつけて、大勢の刑事達が「どうした!」と叫びながら取調室に雪崩れ込んで来た。
 先頭に立っていた刑事課長が、血だらけで倒れている武田を見て「わあっ!」と叫んだ。そして武田に馬乗りになる奥田を引きずり下ろしながら「これはいったいどういう事だね奥田君!」と叫び、同時に入口の部下達に向かって「救急車!」と叫んだのだった。

 とりあえず武田は医務室に運び込まれ、奥田は同僚に支えられながら刑事課へと連れて行かれた。
「どうしたんだよ奥田……いつも冷静なのに、お前らしくないじゃないか……」
 同僚の下林が奥田の背中を優しく擦りながら言った。そんな下林に「悪りぃ……つい興奮しちまったよ……」と頭を掻きながら答えた奥田は、不意に廊下でピタリと足を止めると、「ちょっと小便して来るよ……」と、下林の手を振り解いた。
「一人で行けるか?」
 心配そうに聞く下林に、「もう大丈夫だよ」と笑う奥田は、そのまま一人でトイレへ行くと、トイレの窓から脱出した。
「恵子!」
 そう叫んだ奥田は、警察署の前の埃っぽい歩道を全力で走り出した。
「嘘だ! あいつの言ってる事は全部デタラメだ! 美佐子は俺の子だ! 美佐子は、美佐子は俺の子なんだ!」
 叫びながら走り去る奥田を、通行人達が何事かと驚いて振り返っていた。歩道を走り抜け、大通りを横切り、地下道を潜り抜けた。その間、恵子の名前を何度も何度も叫んだ。嘘だ! 嘘だ! と叫びながらワンワンと泣きまくった。
 そしてふと我に返ると、奥田は自宅の前にポツンと立っていたのであった。


—6—

「どうしたの、こんな時間に……」
 いきなり帰って来た奥田を見て、恵子は大きな目を丸くさせながら驚いた。
「あぁ……ちょっと課長と色々あってね……」
 そう誤魔化しながらソファーに腰を下ろした奥田は、携帯電話の不在着信にズラリと並ぶ同僚達からの着信番号に一瞬ギョッとした。
 キッチンでお茶を入れようとしていた恵子に「だから、電話が掛かって来てもしばらく出なくてイイから」と慌てて告げると、さっそくリビングの電話が鳴り出した。
 鳴りっぱなしの電話を横目にお茶を運んで来た恵子が「本当に出なくていいの?」と心配そうに奥田を見た。
「それより、美佐子はどうした?」
 奥田は素早く話題を変えた。
「それがね、今朝からまた熱が出たのよ……」
「寝てるのか?」
「うん。たぶん……」
「多分じゃダメだよ。うなされてるかも知れないから、ちょっと見て来てやれよ」
 奥田がそう言いながらゴクリとお茶を飲むと、恵子は「じゃあちょっと見て来るね」と言いながらゆっくりと立ち上がった。
 階段を上がって行く恵子のスリッパの音が廊下に響いた。そんな音を注意深く聞きながら、奥田は湯呑みに一口分だけ残ったお茶をジッと見つめた。
 そしてポケットの中から自白剤を取り出すと、その湯呑みの中に白い粉をサラサラサラっと流し込んだのであった。
 しばらくすると、階段を下りて来る恵子のスリッパの音が聞こえて来た。
「ぐっすり寝てたわ」
 そう微笑みながらリビングに戻って来た恵子に、奥田が「なんだよこのお茶……」と持っていた湯呑みを差し向けた。
「えっ?……いつものお茶だけど?……」
 恵子は不思議そうな顔をしながら、奥田が差し出す湯呑みを手にした。
「いつもと違うよ、ちょっと飲んでみろよ」
 奥田がそう顔を顰めると、恵子は「うそ……」と首を傾げながら、湯呑みにソッと唇を近づけ、湯呑みに少しだけ残っていたお茶を全てゴクリと飲み干した。
「うわ、何これ……苦い……」
 恵子は顔を顰めながらそう呟いたる
「だろ、なんか妙に苦いよな、そのお茶」
「どうしてだろ……ごめんなさい、すぐに新しいの入れるから……」
 そう言いながらキッチンへ行こうとした恵子の腕を奥田はソッと掴んだ。
「……なに?」
 足を止めて振り返る恵子に、奥田は静かに首を振りながら、「お茶はもういいから、ちょっとここに座れよ」と優しく微笑んだ。
「どうしたのよ急に……」
 恵子は不思議そうに微笑みながら、奥田の横にソッと腰を下ろした。
 そんな恵子を無視したまま、奥田はテレビのリモコンを手にすると黙ってスイッチを入れた。
 40インチの画面に、やたらと古ぼけた再放送の水戸黄門が映し出された。時計を見ると4時を少し回ったところだった。
 奥田はそんな古臭い水戸黄門を見つめながら、自白剤が効いて来るのは黄門様が印籠を出す頃だろうな、とそのまま黙って水戸黄門を眺めていたのだった。

 中庭からそそぎ込む日射しが、白いレースのカーテンをキラキラと照らしていた。今まで、夜しか家にいた事がなかった奥田は、そんな明るいキッチンを見つめながら、大手ハウスメーカーのCMみたいだとふと思った。
「控えぃ! 控えぃ! こちらにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも先の副将軍、水戸光圀候にあらせられるぞ!」
 そんな助さんの叫び声がテレビから聞こえて来た。
 奥田は銜えていた煙草を灰皿に押し付けると、モワッと浮かぶ煙草の煙越しに、恵子の顔をソッと見た。
 ソファーに座る恵子の細い体は、まるで宙に浮いているかのようにフワフワと揺れていた。

 そのまま、フワフワしている恵子をソファーから立たせた。2階の寝室には熱を出した娘がいる為、仕方なく1階の洋間に恵子を誘導した。
 その洋室は、娘が大きくなったら子供部屋として使おうとしている部屋で、今は部屋全体をウォークインクローゼットとして使っていた。
 恵子を部屋の隅にポツンと置いてある古いソファーに座らせると、自分はそのソファーの前に置いてあるテーブルにゆっくりと腰を下ろした。
「恵子。今から俺が質問する事を正直に答えるんだ。いいな?」
 恵子の顔を真正面から見つめながら奥田がそう言うと、恵子は大きな瞳をオドオドさせながら、ほんの少しだけコクンと頷いた。
「武田という男を知ってるか?」
 奥田は、恵子の白いうなじに浮き出る青い血管を見つめながら静かに聞き、そしてゆっくりと恵子の目を睨んだ。
「…………」
 恵子は明らかに動揺していた。大きな目玉を挙動不審にキョロキョロさせ始め、薄ピンクの唇をキュッと閉じたまま奥田からスッと目を反らした。
 自白剤によって自白させる場合、まずは相手に恐怖心を与えるのが最も効果的だった。奥田は、未だ否認しようとする恵子に恐怖を与え自白に導こうと、口を噤む恵子の頬をおもいきり引っ叩いた。
 乾いた音が部屋に響き、同時に恵子が「うっ」と小さな悲鳴をあげながら叩かれた頬を両手で庇った。
「正直に白状するんだ恵子。おまえは武田という男をよく知っているだろ?」
 そう言いながら恵子のサラサラの髪を掴み、俯いていた顔を天井に向けた。肌が雪のように白いせいか、叩かれた右頬が早くも赤く充血していた。
 もう一発左頬を叩こうと思っていた奥田だったが、その右頬の充血を見て顔を叩くのを止めた。両頬を腫らした母親を見れば娘が驚くからだ。
 頬を叩くのを諦めた奥田は、掴んでいた恵子の髪を乱暴に突き放し、そのままソファーに倒れ込む恵子の体をうつ伏せに押し付けた。
 そして白いタイトスカートを乱暴に腰まで捲ると、臀部を包むストッキングと白いパンティーを同時にズルズルッと膝まで下げ、その真っ白な生尻をプルプルと剥き出しにしたのだった。
 その尻肉をおもいきり引っ叩いた。頬の時とは違う刺激的な音が室内に響き渡った。
「痛い!」
 ソファーに顔を押し付ける恵子が、今にも泣き出しそうな表情をしながら叫ぶ。
「痛いか。痛いのが嫌だったら正直に言うんだ。おまえは武田と言う男を知っているな?」
 奥田は再び尻を叩いた。バレーボールのように丸い尻肉が官能的にプルプルと震えたのだった。

(続く)

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