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田舎のスナック

2009/10/16 Fri 00:03

42田舎のスナック

《あらすじ》
酒の飲めない和之が会社の上司に連れて行かれた田舎のスナック。
そのスナックでとんでもない乱交に巻き込まれてしまう。
田舎スナックの下品さと、田舎ホステスの淫乱さを御堪能下さい。


田舎のエロスナック。
ある意味、ピンサロよりもソープよりも刺激的で濃厚なハプニングバー。
その条件は田舎でなければならない。
あまりにもド田舎すぎてはダメだ。
人口10万人程度の地方の片田舎が丁度いい。
ただし、だからといって都会のベッドタウン的な街はよろしくない。
また、最近できたニュータウンなんてのもNG。
やはり、漁師や百姓、肉体労働者が古くから住み着く、いわゆる「洗練されていない町」の田舎のスナック。
そんな店がエロスナックとして最も好ましい・・・・

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               1


和之がその町に来たのは、今から6年前、和之がまだ中学2年生の時だった。
それまで東京でそれなりに裕福な暮らしをしていた和之の家族だったが、父親の会社が倒産に追い込まれた事を機に、父親の故郷であるこの町に越して来た。

和之の母親は、この町に越して来てわずか2年で「この糞田舎の人間といたら気が狂ってしまう」と発狂し、とっとと父親と離婚すると、妹を連れて実家のある東京に帰ってしまった。
和之が高校一年生の時だ。

和之も母親に付いて東京に戻りたかったが、しかし、せっかくこの町で一番の名門高校に入学できた事から、とりあえず高校を卒業してからそれから東京行きを考えればいい、と父親に諭され、それでこの田舎町に居残る事と決まったのだった。

しかし、高校を卒業しても、和之はこの町に残った。
東京の大学へ進みたいと思っていた和之だったが、しかし、高校三年生の半ば頃から、そんな事はもうどうでも良くなって来たのだ。

それは、和之の周辺がそんなヤツらばかりだったからである。

「東京の大学?そんなとこ行ってどうすんの?」
クラスメートは全員が口を揃えてそう言った。
クラスメートの大半は就職組で、そのほとんどが父親の経営する、鉄工所、スーパー、中華料理店、アルミサッシ工場、食品加工工場、といった会社や店の跡継ぎだった。
又、社長の息子ではない生徒であっても、もう既にそれらの工場やスーパーといった地元の企業への就職が決まっており、「東京の大学に行く」という和之に対して冷ややかな目で見ていた。

「田舎者のひがみってやつだよ」
東京に和之が帰って来るのを今か今かと待ちわびていた母親は和之にそう言いながら、「あの町にいたらあいつらに一生足を引っ張られてしまうよ」とまで言った。

しかし、高校の教師ですら、東京の大学に行くという和之に対し、「東京」をまるで危ない新興宗教かのような言い方をして、それを阻止しようとしてくる。
「俺も若い頃には東京に憧れて東京でメシを喰ってた時があるが・・・あの街はバカヤロウな街だよ・・・」
と、まるで長渕剛のようなセリフでジワリジワリと攻めてき、又、当時、付き合っていた彼女なども「どうせ私の事なんかすぐに忘れてしまうんだわ。どうせ原宿辺りで女の子なんかナンパしたりして私の事なんて知らんぷりで楽しく暮らすんでしょうね」と、「木綿のハンカチーフ」ばりの恥ずかしいセリフを涙ながらに訴えた。

そんな事が続き、和之はもう東京なんてどーでもよくなってしまった。

和之が東京行きを諦め、いつのまにか先生が決めていた地元水産業の運搬会社に就職が決まると、それまで冷ややかな目をして和之の東京行きを見ていたクラスメート達は手の平を返したかのように、「和之!地元で一緒に頑張ろうぜ!」などと和之を持ち上げ始め、先生も「もうアホな夢なんて見るんやないぞ!」などと中村雅俊のような笑顔で力強い握手なんか求めたりして、そして、彼女なんかは「これでやっとお父さんもお母さんも私達二人の事を許してくれるわ」などと、もう結婚を前提に考え出す死末だった。

これでよかったのかもな・・・などと和之が思っていたのも束の間。
高校を卒業すると、クラスメート達はそれぞれ勝手に自分の道に進み、和之の事なんて見向きもしなくなった。
先生なんて、和之が職場の悩みなどの相談を持ちかけに行くと「自分の事は自分で考えろ」と和之をまるで野良犬かのように追い払い、そして例の彼女はもっと凄く、卒業後しばらくして「私、父の知り合いのアパレル会社で働く事に決まったの。会社は渋谷にあるのよ、スゴいでしょ」と、とっとと東京へ出て行ってしまったのだった。

そんな和之は、毎日毎日冷凍の魚をトラックの荷台に積み込みながら、俺っていったい何やってんだろ・・・とつくづくこの田舎町がイヤでイヤで溜まらなくなっていたのだった。

               2

仕事をまったくやる気のない和之は、勤務中にボンヤリする事が多くなった。

そんな和之をいつも遠くから見ていた社長がいきなり和之の前に現れた。

真夏だというのにゴム手袋にゴムエプロン、そして太ももまで伸びる長靴というスタイルで汗だくになっている和之に「今晩、息抜きに連れてったるわ、仕事が終わったら事務所で待っとれや」と金歯の前歯をキラキラさせながら笑った。

「息抜き?」
和之はガチガチに凍った冷凍魚を肩に担ぎながら、虫歯臭い社長の息に向かって「はぁ」と取りあえず返事をしておいた。

仕事が終わり、シャワーを浴びた和之が事務所へと行くと、そこにはシゲさんと原さんの二人が焼酎を飲んでいた。

「おう、主役の登場や。ま、一杯いけや」
シゲさんは海焼けしたドス黒い顔でそう言うと、湯呑み茶碗に焼酎を乱暴に注ぎ、それを和之に向けた。
「は、はぁ・・・」
和之はまだ18歳だ。酒の飲める年齢ではない。
というか、和之は滅法酒に弱いため、これまでまともに酒など飲んだ事がなかった。

しかし、この町は異常な程に上下関係が厳しい。
先輩から飲めと出された酒を断ろうものなら、たとえヤキを入れられても文句はいえない町なのだ。

和之はとにかくその焼酎の入った湯呑みを手にすると、「いただきます・・・」と言いながら湯呑みの中に並々と注がれた焼酎をペロッと舐めた。

「社長がおめぇの事を心配しててよぉ~辞めんじゃねぇかってな~」
原さんがホタテの干物をクチャクチャさせながらそう言った。
かなり飲んでいるのか、目はもう真っ赤だった。

「とにかくよぉ、おめぇも色々とあるだろうが、ま、ここはひとつパァーッと騒いでよぉ、ヤな事ぁ全部忘れちまうんだな」
シゲさんが坊主頭をガシガシと掻きながらケケケケッと笑った。

シゲさんは元ヤクザの幹部だったらしく小指が半分しかなかった。
この指はな子供が生まれる時にヤクザから足を洗おうと親分に対して付けたケジメなんだ、というのがシゲさんの口癖で、酔っぱらうとその話しは更に輪をかけて広がり、ある時など、指を詰めた時の見届け人ってのは山口組の田岡親分と稲川会の稲川聖城親分だったんだぜ、と大ボラに変わっていた。

「まぁ、ウチの社長はああ見えて気の小ちゃな男やからな、あんまりイジメんでやってや」
原さんがそう言いながらまたクチャクチャと干物をしゃぶる。
この男は、別名をエロ原といい、彼がいつも荷待ちの時に話してくれるエロ話しは、なかなか味があって和之は好きだった。

そんな雰囲気の中、いきなり事務所に社長が現れた。

「ほな、行こか」

入口で社長はみんなにそう言うと、「カズ、付いて来い」と和之に向かって言った。

4人が社長のレクサスに乗り込み、鼻歌混じりの社長がエンジンを掛けると、車内にはいきなり大音量で坂本冬美の「男の情話」が流れ出した。

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急発進したレクサスは事務所の前の小坂を一気に駆け上り、そのままノーブレーキで大通りに飛び出す。
この町の漁師関係者はとにかく乱暴者が多いのだ。

レクサスが到着したのは、町の小さな繁華街の一角にある古ぼけたスナックだった。

入口ドアの上に掲げられている「すなっくマリエ」と書かれた看板の周りには、なぜかクリスマスツリーの電飾がグルグル巻きに巻き付けられている。
その看板のすぐ横には「募集!時給800円異常」とワープロで書かれた張り紙が貼られていた。
異常はわざとなのかそれとも変換を間違えたのか、和之はとても気になったが、しかし、そんな事よりも、このメンバーにスナックに連れて行かれたらどんなに飲まされるだろうかと、そればかりが心配でならなかったのだった。

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すなっくマリエの安っぽいドアを開けると、中からいきなりカラオケの大音量が飛び出して来た。
入口近くにあるカウンターで伝染病にかかったダチョウのような顔をした親父が、聞いた事のないド演歌を口を尖らせて歌っていた。

カウンターの中で煙草を吹かしていたおばさんが和之達を見るなり、「あらぁ社長ーいらっしゃーい!」と無情にも手拍子を止めて叫んだ。

「おぅ、ママ、今日はウチの新人を連れて来たからのぅ」と、社長は御機嫌でそう答えると、勝手に奥のボックスにドシンと腰を下ろした。

「♪ゆめ~のユリカゴ~~~さあぁ~~♪」
和之はダチョウ親父の不気味な奇声を聞きながら、こっちに座れ!と社長が手招きする席に座った。

ダチョウ親父の歌が終わり、カウンターの中にいたひとりの若い女がパチパチパチと小さく手を叩いた。
ママともうひとりのおばさんは、氷を詰めたりグラスを並べたりと大忙しで、ダチョウ親父の奇声ともとれる歌に拍手をする余裕などなかった。

「おーい、親父のボトル少なかったら新しいの入れてやー」
シゲさんがカウンターに向かってそう叫ぶ。
それを見た原さんが「シゲやん、飲む気まんまんやなぁ」と笑った。

もう既にその時点で和之は帰りたくなって来た。
こんな店が息抜きになるはずがない。
いや、逆にストレスが溜まるだけだ。
和之は「それじゃ僕はこれで・・・」と帰りたい心境だったが、しかし、そんな事を言えば酔っぱらったシゲさんのパンチを喰らうのは目に見えていた。

ママと変なおばさんがお盆の上に、ウィスキーやらミネラルウォーターやらサラミやらを大量に乗せてやってきた。

「ママ、こいつはカズ言うてな、ウチの跡取り息子や」
社長が下品な金歯を剥き出しにして和之の首にキーロックを掛けた。
半端じゃない社長の口臭に和之は目眩を覚える。

「まぁ、社長さんの息子さん?あっらぁ~いいオトコねぇ~」
ママと呼ばれる、このどこか淫乱臭の漂う熟女は、わざとらしく目を大きく広げては和之を見つめ、「ママのマリエですぅ、よろしくぅ」と斜め45度の挨拶をした。

変なオバさん、名前を洋子さんと呼ばれているオバさんだが、この洋子さんが煙草を吸いながらもテーブルの上に手際よくグラスを並べ、その中に素早く氷を入れて行くと、和之は、この洋子さんの手際の良さに見とれていた。

すると隣りに居た原さんが和之の目線に気付いたのか、「あ、ダメダメ、このオンナはワシのオンナ。カズは手ぇ付けたらあかんでぇ~」と言いながら、洋子さんの体に抱きついた。

いきなり抱きつかれた洋子さんは体勢を崩し、グラスに入れるはずの氷をコロンと床に落としてしまう。
洋子さんは「もう、原ちゃん、何すんのぉ~」とマジに原さんを睨みつけながら、その床に転がった氷を拾い上げ、何の躊躇いもなくソレをグラスの中にコロンと入れた。

どー見ても安物っぽいウィスキーの水割りを手にした全員は(ママと洋子さん含め)、一斉にソレを高々と持ち上げると「カンパーイ!」とまるで練習したかのように絶妙なタイミングで口を合わせた。

ママと洋子さんが、グラスを片手に「いただきます」、「いただきます」と全員に会釈する。
一通りこの儀式が終わると、ママと洋子さんはそこで初めてグビリっと水割りを飲んだのだった。

「どうやママ、ウチの息子。ええ男やろ」
社長が獅子舞のような金歯を曝け出しながらママに言う。
ママは社長のこの口臭が気にならないのか?とそれが気がかりだった和之がママをこっそりと見た。

「ホント、立派な息子さんだわ」
ママが異常に歯並びの良い前歯をキラリとさせると、和之の斜め前に座っていた洋子さんが「嘘やろ?ホントの息子違うやろ?」と原さんに小声で聞く。するとグビグビと水割りを飲んでいた原さんが「当たり前田のクラッカーやがな」と言いながら洋子さんの巨乳をグイっと鷲掴みにした。

「どや、ママ。ウチのカズと恵子をくっ付けたら」
社長がママの太ももに手を置きながらそう言う。
「そりゃいいわ社長、あの子もいつも彼氏欲しい彼氏欲しいってうるさいのよね。社長の息子さんなら願ってもない事だわ、ねぇ洋子さん」
ママがそう洋子さんに話しを振ると、洋子さんは原さんのグラスの水滴を拭きながら「はぁ?」と聞き直した。
ママと洋子さんは意思の疎通ができていないらしい。

「早よ、恵子呼んで来いや」
社長がグビッとグラスの半分を飲みながらママにそう言うと、そんな時ばかりは妙に気が利くのか洋子さんがすかさず「ケイちゃ~ん!」とカウンターに向かって叫んだ。

ケイちゃんと呼ばれた女とカラオケの本を一心不乱に読んでいたダチョウ親父が同時にボックスに振り向く。

「あ、うん。あちらのお客さんが帰ったら連れて来るから・・・」
と、少し慌てた感じのママが社長に向かってそう言うと、再び洋子さんが「ケイちゃん御指名だよ~!」と少しヤキモチが入った口調でそう叫んだ。

「あんなコっパゲ親父、とっとと帰しちまえよ、今夜は貸切りにしてやっからよ、な、社長」
かなり飲んでるシゲさんが大きな声で社長にそう言った。

有線から小さな音で演歌が流れているだけの静まり返っていた店内にシゲさんの声が響く。

「もう、シゲちゃん、やめて」
ママが社長の膝の上に体を乗せながら、シゲさんの頭を叩く仕草をした。
その時社長は、膝の上に寄りかかるママの大きな胸をちゃっかりと揉んだのを和之は見逃さなかった。

               4

しばらくすると、コッパゲと呼ばれたダチョウ親父はそそくさと店を出て行った。
あれほどまでにカラオケの本を見ていたにもかかわらず、結局一曲も歌わず帰って行ったという事は多分さっきのシゲさんの声が聞こえていたのだろう、と和之は、無性にコッパゲだちょう親父が可哀想に感じた。

コッパゲだちょう親父が帰ると、恵子と呼ばれる女が、空のグラスを片手にボックスに現れた。

「よっ!待ってました!」と、洋子さんの肩に腕を回した原さんが恵子を見てそう冷やかすと、洋子さんはシゲさんからこっそり胸を揉まれながら何かブツブツと呟いていた。

「こちら、社長さんの息子さんだって。ホント、立派でしょう」
恵子に補助椅子に座るなりママが大袈裟にそう言う。

いったい自分の何が立派なのか聞いてみたい気もするが、しかし、それは多分この業界での社交事例のようなものなんだろうと、和之は聞かないでいた。

「恵子ですぅ、よろしくぅ」
恵子は水割りのグラスを和之に向けると、乾杯を強要した。

普通に町ですれ違ったら別にどーでもない普通の女だろうが、しかし、この雰囲気の中で見る恵子は妙に色っぽく綺麗だった。

いったいこの人、歳はいくつなんだろう・・・
和之はそう思いながらも、周りがあまりにも和之&恵子を口走るため、なぜか妙に恵子を意識してしまった。

そんなこんなでかれこれ2時間以上は経っただろうか、その間、客はひとりも来ず、社長達はボトルを2本も開けていた。

ロレツの回らなくなった社長が「マリエ、もう店閉めろい!」とやたらと閉店をママに促し始めた。
つい先程まで「ママ」と呼んでいたはずなのに、その頃になると「マリエ」と呼び捨てにしていた社長の手は、ママのスカートの中を行ったり来たりと往復していた。

スカートの中に忍び込んで来る社長の手を上手く躱しながらも、ママはなぜか胸だけは好き放題に触らせていた。

ママもかなり酔っているのか、目をトロンとさせながら「恵子、看板消して鍵掛けてきな!」と恵子に怒鳴る。

「ママぁ~洋子にフラレちゃったよ~」
原さんがママの隣りの席に移動しながらそう言うと、ママが「あらぁ~原ちゃん可哀想に~ママが慰めてあげるわねぇ~」と言いながら、原さんと抱き合った。

「あっ!こら、原!てめぇマリエにナニしてんだよっ」と社長が原さんの頭をポンポンと叩きながら、どさくさに紛れては右手をママのスカートの中に突っ込んだ。

「ぎゃはははははは!あー社長ーそこはダメだって!ソコはオ・マ・ン・コだよぉ~!別料金なんだからねぇ~!ぎゃははははははははは!」
ママは喜んでいるのか嫌がっているのか、そう叫びながら社長の体にしがみつく。

「おっおっ!別料金!よしわかった!」
社長はそう言うと、おもむろに財布を取り出し、その中からお札を数枚取り出すとそれをテーブルの上に投げ捨てた。

その時和之は、社長が財布の中を開けた時、一万円札と千円札をちゃっかりと振り分け、千円札だけを選んで投げていたのを横目で見ていた。

テーブルの上に散乱した数枚の千円札をママが必死になって鷲掴みにすると、ママの手から溢れ落ちた1枚の札をサッと物凄い早さで洋子さんが奪う。

社長は目の前に座っていた恵子だけにピンピンの一万円札を渡すと、「若けぇもん同士、あっちに行って飲んでろ・・・頼むぜ、恵子」と言って、和之と恵子を隣りのボックスへと移動させたのだった。

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乱痴気騒ぎが始まった隣りのボックスで、和之と恵子は並んで座っていた。

「お酒、飲めへんの?」
恵子が和之の水滴だらけのグラスを拭きながらそう言う。
「あ、はい・・・あんまり好きじゃありません・・・」
和之がそう答えると、恵子は「あれ?地元の人じゃないの?言葉が違う・・・」と和之の顔を覗き込んだ。

近くで見る恵子の顔は、所々に小さなシワがあり、決して若いとは言えない顔だった。

「あ、はい。元々、東京です」
「へぇ~そうなんだぁ~」
恵子は素っ気なくそう言うと、「別にアンタの地元なんて興味ないけどね」といった感じで煙草に火を付けた。

それっきり、恵子と和之の会話は途切れてしまった。
恵子は早く帰りたいのか時計ばかりをチラチラとし、和之も早く帰って風呂に入りたいという願望が強く、二人は隣りの席の乱痴気騒ぎのバカ声を聞きながら、うんざりとした表情をしていた。

そんな時、いきなりママが和之の隣りの席にドタっと倒れ込んだ。

「あんたのお父さん、ありゃあド変態だね、ド変態」
ママはそう言いながらゲラゲラと笑うと、テーブルの上に置いてあった和之のグラスを一気に飲み干した。

「・・・なにコレ?・・・あんた水飲んでんの?」
グラスを置いたママがそういいながら和之の顔を覗き込む。
「お酒、飲めないんだって・・・」
恵子がママが飲み干したグラスに氷を入れながらそう呟く。

「うっそぉ~かぁーわいい~」
ママは酒臭い息を和之に吹きかけながら、和之のジーンズの股間をグニグニと揉んできた。

「あ、あ、はははは」
和之はママの手をどけていいものなのかわからず、戸惑いながらも「すいません、すいません」と謝る。
「なーんで謝るのよ・・・こーいうのイヤ?」
ママはトローンとした目でそう言いながら、いきなりガバッと和之のズボンの中に手を突っ込んだ。
「いや、あ、・・・・」
和之は恥ずかしいやら怖いやらで、少しテンパっている。

「うふふふふふ・・・・こうすると気持ちいいっしょ・・・・」
ママはズボンの中で、親指と人差し指で和之の亀頭をグリグリと転がした。

「おーい!マリエー!なーにやってんだよ、こっち来いやー!」
隣りのボックスから社長が大声で叫んだ。

ママは「わかってますよー!」と叫び帰しながら、和之のズボンからヌッと手を出すと、おもむろにその親指と人差し指をクンクンと嗅いだ。
そしてその指を恵子の鼻に向けて「ほれ、青春の匂いがするよ」と笑った。

恵子はママの指にサッと顔を背けると、ヨタヨタと社長達のボックスに帰って行くママの後ろ姿を眺めながら「酒乱が」と吐き捨てた。

恵子が煙草を和之に向けて「吸う?」と聞いた。
「いえ・・・」と和之が断ると、「そう」と言いながら煙草の箱をポンっとテーブルに投げた。

「ママはさぁ、この町では有名な酒乱なんだよね」
恵子がそう言いながらプワっと煙草の煙を吐いた。
「酒乱?・・・・って何ですか?」
和之が聞くと、恵子はジッと和之の顔を見つめ、そしていきなり「あんた歳いくつよ」と聞いて来た。

「今年、18歳になります・・・・」
和之がそう答えると「じゅうはちぃ?」と恵子が目を丸くさせて驚いた。
私はてっきりハタチ越してるかと思ってたよ・・・と恵子は言いながら、また煙草の煙をポワっと吐き出した。

そして恵子は「ウチのママはさぁ、酔っぱらうと小便ちびる癖があんのよ。ほら、アンタの隣りのソファー見てごらん」と言うとクスッと笑った。

和之の隣りのソファーの一部分に丸いシミが出来ていた。

「これからスゴいショータイムが始まるんだから・・・」
恵子はそう言いながら和之の顔を見てニヤリと笑ったのだった。


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社長達のボックスは、もう互いに何を話しているのかわからない状態になっていた。

社長が原さんに「今後の景気に付いて」を話し初めているかと思えば、原さんは「うんうん」と頷きながらママのスカートの中を覗き込み、「よし!今夜は飲むぞー!」と叫び出したママが、石川さゆりの「天城越え」をカラオケで熱唱し始めたかと思えば、どさくさに紛れたシゲさんが洋子さんのブヨブヨの巨乳をチューチューと吸っていた。

「あの洋子ってババァ。あいつはね、ああやって客に体を触らせては客の財布を盗むんだよ・・・どーしょーもなんない泥棒だよ。アンタも気を付けた方がいいよ」
恵子が吐き捨てるようにそう言った。

和之は、今日、たまたま財布の中には5万6千円入っていた。
仕事帰りにプレステ3を買おうと思っていたからだ。

18歳の少年にしたら5万円というのは大金だ。
和之は盗まれてなるものか!と洋子の動きに注目していた。

「うひゃあ~ママさん、またおしっこチビッてるでえ~」
天城越えの演奏の中、ママのスカートの中を覗き込む原さんが大きな声でそう叫んだ。

「おーい!ケイちゃん!ママにおしぼり持って来てやってや~!」
原さんが恵子に向かってそう叫ぶと、恵子は「ちっ」と舌打ちをして、席を立った。

それを待ち構えていたかのように、突然、洋子さんがシゲさんの手を振り解き、和之の隣りにやってきた。

洋子さんは、もうぐしゃぐしゃに乱れた洋服を直す事無く和之に近寄ると「アンタ、本当の息子ちゃうんやろ?」と聞いて来た。
「はぁ、まぁ・・・」
和之はそう答えながら、ジーンズのポケットに入れておいた財布をギュッと握る。

「アンタ、ケイちゃんの事好きなん?」
洋子さんはテーブルの上に置いてあった和之のグラスにウィスキーを注ぐと、突然そんな事を言った。

好きなん?と聞かれても和之には何が何だかわからない。
好きも嫌いも、恵子とは初めて会ってまだ2言3言しか言葉を交わしていないのである。

「あの子、店では25やなんて言うてるけどな、本当は33なんやで」
洋子さんはそう言っておきながらも「ウチから聞いた言うたらアカンで」と早口で念を押した。

33歳。
18歳の和之にしたら途方も無いおばさんである。
和之は、隣りのボックスで、ママが座っていたソファーの上に広がる「ママの小便」を不貞腐れながら拭き取っている恵子を見た。

セッセと小便を拭き取っている恵子のスカートの中を原さんが覗き込んでいる。
社長は、景気があーだこーだと騒ぎながらも、隣りで作業している恵子の胸をちゃっかり揉んでいた。

「気を付けた方がいいよ。ケイちゃんの彼氏、コレやし」
洋子さんがそう言いながら、人差し指を立てて頬を斜めに滑らせた。
「深入りして、あとでイチャモン付けられたらかなわんよ・・・」
洋子さんは唇を斜めにさせながらそう言うと、「ウチから聞いた言うたらアカンで」とまた念を押した。

「もぅ・・・くっさいくっさい・・・」
恵子が洗面所で洗った指先をクンクンと嗅ぎながら和之のボックスに戻って来た。

「あらお帰りなさいませ。ケイちゃんのいない間、ちゃーんとヘルプしときましたからね」
洋子さんはどこか嫌味ったらしくそう言うと、「ほなら」と言い残し隣りのボックスに帰って行った。

「ふん。あのコソ泥、何言うてたん。どーせアタシの悪口やろ。ホント腹立つわーあの知能遅れ」
恵子はそう吐き捨てると「それよりアンタ、財布大丈夫?」と和之に向かって聞いた。
和之は「はい。大丈夫っす」と言いながら恵子に財布を見せたのだった。

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恵子が言った「スゴいショータイム」が始まったのは、それから30分ほどしてからだった。

あーだこーだと騒がしかった隣りの席が突然静かになり、あれ?と思いながら和之が隣りを見てみると、社長とママが濃厚なディープキスをし、洋子さんが黙ったままシゲさんの股間に顔を埋め、原さんがその洋子さんのスカートの中をニヤニヤしながら覗いていた。

その光景に和之は目を疑った。

社長とママのキスくらいなら先程から何度も見慣れていたが、しかしこのキスは今まで以上に濃厚で、なんと社長はママのスカートを捲り上げ、ママの性器を剥き出しにしながらソコをグチョグチョと弄っているのだ。

和之は以前付き合っていた彼女以外の女性器を見るのは初めてだった。
まして、男と女のカラミを見るなど、AVでしかみた事が無い。
和之の目の前で繰り広げられている生カラミ(こう書くと花畑牧場みたいです)は、紛れもなくドキュメントでノーカットだった。

「おしっこちびるから。いつもママはノーパンなのよ」

その光景がさも当然の事でもあるかのように平然と煙草を吹かしながら見ている恵子。

和之は唾を飲み込みながらシゲさんを見る。
洋子さんはソファーに座るシゲさんの股間に顔を埋めているが、もしかしたらあれはフェラチオをしているのではないかと思ったのだ。

和之の視線に、それまで洋子さんの頭を掴みながらハァハァしていたシゲさんが気がついた。
シゲさんは和之と目が合うなり、酔った目をギラギラとさせてヘラヘラと笑いながら、口パクで「ほれ」と言い、洋子さんがしがみつく下半身を和之に向けた。

洋子さんが両手でペニスの根元を固定しながら、シゲさんのペニスを口の中に入れていた。

和之は激しいショックに襲われた。

以前付き合っていた彼女にフェラを強要した事が1度だけあったが、その時彼女は「バイキンが入るからイヤ」と拒否された。
それから一度もフェラを強要する事はなかったが、しかし、フェラに興味が無くなったわけではない。
むしろ、フェラチオという未知の快感行為に余計興味が湧いてきたほどだ。
女が男のチンポを口の中に入れて激しく首を振る。AVでこのシーンを見て何度射精した事か。
その憧れのフェラチオが、今まさに目の前で行なわれている。
和之には強すぎる程の刺激だった。

和之がムンムンとしながら洋子さんのフェラシーンを見ていると、急に店内の照明が薄暗くなった。

見ると、恵子がカウンターの中で照明の調節をしていた。

店内をボンヤリとした照明でムーディーにした恵子は、カウンターから出てくると、先程座っていた場所よりも、更に和之に近付いた場所に座り接近して来た。

「立った?」
恵子は真っ赤な口紅をニヤッとさせながら和之の股間を見た。

「あ、はい・・・・あ、いえ・・・はははははは」
和之が笑って誤魔化すと、恵子は「どっちなのさ・・・」と言いながら和之の股間をムギュっと握った。

「えっ?・・・いや、でも・・・」
和之がモジモジシテいると、恵子は和之のジーンズの中でムクムクと固くなって行くペニスを揉みながら「いいのよ、社長からお金貰ってるから・・・」と呟いた。

そういえば、さっき社長は恵子さんだけに1万円を渡していた。
その際社長は「頼むぜ、恵子」と言っていたのも和之は聞いていた。

(そっか・・・「息抜き」というのはこういう事だったのか・・・)

和之はそう思いながらも恵子のそのあまりにも巧妙な指使いにおもわず「うっ!」と腰を引いてしまった。

恵子は上着からポヨポヨのおっぱいを和之に見せつけながら、ペニスをシコシコとシゴき始めた。

今まで、付き合っていた元カノとは、「入れて動かしてヌクだけ」という実に単純なセックスしかしていなかった和之には、スナックでの手コキはあまりにも刺激が強かった。
まして、隣りの席からは、洋子さんがシゲさんのペニスをジュボジュボとしゃぶる音や、ママの「あんあん」といった卑猥な音が聞こえて来るのだ。

和之はこのシチュエーションと恵子の巧妙な指技に爆発しそうなくらい興奮しながら、スナックの薄汚れたソファーの上で静かに身を委ねていたのだった。

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手コキされていた和之のボックスに原さんがヌッと現れた。
原さんは手コキされる和之を見ながら「おっ、やってるな」と笑い、そのまま恵子の隣りに座った。

原さんは恵子のグラスを勝手に飲み干すと、「親父達はどうやら二階にあがるらしぜ」と恵子に向かってヘラヘラと笑った。

「洋子さん達は?」
恵子が和之のペニスをシコシコさせながら原さんに聞く。
「行くみてぇだぞ。シゲやんの野郎、親父に前借り頼んでたからよ」
「あんたは?」
恵子が原さんに振り返る。

「オラァ・・・相手がいねぇもんよ・・・」
原さんはそう言いながら恵子の肩に手を伸ばすと「それともケイちゃんが俺の相手をしてくれっか・・・」と顔を近づける。

「アタシは本番はNGだって言ってるでしょ」
恵子は肩に伸びた原さんの腕を振り払いながら「ふん」と笑った。

「・・・あんだよ、トシさんに黙ってりゃわかんねぇだろうよ、いいじゃねぇか一発くらい・・・」
原さんはそう言いながら恵子の半分露出した大きな胸に手をやった。

トシさん・・・洋子さんが言ってた例のヤクザの事か?・・・・
和之はペニスをシゴかれながらも二人の会話に耳を傾けていた。

「って、原ちゃんが言ってるけど、アンタどうする?ってあの人に電話して聞いてみようか?」
恵子はニタニタと笑いながら原さんを見つめた。

「ちっ・・・・」
原さんは苦々しく舌打ちをすると、「じゃあ尺だけでもいいや、頼むわ」と不貞腐れた表情でポケットの中からしわくちゃの5千円を取り出し、それをテーブルの上に放り投げた。

「1万だよ」
恵子はキッと原さんを睨む。
「あのさぁ・・・なんでおまえだけそんなに高いの?ママでさえ尺なら8千円だし、洋子なんて3千円でやってくれるぜ」
原さんが驚いたようにそう言うと、恵子は「あんな腐れババと一緒にしないで。イヤならいいんだよ」とぶっきらぼうにそう言い、また和之の方を向いて手コキに専念し始めた。

「ちっ!」と原さんは舌打ちすると、テーブルの上の五千円を鷲掴みにし、そのままドカドカと向こうのテーブルに帰って行った。

「ったく、ヤなオトコだよ・・・。あいつはねぇ、昔はトシさんの下でちょっとだけヤクザやってた事があるんだよ。根性ないからすぐにケツ割って逃げ出したけどね。そのくせ、元の兄貴分のオンナに5千円ぽっちの端た金で尺八しろってほざいてんだよ・・・・まったく外道だよアイツは」
恵子は和之にそう説明すると、「あいつの昔のあだ名は『ヘタレの原』って言うんだよ。今度、あんたになんか威張ったりしたらさ、『なんだよヘタレの原』って言ってやりな」とケラケラと笑い出した。

和之は笑っていいのかわからず、とりあえず「はぁ」と薄ら笑いを浮かべながら返事をした。

と、その時だった。
今までにはない強烈な喘ぎ声が隣りのボックスから響いた。

和之が隣りのボックスを慌てて振り向くと、なんと、ソファーの上で全裸になった社長が、上に乗っているママの尻肉を押し広げ、その中にペニスを突き刺しているではないか。

その生々しい光景に、おもわず和之はゴクリっと唾を飲む。
極太な社長のペニスがママの穴の中を出たり入ったりと繰り返している。
薄暗い店内でも、ママの押し開かれた膣は和之から丸見えで、ぷっくりと膨れた肛門までくっきりと見る事ができた。

「あらららら・・・始まっちゃったよ。店でヤられると後の掃除が大変なんだよね・・・ママ、おしっこちびるから」
恵子はそう言って深い溜息をついた。

和之は、抱き合いながら激しくキスをする社長とママを見つめながら「ママと社長って不倫してんですか?」と聞いた。
「不倫?」と言いながらケラケラと笑う恵子。

「あれは不倫とは呼ばないのあれは売春っていうの」とまだケラケラしながらテーブルの上のグラスをクチュッと飲み、そして「ゲェ、このグラス、ヘタレ原が飲んだったんだ」と慌てておしぼりで口を拭いた。

「ママはあー見えても3人の子持ちだからね・・・でもスタイルはイイよね・・・」
恵子はママの売春行為をうっとりと眺めながら和之にそう言った。
「ママに旦那さんはいるんですか?」
和之が恵子に振り返って聞く。振り向くとすぐ真後ろに恵子のキレイな顔がドアップに迫っており、和之は慌てて下を向いた。

「旦那さんいるよ。自分の女房が毎晩ああやって客の上で腰振ってるの知ってて何も言えないのよ、甲斐性ナシの安月給サラリーマンだからね・・・哀れなもんだよ」
恵子はそう呟くと、「ほら、あっちでも始まるよ」とシゲさんの方に向かってアゴを向けた。

ソファーに座る全裸のシゲさんの上で、シゲさんの大きなペニスを指で固定した洋子さんが跨がろうとしていた。

洋子さんの穴にシゲさんのペニスの先がヌポッと突き刺さった。すかさず、洋子さんが不気味な声を出しながらシゲさんの唇に吸い付いた。

ググググッ・・・っとシゲさんのペニスが洋子さんの膣の中に消えて行く。洋子さんの穴から出ていた透明の汁がシゲさんの金玉にタラっと垂れ落ち、洋子さんが腰を振る度にソレが糸を引いていた。

和之はそのリアルな光景を目の当たりにし、つい「ふぅ・・・」と胸に溜まった息を吹き出す。

恵子がニタニタと笑いながら「アンタのチンチンの先もヌルヌルに濡れてるよ」と我慢汁をペチャペチャと音立てながらシゴいた。

その時、突然静まり返った店内にママの声が響いた。

「恵子ー!二階の準備してきておくれー!」

ママはガタガタに体を震わせる程に社長から攻められながらそう叫んだ。

「ちっ・・・面倒臭いねぇったく・・・」
恵子はそう言いながら、指に付いていた和之の我慢汁をおしぼりで拭き取ると「ちょっと二階の準備して来るから、そこで待ってて」と和之にそう言い残し、フンフンと不貞腐れながらも奥にある階段に向かって行ったのだった。

               9

恵子が席を外し、ひとりポツンとソファーに座っていた和之がとりあえずペニスをズボンの中にしまっていると、いきなり凄い大音量でカラオケが鳴り出した。

カウンターを見ると、パートナーがいなくて淋しそうな原さんがマイクを握っていた。

「♪義理や~人情にぃ~憧ぁれたぁ~19~ハタチがぁ花だあぁった~♪」

原さんはわざと声をしゃがらせながら、実に淋しいメロディーの演歌を唸り始めた。

この町のカラオケの曲は、老若男女を問わず圧倒的に演歌が多かった。
学生時代、クラスメートと駅前のカラオケボックスに行った事があるが、和之がエグザイルの歌をステップを交えて熱唱すると全員が冷ややかな目で和之を見つめた。
クラスメート達はまだ高校生だというのに、鳥羽一郎や北島三郎、マニアックな奴になると鏡五郎の「男の流転」などという誰も聞いた事がないような任侠演歌を唸る奴までいた。
それがこの町のスタイルなのだ。
子供の頃から漁師に憧れ漁師を夢見るこの町の若者達は、たとえカラオケだって容赦はしない。
無理をしてコブシを効かせながらも、鳥羽一郎のド演歌を熱唱するのだった。

「♪行き着く所はぁ覚悟の上でぇぇえ~俺はぁぁぁ~ひとりでぇぇ~生ぃぃきてぇぇ行くぅぅ~♪」
原さんは「らりるれろ」の巻き舌でそう熱唱すると、自分で「拍手!」と叫びながらひとりパチパチと手を叩いていた。

アホらしくなってきた和之だったが、しかし一応はパチパチと手を叩いてやった。
原さんの事だ、ポツンと座っている和之を見つけては「おまえも一曲歌え!」と言って来るに違いなかった。隣りのボックスでおばさんが小便を洩らしながらアンアンとセックスしているこの状況で、ド演歌を歌わされるほど悲しい事はない。そう思った和之は、原の歌が終わるや否やそそくさと便所に逃げ込んだのであった。

便所の洗面所の前で携帯を開くと、もう1時を過ぎていた。
プレステ3を買おうと思っていた駅前のゲオは12時で閉店してしまう(この町はコンビニでさえ夜中の3時で閉店する)。
もう無理か・・・と諦めながらも洗面台の鏡を覗き込みながら、原さんの次の曲が流れるのを見計らっていると、突然、トイレのドアがカバッ!と開けられた。

「おう、カズかぁ、なにしとんねん」
ベロンベロンに酔っぱらった社長が、同じくベロンベロンのママを肩に担ぎながら、洗面所前の和之を見た。
「いえ、ちょっと小便を・・・」
和之が慌てて便器のある個室に入ろうとすると、社長は「丁度よかった、こいつ小便させてやってくれや。このオンナ、オマンコの最中にビショビショと小便洩らしよるからかなわん。二階連れてく前に小便させたろう思うてな・・・」と言いながら、肩に担いでいたママを和之に渡した。

「小便させたら二階に連れて来てくれや、な」
社長はそう言いながら千鳥足で階段を上って行った。

「えっ!いや、ちょっと社長!」
和之がそう叫ぶ間にも社長はドカドカと音を立てて階段を上ってしまっていた。

「あらららぁ・・・息子さんじゃないのぉ~恵子はどうしたの?」
ベロンベロンに酔っぱらったママはそう言うと、後手でバタンとトイレのドアを閉めガチャリと鍵を閉めた。

ママは「えへん」や「うふん」と言った色っぽい声を出しながら、和之の若い肉体を触り始めた。
「・・・あのぅ・・・おしっこするようにと社長が言ってましたが・・・」
戸惑っている和之がそう言うと、ママは「放っておけよあんなハゲ社長~ゲフぅ~」と深いゲップをした。
ちなみに和之の社長はハゲてはいない・・・。

ママは「恵子の事、よろしく頼むわね」と妙にしんみりとした口調でそう言うと、いきなり和之にキスを求めて来た。

ブチュ~っと唇を押し付けられると、そのままグニョッと生暖かい舌が和之の口の中に入って来た。
ママのその舌は妙にネバネバとしており、時折、から揚げの匂いがプ~ンと漂って来た。

「あんた、まだチェリーボーイやろ・・・」
唇を離すなりママはそう和之に聞いて来た。

チェリーボーイ・・・・・。
この人はいったいいつの時代の人なんだと和之は思いながらも、もしかしたら「アンポ!」と叫べば「はんたーい!」と帰って来るのではないかと少しワクワクした。

ママはそのままズリズリと下に下がって行くと、和之のジーンズのベルトを外し始めた。

「えっ!いや、ちょっと!」
和之は動揺したフリをしながらも少し期待をしていた。

口では困りながらも何の抵抗もしなかった和之は、いとも簡単にスボンとトランクスを下ろされ、勃起したペニスをママの目の前に曝け出した。

「あっらぁ・・・若いだけあって、教師びんびん物語だわねぇ~」
ママはまたしても古くさい用語を持ち出した。

しかし・・・スナックのママというのは、どーしてこうも時代が止まってしまっているのだろうか。
筆者も、先日ある社長さんから小さなスナックに連れて行かれた事があるが、そこのママ(推定55歳)にスナックの扉を開けた瞬間「いらっしゃいまんこー!」と叫ばれ、一瞬にして不愉快になった事がある。
他にもそのママは、筆者が社長に「いただきます」とグラスを向けると、隅っこから「飲んでちゃぶ台」とすこぶる寒い言葉を投げ掛けたり、社長と話していた筆者が、話しの中でちょっとしたギャグを言おうものなら「おまえ吉本行けよ!」と取り返しのつかないようなツッコミを素早く入れて来る始末なのだ。
そのママがいちいち発するその凍るような言葉に、筆者はもう聞いてて恥ずかしくなってしまい、なにか突然自殺したくなってしまい、「この糞ババァがぁ!」と叫びながら厨房から包丁を持ち出し、その場でガバッ!と切腹をしダラダラと溢れ出した大腸&小腸をママの顔面にぶつけてやりたい心境に駆られたのは紛れもなく事実でございます、はい。

話しを元に戻します。

ママはロレツの曲がらない声で「恵子や社長には内緒だからねぇ・・・」と言いながら和之のペニスをニュルッと口の中に滑り込ませた。

「うっ!」と和之は天井を見上げる。

薄汚いトイレで酒乱のママに強引にされた初めてのフェラチオ・・・・
和夫の脳味噌に激しい快感が走り抜けたのだった。


               10

和之がリズミカルにカポッカポッとペニスをしゃぶられていると、いきなり二階から「おーい!ママはまだかぁー!」という社長の声が聞こえて来た。

和之は慌てて「今、いきまーす!」と叫び帰した。
とは、叫んでも、まだまだ和之にイク気配は見られなかった。
緊張しているのか、はたまた立ったままという体勢が悪いのか、すこぶる興奮はしているもののイクというまでには達していなかった和之は、強引にママの口からペニスを抜き取った。

「ママ、社長が呼んでるから、早く小便しちゃって下さい・・・」
和之がそう言うと、ママは「じゃあさせて」と意地悪そうに笑った。

和之はしゃがんでいたママを抱き上げると、フラフラの足下のママを支えながら、奥の個室トイレに誘導した。

そこは和式便所だった。
この町で洋式便所のウォシュレット付きトイレなんていうのは、まず駅前のココスかバイパス沿いのサイデリアくらいしかない。

和之は和式便器にママを立たせると、「では・・・」と言いながら個室を出ようとした。

「パンツおろしてぇ~」とママが和之を呼び止めた。
ドキドキしながらも「えぇ?」と和之が聞き直すと、ママは「降ろさないとこのままちびっちゃうからねぇ~」と笑った。

和之はドキドキしながらも「しょうがないっすねぇ・・・」と言いながら、ママのスカートの中に静かに手を入れた。
が、そこにはパンツらしきものは見当たらない。
和之はママの腰の辺りをサワサワと手探りしながら、そう言えばさっき恵子さんがママはノーパンだって言ってたはずだ、と気がついた。

「うぃ~・・・」
と立ったまま唸っているママのスカートの中をコッソリと覗いてみた。

やっぱりノーパンだった。
ママは陰毛が薄いせいかワレメがクッキリと見えた。

和之はママのスカートをたくし上げると、後からママのお尻の肉の間をこっそり覗き込みながら「ママ、このまましゃがんでいいですよ」と声を掛けた。

前に屈むママの尻肉がゆっくりと開きはじめた。
和之はすかさず、その開いた尻肉の隙間の匂いを嗅いでみる。
そこはチーズの匂いがプンプンと漂っていた。

ママは一気にしゃがみ込むと、物凄い勢いでシャーっと放尿し始めた。

和之はママに見つからないように、こっそりと尻の裏を覗き込んでみた。
真っ黒なアワビのような性器がパックリと開き、その奥にあるピンク色した穴から小便が吹き出していた。

(すごい・・・)
初めて女性の放尿シーンを見た和之は、いつママに見つかるかわからない恐怖のなか、それでもそのシーンに釘付けになってしまっていたのだった。

小便が終わると、ママはヘロヘロの声で「あい、終わったよ~」と後から覗き込んでいる和之に声を掛けた。

和之は再びママを肩に担ぐと、トイレのドアを開ける。

そこにはフルチンの社長と、洋子さんが待っていた。

「おっそいのぅ・・・早よぅせんかい」
ちょっと不機嫌な社長は和之の肩からママを受け取ると、そのまま階段を上って行く。
和之はそんな不機嫌な社長を見て、トイレでママにフェラチオをされていたのが社長にバレているのではないかと不安になった。

「随分と遅かったけど何してたん」
とんでもない巨乳をダラリンと出したままの洋子さんが床にしゃがみ、煙草を吸いながら和之に聞いて来た。

「いや、なかなか小便が出なかったらしくて・・・」
和之が慌ててそう答えると、洋子は「嘘や。ママはいつも便器にしゃがんだ瞬間にシャーやもん。本当は何してたんよ。誰にも言わんから教えてみ」とイヤミな顔をしてそう言った。

「いえ、本当に何も・・・」
和之が答えると、洋子はニタニタと笑いながら「ママはな、慢性の梅毒やしな。もしヤってんなら、そのまま放っておくとチンチン腐ってくるよ」と笑った。
そして煙草を喰わえたままトイレに入ろうとした洋子は、クルッと和之に振り返り「ウチから聞いた言うたらアカンで」とまたそう言ったのだった。

               11

店内に戻ると、和之の座っていたボックスで、シゲさんと原さんが恵子を挟んでイチャイチャしていた。

いや、それは、よく見るとイチャイチャしているのではなく、どうやらシゲさんと原さんが恵子に痴漢をしているようだった。

「アンタらいいかげんにせんと、トシさんに言うしな!」
スカートの中に強引に潜り込むシゲさんの手を掴みながら恵子が叫んだ。
「トシ、トシ言うて、うるさいオンナやなぁ・・・」
原さんがヘラヘラと笑いながらも真剣な表情で恵子の両手を押さえようと必死になっていた。

恵子は和之に気付くと「あんた、そこのカウンターにある私の携帯取って!トシさんここに呼ぶし!」と叫ぶ。
シゲさんと原さんが同時に和之に振り返ると、原さんが「カズ、手伝え」とニタニタ笑った。

和之はどうしていいかわからなかった。
別に恵子に対して情が湧いていたというわけではない、このまま先輩の原に言われるがままレイプの片棒を担いでも構わなかった。
が、しかし、そのトシさんという謎のヤクザが妙に気になった。
ここで自分も原さん達に手を貸せば、後でそのトシさんから仕返しされるのではないかという不安があったのだ。

この町のヤクザはかなり凶暴だ。
この町のヤクザは、和之が中学生の頃に見た東京のヤクザのように、いかにも「金持ってます」といったスタイリッシュなヤクザではなく、子供がそのまま大人になったようなヤクザばかりだ。
そんなこの町のヤクザが駅前のパチンコ店で暴れているのを和之は見たことがある。
吉本新喜劇に出て来るような派手なファッションをした坊主頭のヤクザ達が、椅子や自転車を振り回しながらパチンコ店にある全てのガラスを破壊していた。
パトカーが来てもその勢いは治まる事を知らず、ついでにパトカーのフロントガラスにまで自転車が投げつけられ、パトカーのフロントガラスは粉々に砕け散っていたのだった。

そんなシーンを思い出した和之は瞬間に足が竦んでしまった。

「よっしゃ!脱がせたぞ!」
シゲさんがそう叫びながら、恵子のスカートの中から強引に毟り取ったパンティーを手に、高々と持ち上げた。

「ったくヤメろよー!」
恵子が足をバタバタさせると、そのパンティーを後にポイッと放り投げたシゲさんは「ジタバタすんなって!」と言いながら恵子の体の上に覆い被さった。

和之の足下に恵子の下着が転がっていた。
その下着は、なんとも貧乏臭く古くさいデザインだった。
かなり履き込んでいるのだろうか、所々に糸のほつれが目立つ。
そんな侘しいパンティーを見ていたら、和之は急に恵子が可哀想に思えて仕方なかった。

ノーパンのスカートの中に原さんが顔を押し込んだ。
シゲさんの大きな口が恵子の小さな口を塞ぐ。

「うひょひょ、ケイちゃん濡れてるやんけ!」
原さんは恵子の股間から顔を一度離し、誰に言うまでもなくそう叫ぶと、再びガバッ!とスカートの中に顔を押し込んだ。

「アンタのチンポを触ってたから濡れたんやろなあの変態女」
立ちすくんでいる和之の後でいきなり洋子がそう言うと、洋子は牛のような大きな乳をタプタプとさせながら「こっちで二人で見物しよ」と和之の手を引いた。

いつしか恵子は俯せにされていた。
いままで「やめろよ!」と言っていたのが「やめてよ・・・」という声に変わる頃には、恵子の尻にはシゲさんのペニスがズボズボと挿入されていたのだった。

「ほおぉ・・・すげえシマリだなケイちゃん。こりゃあトシがボケて当然だわ」
シゲさんが恵子の尻を持ち上げながら腰を動かしそう言うと、洋子が和之の耳元で「トシさんとシゲさんは昔は兄弟分やったんよ。なのにあんな酷い事ようやるわ。ホンマ獣やな」と囁いた。

囁きながら洋子の手が和之の股間に伸びる。
「恵子が犯されるの見てて立ったんちゃう?」
洋子はニタニタと笑いながら和之のベルトを外す。

ソファーの上で背後から犯される恵子と時々目が合った。
恵子は和之に泣いているのを見られたくないのか、和之と目が合うと真っ赤な目をサッと伏せた。

シゲさんが恵子を背後から犯しながら原さんが恵子の両手を押さえている。
原さんは何度か恵子にキスをしようとするが、その度に唇を噛まれそうになり「ホンマ気の強い女やわぁ」と原さんはケラケラ笑った。

それに目を奪われていた和之がふと足下を見ると、いつの間にか洋子が和之のペニスをジュボジュボとしゃぶっていた。

「わあ!」と和之が驚くと、「大人しゅうしんね」と洋子が和之の太ももを抓った。

洋子は和之の金玉まで同時に吸い込むと、しゃがんでいた股間に指を回し、自分でオマンコを弄り始めた。

それは凄い光景だった。
今まで何の変哲も無くこの町で暮らしていた和之だったが、こんな獣のような事がこんな田舎町で夜な夜な繰り広げられているのかと思うと絶望すら感じた。

和之のペニスを口からスポン!と抜いた洋子は、ニタニタしながら座っている和之の股間に跨がった。

「あんた童貞やろ。お姉ちゃんが天国行かせてやるからな」

洋子のホルスタインのような乳が和之の顔に近付いて来た。

洋子は和之のペニスを右手で握り、自分のアソコに亀頭を擦り付けた。
「ほら、我慢汁がいっぱい出てきよるで・・・見てみ、お姉ちゃんの汁と交わっとるわ・・・」
クチャクチャクチャ・・・という卑猥な音が響く。

急に和之は吐き気を覚えた。
この洋子がなにやら悪魔に思えて仕方ないのだ。

と、その時だった。
恵子の尻に腰を振っていたシゲさんが「おうおう、ワシ、イキそうやでぇ~!中で出してもええな?」と叫ぶと、いきなり恵子が泣き出すように叫んだのだ。

「やめてぇーーー!お腹に赤ちゃんがいるのよーーー!」

恵子のその声は和之の脳味噌に突き刺さった。

シゲさんが「ほなら赤ちゃんに顔面シャワーしたろ」と言うと、原さんが「そりゃあさぞかしええコが生まれよるわ」と答え、二人がケラケラ笑った。

カバッ!と和之が立ち上がると、膝の上に乗っていた洋子がひっくり返り、テーブルに後頭部を打ち付けてカエルのように伸びてしまった。

和之はそんな洋子を無視してカウンターに走ると、恵子の携帯電話を手にした。

「恵子さん!トシさんの電話番号は何番!」

和之が恵子に向かってそう叫ぶと、シゲさんと原さんが「何やっとんじゃカズー!」と同時に叫んだ。

原さんが猿のようにソファーのクッションを飛び跳ねながら和之に向かって来る。

「恵子さん早く!何番だよ!」

恵子はソファーからやっと顔を上げると「短縮の0番!」と叫んだ。

ピッ!ピッ!・・・・・プップップップップップッ・・・・・

瞬間に原さんの右ストレートが和之の顔面に炸裂した。
和之から携帯を奪い取った原さんは、慌てて電源を切ると、床で頬を押さえたまま固まっていた和之の顔面をおもいきり蹴り上げた。

「大丈夫やったか?!」
腰を止めたシゲさんが携帯を持っている原さんに聞く。

「大丈夫や。トシさんが出る前に切ったったわ・・・」
原さんは肩でハァハァと息をしながら、「カズぅ。ようもワシらを裏切ってくれたのぅ」と言い、顔面を押さえながら踞っている和之を右手で起こした。

暴れる恵子の腕を押さえ込んでいたシゲさんが、鼻血を出した和之に向かって「ワシら、舐めとんのか」とドスの利いた声で言った。

「カズぅ。ワシらがどんな人間か知っててケンカ売ってんのか?おっ?」
原さんがそう言いながら和之のアゴに拳をぶつけた。
勢いの付いた和之は後ろに吹っ飛び、カウンターに頭をぶつけその場に倒れ込んだ。

「おい、原よぉ、そいつのヤキは後にして、先にこっちを終わらせようやんけ。早よぅこっちきてこいつの腕を押さえてくれや、ワシ、もうイキそうなんや」
シゲさんがそう言うと、原さんは「後でしっかりヤキ入れたるから覚悟せぇよガキ」と肩を怒らせながらまた恵子のほうへと歩いて行った。

「いやぁぁぁぁ!やめてぇぇぇぇぇぇ!」
恵子の声が店内に響き渡った。
鼻血が止まらなくなった和之は、泣き叫ぶ恵子をぼんやりと眺めながら、恵子さんごめんね、とグシャグシャになって泣き出した。

と、その時だった。
スナックのドアがバーーン!と物凄い勢いで開いた。

眉毛に極太なイレズミを入れたツルツル頭の厳つい男が2人、のっそのっそと肩を怒らせ店に入って来た。
そして、ソファで羽交い締めされている恵子を見つけるなり、二人の男は「あっ!」と同時に叫んだ。

「どないしたんじゃ・・・」
二人の後ろからスーツを着た長身の角刈り男がヌッと現れた。
朦朧とする意識の中、和之はその男を見て(まるで菅原文太のようだ)と、そう思った。

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文太はソファーで羽交い締めにされていた恵子を見るなり、極太眉墨丸坊主の二人同様「あっ!」と叫んだ。

「ど、どうも・・・トシさん・・・」
恵子の両手を掴んでいた原さんがサッと立ち上がる。
モロに恵子の尻にペニスを突き刺していたシゲさんも、顔面を真っ青にさせながらゆっくりとペニスを抜き取ると「ひ、久しぶりやね、兄弟。元気やった?」と静かに立ち上がった。

トシさんの後ろから3人のヤクザがドカドカっと店内に飛び込んで来た。

原さんとシゲさんは、総勢5人の厳つい極太眉墨坊主頭若い衆に囲まれると、「ちょっと話しだけでも聞いてもらえんですか、トシさん」と原さんが猫なで声を出し、「そうや、これは誤解や兄弟」とシゲさんが宥めるように言った。

「トシちゃん・・・こいつら殺して・・・・」
恵子が涙を拭きながらポツリとそう呟くと、トシさんは長い洋モクを一本口に喰わえ「おう。この二人、トランクに詰めとけや」と低い声で呟いたのだった。

               12

その後、その二人が本当に殺されたかどうかは和之は知らない。
その日を境に和之は会社を辞めてしまったからだ。

和之は大きなボストンバッグを肩に担ぐと、今にも崩れそうな古ぼけた駅の階段を上っていた。

(この腐った駅の階段を上るのもこれが最後か・・・・)

和之は東京行きのキップを握りしめながら、なんだかウキウキと最後の階段を上り詰めた。

誰一人として和之を見送ってくれる者はいない。
学生時代、あれだけ必死に和之の東京行きを阻止したクラスメートも担任の先生も誰もいない。
しかし、和之はせいせいしていた。
これでこの腐った町とも綺麗サッパリと縁が切れると思うと、そんなヤツラに今更見送りなどしてもらいたくもないのだ。

駅のホームに立つと、和之はおもいきり背伸びをした。

反対側のホームでは、黒いスーツを着たヤクザ達がなにやら物々しく整列していた。

きっとどこかの大物の出迎えかなんかだろう、学生時代、この駅でよく見かけた光景だ。

すると、整列しているヤクザ達の中でひときわ長身の男が和之に向かっていきなり手を振った。

トシさんだ。

「おう!そんな荷物持ってドコ行くんならぁ!」
トシさんは大きな声で和之に話し掛けた。

和之はこんな状況で理由を話すのも変だと思い、「はい、ちょっと東京まで」と笑顔で答えた。

互いのホームに電車が向かって来た。
ヤクザ達は向かって来る電車をキッと睨みながら改めて姿勢を正す。

「ほうか!気ぃつけて行ってこいや!」
トシさんがそう叫ぶと、二人の間にスーッと電車が入り込んだ。

しばらくすると、向こうのホームから「ごくろうさんっす!」という低い声が一斉に響いてきた。

和之はなにやら自分が見送りされているような気分になり、ひとりで苦笑いをするとこの町に別れを告げたのだった。

(おわり)

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