眠れない夜3
2013/05/30 Thu 18:04
「今夜は飲むぞ」
そう言いながら部下の片桐をマンションに連れて来たのは、あの奇妙なセックスをしてから、わずか一週間後の事だった。
片桐は、昨年入社したばかりの新入社員だった。私が主任を任せられている第二営業部に所属し、主に外回りを担当していた。
その日、片桐をマンションに連れて来たのは、帰宅途中にたまたま立ち寄ったいつものコンビニで、偶然にも彼と出会したからだった。
片桐は、小さな弁当を両手で持ちながらレジ前の行列に並んでいた。「おい」と声を掛けると、片桐は「あっ、主任」と随分驚きながらも、しかしすぐにいつもの人懐っこい笑顔でニサッと笑った。
今まで知らなかったが、片桐は、このコンビニのすぐ裏にあるワンルームマンションに住んでいるらしく、二年前にこの町に越して来た私達よりも、二年ほど長くこの町に住んでいたのだった。
「なんだキミは御近所さんだったのか」と私も驚きながら、ふと彼の持っていた弁当を見た。
それは、『全国駅弁シリーズ第二弾』と大袈裟なシールが貼られた、実に貧乏臭い『函館いかめし』だった。
その、黒ずんだイカが一杯丸ごと入っている中身を訝しげに覗き込みながら、「夕飯か?」と聞くと、彼は恥ずかしそうに「ええ」と笑った。
すぐさま私は行列から彼を脱落させた。そして「ウチはすぐそこだから、一緒に飯を食おう」と彼を誘い、その薄気味悪い弁当を棚に戻させたのだった。
そのまま私たちは、妻が待つマンションへと向かった。
私がお客を連れて帰るのは久しぶりだった。二年前に住んでいた三鷹のマンションの頃は、武蔵野に住んでいた加藤を会社帰りによく連れて帰ったものだったが、しかし、こっちのマンションに越して来てからというもの、そういった事は一度もなかった。
暗い路地を二人並んで歩いていると、片桐が「突然お邪魔して、奥さんご迷惑ではないでしょうか」と恐る恐る聞いて来た。私は「なぁに、いつもの事だから心配いらんよ」などと、いかにも太っ腹な上司面して笑いながらも、しかし、いきなり部下を連れて帰れば、妻は随分と慌てる事だろうと少し心配になった。
ふと、「何も用意してないから困ったわ……」と、眉間に皺を寄せながら戸惑う妻の顔が浮かんだ。するとその瞬間、突然、戸惑う妻のその表情に不思議な興奮がムラっと湧いた。
眉間に皺を寄せながら戸惑っている妻のその顔が、セックスでイッた時の、あの切ない表情にみるみると変わって来たのだ。
確かに私は、あの日のセックス以来、あの奇妙な興奮に取り憑かれてしまっていた。
ふとした時に、誰かに妻を抱かせてみたいという異常な衝動に駆られるのだ。
そんな異常願望は、会社にいても、電車の中でも、家でテレビを見ている時でも、容赦なく襲い掛かって来た。
突然頭の中に、見知らぬ男とラブホテルに入って行く妻の後ろ姿が浮かぶのだ。
他人男の薄汚い肉棒をしゃぶったり、自ら騎乗位で腰を振ったり、そして中出しされながら恍惚とするといった、そんな残酷な妄想がメラメラと浮かび上がってくるのだった。
だけど私は妻を愛していた。誰にも指一本触れさせたくないくらい、本気で彼女を大切に思っていた。
だから私は、そんな妄想が浮かぶ度に激しい焦燥感に駆られた。絶望に打ちひしがれ、無性に妻が愛おしくて堪らなくなった。
そんな矛盾は、時として私を狂気に走らせた。
異様な興奮に我を忘れた私は、ネットの『今すぐヤリ隊チャット』という出会い系サイトに、妻の実名で投稿するようになったのだ。
『三十四歳の淫乱浮気妻です。若い人ならどんな人でもかまいません。セックスして下さい。滅茶苦茶に犯して下さい。複数でもかまいません』
このような文をそのサイトに投稿すると、すぐさま男達から返答が来た。
『25歳のサラリーマンです。ペニスは勃起時で19センチあります。今から鴬谷の駅に来れますか?』
『二十歳の学生です。PM6時から7時まで上野の特選劇場という映画館のロビーで待ってます。皆が見ている前でオマンコしましょう』
そんな返答を、凄まじい嫉妬に駆られながら読んだ。
この変態共に、本当に妻が汚されているような錯覚に囚われ、嫉妬と絶望と興奮に包まれながらも、猿のようにオナニーをしまくった。
又、ある時など、妻の使用済み下着を洗濯機の中からこっそり盗み出し、その卑猥に汚れたクロッチをデジカメで撮影しては、それを『嫁の汚ぱんちゅ』という寝取られ系画像掲示板に投稿したりした。
そんな異常な行為は更にエスカレートし、妻の使用済み下着を晒すだけでは物足りなくなってしまった私は、いよいよ妻の陰部を全国の変態男達に晒してやりたいという欲望に駆られた。
そしてある晩、医師から処方されていた例の睡眠薬を粉々に潰した私は、妻が風呂上がりに必ず飲むというアセロラドリンクの中にそれを混入してしまったのだった。
薬を混入して三時間後、恐る恐る寝室を覗いてみると、まるで脳梗塞の前兆かのような大鼾がグーグーと鳴り響いており、呼んでも揺り起こしても妻はびくともしなかった。
さっそく私は、うつ伏せで寝ている妻のパジャマのズボンを下ろし、淡いピンクの下着に包まれた丸い尻をデジカメで撮った。
様々な角度から十枚ほど下着の尻を撮ると、それをスルッと下ろした。すると、今まで小さなパンティーに押し込められていた豊満な尻肉が、コンニャクのような弾力性と生クリームのような柔らかさでタプンッと溢れ、早くもそこに顔を埋めたい衝動に駆られてしまったのだった。
まずは撮影が先だ、と自分に言い聞かせながら、陰部を露出させようと右足の膝を曲げさせた。尻の谷間がゆっくりと開くと同時に、黒ずんだ襞やウネウネとした陰毛が蛍光灯に映し出された。
もはや見飽きたモノではあったが、しかしこういった状況で改めて見てみると、おもわずその刺激に脳がクラクラした。
プクっと膨らんだ大陰唇に指を這わせワレメを左右に押し開いた。ペロリと捲れたその中では、赤い生肉が怪しげにテラテラと輝き、ヨーグルトの沈殿物のような粘りけのある白濁物が粘膜に絡み付いていた。
妻が最も他人に見られたくない秘部。
それを今から全国の変態共に晒すと思うとデジカメを握る手が震えた。
きっと彼らは、妻の汚れた下着画像や、この白濁物が付着した膣の画像を見ながらオナニーするに違いない。クロッチのシミをクンカクンカと嗅ぎ、シミの線に沿ってチロチロと舐め、そこに大量の精液を放出したいなどと、悶々と想像しながらペニスをシゴくに違いないのだ。
そしてこの穴。
この卑猥に汚れた肉穴を見ながら、彼らはそこにペニスを挿入したいと思う事だろう。
相手がどんな女なのか、年齢も容姿も性格もわからないのに、それでも彼らはこの穴を見ながら欲情するのだ。
こいつがどんな女であろうが関係ない、ただただその穴の中でペニスをヌルヌルとピストンし、大量の精液を中出ししてやりたいだけなんだと、この画像を見ながら獣の如く興奮するに違いないのだ。
そう思うと、居ても立ったもいられなくなってきた。
ネットに妻の卑猥な画像を晒すというのは、間接的ではあるが、妻が他人に汚されているのは事実なのである。
これは実にお粗末な方法ではあるが、しかしこれも、私にとっては、あの夢にまで見る『寝取られ』の一種なのである。
私は、散々撮影しまくったデジカメを布団の上に投げ捨てた。
込み上げて来る熱い息をハァハァと漏らしながらパジャマを脱ぐと、すぐさまぐったりしている妻も全裸にした。
うつ伏せの体を仰向けにすると、ムチムチの乳肉がポテッと歪んだ。その乳を左手で鷲掴みしながら、右手で肉棒の根元を握り、ペロリと捲れているワレメにその先を擦り付けた。
濡れていない粘膜はペチペチと乾いた音を立てていた。
竿に向けて唾を垂らした。次々に竿に落ちた泡状の唾は、そのまま竿の斜面を滑り、その先にある赤いワレメへと垂れて行った。
ペニスの根元をクネクネと回しながら、剥き出したワレメの表面に亀頭を回転させた。
唾液が潤滑油となり、亀頭がスムーズに回り始めると、今までペチペチと鳴っていた音が、次第にヌチャヌチャと湿った音に変わって来た。
しかし、それでも潤いは充分ではなかった。この状態で入れると、かろうじて亀頭だけはヌポヌポとピストンするだろうが、しかし乾いた竿までは無理だった。
それでも無理に入れようとすれば、メリメリと食い込んでいく竿に激痛を覚えた妻が目を覚ましてしまう可能性もあるのだ。
既に唾液を出し尽くしてしまった私は、ヴヴヴヴヴヴ、と咳払いをした。そして喉に絡んだ痰をカーッと絞り出し、ドロっと喉から這い上がって来た大粒の痰を直接ワレメにベトっと垂らした。
さすがに痰は唾とは違った。
そのヌメリ感はペペローションの如くヌルヌルし、食い込むペニスの表面にねっとりと絡み付いて来た。
そのまま一気に根元まで滑り込ませた。その生温かい締まり具合におもわず「おぉぉぉ……」と声を漏らした私は、この瞬間を変態共に見られているかのように、「凄いぞ……この女のオマンコは……チンポに絡み付いて来るぞ……」と実況中継しながらコキコキと腰を動かし始めた。
眠ったままの妻は、人形のようにユッサユッサと体を揺らしていた。
そんな妻を再びデジカメで撮影しながら、ふと、『昏睡した妻とヤリたい方募集』というタイトルでこの画像を掲示板に投稿しようと思った。
そして私は、それに募集して来た他人男になったつもりで激しく腰を振り、妻の体内に熱い精液を放出したのだった。
私はそんな異常な性癖に取り憑かれてしまっていた。
妄想の中で何度も何度も妻と他人男にセックスをさせているのだ。
実際、それをしてみたくて気が狂いそうになっていた私ではあったが、しかし、現実にそれをしようとするのは、あまりにもリスクが大きすぎた。
まず、何よりも妻本人を納得させるのが困難だと思った。
妻に正直に事情を説明し、ネットで募集した他人男とセックスして欲しいと頼んでも、おいそれと言うことを聞くような妻ではなかった。
下手をすると「私を愛していないの」と開き直られ、離婚にまで発展する危険性があった。
それに、ネットで募集する他人男というのは、あまりにもリスキーだった。
どんな男が募集してくるのかわからないのである。
もしかしたらドブネズミのようなホームレスかも知れないし、ヤクネタのやくざ者かも知れないし、はたまた気が狂った中国人かも知れない。例え外見はそんな奴ではなかったとしても、中身が非道な奴だったら、妻とヤっている写真や動画を隠し撮りされ、それを近所や会社にバラまくぞと恐喝される恐れもあるのだ。
しかし、それよりも何よりも、最も私が危惧している事は、妻がその他人男に落されてしまわないかという事だった。
これは怖い。
妻がヤクザに覚醒剤を打たれる事よりも、気が狂った中国人に妻がガムテープでぐるぐる巻きにされてしまうよりも、そして目ん玉が飛び出さんばかりの多額の金額を恐喝される事よりも、妻の心が寝取られてしまう事が、私は一番恐ろしかった。
なんせ、募集してくる相手というのは若い男なのだ。
当然、私のような老いぼれよりも容姿は良く、ペニスは硬く、それに精力もあるだろう。
もしかしたら私よりも収入は上かも知れず、高級マンションに高級スポーツカーなんかも持っているかも知れないのだ。
そんな若い男に、濃厚で激しいセックスをされれば、当然妻はメロメロになってしまうであろう。そうなれば、もはや私はお払い箱だ。『あなた、ごめんなさい』の書き置き一つで、私は妻に捨てられてしまうのだ。
それほどのリスクを背負ってまで、この欲望を満たすというのはあまりにも無謀だった。
が、しかし、その反面、それだけのリスクを背負ってでも、私は妻に他人男とセックスをさせてみたかった。
だから私は、そんなリスクを背負わなくてもいいような、もっともっと安全な方法を計画していたのだった。
その計画は、まずは、相手の男の身分が判明している事が前提だった。だから私は『知り合いの男』にする事にした。知り合いの男ならば、妻に乱暴狼藉を働く事はまずないだろうし、しかもその男が私に逆らう事の出来ない立場であれば、今後私を脅迫して来る心配も無いのだ。
次に、肝心の妻への対処法だが、やはり例のあの強烈な睡眠薬を使用する事にした。妻を説得する事は絶対に不可能だと思われるため、事前にこっそり睡眠薬を飲ませておき、完全に昏睡状態に陥った所を、他人男に引き渡すのだ。
余程の事が無い限り、これが妻に発覚する恐れは無かった。となれば、妻がその男に落される心配もなく、又、今後もその方法によって、末永くこの行為を楽しむ事が出来るのである。
これなら完璧だった。多少のリスクは背負うものの、しかし、この作戦ならば、最悪の事態を巻き起こすほどの危険性は無いのである。
そんな計画を密かに胸に抱いていたる時だった。
その外道じみた作戦を頭に描いていた矢先、偶然にも私は片桐と出会ったのだ。
片桐は年齢も若く、身元もしっかりしており、そして私の直属の部下だった。
彼は条件を満たしていた。
私を満足させてくれるのはこの男しかいないと確信した。
妻には片桐を連れて来る事は何も告げず、そのままマンションのエレベーターに乗った。
主任の奥さんに会うのは初めてですから緊張しますよ、などと笑っている片桐の手には、途中、酒屋で購入した酒類がたっぷりと詰まった袋が握られていた。その中には、もちろん妻の好きな赤ワインも入っている。
エレベーターの扉が開き、埃っぽい廊下に靴音を立て、そして部屋のベルを鳴らした。
「おかえりなさい」と、いつも通りにドアを開けた妻は、私の背後で「今晩は」と頭を下げている片桐を見て、一瞬「えっ?」と戸惑いの表情を見せた。
妻のその表情に、おもわず私の下半身が反応した。なんだかわからぬ感情が、金玉から亀頭に掛けてムラっと涌き上がって来たのだ。
「部下の片桐君だ」
そう言いながら靴を脱いだ。
すかさず背後から、「片桐です。いつも主任にはお世話になってます」という猫撫で声が聞こえて来た。
スリッパを履こうとすると、私のすぐ目の前で、「こちらこそ、いつも主人がお世話になっております」と妻が頭を下げ、その髪の甘い香りが鼻をくすぐった。
(遂にこの時が来た!)
そう絶望を感じた瞬間、私は、あまりの興奮に、おもわずその場に崩れ落ちそうになった。
次々に涌き上がってくる興奮を吐き出すかのように、「今夜は飲むぞ」と言いながら、震える膝で廊下を歩き出した。
背後から、片桐の「おじゃまします」と言う声が聞こえて来た。
リビングに入ろうとした瞬間、不意に「うふふふっ」という、甘えるような妻の笑い声が聞こえて来た。
ハッと玄関に振り返ると、廊下に座った妻がジーンズを膝まで下ろしていた。
片桐も既にズボンを脱いでいた。下半身を剥き出しにし、巨大なペニスを微笑む妻に向けて突き出している。
「本当にヤっちゃっていいんですか奥さん」
そう言いながら片桐が自分でペニスをシゴき始めると、妻は上下に動く肉棒を見ながら、また「うふふふっ」といやらしく笑い、潤んだ瞳で「ヤって」と囁いた。
もちろんそれは、私が作り上げた妄想だった。
しかし私は、そんな一瞬の夢想にまで、脳が激しくクラクラと揺らぐほどに興奮していた。
そんな私のトランクスの中は、既に我慢汁でヌルヌルになっているのだった。
(つづく)
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